<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ロシア
<タイトル>
ロシアの原子力発電開発 (14-06-01-02)
<概要>
原爆開発を目的としていたソ連は、プルトニウム生産炉(工業炉)1号炉をウラルのチェリャビンスク−40(現在の生産合同マヤークの近く)に建設し、1948年に運転を開始した。1954年にはモスクワの南西オブニンスクで、実用規模では世界最初の原子力発電所が運転を開始した。この建設および運転経験をもとに、出力を増大してレニングラード原子力発電所1号炉を1970年に着工し、1974年に運転を開始した。これは旧ソ連独特の炉型でチャンネル型黒鉛減速沸騰軽水冷却炉(RBMK−1000、チェルノブイリ原子力発電所は同型)と呼ばれ、その後の原子力開発の主流となった。また、ソ連型加圧水型原子炉(VVER)も開発し、1960年代から実用化した。ソ連は、開発当初から閉じた(完結した)燃料サイクルを想定し、高速増殖炉は、次世代の原子炉として開発が進められてきた。また、原子力の熱利用を早くから構想しており、1974年には極北地のビリビノで熱併給原子力発電所が小出力ながら運転を開始した。1986年のチェルノブイリ事故(RBMK−1000)をきっかけに、新規原子力発電所の建設が中止され、既設原子力発電所の安全性が重要視されるようになった。しかし、1998年に新に原子力開発計画が策定され、その結果2001年2月20日ロストフ原子力発電所1号機が旧ソ連圏内では15年ぶりに初臨界を達成した。
<更新年月>
2001年03月
<本文>
1.原子炉の型式
原爆開発を目的としていたソ連は、プルトニウム生産炉(工業炉)1号炉をウラルのチェリャビンスク−40(現在の生産合同マヤーク)に建設し、1948年6月に運転を開始した。また、モスクワの南西約100kmのオブニンスクで、実用規模では世界最初の原子力発電所(5,000kWe、黒鉛減速軽水冷却)が1954年6月27日に運転を開始した。この建設および運転経験をもとに出力を増大して、レニングラード原子力発電所1号炉を1970年3月に着工し、1974年1月に運転を開始した。これは旧ソ連独自の炉型でチャンネル型黒鉛減速沸騰軽水冷却炉(RBMK−1000)と呼ばれ、その後の原子力開発の主流となった。またソ連型加圧水型原子炉、沸騰水型原子炉、有機材減速冷却原子炉なども並行して研究・開発が進められ、1960年代からソ連型加圧水型原子炉(VVER)も実用化した。
ソ連は、開発の当初から閉じた(完結した)燃料サイクルを想定し、高速増殖炉を次世代の原子炉として開発が進められてきた。また、原子力の熱利用が早くから構想し、1974年から極北地のビリビノで熱併給原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速チャンネル炉、EGP−6型1.2万kW、4基)が小出力ながら運転を開始した。1980年代はVVER−1000を原子力発電所(熱併給も実施)や、ソ連が独自に開発した熱供給原子炉AST−500の建設を進めたが、チェルノブイリ事故後、住民の反対で建設を中断した。 表1 にロシアで運転中の原子炉の型式と基数および発電設備容量を示した。
2.RBMK型原子炉の開発
ソ連は、熱出力100MWtのプルトニウム生産炉(工業炉)をウラルのチェリャビンスク−40に5基建設し、1948年から1952年に運転を開始した。また1964年にはベロヤルスク1号炉(10.8万kW)が運転を開始し、1969年にはベロヤルスク2号炉(19.4万kW)が運転を開始した。
黒鉛減速炉はスケールアップが容易である特徴を生かして、ソ連はチャンネル型黒鉛減速沸騰軽水冷却炉(RBMK−1000)を開発し、レニングラード1号炉のRBMK−1000(100万kWe)が1974年に運転を開始し、さらにスケールアップしたリトアニアのイグナリ原子力発電所のRBMK−1500(150万kWe)1号炉が1985年に運転を開始した。なお、1986年4月26日にウクライナのチェルノブイリ原子力発電所4号炉(RBMK−1000)が爆発する大事故が発生した。その後、同型のRBMKは新規建設が中止され、既設のRBMK型炉は安全性の改善を実施して運転している。RBMK型炉燃料の濃縮度は、チェルノブイリ事故以前は1.8%であったが、チェルノブイリ事故以降、濃縮度を1.8%および2.4%に増加して安全性を向上させた。燃料集合体は圧力管の中にあり、この圧力管内を沸騰水が流れ、炉心で発生した熱を除去し、蒸気発生器で発生した蒸気をタービン発電機におくり発電している。
3.VVER型原子炉の開発
VVER炉はロシア型加圧水型炉で、1959年にノボボロネジ1号炉(27.8万kWe)、1964年には同2号炉(36.5万kW)の建設を開始し、1963年および1969年に初臨界に達した。
VVERの開発は次の3段階に分けてスケールアップが進められた。
