<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)

<概要>
 エネルギー資源に乏しいフランスは、第一次石油危機(1973年)を契機に石油の輸入依存度を軽減させるため、国内資源の開発、省エネルギーの促進、供給資源の多角化を軸にエネルギー政策を実施してきた。特に、エネルギー自給率の上昇に向けて原子力開発に邁進し、米国に次ぐ世界第二位の原子力発電大国となった。2015年1月現在、6,588万kWの原子力発電設備を保有し、発電電力量の約73%を原子力が占めている。電力需要の伸びが鈍化しているのに対して、原子力発電所の建設が順調に進んだため、国内需要を上回る発電設備を持っており、一部は輸出に当てられている。フランスの発電電力量の電源構成は原子力と水力を合わせて発電電力量の90%を占め、原子力はフランスのエネルギーの自立と安定供給を促すとともに、地球温暖化の観点からも温室効果ガス排出削減に大きく貢献している。2012年5月、大統領選でオランド氏が大統領に就任した。同氏は原子力による発電比率を2025年に現状の75%から50%に削減し、再生可能エネルギーの導入の拡大を目指している。エネルギーの移行に関する法律が2015年にも成立する見通しである。
<更新年月>
2015年02月   

<本文>
1.原子力の位置付け
 フランスは日本同様、エネルギー資源に恵まれず、若干の水力資源は保有しているものの、化石燃料の埋蔵量は世界全体の約0.01%ときわめて乏しい。そのため、1973年の第一次石油危機以来、エネルギーの対外依存率の軽減を目標として、原子力開発は省エネルギーと並んで、エネルギー政策の根幹として精力的に進められてきた。その結果、2015年1月現在で58基、6,588万kWの原子力発電設備を有し、総発電電力量の約73.3%を原子力発電が占めて、アメリカに次ぐ世界第二位の原子力発電大国となっている(図1参照)。エネルギー自給率は1973年当時の24%から1990年以降では約50%にまで高まり持続し、原子力はエネルギーの自立と安定供給に大きく寄与している(表1参照)。また、フランスの総発電電力量の約90%が原子力と水力発電によるもので、温室効果ガス排出量の削減にも大きく貢献している。近年、電力消費の伸び率が鈍化しているため、発電設備は過剰気味でイタリア、ドイツ、スイスなどの近隣諸国への電力輸出が盛んに行われている(図2及び図3参照)。
2.エネルギー政策
2.1 従来のエネルギー政策
 フランスのエネルギー政策の基本目標には、1970年代以来大幅な変更はない。2005年7月に制定されたエネルギー政策指針法では、将来にわたって一貫したエネルギー政策を構築するため、次の4つの目標が定められている。
(1)エネルギー自給及び供給保障に資すること(国内生産の推進により、エネルギー価格変動の影響を抑える、電力・ガス・石油の供給保障)、
(2)安価な競争力のあるエネルギー価格を保証すること(フランス企業の競争力確保と国内の雇用を確保)、
(3)健康維持及び環境保護(地球温暖化に対する取組み)、
(4)全国民にエネルギー供給を享受させること(社会的連帯の保証)、である。
 その具体的な目標として、1)2050年までの温室効果ガス75%削減、2)最終的なエネルギー効率を2015年まで毎年平均2%以上、2015年から2030年まで毎年平均2.5%改善する、3)適切なエネルギーミックスを実現するため、2010年までに、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を10%に高める、4)2015年を目処にEPRの商業運転のための技術的検証を完了させ、2020年に向けた原子力発電オプションを維持すること、等があげられた。
2.2 サルコジ社会党政権下のエネルギー政策
 2007年には「環境グルネル会議」が開催され、EUのエネルギー政策(2001/77/EC)を踏まえ、フランスも再生可能エネルギー開発に注力する方針を示した。この「環境グルネル会議」を受けて具体的な目標を盛り込んだ「環境グルネル実施計画法(グルネルI法)」が2009年に、また「グルネルI法」で示された目標を具体的な施策として盛り込んだ「環境に対する国内取組法(グルネルII法)」が2010年に制定され、省エネルギー政策、再生可能エネルギー開発計画が進められた。
