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<概要>
 ブッシュ大統領は2003年1月28日一般教書の演説で、アメリカはクリーンな水素燃料自動車の開発で世界をリードすると宣言した。また、2月6日の国立建築博物館で、エネルギー計画に触れて、今年はエネルギー計画の議会通過に努力するつもりである。この計画は節約を奨励し、環境に優しい燃料生産を増やし、配電システムを近代化し、経済的な安全確保と国の安全に必要な計画であるといっている。この中心にあるのが、幾つかの革新的な技術—水素燃料技術はその一つ—である。水素燃料イニシアティブは、燃料電池車と発電用に水素を生産し、貯蔵し、かつ配給するのに必要な技術及びインフラストラクチャーを開発するための5カ年計画で、既にあるFreedomCARイニシアティブと組み合わせて、進めるものである。今日生まれる子供が大人になってはじめて運転する車は、燃料電池で動力を供給されるであろう。
<更新年月>
2003年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.エネルギー計画に関するブッシュ大統領の論評
 ブッシュ大統領は2003年1月28日一般教書のなかで、「今晩、私は12億ドルの研究費を計上し、アメリカがクリーンな水素燃料自動車の開発で世界をリードするようにした」と宣言した。
 大統領は2月6日の国立建築博物館で、エネルギー計画に触れて、以下のように述べた。
「昨年、エネルギー計画を提出したが多くの討論、議論があって、議会を通過しなかった。今年は通過すると期待し、そのために努力するつもりである。それは、節約を奨励する計画であり、環境に優しい燃料生産を増やす計画であり、配電システムを近代化する計画であり、経済的な安全確保に必要な計画であり、国の安全に必要な計画である。今年は、この議案にサインしたい。今、われわれは、過去の環境問題の討論、規制と訴訟を中心とした議論を越えて動くことができる。革新的な技術—水素燃料技術はその一つをあらわすが—によって越えることができる。もしあなた方が環境に関心があり、アメリカの人々のために正しいことをやることに関心があり、騒音と高い請求書以外に何ももたらさなかった闘争に飽きているならば、水素燃料電池(図1)を21世紀に進む道として推進しようではありませんか。(中略)水素燃料イニシアティブ(Hydrogen Fuel Initiative)は、基本的な違いを作ることができる。
 この演説の終わりに、「電気と水素を太陽から作る。すなわち核融合を利用する。このためにITER計画に参加する」と述べた。
2.水素燃料イニシアティブに関連したデータ
 ブッシュ大統領は、一般教書において、汚染または温室効果ガスなしで車、トラック、家庭及び事業にエネルギーを供給する商用の現実的な水素燃料電池の技術を開発することによって、アメリカの増大する海外石油への依存を逆転させようという、12億ドルの水素燃料イニシアティブを発表した。
 水素燃料イニシアティブでは、燃料電池車と発電用に水素を生産し、貯蔵し、配給する技術とインフラストラクチャーを開発するための5カ年計画に7億2000万ドルの新しい資金提供をする。
 FreedomCAR(後述)と組み合わせて、ブッシュ大統領は、水素燃料電池、水素産業基盤及び先進的自動車技術を開発するために2004年から5年にわたって合計17億ドルを提案している。
 大統領の水素燃料イニシアティブの下では、今日生まれる子供が将来、大人になって最初に運転する車は、燃料電池で動力を供給されるであろう。
 水素燃料イニシアティブは、大統領の—安全で容易に入手可能な水素で動く燃料電池車の大量生産に必要なテクノロジーを開発するという—既存のFreedomCARイニシアティブを補足するものである。
 民間部門との協力を通して、FreedomCAR及び燃料イニシアティブは、2020年までに、多くのアメリカ人が実際的で経済的な点からクリーンな水素燃料電池車を選択できるようにする。
 空気をきれいにして、温室効果ガス排出を減らすのに役立つ一方、輸入される石油の需要をかなり減らすことによってアメリカのエネルギー安全保障を劇的に改善する。
3.大統領の措置の背景
(1) 燃料電池は実証された技術である。
 アメリカの宇宙飛行士は1960年代から発電に燃料電池を使った。しかし、それを経済的に、車、トラック、家庭またはビジネスに使用するためには、もっと多くの改善努力が必要である。
 水素が、輸送と他の用途のクリーンな国産のエネルギーとなるように、これらのテクノロジーの速い商業化を奨励するための追加の研究開発が必要である。
(2) FreedomCAR及び燃料イニシアティブは、重要な技術的かつ価格の障害を克服するものである。
・水素のコストを下げること:水素は、生産するのに(その最も手ごろな天然ガスから作り出されるとき)ガソリンの4倍くらいコストがかかる。水素燃料イニシアティブは、2010年までに燃料電池車を従来のガソリン車と価格競争し得るよう、十分そのコストを下げようとするもので、また、水素を再生可能資源、原子力エネルギー(図2)、石炭からも作り出す方法を進展させることである。
・効果的な水素貯蔵設備をつくること:現在の水素貯蔵設備は、消費者の要求に応じた車の広範囲の用途には不適当で、新技術が必要である。
