<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
フランスの原子力開発体制 (14-05-02-03)

<概要>
 フランスは米国に次ぐ世界第2位の原子力発電大国として、政府主導の強力な原子力発電開発体制を図ってきた。関連機関・企業は、ほとんど国有企業あるいはその子会社で、原子力庁(CEA、現原子力・代替エネルギー委員会)が研究開発を主導し、原子炉プラントの製造をフラマトム社が、原子炉燃料製造をコジェマ社(COGEMA)が担当してきた。フラマトム社はフランス電力公社EDF、現フランス電力株式会社)から国内原子炉プラントの発注を独占してきたが、1990年代以降の原子力開発計画需要の鈍化に伴い、合理化や多角化に努めるとともに、2001年3月にはドイツ・シーメンス社との合併など事業再編が行われた。
 2000年に入って本格化した世界規模の原子力再編の動きを背景に、フランスは国際戦略を視野にいれた原子炉メーカー、核燃料サイクル、さらに原子力部門以外のIT関連企業を含んだ大規模な原子力産業再編を計画し、持ち株会社アレバ社(AREVA)が誕生した。原子炉製造部門をアレバNP社が、原子燃料サイクル部門をアレバNC社が担当している。これに伴いCEAの研究開発部門の体制の見直しや安全規制部門の分離・強化が図られ、フランス大統領直轄の独立行政府として原子力安全機関(ASN)が誕生した。
<更新年月>
2017年01月   

<本文>
1. フランスの原子力行政・開発体制の概要
 フランスでは1973年の第一次石油危機を契機に、国営企業であるフランス電力公社(EDF、現フランス電力株式会社)により原子力の電源開発が急速に進められた。また、フランス原子力庁(CEA、現原子力・代替エネルギー委員会)の主導で加圧水型軽水炉(PWR)に一本化した上で標準化を進め、技術のフランス化を進めた経緯がある。現在もエコロジー・持続可能開発・エネルギー省(MEDDE)のエネルギー・気候変動総局(DGEC)の管轄のもと、政府主導による強力な開発体制が図られている(図1参照)。
 研究開発はCEAにより行われ、原子力産業の複合企業であるアレバ(AREVA)グループのうちAREVA NP社(旧、Framatome ANP社)が原子炉製造部門を、AREVA NC社(旧、COGEMA社)が原子燃料サイクル部門を担い、EDFが原子力発電所の運転に携わっている(図1参照)。なお、アレバ社は近年の原子力受注契約の低迷と欧州加圧水型原子炉(EPR)建設の遅延から財政難に陥り、2017年以降、PWR製造メーカーのAREVA NPと電気事業者のEDFによる新会社を設立する計画である。
 原子力に関わる議会に付属する組織として議会科学技術選択評価委員会(OPECST)があり、県議会に付属する組織として地域情報委員会(CLI)がある。また、産業大臣と環境大臣の諮問機関として、原子力安全・情報高等評議会(CSSIN)と原子力基本施設関連省庁間連絡委員会(CIINB)があるが、CSSINは2006年6月制定の「原子力安全透明化法」により、原子力の安全性に関する透明化及び情報にかかる高等評議会(HCTISN)と改称されている。そのほか、全ての放射性廃棄物を管理する放射性廃棄物管理機構(ANDRA)や原子力の安全規制を担当する原子力安全機関(ASN)がある。ASNは「原子力安全透明化法」により、原子力行政を行う省庁から完全に独立したEPIC(商工業的公施設法人、Etablissement public a caractere industriel et commercial)となっている。なお、CEAやANDRA、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)なども共にEPICとなっている。
2. 主な原子力行政機関
(1)国会科学技術選択評価委員会(OPECST:Office parlementaire d’Evaluation des choix scientifiques et technologiques)
 科学技術活動や関連政策の評価を行うために、上院下院共同で設置する議会内組織であり、議会に対する助言機関である。両院の国会議員36名で構成される委員会で、議会からの要請に基づいて評価のための調査活動を行い、報告書にまとめる活動を行う。
(2)原子力の安全性に関する透明化及び情報にかかる高等評議会(HCTISN)
 原子力安全や放射線防護分野における情報提供活動の効率向上につながる勧告を、各担当大臣に対して行う諮問機関である。一般公衆及びメディアに対して、原子力安全や放射線防護分野の情報提供も実施する。
(3)原子力基本施設関連省庁間連絡委員会(CIINB)
 各省庁、公共機関及び原子力安全分野の代表者が委員となり、原子力施設の建設許可、改造認可及び個別施設ごとの問題について担当大臣からの諮問に対応する関連省庁間の連絡調整機関である。
(4)地方情報委員会(CLI)
 原子力施設立地地域の住民代表、事業者その他様々なステークホルダー(stakeholder、直接・間接的な利害関係を有する者)が参加する組織であり、コミュニケーションの場として存在していたが、2006年に法的根拠が与えられ公的な制度の中に位置づけられている。
(5)原子力政策会議(Conseil de politique nucleaire)
 原子力政策の方針等の基本的重要課題について決定し、輸出業務、国際協力、産業・エネルギー政策、研究開発、安全保障、環境保護等について実施状況を監視・監督する役割を担う。大統領直属の会議で、首相及び関係閣僚、軍の参謀長、防衛・国家安全保障事務局長、CEA長官がメンバーである。
