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<概要>
 カナダの電気事業は、州営、私営、市町村営、自家発電業者等の形態が存在する。中でも州営電力会社は圧倒的に規模が大きく、原子力発電所は全て州営に属している。電力市場自由化の流れの中、オンタリオ州では州営電力会社オンタリオ・ハイドロ(OH)の分割・民営化が行われ、原子力発電部門はオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)が引き継いだ。OPG社はさらに発電市場の開放を求められ、2001年5月に英国のブリティッシュ・エナジー(BE)にブルース原子力発電所A/Bをリース契約した。その後、BEは撤退、現在コンソーシアムからなるブルース・パワー(BP)が所有する。
 カナダでは自国の豊富なウランを背景にCANDU炉と呼ばれるカナダ型重水炉が開発され、カナダ原子力公社が国内外に原子炉を供給している。
 カナダはカザフスタンに次ぐウラン生産国であり、カメコ社(Cameco)とフランスのAREVA NC社が国内の生産の大半を担っている。
<更新年月>
2015年01月   

<本文>
1.電気事業
 カナダの電気事業は基本的に州単位で組織・運営される大手州営電気事業者の他、垂直統合型の私営事業者、地方自治体営の電気事業者、非電気事業者(自家発)と呼ばれる小規模発電事業者等400社近い電力会社が存在する。表1に主要な電気事業者である州営9社、私営8社、市町村営と準州営それぞれ2社を示す。2010年の電気事業者別発電設備容量の構成は、公営(州及び地方自治体)が72%、私営が21%、自家発が7%となっている。
 州営電気事業者の多くは発送配電一貫経営で運営されているが、近年、欧米における電力自由化の流れの中で、大規模な州営電気事業者は発送配電を分割する事業部門制を取り入れている。これにより、ニューブランズウィック、ケベック、オンタリオ、マニトバ、サスカチュワン、アルバータ、ブリティッシュ・コロンビア州など米国と隣接する各州では、送電線を開放して、米国間との電力の輸出入を積極的に行っている(図1参照)。なお、2003年8月、米国オハイオ州北部で発生した送電事故によりカナダ五大湖周辺を含む広域で電力供給が不能となったことから、送電網の整備が見直されている(詳細はATOMICAデータ「北米電力システム大停電(01-07-02-15)」参照のこと)。また、小規模電気事業者の大半はオンタリオ州に集中し、大部分は配電事業者で発電設備を持たず、州内の電気事業者から電気を購入し、小売供給を行っている。また、電力の規制緩和を受けて、アルバータ州やオンタリオ州では独立系発電事業者(IPP:Independent Power Producers)も進出している。
 2013年における販売電力量は5,110億kWhであり、ケベック州とオンタリオ州が電力の2大消費地として、両州だけで販売電力量の6割を占める。2013年の国内発電電力量(送電端)は6,113億kWh、電源別には水力発電が63%で最も高く、火力21%、原子力15%となっている。2011年の総発電設備容量は1億3,054万kW、電源構成は水力58%、火力29%、原子力10%、その他再生可能エネルギー(風力・潮力)3%であった。設備容量の割合はケベック州が最大で32%、オンタリオ州28%、ブリティッシュコロンビア州12%、アルバータ州10%と続き、これら4州で全国発電設備容量の8割を占める。電力需給状況や州間の電力コストの差を利用した「州際電力取引」も国際電力取引同様に行われている。表2に燃料別・州別の発電電力量を示す。
 電力事業の規制権限は州政府にあり、各州政府あるいは州政府から独立した公益事業委員会が規制にあたっている。一方、連邦政府の権限は、国営または州際送電線の建設・運用、原子力発電の開発に限定されている。1959年に設置された国家エネルギー委員会(NEB:National Energy Board)は石油・天然ガス・電力に関する国際州際規制を行っている。また、2000年に独立組織となったカナダ原子力安全委員会(CNSC:Canadian Nuclear Safety Commission、旧原子力管理委員会(AECB))は原子力発電所及び核物質の利用に関する規制を行う。
2.カナダの原子力発電運転会社
 2015年1月現在、カナダでは19基の発電用原子炉が運転中で、合計グロス電気出力1,355.3万kW、2013年の原子力発電による発電電力量は943億kWh、総発電電力量に占める原子力発電の割合は16%である。その他、2基150万kWが計画中で、3基380万kWが計画準備段階にある(表3参照)。原子炉は全てカナダ型重水炉CANDUが採用され、ニューブラウンズウィック州のポイント・ルプロー発電所(POINT LEPREAU、70.5万kW)を除いて、オンタリオ州に立地している(図2参照)。なお、1970年代から運転してきたピッカリングA(PlCKERlNG)発電所の4基とブルースA(BRUCE)発電所の4基は、1995年〜1998年にかけて、設備利用率が低下し経済性が失われたことから、全て運転休止状態となったが、改修工事が行われ、2003年以降次々と運転を再開した。2015年1月時点で8基中6基が運転を行っている。