・容易に入手可能な水素燃料電池をつくること:燃料電池は、現在、内燃機関より10倍高価である。FreedomCAR及び燃料イニシアティブは、そのコストを入手可能なレベルに下げるために努力している。
(3) アメリカのエネルギー安全保障は、外国の石油への依存によって脅されている。
・アメリカは、消費する石油の55%を輸入している:2025年までに68%に増大すると予想される。
・アメリカの車とトラックの殆ど全部はガソリンで動く。そして、これはアメリカがそれだけ多くの石油を輸入するという主な理由である。
・アメリカ人が使用する2000万バレルの石油3分の2が、毎日、輸送のために消費されている。燃料電池車は、外国の石油に対するアメリカの依存を劇的に減らすという最高の希望を与える。
(4) 水素燃料は、アメリカのエネルギー独立を確実にするのに役立つ。
・FreedomCAR及び燃料イニシアティブを通して、連邦政府、自動車メーカーとエネルギー会社は、外国の石油を必要としない商業上現実的な、排出ガスのない燃料電池車の開発に成功するため、技術的、財政的な障害を克服するよう一緒に努力する。
・水素は、天然ガス、石炭、バイオマス及び水の構成要素として、多量に国内で利用できる。
・エネルギー省は、FreedomCAR及び燃料イニシアティブが2040年までに、一日あたり1100万バレルを超える輸入石油の需要を減らすことになると見積もっている。
(5) 燃料電池は、空気の質を改善して、劇的に温室効果ガス排出を減らす。
・車は、アメリカの都市と市街化区域の大気汚染の主要な排出源である。水素燃料電池は、いかなる汚染もなしに車に与える電気を作り出す。
・FreedomCAR及び燃料イニシアティブは、2040年までにアメリカの温室効果ガス排出を、輸送部門だけから、年ごとに炭素換算5億m3以上減らすであろう。追加の放出削減は、住居や商用の機器のための発電に、燃料電池を使うことによって達成されるであろう。
(6) 水素は、クリーン・エネルギー未来の鍵である。
・それは、どんな既知の燃料の重さ当りよりも高いエネルギーを持つ。
・エンジンにおいて燃やされるとき、水素は事実上ゼロ排出である。燃料電池に動力を供給するとき、唯一の排出物は水である。
・水素は、天然ガス、石炭、バイオマス、そして水を含む豊富な国内資源から作り出されることができる。
・カーボン捕獲と貯蔵、再生可能エネルギーと核融合エネルギーのような他の技術と組み合わせることによって、燃料電池は廃棄物を生じさせないエネルギー未来を可能にする。
(7) FreedomCAR及び燃料イニシアティブは、ブッシュ大統領の2002年FreedomCARイニシアティブを拡張したものである。
・2002年にブッシュ大統領は、FreedomCARイニシアティブ、すなわちアメリカの消費者が購入し、運転したくなるような実用的かつ容易に入手可能な水素燃料電池車を生産するに必要な先端技術研究を進めるために、自動車メーカーとの提携を発足させた。
・FreedomCAR及び燃料イニシアティブは、燃料電池車及び固定燃料電池電力源に動力を供給するに必要な水素生産技術と水素供給の社会基盤を平行して開発する。
(8) ブッシュ大統領の予算は、FreedomCAR及び燃料イニシアティブに強い支持を与えている:
・ブッシュ大統領は、次の5年にわたってFreedomCAR及び燃料イニシアティブのために17億ドルの資金提供を提案する。この中には、水素燃料イニシアティブのために7億2000万ドルの新しい資金提供を含む。
・FreedomCAR及び燃料イニシアティブによる水素と燃料電池の研究開発、並びにFreedomCAR及び燃料イニシアティブによる先進的自動車技術開発に関する大統領のFY2004の予算要求は、2億7300万ドルである。
4.FreedomCARイニシアティブとは
 FreedomCARは自動車ではない。CARは「Cooperative Automotive Research」の頭文字である。
 エネルギー省と自動車メーカー・フォード、ゼネラル・モーターズとダイムラー・クライスラーから成る自動車研究理事会(US Council for Automotive Research)は、2002年1月に新しい協力関係を発表した。FreedomCARとして知られるこの協力関係は、リスクの大きい、高い費用のかかる、先進的自動車技術開発の資金協力に関する公的/私的な協力関係に、DOEの参加をあらわすものである。
 効率的な燃料電池技術—大気汚染なしで自動車のエネルギーに水素を使う—は、究極のビジョンを達成する非常に有望な経路である。
 協力の目標は、より安く操作でき、汚染がなく、値段を競争でき、輸入石油から解放されるような、車とトラックを開発することである。
 アメリカの輸送セクターは、その燃料の95%を石油に依存する。そして、その使用量は国の石油使用の67%に相当する。アメリカの需要に応ずる輸入石油の定常的な増加—現在、毎日およそ1000万バレルに達する—は、長期にわたって持続可能でないであろう 。
 燃料電池は、燃料をパワーに変換することに関しては今日の内燃機関より2〜3倍効率的である。
 DOEは、アメリカの石油消費を減らすことへの有望なアプローチは水素燃料電池車と水素供給の社会基盤の開発であると決定した。

