<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 スウェーデンにはウランの埋蔵量はほとんどなく、世界各国から輸入している。燃料成型加工はウェスチングハウス・スウェーデン社が行い、燃料集合体原子力発電所に供給している。スウェーデンは使用済燃料再処理を行わないワンス・スルー方式をとっている。スウェーデンの法律によると、原子炉所有者は放射性廃棄物管理の安全及び効率的システムを実現する責任があり、すでに1985年から使用済燃料の中間貯蔵をCLAB施設で開始し、2009年には最終処分場サイトを決定した。原子力発電所の運転に伴って発生する低レベル廃棄物の処分も1988年から開始している。このようにスウェーデンは使用済燃料及び放射性廃棄物の処理・処分方法の確立を着実に進めている
<更新年月>
2011年01月   

<本文>
1.ウラン探査及び採鉱
 スウェーデン政府は、1950年から1981年にかけ、広範囲のウラン鉱探査を実施したが、1981年の予算額は500万ドルと急激に下がり、1985年には50万ドル、1986年にはゼロ予算となった。1985年以降は、世界市場でウラン価格が低くなり入手が容易になったことから、探鉱活動は停止された。1970年まではアルム頁岩(alum shale)が主要ターゲットであり、スウェーデン南部ベステルイェートランド州のランスタッド鉱床で1960年代に計200トンU生産された。
 スウェーデンには、花崗岩中に複数の小規模な鉱脈型鉱床が存在する(埋蔵量は1万トンU)が、スウェーデンにあるウラン資源のほとんどは、非常に低品位(0.025〜0.032%U)で、副産物として他の鉱物も含んでいる(埋蔵量は30万トンU)。
2.転換及び濃縮
 スウェーデンには、ウラン鉱石から六フッ化ウランに転換する転換工場も、またその六フッ化ウランを濃縮する濃縮工場もなく、転換及び濃縮はすべて外国に依存している。フォルスマルク発電会社の場合、濃縮ウランをEurodifから20%、Urencoから60%及びTenex(ロシア)から20%輸入している。
3.燃料の成型加工
 成型加工は、以下の工程からなる。ウラン濃縮後の六フッ化ウランを二酸化ウラン再転換し、これを焼結して燃料ペレットを製造する。次に、燃料ペレットをジルコニウム合金製の被覆管に入れて端栓を溶接し燃料棒を製造する。最後に、所定の本数の燃料棒を正方格子に配置して燃料集合体を組み立てる。スウェーデンでは、べステロス(Vasteras)市のウェスチングハウス・スウェーデン社(旧ABBアトム社)でBWR及びPWRの燃料集合体を製造し、国内の原子力発電所に供給している。同社の成型加工プラントの製造能力は、二酸化ウランで年間600トンを加工する能力があるが、実生産量は400トンであり約半分は輸出している。なお、国内の必要量は年間約220トンであり、原子力発電所を所有する4社は、競争原理の導入という観点から一部を国外から購入している。表1にウェスチングハウス・スウェーデン社の成型加工プラント能力を、また、参考として表2にSandvik Steel社のジルコニウム管製造能力を示した。
4.使用済燃料の最終貯蔵及び放射性廃棄物の処理・処分
4.1 スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)の設立
 スウェーデンでは現在10基の原子力発電所が運転されている。内訳はBWRが7基、PWRが3基で、BWRについては1972年から1985年にかけて、PWRについては1975年から1983年にかけて運転を開始している。発電所の立地点は、バーセベック(Barseback)発電所が閉鎖されたことにより、リングハルス(Ringhals)、フォルスマルク(Forsmark)、オスカーシャム(Oskarshamn)の3ヵ所である。
