<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
米国カリフォルニア州の電力危機(2000-2001年) (14-04-01-29)

<概要>
 米国では、航空、鉄道、通信といった産業での規制緩和・自由化が価格の低下や市場の拡大をもたらしたことから、電気事業の自由化も自然な流れとなった。3400万を超える人口を抱え、国内総生産の約15%を占める米国最大の州カリフォルニアは、先陣を切って1998年4月に電力市場の完全自由化をスタートした。しかし、2000年夏の猛暑をきっかけに浮上した電力不足と卸電力価格の高騰は2001年に入りさらに悪化し、同1月17日にはサンフランシスコやサンノゼなどシリコンバレー一帯を含む需要家に対して計画的な輪番停電(rolling blackouts)が実施された。数百万人が影響を受け、卸電力価格の上昇分を小売価格に転嫁できなかった大手電力会社2社が経営危機に陥った。自由化の制度設計に問題があったとの指摘もあるが、エンロンなど一部事業者による価格操作の疑いが濃くなっている。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 米国最大の州カリフォルニアは、3400万人を超える人口を抱え、国内総生産(GDP)は全米の約15%を占めている。米国では、航空、鉄道、通信といった産業での規制緩和・自由化が価格の低下や市場の拡大をもたらしたことから、電気事業の自由化も自然な流れとなった。しかし、2000年夏の猛暑をきっかけに浮上した電力不足と卸電力の価格の高騰は2001年に入りさらに悪化し、需要家に対して計画的な輪番停電が実施された。これにより、数百万人が影響を受け大手電力会社2社が経営機器に陥るなど、深刻な電力危機に直面した。
以下に、2000年から2001年にかけて発生した米国カリフォルニアの電力危機について、電力自由化の経緯( 表1−1表1−2 および 表1−3 参照)、危機のきっかけ、電力自由化に対する見方、その他、原子力発電のシェアについて述べる。
1.電力自由化が本格化
 米国では、1978年の公益事業規制政策法(Public Utility Regulatory Policies Act)、1992年のエネルギー政策法(Energy Policy Act)の成立、ならびに1996年の連邦エネルギー規制委員会(FERC:Federal Energy Regulatory Commission)によるオーダー888と889(全ての電力供給者にとって送電網への公平で非差別的な接続を確保するために公布された命令ないしは規則)の公布を受け、州単位で電気事業の再編(自由化)がスタートした。2003年1月現在、17の州とコロンビア特別区が自由化を実施している( 図1 )。一方で、カリフォルニア州の電力危機の影響から、アーカンソー、モンタナ、ネバダ、ニューメキシコ、オクラホマの5つの州が自由化の実施を延期した。このうちネバダ州は自由化を無期限に延期した。
 カリフォルニア州では、1990年代はじめ、深刻な景気後退からの脱出を模索していた。そうした中で、大量の電力を消費する企業が、他の州と比べて50%も割高な電気料金に不満を抱いていたこともあり、自由化による電気料金の引き下げが議論にのぼってきた。1994年には州議会で公聴会が行われ、自由化を求める声が一段と強まった。こうしたなかで、1995年5月にカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC:California Public Utilities Commission)によって電気事業再編計画が提案され、同年に最終政策として採択された。
 州議会はこの自由化法案を全会一致で承認し、当時のウィルソン知事(共和党)の署名によって1996年9月に正式に成立し、1998年4月から小売の完全自由化がスタートすることになった。自由化を受け、まず卸電力取引所(PX:California Power Exchange)と独立系統運用機関(ISO:Independent System Operator)が設立された。カリフォルニア州の自由化の内容を簡単に説明すると、以下のようになる。
・ 3大私営電力会社(PG&E:パシフィック・ガス&エレクトリック、SCE:サザンカリフォルニア・エジソン、SDG&E:サンディエゴ・ガス&エレクトリック)は、当初の4年間(最長)はPXから電力を調達する。
・ 他の新規事業者は、PXを介さずに相対取引も可能。
