<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
フランスの原子力発電開発の状況 (14-05-02-02)

<概要>
 天然資源に乏しいフランスは、1973年の第一次石油危機を契機に原子力開発を加速した。2017年1月末現在、運転中の原子力発電所は58基、6,313万kW、アメリカに次いで世界2位の座を占める。総発電電力量に占める原子力シェアも例年75%を越え、世界的にも第1位である。炉型は加圧水型軽水炉(PWR)に一本化された上、標準化が進んでいるため、発電コストは安く、余剰電力は欧州近隣各国に輸出している。
 2007年12月から、次世代炉と言われている欧州加圧水型原子炉EPR)の建設が、フラマンヴィル原子力発電所の3基目の原子炉として始まっている。フランスにおける原子炉の建設はシボー2号機(1991年に着工、2002年に営業運転開始)以来、およそ15年ぶりで、2019年の営業運転開始を目指している。フランス電力公社(EDF、現フランス電力株式会社)は2020年以降、設計寿命を迎える既存の90万kW級原子炉に対し、稼働期間の延長をしながら原子炉のリプレース(代替)を行う方針である。
<更新年月>
2017年01月   

<本文>
1. 原子力発電開発の現状
 2017年1月末時点、運転中の原子力発電所は58基、6,313万kW(ネット電気出力)に達する。原子力発電所の設備容量は、アメリカに次いで世界2位の座を占める。58基はすべてPWRである。現在、フラマンヴィル原子力発電所の3基目の原子炉として、2007年12月から、欧州加圧水型原子炉(EPR:European Pressure Reactor)175万kWの建設が始まっている。フランスにおける原子炉の建設はシボー2号機(1991年に着工、2002年に営業運転開始)以来、およそ15年ぶりで、2019年の営業運転開始を目指している。図1に原子力発電所の分布地図を、表1−1表1−2表1−3に発電所一覧を示す。
 フランス電力公社(EDF、現フランス電力株式会社)の送電部門であるRTEによると、2015年の総発電電力量は前年比0.9%増の5,681億kWhにのぼり、このうち原子力は前年比0.2%増の4,374億kWhを供給した。ちなみに水力は609億kWh、石油と石炭が合計で413億kWhであり、総発電電力量に占める原子力の割合は全体の77.0%に達している(図2参照)。正味電力輸出量は、前年より187億kWh増加して750.6億kWhとなった。フランスは日本同様に天然資源がほとんど存在せず、国内最後の炭坑は2004年に閉鎖、石油も輸入に頼っている。石油危機以降、原子力による石油代替エネルギーの開発を進め、1973年に24%であったエネルギー自給率は、1990年以降50%までに上昇した。図3にフランスのエネルギー需給動向を示す。
2. 加圧水型軽水炉(PWR)の開発
 フランスの加圧水型軽水炉(PWR)はすべて標準化されている。運転中の設備では、90万kW級はプレシリーズ、CP1及びCP2、また130万kW級はP4とP’4の炉型に標準化されている。最初の標準炉型である90万kW級のプレシリーズはフェッセンハイム1号機(1977年運転開始)を筆頭に合計6基、CP1シリーズはトリカスタン発電所(1980年運転開始)を皮切りに18基、また、CP2シリーズはサンローランB2(1983年運転開始)を初めとして合計10基建設された。130万kW級はP4シリーズがパリュエル1号機(1985年運転開始)後8基、続いてP’4シリーズはカットノン1号機(1987年運転開始)を筆頭に合計12基建設された。これらに続く炉型として、150万kW級PWRのN4シリーズが開発された。N4シリーズはフランス原子力産業界が総力を結集して開発した純国産炉で、単基出力は世界最大である。同シリーズは、ショーB1、2号機とシボー1、2号機の合計4基で、ショーB1、2号機を2000年に運転開始後、シボー1、2号機も2002年にそれぞれ営業運転を開始した。
 N4シリーズに続く第3世代PWRであるEPRは、フランスのフラマトムANP社(現、AREVA NP)とドイツのシーメンス社が1989年から共同研究・開発した出力160万kW級4ループ改良型加圧水炉で、フランスのN4型、ドイツのコンボイ(KONVOI)型PWRを基本に設計され、安全性、経済性の一層の向上が図られている。特に、シビアアクシデント発生頻度の低減に重点が置かれ、安全系の簡単化と強化、マンマシンインターフェースの改善、受動的安全系などが採用されている。また、運転サイクルの長期化(標準:18か月、最大:24か月)や燃料交換期間の短縮などにより設備利用率を向上させ(目標92%以上)、大型化(出力:175万kW)や高燃焼度化(60GWd/トン)、長寿命設計(60年)などにより、経済性を高める(ベースロード運転で18サンチーム/kWh程度)ことを目的として開発された。概念設計は1993年に、基本設計は1997年に完了した。