3. 研究開発体制
(1)原子力・代替エネルギー委員会(CEA)
 1945年に設立された原子力庁(CEA)は、現在、フランスの防衛・安全保障、原子力(核分裂と核融合)、産業技術の研究、物理科学・生命科学の基礎的研究など、幅広い研究開発を行う重要な存在となっている。地方自治体や大学、生命科学・医療分野のAVIESAN、エネルギー分野のANCRE、デジタル科学及び技術分野のALLISTENE、環境科学分野のALLENVI、人間・社会科学分野のATHENAの5つの研究連盟などと連携して、国の研究戦略を進める研究開発機関である。研究員を含め職員数は約16,000人、年間予算は約41億ユーロ、フランス国内に10ヵ所の研究センターを持つ(図2参照)。2009年12月から原子力・代替エネルギー委員会(CEA:The French Alternative Energies and Atomic Energy Commission)に名称を変更している。
(2)放射線防護・原子力安全研究所(IRSN:Institut de radioprotection et de surete nucleaire)
 2001年5月10日の政令により、原子力安全防護研究所(IPSN)と電離放射線防護局(OPRI)を統合し、EPICとして発足した原子力と放射線リスクについての専門機関。2002年並びに2007年に法令により、放射線防護、原子力安全、セキュリティ領域の教育・訓練、環境放射能監視と放射線作業従事者の被ばく線量管理、民生用及び軍事用原子力施設、放射性物質の輸送、処理、管理、一般公衆への情報の提供等の任務を行う。
(3)放射性廃棄物管理機関(ANDRA:Agence Nationale pour la Gestion des Dechets Radioactifs)
「放射性廃棄物管理研究に関する法律(91−1381)」に従い1992年12月30日の政令により、EPICとしてCEAから独立した。主な任務は、小規模放射性廃棄物発生者への援助、廃棄物の輸送及び処理、安全な条件下での廃棄物の監視及び処分、ラ・マンシュ低・中レベル放射性廃棄物処分場や、オーブ低・中レベル放射性廃棄物処分場、隣接する極低レベル放射性廃棄物処分場の管理、高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理に関する長期計画の策定、廃棄物パッケージの研究・天然バリア及び人エバリアの研究、地下環境の調査、国際協力等である。
4. 安全規制体制
 原子力発電所開発期から1980年頃まで、EDF及びFramatome等の原子力施設の安全管理はCEAの専門集団に委ねられていたが、その後産業省内に原子力施設安全局(DSIN)が創設され、民生原子力施設は専門検査官により直接監督されることになった。
 2000年以降、放射線防護の強化と規制・推進体制の分離を目的とした行政改革が実施され、2002年2月には、従来の原子力施設安全局(DSIN)に健康省管轄の電離放射線防護局(OPRI)の一部を合わせて、産業省、環境省及び厚生省の共同管轄下にある原子力安全・放射線防護総局(DGSNR)が発足した。地方レベルでは原子力安全・放射線防護本部(DSNR)と、原子力高圧設備(圧力容器)の査察及び安全審査を実施する産業省・研究省・環境省合同地方局(DRIRE)をあわせて原子力安全当局(ASN)と称した。さらに、チェルノブイリ事故やラ・アーグ再処理工場で発生した事故を教訓として、安全性の強化と透明性、法体制の再編が必要とされ、2007年1月にはこれらの組織を統合再編し、新たにフランス大統領直轄の独立行政府として原子力安全機関(ASN:Autorite de surete nucleaire)が設立された(図3参照)。図4にASNの組織図を示す。
 ASNは原子力安全規制機関の原子力安全・放射線防護総局(DGSNR)と全国11ヵ所の地方原子力安全局(DSNR)を統括する機関で、5人の合議体制で構成される。3人は大統領の任命、1人は下院議長、1人は上院議長によって任命され、任期は6年である。原子力基本施設(INB)の新設・廃止措置などに関する政令案、原子力安全規制に関する政令及び奨励案について政府から諮問を受けるほか、INBの操業許可の発給、原子力安全及び放射線防護に関する担当大臣の承認による規制上の決定、一般規則及び個別規程の遵守状況の監督、情報提供、緊急時の際の政府支援などを行う。また、原子力関連活動における事象・事故の調査を実施する。ASNの助言組織には原子炉、発電所、研究所、放射性廃棄物、輸送などの諮問委員会があり、支援組織には原子力安全防護研究所(IRSN)がある。安全規制活動は、議会レベルで議会科学技術選択評価局(OPECST)により監督される。
5. 原子力施設の管理の枠組み
 フランスでは、1961年の環境汚染及び臭気防止等に係る法令において、固定の原子力施設を「原子力基本施設(INB:Installations Nucleaires de Base)」と呼んでいる。同法令では、INBには次の3つの条件が課されている。
(1)何らかの事故等があった場合には、原子力活動を行う事業者が責任を負うこと
(2)原子力基本施設は申請によって設置されること
(3)監視のための検査官を導入し、規則に違反した場合には罰則を科す。