・ 上記の3社は、送電設備は引き続き所有するものの、系統運用機能はISOに移管する。
・ 上記の3社の小売電気料金は、2002年3月まで凍結する(SDG&Eは回収不能コストの回収を完了したため、1999年6月に凍結を解除。このため、同社は卸売価格の上昇分を小売価格に転嫁でき、他の2社のように経営危機に陥らずに済んだ)。
・ 上記の3社に対して、火力発電所の半分の売却を要請(3社はほとんどの火力発電所を売却してしまった)
2.2000年の猛暑きっかけに卸価格が上昇
 CPUCは当初、州内の電力需要は徐々に伸びると予測、新規の発電所を建設する時間的な余裕があるとみていたが、景気の拡大が電力需要を押し上げた。2000年夏には猛暑によって卸売価格が高騰した。12月以降に再び電力需給が逼迫し、価格はさらに上昇した。2001年に入り、状況はさらに深刻化し、輪番停電が実施された。
 輪番停電は、需給逼迫を避けるために実施されるもので、供給予備率が1.5%以下になると発動される。2000年に発動された輪番停電は1回だけだったが、2001年は最初の5ヶ月間だけで38回も実施された。 図2 に、1998年から2001年にかけての輪番停電回数を示す。ここで、ステージ1は供給予備率が7%以下となる場合で、需要家に対して節電の呼びかけが行われる。またステージ2は、供給予備率が5%以下になる場合で、供給の中止が可能になる需要家への供給中止によって需給逼迫が回避される。輪番停電が発動されるケースがステージ3で、2001年が際立って多いことが分かる。
  図3 に、カリフォルニア州の月平均の卸電力コストを、また 図4 にPG&E社の電力コストを示す。これからも明らかなように、2000年末にピークをつけた卸電力料金は2001年5月から6月にかけて大きく低下し、同年秋には1998年、1999年水準まで下がった。2000年の夏は猛暑の影響で需要が伸びたとは言え、夏を除けば需要水準は前年と比べてあまり変わっておらず、供給不足が卸価格を引き上げた格好だ。
 当初、この時期に定期検査などによって発電所の運転停止が重なったことに加えて、カリフォルニア州の南北をつなぐ送電線の容量が不足していたため、電力の融通に支障をきたしたことが原因とみられていた。しかし最近では、倒産したエンロンの関係者の発言などから、同社をはじめとした一部事業者が意図的に供給不足を作り出し価格操作をしていたとの見方が強まっている。
 PG&E、SCEの2つの電力会社が電力危機の最大の被害者となった。両社は、卸価格の上昇分を小売価格に転嫁できなかったため未回収費用が雪ダルマ式に増加、経営危機に陥った。PG&E社は2001年4月、連邦破産法の適用を申請。これを受け、カリフォルニア州政府は、最大100億ドルの州債を発行し、電力を代理調達することになった。一方、小売料金の凍結を解除していたSDG&E社は高騰した卸電力料金を需要家に転嫁できたため危機は免れた。もちろん、SDG&E社の顧客からみれば、卸売価格高騰の影響をもろに受ける形になり、2倍から3倍も高い電気料金を払わされる結果になった。
3.自由化に懐疑的な見方も
 カリフォルニア州の電力危機は「自由化の制度設計」のミスであり、(そうした制度を作ったカリフォルニア州に責任があり)自由化という方向自体は間違っていないとの指摘もある。しかし、カリフォルニアの電力危機によって、電力自由化に対して懐疑的な見方が強まったことは間違いない。
 電力危機後に行われたカリフォルニア州の世論調査では、60%の人が公営電力会社の設立に賛成していることが分かった。そうした意見が出てきた背景には、ロサンゼルスが電力危機と無縁だったという事実がある。ロサンゼルスの電力は市の水道・電力局によって供給されている。同局は、市憲章によって1925年に設立、380万の住民に電力と水を供給している。電力部門は、発電から送電、配電と一貫したサービスを提供している。売上でみると、PG&EとSDG&Eに次いで3番目。約700万kWの発電設備を確保しており、地方公営電力としては国内最大である。
 電力自由化を進めていた州でも、カリフォルニア州の電力危機を受け、自由化を見直す動きが出てきた。2000年1月時点では、電気事業再編(自由化)法が制定された州が21(コロンビア特別区を含む)、包括的な規制オーダーが発給(役所が書類を発行して与えること)された州が3つあった。しかし、2003年1月1日時点では、このうち5つの州が自由化を遅らす決定を下すなど、この3年間に、米国の電力自由化が後退したことが明らかになった。前述したように、ニューメキシコ州は2002年1月からの自由化の実施を遅らす決定を下している。