 具体的な数値目標として2009年「環境グルネル実施計画法」では、1)2020年には最終エネルギー消費量の最低23%を再生可能エネルギーで賄うために、エネルギー生産量を現在の石油換算2,000万トンから2020年には石油換算3,700万トンに引き上げること、2)発電では2020年までに再生可能エネルギーのシェアを27%まで引き上げていくことが計画された。しかし、エネルギー政策の中心には原子力発電を据えており、2011年福島第一原子力発電所事故後に各国で起きた原子力見直しの議論に対しても、路線に変更はなく、安全基準を強化するべきとの見解を示した。原子力発電は、放射能漏れ事故などのリスクがつきまとうが、フランスの家庭用電気料金は欧州諸国の平均値に比べ10%割安となっていること、原子力発電は二酸化炭素排出量が少なく、その結果、フランスの二酸化炭素排出量は、ドイツよりも40%、イギリスよりも35%少なく抑えられていることが強調された。
2.3 オランド社会党政権下のエネルギー政策
 福島第一原発事故後、オランド・社会党政権が2012年5月に発足した。エネルギー政策として「エネルギー移行」を掲げ、前政権からの再生可能エネルギー開発、省エネルギー推進に加えて、電源多様化の観点から原子力発電比率を現在の75%から2025年には50%に低減すること、1977年に運転を開始したフランスで最も古いフェッセンハイム原子力発電所(Fessenheim、PWR-CP0、出力92万kW)の2016年閉鎖などを打ち出した。
 同政権は、これらの政策を法制化するに先立ち、国民の意見を広く聴取するため、2012年11月〜2013年7月まで「全国討論会」を開催し、同7月には同討論会の結果を総括した報告書を発表した。内容は多岐にわたっているが、1)総発電電力量に占める原子力発電比率を現在の75%から2025年には50%に低減する、2)省エネルギーでは2050年に2012年比で最終エネルギー消費量を50%削減すること、3)温室効果ガス排出量を2030年に1990年比で40%削減し、2050年には75%削減すること、4)再生可能エネルギー開発については、発電比率を発電で40%まで引き上げること、5)化石燃料消費量を2030年までに30%削減すること、が提案された。この報告を受けて、政府は2014年8月、「エネルギー移行法案」を策定し、議会に上程した。同法案は2014年10月に、フランス国民議会(下院)で可決され、現在上院で審議中であり、2015年上期の制定が見込まれている。なお、2007年12月に着工した発電炉のフラマンビル3号機については建設続行を示した。
3.原子力政策政策
3.1 原子力政策推進体制
 フランスでは、従来の原子力推進エネルギー政策を総合的かつ効率的に推進するため、電力事業ではフランス電力(Electricite de France SA、以下、EDF)、ガス事業ではGDFスエズ・エスアー(GDF SUEZ SA、以下、GDFスエズ)、原子力事業ではAreva SA、石油・ガス事業ではTotal SA、など、各事業を1社に集中させることで世界レベルのエネルギー企業を形成してきた。一方、EU加盟国であるフランスは、1996年の「EU電力指令」、2003年の「EU改正電力指令」に基づき国内のエネルギー市場の自由化が求められ、2000年には「電力自由化法」が制定された。また、企業の民営化のため、2004年には「EDF・GDF株式会社法」が、2006年には「エネルギー部門法」が制定され、段階的な自由化が実施されてきた。
 なお、電力の自由化に関しては2007年7月からは家庭用需要家も含めた全面自由化が実施されているが、EDF及びGDFスエズなどの企業は、依然として政府を最大の株主としており、フランスのエネルギー政策上重要な位置づけにある。50年以上にわたって電力の発送配電部門を独占してきたEDFは、垂直統合型事業者(VIU)体制は維持するものの、発電、送電、配電、その他の事業別に会計分離がなされ、2000年7月にはEDF内に送電系統運用部門(RTE)が、2008年1月には配電部門がeRDF社として子会社化されている。表2に原子力に関連するエネルギー政策法令を示す。
 なお、エネルギー政策全般は、エコロジー・持続可能開発・エネルギー省(MEDDE)の中のエネルギー・気候総局(DGEC)が管轄しているが、原子力はフランス原子力庁(CEA)が主導している。フランスは従来、CEAのもとに民間企業のフラマトム(Framatome)社が原子炉プラントの製造を担当し、CEA子会社であるコジェマ(COGEMA)社が核燃料製造を担当する分業体制で、フラマトム社はフランス電力(EDF、旧フランス電力公社)から独占的に原子炉プラントの建設を受注してきた。1980年代以降、国内プラント需要低迷からフラマトム社は同じく危機を迎えていたドイツ・シーメンス社の原子力部門を買収し、2001年にフラマトムANP(Framatome ANP)を設立、また、コジェマとの共同持株会社AREVA SA社を設立し、企業の合理化・効率化を図った。原子力安全規制に関しては2006年に「原子力の透明性と安全性に関する法律(TSN法)」が制定され、独立機関として原子力安全規制当局(ASN)が設立、地元住民への情報公開のため、地域情報委員会(CLI)が設置されている。