 EPRは2017年1月末現在、フィンランド及びフランスで各1基(オルキルオト3号機及びフラマンヴィル3号機)、中国で2基(台山1・2号機)が建設中である。フランス国内初のEPR実証炉フラマンヴィル3号機は2007年12月に建設を開始したが、2011年の福島第一原子力発電所事故後の安全対策の追加措置、品質管理問題(2015年4月原子力安全機関(ASN)が原子力圧力容器上蓋及びボトムヘッド等の鋼材の靱性値の低下を発表、2015年12月ASNはアレバ社の機械的特性の立証を承認した)などのトラブルから、建設の遅延が発生し、2019年の営業運転開始を目指している。
3. 高速増殖炉(FBR)の開発
 フランスのFBRは原子燃料のクローズドサイクルの一貫として開発されてきた。FBR実験炉ラプソディー(RAPSODIE)は1967年に開発を開始し、熱出力2.5万kWから4万kWに増強された後、1983年に廃止された。FBR原型炉であるフェニックス(PHENIX、25万kW)は、中間熱交換器の交換、耐震防護施設の改造、蒸気発生器の交換などの改良を加え、放射性廃棄物処分量の低減、毒性の低減試験など、マイナーアクチニド(MA)の照射試験等研究分野に利用され、1973年から2010年にかけて運転された。実証炉であるスーパーフェニックス(SUPERPHENIX、124万kW)は欧州協力枠組みの下で建設され、1985年に運転を開始したが、反原子力連立政権の発足で、1998年12月に廃止された。
 しかし、FBR第4世代技術実証炉の研究開発は継続されており、CEAマルクール研究所内に2025年頃の運転開始を目指してナトリウム冷却高速炉アストリッド(ASTRID: Advanced Sodium Technological Reactor for Industrial Demonstration、50万〜60万kW)の設計が行われている。安全性と信頼性を強化し、投資コストの低減化を図った原型炉で、2006年に制定された「放射性廃棄物等管理計画法(改正バタイユ法)」に基づいた長半減期放射性元素の分離・変換の産業化への活用を目的としている。
 一方、閉鎖されたスーパーフェニックスは、1999年12月から廃炉作業が始まっており、炉心からの燃料集合体(約650体)の取出し、1次系(炉心)及び2次系(蒸気発生器)からの冷却用ナトリウムの抜き取り、炉外の燃料貯蔵タンク内の残留ナトリウムの取出し、2次系配管の解体、炉心部の解体等を終了後、最終的には更地に戻す計画である。
 なお、フランスでは再処理が順調に進んでいることから、余剰プルトニウムMOX燃料として軽水炉でリサイクルしている。MOX燃料装荷は、1987年のサンローラン・デゾーB1(Saint Laurent B1)号機をはじめ、90万kW級標準炉で実施 されている(図4参照)。
4. 原子力発電の見通し
 フランスのEPRの建設は、2020年以降に設計寿命を迎える既存の90万kW級原子炉のリプレース(代替)の本格化に向けた十分な運転経験の蓄積と、欧州や中国、米国など海外輸出市場向けのモデルケースとして重要な位置付けにある。しかし、フラマンヴィル原子力発電所3号機(EPR)の建設が開始されるまでには約15年の隔たりがあり、その進捗状況は順調ではない。2005年7月に制定されたエネルギー政策法では将来にわたり原子力発電の継続を明確に打ち出し、2020年以降に全発電電力量に占める原子力シェアは現状を維持しつつ、年2基のペースで最終的には25基をリプレースする予定であった。また、財政面を考慮して既存原子力発電所の寿命を延長する方針であった。
 なお、フランスの原子力発電所の運転期間は法的に規定されておらず、2006年の「透明化・核物質安全に関する法律」第29条により、10年毎のASNによる総合的な安全検査(VD:visite decennale)に合格すれば10年間の運転延長が認められる。2009年7月、ASNはEDFへの書簡で90万kW級原子炉の40年間運転を認め、2015年3月には130万kW級PWRの40年間以上の運転を認めた。フランス会計院は2016年2月、2016年の年次報告書において、EDFがフランス国内の全原子炉(58基)の運転期間を延長するために必要な費用として、2030年までに1,000億ユーロ(1,130億ドル)が必要になるとの試算を明らかにしている。