4.カリフォルニアの原子力シェアは18%
 現在、米国内で原子力発電所が稼働している州は全部で31ある。このうち、アイオワ、カンザス、ミシシッピ、ミズーリ、ニューハンプシャー、バーモント、ワシントンの各州には1基の原子力発電所しかない。1999年の発電実績でみると、イリノイ州が最大で約800億kWh。以下、ペンシルベニア(700億kWh)、サウスカロライナ(508億kWh)、ノースカロライナ(375億kWh)、ニューヨーク(370億kWh)、テキサス(368億kWh)、カリフォルニア(334億kWh)などと続いている。
 原子力発電シェアでみると、バーモント州の72%を最高に、サウスカロライナ(57%)、ニュージャージー(51%)、イリノイ(50%)、コネチカット(45%)、バージニア(38%)、ペンシルベニア(37%)などとなっている。ちなみに、米国全体の原子力発電シェア(原子力発電所が稼働していない州も含む)は約20%。4基の原子力発電所が稼働しているカリフォルニア州の原子力シェアは18%で全米平均を下回っている。
<図/表>
表1−1 カリフォルニア州の電力自由化と電力危機の経緯等(1996〜2001年)(1/3)
表1−2 カリフォルニア州の電力自由化と電力危機の経緯等(1996〜2001年)(2/3)
表1−3 カリフォルニア州の電力自由化と電力危機の経緯等(1996〜2001年)(3/3)
図1 米国の電力自由化の現状(2003年1月現在)
図2 カリフォルニアで発動された緊急宣言の回数
図3 月平均のISO卸電力コスト(米国カリフォルニア州)
図4 米国PG&E社の電力コスト

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
電力自由化と原子力規制(OECD/NEA) (01-07-02-11)
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
アメリカの電気事業および原子力産業 (14-04-01-06)

<参考文献>
(1)米国エネルギー省(DOE)エネルギー情報局(EIA):http://www.eia.doe.gov
(2)California Energy Commission:2002-2012 Electricity Outlook Report、
http://www.energy.ca.gov/reports/2002-06-10_700-01-004F.PDF
(3)国際資源問題研究会:特集:エネルギー規制緩和と問題点、国際資源(2001年4月号)
(4)PG&E社:A CONCISE GUIDE、http://www.pge.com/006_news/current_issues/energycrisis/concise_guide010720.pdf
(5)Summary of FERC Order 888, http://www.converger.com/fercnopr/888_889.htm
(6)FERC Rulings and Reports, http://www.ksg.harvard.edu/hepg/FERC_rulings.htm
(7)経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部(編):要約/海外諸国の電力改革の現状と制度的課題、第1部/米国カリフォルニア州の電力危機について(平成13年4月19日)p.3-63
(8)経済産業省:カリフォルニア州の電力危機とPJMの概要、(財)電力中央研究所研究参事矢島 正之、http://www.meti.go.jp/policy/electricpower_partialliberalization/bunkakai/3rd/
3rdshiryou4sankoushiryou.PDF
(9) 小笠原潤一:海外調査報告「米国カリフォルニア電力危機の教訓−今後の電力自由化設計に向けて−」、エネルギー、vol.34,No.6、(株)日工フォーラム社(2001年6月1日)p.110-115
(10) 外務省:米国政府による規制改革及びその他の措置(平成14年6月25日)、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/kanwa/hokoku_1_3_4.html
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