 2006年に制定された「原子力の透明性と安全性に関する法律(TSN法)」第28条では、核燃料を製錬、濃縮、製造、処理または貯蔵する施設、放射性廃棄物の処理、貯蔵または処分する施設、放射性物質または核分裂物質を格納する施設、粒子加速器を基本原子力施設(BNI)と定義しており、第29条でBNIの設置、変更、運転終了並びに廃止措置へ移行時に、ASNからの認可取得を義務づけている。また、運転者には第29条III項により、10年ごとに施設の「安全、公衆保健・衛生、自然環境の保護にもたらしうるリスク、悪影響」について評価を行う「定期安全レビュー(PSR)」を実施する義務が課されている。定期安全レビューは安全要件に関わる許可政令及びASN規制要件への適合性審査と、国内外の経験フィードバックに基づいた安全性の再評価の2つがある。ASNには安全を監督する義務があり、ASNと原子力安全担当大臣には重大なリスクがあると判断した場合、運転の中断を命じる権限が与えられている。ただし、フランスの原子力施設には運転期間を制限する法律上の規定はなく、会計上の減価償却期間である耐用年数と、設計寿命としての40年が存在するのみで、運転者が定期安全レビューとASNの技術要求をクリアした場合、以降10年間の運転継続が認められる。表1にASNによるBNIの技術的側面に関する規則、規格基準を、図5に許認可手続きフローを示す。
(前回更新:2009年11月)
<図/表>
表1 フランスのPWRに適用される基本安全規則(RFS)一覧
図1 フランスの原子力行政組織図
図2 フランス原子力・代替エネルギー委員会(CEA)の組織図
図3 フランスの原子力安全規制体制の再編
図4 原子力安全規制機関(ASN)の組織図
図5 フランスにおける原子力施設設置許可手続きフロー図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
外国における高レベル放射性廃棄物の処分の概要(1)−仏、英編− (05-01-03-07)
フランスにおける原子力発電所廃止措置計画 (05-02-03-04)
フランス原子力庁(CEA) (13-01-02-10)
フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN) (13-01-02-01)
フランスの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-05)
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)
フランスの原子力発電開発の状況 (14-05-02-02)
フランスの原子力安全規制体制 (14-05-02-04)
フランスの核燃料サイクル (14-05-02-05)
フランスの電気事業および原子力産業 (14-05-02-06)

<参考文献>
(1)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2009年版(2009年8月)、
p.540−545、原子力ポケットブック2015年版(2015年12月)、p.515−523
(2)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2008年版(2008年10月)、
p.140−143
(3)フランス大使館原子力部:Service Nucleaire Ambassade de France e Tokyo、
http://www.snaft.jp/site/index.php?option=com_content&view=article&id
=179&Itemid=101
(4)日本エネルギー法研究所:諸外国における原子力発電所の安全規制に係る
法制度−平成22・23年度原子力行政に係る法的問題研究班研究報告−、
2013年1月、http://www.jeli.gr.jp/report/jeli-R-127@2013_01_NuclearSafetyRegulation.pdf
(5)フランス原子力・代替エネルギー委員会(CEA):http://www.cea.fr/english/Pages
/cea/the-cea-a-key-player-in-technological-research.aspx、ANNUAL REPORT
2015、2016年6月、http://www.cea.fr/english/Documents/corporate-publications/
cea-annual-report-2015.pdf
(6)原子力安全委員会:原子力安全白書 平成17年度版(2006年4月)、http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3491124
(7)原子力安全機関(ASN):Improving nuclear safety and radiation protection、
http://www.french-nuclear-safety.fr/、ASN REPORT on the state of nuclear safety
and radiation protection in France in 2015、https://www.asn.fr/annual_report/
2015gb/
(8)原子力安全研究協会:平成27年度文部科学省委託事業「原子力平和利用確保
調査成果報告書」主要指定調査国(フランス)2016年3月、http://www.mext.go.jp/
component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/07/12/1364263_01.pdf、
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/
2016/07/12/1364263_02.pdf
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