 スウェーデンの法律によると、原子炉所有者は放射性廃棄物管理の安全及び効率的システムを実現する責任がある。すなわち1984年に、発電炉所有者は放射性廃棄物処理・処分に関し、最低6年間の研究開発実証プログラムを3年ごとに作成し提出することが義務づけられた。そこで、スウェーデンにおける原子燃料サイクル事業の実施主体として、バッテンファール社、E.ON原子力スウェーデン社(旧シドクラフト社)、OKG社、フォルスマルク社の4社共同出資により1972年に設立されたSKBF(Swedish Nuclear Fuel Supply Company:スウェーデン核燃料供給会社)を、1984年にSKB(Swedish Nuclear Fuel and Waste Management Company:スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社)に改組した。SKBは、原子力発電所から出る使用済燃料及び放射性廃棄物の管理と最終処分を実施している。SKBは、使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)関連費用、地層処分関連費用、キャニスタ封入関連費用、原子炉解体処分費用などの原子力廃棄物管理費用の見積もりについて責任をもっており、放射性廃棄物の管理と処分に関する国際的コンサルタントを行っている。
 図1にスウェーデンにおける主な放射性廃棄物関連の組織を、図2に放射性廃棄物及び使用済燃料の処理・処分概念図を示した。長寿命の低・中レベル廃棄物は、現在各発電所、使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)などで貯蔵されており、長寿命・低中レベル廃棄物最終処分場(SFL)は2045年頃の操業開始を予定している。
4.2 SKBによる研究開発実証プログラム
 SKBは、1986年から3年ごとに研究開発実証プログラムを作成し、放射線安全機関(SSM)に提出している(2007年の研究開発実証プログラムまでは原子力発電検査機関(SKI)に提出していたが、SKIは2008年7月に放射線防護機関(SSI)と統合され、SSMとなった)。使用済燃料の処分場サイトの選定は、その方法及び進捗をSKBが作成する研究開発実証プログラムの中で提示し、それをSKIと政府(環境省)の諮問機関である原子力廃棄物評議会がそれぞれ審査し、提出された報告書をもとに、政府が研究開発実証プログラムを承認する形で進められた。また、SKIの審査の過程で自治体などに意見を求めた。
 1992年の研究開発実証プログラムとその後の政府決定により、SKBは、全国を対象とした総合立地調査、フィージビリティ調査、サイト調査によってサイト選定を進めた。フィージビリティ調査は、公募に応じた2つの自治体、調査実施の申し入れを行って承認を得た6つの自治体の計8つの自治体で、1993年から2000年まで実施された。
 サイト調査は地質調査やボーリング調査が主体の調査で、SKBは2000年11月にエストハンマル、オスカーシャム、ティーエルプの3自治体内の3地点を選定した。このうちエストハンマルとオスカーシャムの2自治体の議会がサイト調査を受け入れたため、サイト調査は、エストハンマル自治体のフォルスマルクとオスカーシャム自治体のラクセマルで2002年から2007年まで行われた。
 2009年6月にSKBは、サイト調査の結果に基づき、地下の岩盤に亀裂が少なく、また熱伝導度が大きいことからキャニスタを密に設置できるなどの理由で、地層処分場の建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定した。SKBは環境影響評価書及び安全評価書を取りまとめ、処分場建設の許可申請を2011年3月に行う予定である。2010年の研究開発実証プログラムによれば、2015年の建設開始、2025年の操業開始を予定している。表3に地層処分対策の状況を、図3に処分場サイト選定の経緯を、図4に使用済燃料最終処分場の概念図を示した。
4.3 放射性廃棄物関係主要施設
 表4にSKBの放射性廃棄物関係の主要施設を、図5に主要な原子力関連施設としてSKBの放射性廃棄物処分関連施設、原子力発電所、及びスタズビック研究所の所在地を示した。
4.4 短寿命放射性廃棄物最終処分場(SFR)
 原子力発電所で発生する短寿命の低・中レベル廃棄物最終処分場(SFR)は、フォルスマルク原子力発電所の沖合3kmの海底下50mの深さに建設され、1988年から操業を開始した。同施設には、原子力発電所で発生した低・中レベル放射性廃棄物に加え、病院や研究施設、工場などからの低・中レベル放射性廃棄物も処分される。2007年末現在、貯蔵容量63,000m3のうち32,000m3が使用されている。フォルスマルク発電所とリングハルス発電所を50年、オスカーシャム発電所を60年運転した場合に発生すると見込まれる廃棄物量57,000m3を貯蔵できるが、原子力施設の廃止措置に伴う解体廃棄物を処分する容量を持っていない。このため、2020年までに施設を200,000m3に拡張する計画が進められている(原子炉運転に伴う短寿命・低中レベル廃棄物最終処分場をSFR1、廃炉に伴う短寿命・低中レベル廃棄物最終処分場をSFR3という)。