 原子力立地州であるオンタリオ州では、州営のオンタリオ・ハイドロ(OH)社が同州内の電気事業の大半を一手に担ってきた。しかし、1990年代後半からOH社の経営が次第に悪化したことに加え、1996年ころから州内電気事業の再編の機運が高まり、州内電気事業の完全自由化をめざした「オンタリオ州エネルギー競争法」が1999年4月1日に発効された。OH社は発電部門を引き継いだオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG:Ontario Power Generation)社と、送配電部門を引き継いだオンタリオ・ハイドロ・サービス(OHSC)社、旧OH社の負債の清算事業体であるオンタリオ・ハイドロ・ファイナンシャル(DEBTCO)社、及びオンタリオ州の電力取引の調整を行う第三者機関である独立市場機関(IMO)の4つに分割された。OPG社は旧OH社の3カ所の原子力発電所を含む全ての発電設備を引き継ぎ、傘下に水力・火力発電部門であるオンタリオ・ハイドロ・ジェネレーティング(GENCO)社と原子力発電部門であるオンタリオ・ハイドロ・ニュークリア(OHN)社の2つの子会社を有した。なお、オンタリオ・ハイドロ・サービス社は2000年5月に持株会社化され、ハイドロ・ワン(Hydro One)社と改称された。ハイドロ・ワン社は4つの子会社で構成され、ハイドロ・ワン・ネットワーク社が送配電事業を、ハイドロ・ワン・テレコム社が電気通信事業を、ハイドロ・ワン・ブランプトン社がブランプトン市に特化した配電サービス事業を行っているほか、ハイドロ・ワン・リモート・コミュニティ社が送電系統に接続されていない州北部の過疎地域への発電・配電サービスを行っている。
 なお、エネルギー競争法はOPG社に対して、OH社より引き継いだ発電設備を、第一段階として2000年11月の市場開放後42カ月以内に他の事業者に最低400万kWを委譲し、さらに10年以内に市場占有率をオンタリオ州の全需要量の35%以下に減らすことを要求した。これに対して、OPG社は2001年5月、ブルース原子力発電所A・B(8基、合計出力697.6kW)を、英国のブリティッシュ・エナジー(BE)社が設立したブルース・パワー・パートナーシップ(BPP)社にリース契約した。しかし、BE社は経営危機に直面して2003年2月にカナダから完全撤退したため、コンソーシアムからなるブルース・パワー(BRUCE POWER、BP)社を発足させた。現在の出資比率はカメコ(Cameco):31.6%、TransCanada Corporation:31.6%とBPC Generation Infrastructure Trust:31.6%のカナダ3社とブルース発電所の2労組(Power Worker’s UnionとSociety of Energy Professionals):各2.6%である。当時、ブルース発電所はA1〜4号機の4基が休止状態にあったが、BP社は早急に改修工事に着手し、カナダ原子力安全委員会(CNSC)から運転再開を認める改定認可が2003年4月に発給された。BP社への出資を決めたCameco社により燃料が供給され、まず、ブルースA3号機が2003年10月、A4号機が2004年1月に運転を再開し、現在は全ての原子炉が運転中である。
 ニューブランズウィック州では、発送電を一貫して行う州営のニューブランズウィック・パワー(NBパワー)社が州内の電力需要の大半を賄い、主力の火力発電に加え、ポイント・ルプロー原子力発電所1基を運転している。同発電所は初のCANDU6運転期間延長プログラムとして大規模なバックフィットを実施し、2012年10月から運転を再開した。CNSCから2017年6月までの5年間の付与期間の運転認可が与えられている。
 また、ケベック州では、2012年12月末、ハイドロ・ケベック(HQ)社が所有するジェンティー2号炉(CANDU6、出力67.5MW)を運転寿命延長改修工事が経済性に見合わないとして閉鎖している。HQ社は発送電一貫経営の州営電気事業者で、州内の電力市場をほぼ独占している。主力電源は豊富な水力発電であり、隣接州や米国にも電力を供給している。
3.カナダのウラン生産会社