第1世代 VVER−220およびVVER−365(初期段階の実証炉)
第2世代 VVER−440/V−230(中型炉)
第3世代 VVER−1000(大型炉)
これを建設開始年別にまとめてみると、次のようになる。
<建設開始時期> <運転開始時期>
VVER−210 : 1959年 1964年(1基)
VVER−360 : 1964年 1970年(1基)
VVER−440 : 1965−1975年 1972−1984年(8基)
VVER−1000: 1974−1984年 1981−1993年(7基)
VVER−1000は数度の改良を経て、標準化され現在に至っている。
4.原子力発電の設備容量
1986年4月26日のチェルノブイル事故以前に作成された旧ソ連の第12次5カ年計画(1986年から1990年)によるとRBMKおよびVVERの原子力発電の中で占める設備容量の比率は、1980年にそれぞれ66%、27%、1986年に46%、46%、1990年に40%、58%、1999年には52%および45%であった。
1999年12月31日現在、運転中の原子力発電所は総計29基、2,155.6万kWで、その内訳はロシア型加圧水型原子炉(VVER)が13基(うちVVER−440が6基、VVER−1000が7基)、黒鉛減速チャンネル型炉(RBMK−1000)が11基、小出力の軽水冷却黒鉛減速チャンネル型炉(EGP−6)が4基、高速炉(BN−600)が1基である。運転中の原子力発電所の規模としては、アメリカ(10,064万kW)、フランス(5,989万kW)、日本(4,508万kW)、ドイツ(2,221万kW)、ロシア(2,156万kW)と世界第5位である。また1998年現在の水力、火力、原子力を合計した総発電設備容量は21,410万kWで原子力の占める割合は約10%であった。
表2−1 、 表2−2 および 表2−3 にロシアで運転中、建設中、計画中および閉鎖の原子力発電所の一覧(1999年12月31日現在)を、 表3 にロシアの原子力発電設備容量を、 図1 に原子力発電所の地図を示した。
ロスエネルゴアトムは、2000年3月上旬に、今後5年間に4億7,000万ドルを投資して、建設中のロストフ1号機(VVER−1000)、カリーニン3号機(VVER−1000)、クルスク5号機(RBMK−1000)の3基を完成させることを明らかにした。これら3基は、1998年に政府が策定した原子力開発計画では2000年までに完成が予定されていたが、今回示された見通しでは、財政難のため建設資金確保が不十分で、計画通りに完成するのはロストフ1号機のみで、クルスク5号機は2003年、カリーニン3号機は2004年に完成の予定である。
5.1998年に原子力開発計画策定
ロシア政府は、1998年7月「1998〜2005年のロシアにおける原子力利用発展プログラムと2010年までの展望」の原子力開発計画を決定したが、資金問題などにより計画通りは実施されていない。
(1) 原子力発電規模は、1996年の2,120万kWから2000年に2,424万kW、2005年に2,688万kW、2010年には2,756〜2,920万kWに拡大する。これによって、原子力による発電電力量は1996年の1,088億kWhから2000年には1,220〜1,300億kWh、2005年には1,350〜1,450億kWh、2010年には1,500〜1,700億kWhに増大する。
(2) 2000年現在、建設工事がかなり進んでいるカリーニン3号機(VVER−1000)、ロストフ1号機(VVER−1000)、クルスク5号機(RBMK−1000)を2000年までに完成させる。
(3) 運転中のユニットの安全性、信頼性の向上により寿命を延長する。
(4) 南ウラル(現在のマヤクにあるプルトニウム生産炉の北東約24km)とベロヤルスク原子力発電所で建設を中断している高速炉BN−800の建設を再開する。
(5) 安全性を向上させた改良型原子炉の建設:ソスノブイボルとコラ第2サイトにVVER−640、ノボボロネジ第2サイトに改良型VVER−1000を建設する。
(6) 既存発電所の増設分として、この他にクルスク第2、スモレンスク第2、レニングラード第2発電所を計画する。また、ボロネジ熱併給発電所の早期完成とトムスク熱併給発電所を計画する。
(7) 天然ウランの生産量を1997年の3,000トンから2010年には1万トン〜1万2000トンに増加する。
(8) 2005年までの連邦予算からの支援額は約85億ドルとする。これは実際の所要投資額の7%で、大半は自力で調達しなければならない。
表4−1 および 表4−2 にロシア原子力省が発表した「ロシア原子力省2000年」による、ロシアで運転中、建設中、計画中および閉鎖した原子力発電所の概要を示した。
なお、ロストフ1号機(VVER−1000)は2001年2月20日初臨界を達成した。これは旧ソ連圏内ではチェルノブイリ事故後、初めての新規原子力発電所となる。