 福島第一原子力事故後の2012年5月に政権に就いた社会党のF.オランド政権は、エネルギー政策として、「グリーン成長のためのエネルギー転換法案」を掲げ、再生可能エネルギー開発の促進、省エネの推進に加えて、電源多様化の観点から原子力発電比率を現在の75%から2025年までに50%へと低減させる内容を打ち出した。また、2015年7月22日、国民議会はエネルギー転換法案を可決したことで、原子力発電容量の上限は現在と同じレベルの6,320万kW(ネット電気出力)に設定されており、新しい原子炉を稼動させるためには古い原子炉を閉鎖することが必要となっている。
5. 原子力による地球温暖化対策等への貢献
 フランス政府は、2003年の11月に発表したエネルギー白書においてエネルギー政策の基本方針を示した。その1つとして、温室効果ガスの排出量を2050年までに現在の25%まで削減するとした。IEA統計によると2014年時点のCO2排出量は2億8,568万トンで、これは全世界の0.9%に相当し、1990年と比較すると17.3%減少している。
(前回更新:2009年1月)
<図/表>
表1−1 フランスの原子力発電所一覧(1/3)
表1−2 フランスの原子力発電所一覧(2/3)
表1−3 フランスの原子力発電所一覧(3/3)
図1 フランスの原子力発電所分布地図
図2 フランスの電源別発電電力量の推移
図3 フランスのエネルギー需給動向
図4 フランスのMOX燃料利用状況

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
フランスの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-05)
フランスにおける原子力発電所廃止措置計画 (05-02-03-04)
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)
フランスの原子力開発体制 (14-05-02-03)
フランスの核燃料サイクル (14-05-02-05)
フランスの電気事業および原子力産業 (14-05-02-06)
フランスのPA動向 (14-05-02-07)
高速増殖実証炉スーパーフェニックスをめぐる動き (14-05-02-08)
フランス社会党政権の原子力政策 (14-05-02-09)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2016年版(2016年4月)
(2)原子力年鑑編集委員会(編):原子力年鑑 2017、日刊工業新聞社(2016年10月)、フランス
(3)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2008年版(2008年10月)、p.111−152
(4)フランス電力公社(EDF):MOX Fuel in PWR EDF Experience(Sino−French Seminar on the Back End of the Nuclear Fuel Cycle)、2015年11月、http://china.areva.com/home/liblocal/docs/China%20Offer/2nd%20Back%20End%20Seminar%20in%20Beijing%202015/8_Frederic%20LAUGIER_En.pdf
(5)エネルギー一次資源局(DGEMP):Bilan energetique de la France pour 2015、2016年11月、http://www.statistiques.developpement-durable.gouv.fr/fileadmin/documents/Produits_editoriaux/Publications/Datalab/2016/datalab-bilan-energetique-de-la-france-pour-2015-novembre2016.pdf
(6)原子力安全研究協会:平成27年度文部科学省委託事業 原子力平和利用確保調査成果報告書 2−1.主要指定調査国(1/3)、2016年3月、http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/07/12/1364263_02.pdf
(7)国際エネルギー協会(IEA):CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION Highlights、2016年10月
(8)国際原子力機関(IAEA):発電炉情報システム(PRIS)、France、https://www.iaea.org/PRIS/CountryStatistics/CountryDetails.aspx?current=FR
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