 カナダはカザフスタンに次ぐウラン生産国であり、2013年のウラン生産量は9,332トンUで、世界全体のウラン生産量の15.6%を占めている。確認資源量は493,900トンUで、オーストラリア、カザフスタン、ロシアに次いで第4位である。カナダの操業中の鉱山はマッカーサーリバー(McArthur River)、ラビットレイク(Rabbit Lake)、マクリーンレイク(McClean Lake)の3か所で、全てサスカチュワン州北部のアサバスカ(Athabasca)盆地にある。カナダにおけるウラン生産センターを表4に、その位置図を図3に示す。
 1990年代の主要なウラン開発・生産業者は、カメコ社、コジェマ・リソーシス社(CRI: COGEMA Resources,Inc、現、AREVA NC社)、ウラネーズ調査鉱業社(Uranerz)であり、この3社でサスカチュワン州のウラン鉱床の採掘所有権のほとんどを分け合っていた。しかし、カメコ社が1998年8月にウラネーズ調査鉱業社を親会社の独UEB社から買収したことにより、現在はカメコ社とAREVA NC社の2社体制に移行している。
 カメコ社は、世界全体のウラン需要の約20%を供給するウラン開発・生産業者である。1988年にサスカチュワン鉱山開発会社(サスカチュワン州営)とエルドラド・ニュクリア社(国営)の合併により、ウラン採鉱及び酸化ウランの製錬を行う事業者として設立した。当初はサスカチュワン州政府と連邦政府の所有であったが、1993年からは一部株式が一般株主に公開され、2002年2月までに完全民営化されている。また1996年から1997年にかけては、民間へ向けた合理化・経営効率化の一環として、ウラン鉱山の買収・提携が積極的に行われ、1999年にはキーレイクやマッカーサーリバーの権益の一部がAREVA NC社に譲渡された。カメコ社は、ラビットレイク生産センターの全権益を所有しているほか、ウランの生産拠点であるキーレイク生産センター、1999年に生産を開始した世界最大級のウラン埋蔵量を誇るマッカーサーリバー生産センター等のオペレータとなっている。
 なお、ウラン鉱山で生産されたU3O8はカメコ社のブラインド・リバー(Blind River)でUO3に生成された後、オンタリオ州にあるポート・ホープ(Port Hope)へ運ばれ、80%はUF6に転換され国外へ、20%はCANDU炉燃料としてUO2に転換される。カメコ社は2004年からカザフスタンでウラン探査を行うなど、海外でも積極的な活動を展開している。また、カナダに本社を置くウラン生産会社ウラニウム・ワン(Uranium One)社は、2013年1月にロシア国営アトムレドメトゾロト(ARMZ)により買収され、カザフスタンを中心として、南アフリカ共和国、オーストラリア、米国で事業展開している。
(前回更新:2005年5月)
<図/表>
表1 カナダの主要電気事業者
表1  カナダの主要電気事業者
表2 カナダの燃料別・州別発電電力量(2013年末現在)
表2  カナダの燃料別・州別発電電力量(2013年末現在)
表3 カナダの原子力発電所の概要
表3  カナダの原子力発電所の概要
表4 カナダのウラン生産センター
表4  カナダのウラン生産センター
図1 カナダ・米国間の国際電力取引状況
図1  カナダ・米国間の国際電力取引状況
図2 カナダの原子力発電所分布地図
図2  カナダの原子力発電所分布地図
図3 カナダのウラン生産センター位置図
図3  カナダのウラン生産センター位置図

<関連タイトル>
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)
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カナダの放射性廃棄物管理 (14-04-02-07)
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<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2014年版(2014年4月)
(2)(一社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2014年版(2013年10月)、カナダ
(3)OECD/NEA,IAEA:Uranium 2014: Resources,Production and Demand(2015)、カナダ
(4)(一社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 上巻 2014年版(2014年3月)、カナダ
(5)世界原子力協会(WNA):カナダ、http://www.world-nuclear.org/info/Country-Profiles/Countries-A-F/Canada--Uranium/
(6)カナダ電気協会(CEA):CANADA’S ELECTRICITY INDUSTRY、2012年、

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