3.2 原子力政策の特徴
 フランスの原子力政策推進の第一の特徴は、EDFが国営企業であったため、政府の意向のもと電源計画が策定され、政府主導のもと原子力開発、原子力産業の保護・育成が図られてきたことである。第二の特徴は、原子力産業が国内の需要を満たすだけでなく、国外市場も考慮している点である。第三の特徴は原子力産業の資本・技術のフランス化を急速に進めてきた点である。1981年に米Westinghouse社がFramatom社から資本を引き上げたことを契機に原子力庁を中心にPWR技術の国産化に努めてきた。燃料成型加工技術でも国産化は完了したが、1970年代初めに建設された原子炉燃料工場に限り、Westinghouse社のライセンスに基づいて製造されている。また、高速増殖炉、濃縮等については、フランス独自の技術力をバックに、他の欧州諸国の資本参加を募り、リスク分散を図ってきた。
3.3 原子力計画の変遷
 1973年の第一次石油危機以降、フランスの原子力開発計画は加速化され、年間数基の割で原子力発電プラントが発注された。これらのプラントは1970年代終わりから順次運転を開始し、フランスは原子力発電プラントの建設において先進国の中で最も目覚ましい成功を収めてきた。しかし、電力需要想定の下方修正に伴い、原子力開発計画は1980年代に入り、幾度も見直しが行われ、原子力の発注規模はその都度削減されてきた。1993年にシボー2号機(PWR)が発注されて以来、新規発注は停滞し、ル・カルネ地点での建設計画は、1997年6月に当時の左翼政権により中止が決定された。図4図5に現在の原子力施設立地点を示す。
 なお、2002年以降に保守政権が誕生し、エネルギー供給安全保障確保のため、原子力発電の再開発が進められている。まず、2030年〜2040年代の次世代型炉の実用化を目標に、2020年までに原型炉の運転開始を目指すほか、第3世代の加圧水型原子炉である欧州加圧水型炉(Europrean Pressure Reactor、EPR)が開発された。EPRはフランスのフラマトムANP社とドイツのシーメンス社が1989年から共同研究・開発した出力160万kW級4ループ改良型加圧水炉で、フランスのN4型、ドイツのコンボイ型を基本に設計され、従来型PWRに比べて10倍安全余裕度が高く、10%コストが安く、放射性廃棄物の排出量を15%〜30%削減するといわれている。初号機は2005年8月からフィンランドのオルキルオト3号機として、フランスではフラマンビル3号機として2007年12月から建設が進められている。2015年1月現在、フランス国内で、58基、合計出力6,588万kWの原子炉が運転中で、このうち34基・出力3,077万kWは、第一次石油危機後の1974年に原子力発電利用拡大の政府決定に基づいて着工され、1977年から1988年にかけて運転を始めた90万kW級の発電プラントである。全ての90万kW級プラントはすでに10年間の運転期間を延長しているが、2015年以降相次いで設計寿命40年を迎え、EPRへの移行を予定している。
4.研究開発
(1)軽水炉
 2007年12月から次世代型軽水炉である欧州加圧水型炉(EPR)・フラマンビル3号機の建設が始まっている。EPRの詳細はATOMICAデータ「欧州加圧水型炉(EPR)<02-08-03-05>」を参照。
(2)高速炉
 フランスは早くから高速炉の開発に着手し、1974年には原型炉フェニックス(FBR、25万kW)が運転を開始した。1985年9月にはフランス、西独、イタリア、ベルギー、オランダによる世界初の商業規模実証炉・スーパーフェニックス(SPX、124万kW)が初臨界し、1986年12月末には全出力運転を達成した。その後燃料漏れや冷却システムの故障が相次ぎ、1990年7月に一旦稼働を停止した。1994年8月に放射性廃棄物燃焼実験炉として運転を再開したが、最終的には1998年12月に運転を終了し、廃止措置に移行している。SPXで行われる計画であった長寿命核種の消滅処理核変換処理)などの研究は、フェニックスに引き継がれて実施された。フェニックスは2010年2月に運転を終了し、2012年から廃止措置に移行しているが、フランスでは新たに高速増殖炉ASTRIDの開発が進められている。詳しくはATOMICAデータ「フランスの高速増殖炉研究開発 <03-01-05-05>」を参照。