 SFRは縦型のコンクリートサイロ構造と4本の水平トンネル構造の処分施設に大別され(図6参照)、サイロでは原子炉冷却材浄化系で使用された中レベルイオン交換樹脂、フィルタ等のセメント、アスファルト固化体を鋼製あるいはコンクリート製容器に収納し、その周りをコンクリート充填し、サイロと岩盤の間はベントナイト・砂の混合物で埋め戻される。水平トンネルBMAではガスが発生する可能性のある中レベル放射性廃棄物を処分し、砕石で埋め戻す。低レベル放射性廃棄物のうち、低レベル樹脂等を封入したコンクリートタンクは水平トンネルBTF1及び2に、固体廃棄物を封入したコンテナは水平トンネルBLAに処分される。
 また、極低レベル放射性廃棄物は原子力発電所サイト内で浅地中処分され、クリアランス・レベル以下の廃棄物は、産業廃棄物として埋設処分または再利用される。
4.5 使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)
 使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)はSKBがオスカーシャム原子力発電所に隣接して建設し、1985年から使用済燃料の貯蔵を開始している。スウェーデンの各原子力発電所から取り出した使用済燃料は、原子炉サイトで1年間冷却された後、CLABへ輸送され、30〜40年間貯蔵される。
 CLABには、使用済燃料受入建家の直下30mの地下の二つの岩洞内に、それぞれ使用済燃料を貯蔵できるプール4基と、中央プール1基が設けられており、受入建家とエレベーターで連結されている。一つ目の岩洞内のプールは5,000トン貯蔵でき、2008年1月に拡張された二つ目の岩洞内のプールは3,000トン貯蔵できる。2009年央時点で、約5,000トンの使用済燃料が貯蔵されている。CLABで貯蔵した使用済燃料は、2025年頃逐次取り出され、外側が銅製、内側が鋳鉄製の二重構造のキャニスタに封入された後、フォルスマルクの使用済燃料最終処分場へ輸送して処分される予定である。図7に使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)の概要を示す。
4.6 深地層処分研究開発
 SKBは1970年代半ばから放射性廃棄物の最終処分について研究開発を実施してきている。1977年にはストリパ(Stripa)の花崗岩中の鉄鉱山跡に地下研究施設が作られた。1980年までは米国との協力によって研究プログラムが実施され、その後1980年から1992年にかけてOECD/NEAのもとで多国間協力に拡大された。花崗岩の特性調査や緩衝材として使用するベントナイトやトンネル埋め戻し材としての砂及びベントナイトのモックアップ試験、花崗岩中の地下水の水理学調査などが行われた。
 ストリパでの研究に続き、オスカーシャム自治体のエスポ島の地下460mに設置されたエスポ岩盤研究所(エスポHRL)で1995年より研究が行われている。エスポ岩盤研究所では、(1)母岩の調査手法の開発と試験、(2)岩盤特性に基づいた処分方法の開発と試験、(3)処分場の安全に関する科学的知見の収集、(4)処分場内で使用される技術に関する開発、試験及び実証などが行われている。この他に、岩盤の天然バリアとしての機能を把握するための地下水の挙動や水化学に関する調査などが行われている。国際的な共同研究も行われており、フランス、ドイツ、日本、カナダ、フィンランド、スイス、チェコなどが参加している。図8にエスポ岩盤研究所の概念図を示す。
4.7 キャニスタ研究所
 使用済燃料は、最終処分場に搬出される前に銅製のキャニスタに封入される。キャニスタ研究所は、使用済燃料のキャニスタ封入技術についての研究・開発を行う施設としてSKBによって1998年に設置された。キャニスタ研究所では、銅製キャニスタ本体への蓋の溶接及び溶接後の密閉性に関する検査技術の完成に焦点が当てられ、摩擦撹拌溶接装置、電子ビーム溶接装置、超音波試験装置などが設置されている。
 キャニスタ封入施設は、CLABと併設して建設されることになっており、SKBは2006年11月に建設許可を申請した。2015年に建設を開始し、最終処分場に合わせ2025年の操業開始を予定している。
4.8 放射性廃棄物の輸送