 ここで、車両用に想定されている水素燃料電池は、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cellsあるいは、PEMFC:Proton Exchange Membrane Fuel Cell図1参照)と呼ばれるものである。基本構成要素は2本の電極、陽極と陰極から成る。そして、重合体膜電解質によって分離されている。電極の各々は、片側を薄いプラチナ触媒層で覆われている。電極、触媒と膜は、一緒に膜電極アセンブリを構成している。水素燃料は、陽極でプラチナ触媒によって自由電子陽子(プラスの水素イオン)に分離する。自由電子は、外部の回路によって利用できる電流として伝導される。陽子は、膜電解質を通して陰極に移る。陰極で、空気からの酸素、外部の回路からの電子と陽子は化合して、純粋な水と熱になる。
 個々の燃料電池セルは、およそ0.6ボルトの電位差を産む。必要な電力の量を得るために燃料電池セルを積み重ね、燃料電池システムが構成される。
<図/表>
図1 固体高分子型燃料電池(PEFC)の構造
図1  固体高分子型燃料電池(PEFC)の構造
図2 第4世代原子炉概念の1つ、超高温ガス炉
図2  第4世代原子炉概念の1つ、超高温ガス炉

<関連タイトル>
水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術 (01-05-02-05)
燃料電池発電技術の研究開発 (01-05-02-09)
第4世代原子炉の概念 (07-02-01-11)

<参考文献>
(1) FreedomCAR and Fuel Initiative, http://www.eere.energy.gov/hydrogenfuel/
(2) Hydrogen Fuel Initiative Can Make ”Fundamental Difference”,

(3) Fact Sheet: Hydrogen Fuel: a Clean and Secure Energy Future,

(4) FreedomCAR: The Partnership to Develop America’s Hydrogen Economy of the Future Office of Transportation Technology、

(5) FreedomCAR: The Partnership to Develop America’s Hydrogen Economy of the Future
(6) California Fuel Cell Partnership:
(7) 資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(2003年1月28日)、p.207-216
(8) U.S.DOE EERE:Fuel Cell Report to Congress(ESECS EE-1973),(2003年2月)
(9)日本ガス協会(JGA):燃料電池、http://www.gas.or.jp/fuelcell/index.html
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