(3)核燃料リサイクル
 詳細はATOMICAデータ「フランスの核燃料リサイクル <14-05-02-05>」を参照。
 なお、高レベル・長寿命放射性廃棄物(HAVL)の処理処分に関しては、1991年12月に制定された「長寿命放射性廃棄物管理についての研究に関する法律(バタイユ法)」の規定に従い、2006年6月、「放射性物質及び放射性廃棄物の永続的管理に関する法律」が制定されている。HAVLに関する研究方針、海外起源廃棄物の国内貯蔵禁止、処分場に関する地方自治体への交付金の拠出などが規定された。
(4)核融合
 核融合ではCEAはTORE-SUPRA(トカマク試験装置)などによって各研究所で各種の研究を進めるとともに、欧州原子力共同体(ユーラトム)を通じて、JET(トカマク型、英国カラムに1983年に運転開始)やITER(国際熱核融合実験炉)計画などの国際的な研究開発に参加している。2006年5月には中国、欧州連合、インド、日本、大韓民国、ロシア、米国の7か国の協議の結果、南フランスのカダラッシュがITER建設・運転サイトと決定された。詳しくはATOMICAデータ「国際熱核融合実験炉(ITER)の概要 <07-05-03-01>」を参照。
<図/表>
表1 フランスのエネルギー生産・消費の推移
表2 原子力に関連するエネルギー政策法令
図1 フランスにおける一次エネルギー生産量の推移
図2 フランスの電源別発電量と輸出入量の推移
図3 フランスを中心とする各国の電力の輸出入状況
図4 フランスの原子力発電所立地点
図5 フランスの核燃料サイクル関連施設サイト

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<関連タイトル>
フランスの原子力発電開発の状況 (14-05-02-02)
フランスの原子力開発体制 (14-05-02-03)
フランスの核燃料サイクル (14-05-02-05)
フランス社会党政権の原子力政策 (14-05-02-09)
フランスの電気事業および原子力産業 (14-05-02-06)
高速増殖炉スーパーフェニックスの即時閉鎖(1998年12月30日) (14-05-02-12)
フランスにおける原子力発電所の寿命延長 (14-05-02-13)

<参考文献>
(1)科学技術庁:1989年度科学技術調査資料委託調査資料「海外主要国の原子力開発に関
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2007年版(2006年10月)、フランス
(3)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2014年版(2014年4月)
(4)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第1編 追補版 2006年(2006年12月)、
http://www.jepic.or.jp/data/ele/pdf/ele04.pdf
(5)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック 2009年版(2009年8月)
(6)経済・財政・雇用省エネルギー・資源担当局(DGEMP).:Bilan energetique de la France pour 2013(2014年7月)、
http://www.statistiques.developpement-durable.gouv.fr/fileadmin/documents/
Produits_editoriaux/Publications/References/2014/references-bilan-energie2013-ed-2014-t.pdf
(7)三菱UFJリサーチ&コンサルティング:平成25年度会計検査院委託業務報告書 欧米主要国における原子力発電等に対する国の関与と会計検査に関する調査研究(2014年2月)、フランス
(8)European Network of Transmission System Operators for Electricity (entsoe):Factsheet 2013(2014年4月)、
https://www.entsoe.eu/Documents/Publications/ENTSO-E%20general%20publications/2013_ENTSO-E_Statistical_Factsheet_Updated_19_May_2014_.pdf
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