 SKBは、使用済燃料と低・中レベル廃棄物を輸送する輸送船m/s Sigynを1982年から運航している。m/s Sigynは、フォルスマルク及びリングハルス発電所から使用済燃料を輸送キャスクでCLABに、また各原子力発電所及びスタズビックからは低・中レベル放射性廃棄物を輸送コンテナでSFRに輸送している。
(前回更新:2001年3月)
<図/表>
表1 ウェスチングハウス・スウェーデン社の成型加工プラント能力
表1  ウェスチングハウス・スウェーデン社の成型加工プラント能力
表2 スウェーデンSandvik Steel社のジルコニウム管製造能力
表2  スウェーデンSandvik Steel社のジルコニウム管製造能力
表3 高レベル放射性廃棄物の地層処分対策の状況
表3  高レベル放射性廃棄物の地層処分対策の状況
表4 SKBの放射性廃棄物関係の主要施設
表4  SKBの放射性廃棄物関係の主要施設
図1 スウェーデンの主な放射性廃棄物関連組織
図1  スウェーデンの主な放射性廃棄物関連組織
図2 スウェーデンにおける放射性廃棄物及び使用済燃料の処理・処分概念図
図2  スウェーデンにおける放射性廃棄物及び使用済燃料の処理・処分概念図
図3 処分場のサイト選定の経緯
図3  処分場のサイト選定の経緯
図4 使用済燃料最終処分場の概念図
図4  使用済燃料最終処分場の概念図
図5 スウェーデンの主要な原子力関連施設
図5  スウェーデンの主要な原子力関連施設
図6 短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)
図6  短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)
図7 使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)
図7  使用済燃料中間貯蔵施設(CLAB)
図8 エスポ岩盤研究所の概念図
図8  エスポ岩盤研究所の概念図

<関連タイトル>
スウェーデンの原子力政策および計画(1987年まで) (14-05-04-01)
スウェーデンの原子力政策および計画(1988年以降) (14-05-04-02)
スウェーデンの原子力発電開発 (14-05-04-03)
スウェーデンの原子力開発体制 (14-05-04-04)
スウェーデンの電気事業および原子力産業 (14-05-04-06)
スウェーデンのPA動向 (14-05-04-07)

<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2008年版(2008年10月)、p.314-318
(2)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター、情報冊子「諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について」(2010年2月)
(3)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター、情報冊子「諸外国における放射性廃棄物関連の施設・サイトについて」(2010年3月)
(4)SKB,RD&D Programme 2007(September 2007)
(5)SKB,Fud-program 2010(September 2010)
(6)SKB,Plan 2008(December 2008)
(7)OECD Nuclear Energy Agency, Uranium 2007:Resources, Production and Demand
(8)Nuclear Engineering International社、World Nuclear Industry Handbook 2010
(9)スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)ホームページ
(10)World Nuclear Association, Nuclear Power in Sweden (Updated November 2010)
(11)IAEA, Country Nuclear Power Profiles(2010 Edition), SWEDEN (July 2010)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