6.ロシア政府が新エネルギー計画の検討に着手
ロシア政府は、2000年4月、新たなエネルギー開発計画の検討に着手した。新計画では、原子力発電の役割を重視し、天然ガス火力への依存度を低減することに焦点をあてている。
原子力発電設備容量を、最小、最大の2ケースについて予測し、原子力発電規模は2010年に最小3,020万kW、最大3,320万kW、2020年に最小3,300万kW、最大4,840万kWとしている。1998年策定の計画と比べて、原子力開発の拡大が加速されている。
新計画では、「ロシアは使用済燃料の管理サービスで世界市場に参入すべきである」と強調している。この分野における収益は、現在の原子力関連物資およびサービスの輸出益とともに、将来の設備投資の主要な資金源になると指摘している。
原子力省は、輸出分を除いた現在のロシアにおける天然ウラン消費量を年間3,000トン・ウランと見積もり、地下資源や現在の在庫量、高濃縮ウランの貯蔵量を含めると、今後80〜90年の間は十分なウラン資源が確保されていると指摘している。原子燃料サイクルは、原子力開発の主要な前提条件の一つで、この実現には高速炉の開発が不可欠であると強調している。
7.発電電力量
1996年3月にロシア連邦政府が決定した「燃料とエネルギーに関する連邦総合計画」では、エネルギー環境保全として、次世代原子力発電所の建設、環境にクリーンな発電所の建設、新エネルギー・再生可能エネルギーの利用など環境保全に配慮している。
1993年から1998年までの発電電力量の推移を 表5 に示した。これからわかるように発電電力量は減少し続けている。1998年と1999年の電源別発電電力量を比較すると、火力発電のシェアが減少し、原子力発電のシェアが増大している。これは、火力発電所の財務状況が厳しくて燃料を調達できない火力発電所が急増し、電力不足分を原子力発電が補っているからである。
8.電気料金の未払い問題
ロシアの電気料金未払い問題は非常に深刻な問題となっているが、これは電力業界だけの問題ではなく、ロシア国内全体の問題であることが、解決を一層難しくしている。
ロシア単一電力系統(RAO EES)の主な収入源は、地方電力会社が連邦卸売市場に支払う加入料金であるが、1998年当時、その料金の80〜85%は支払われていたが、残りの15〜20%は全く支払われていなかった。また、この支払われた料金のうち、現金や銀行の証券で支払われたのは15〜20%で、残りの80〜85%はバーター(燃料、資材等による相殺)で取引されている。バーター取引は現在のロシアの商取引で一般化している現象であるが、正常な市場経済を発展させてゆくのを阻害している。
<図/表>
表1 ロシアで運転中の原子力発電所の炉型
表2−1 ロシアの原子力発電所一覧(1/3)
表2−2 ロシアの原子力発電所一覧(2/3)
表2−3 ロシアの原子力発電所一覧(3/3)
表3 ロシアの発電設備容量(1993〜1998)
表4−1 ロシア原子力省が発表したロシアで運転中、建設中、計画中および閉鎖した原子力発電所の概要(1/2)
表4−2 ロシア原子力省が発表したロシアで運転中、建設中、計画中および閉鎖した原子力発電所の概要(2/2)
表5 ロシアの発電電力量(1993〜1998)(発電端)
図1 ロシアの原子力発電所分布地図
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<関連タイトル>
世界の原子力発電開発の動向・CIS (01-07-05-05)
黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK) (02-01-01-04)
ロシアの原子力安全規制体制 (14-06-01-04)
旧ソ連のRBMK型原子炉開発の歴史 (16-03-02-04)
<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 2000/2001(2000年10月17日)、p.359−368
(2) (社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編1998年(1998年3月)、p.295−319
(3) (社)日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向1999年次報告(2000年5月)、p.116−121、p.160−162
(4) ロシア原子力省:MINATOM of RUSSIA 2000(2000年)
(5) (社)海外電力調査会:海外電気事業統計2000年版(2000年8月)、p.318−330
(6) (社)日本原子力産業会議:原産マンスリー No.57(2000年10月)、p.41−70
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