<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
アメリカの原子力政策および計画(2001年、ブッシュ政権) (14-04-01-28)

<概要>
 2001年1月に就任したブッシュ大統領は5月17日、原子力発電の拡大を1つの柱とする包括的な国家エネルギー政策を発表し、省エネのための技術革新促進による需要削減、再生可能エネルギーなどエネルギー源の多様化、供給ネットワークの近代化がエネルギー政策の基本方針だとした上で、クリーンかつ供給面で制約がない原子力発電を拡大しなければならないと強調した。この報告書は8つの章で構成されており、全部で105項目の施策の実施を大統領に勧告している。勧告されている項目の実施については、現行の法律の枠内で実施されるほか、新しい法律の制定も行われる。
<更新年月>
2003年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.原子力発電拡大を勧告
 ブッシュ大統領は、2001年5月17日ミネソタ州セントポールで行った演説の中で、正式にエネルギー政策を発表した。大統領は、省エネのための技術革新促進による需要削減、エネルギー源の多様化、パイプライン、送電線、石油精製所などのインフラに関する規制や他の制度上の障害を取り除くなど供給ネットワークの近代化がエネルギー政策の基本方針だとした上で、クリーンかつ供給面で制約がない原子力発電を拡大しなければならないと強調した。
 ブッシュ大統領の発言は、報告書の第5章「新世紀のエネルギー:国内のエネルギー供給の拡大」で指摘されている原子力発電の拡大勧告に沿ったものである。報告書は、稼働中の原子力発電所設備利用率を2000年の実績から2ポイント程度上げ92%に改善するだけで、新規に200万kWの原子力発電所を建設したことに相当すると指摘した。また、すでにかなりの原子力発電所で実施されている、各種の方法を用いて稼働中の原子力発電所の定格出力を上げること(Power Uprating)についても、約1200万kW分の設備容量の拡大につながるとの考えを示している。ちなみに、アメリカ原子力規制委員会(NRC)事務局が2001年7月に公表した報告書によると、稼働中の原子力発電所ではこれまでに約200万kWの出力アップが実施されているほか、今後5年間に約160万kWの出力アップが予定されていることが明らかになった。
 このほか報告書は、原子力発電電力量を増やす方策として、運転認可(ライセンス)を60年まで延長することが有効と述べている。これまでに、NRCから運転認可の延長を認められた原子力発電所は、カルバートクリフス1・2号機、オコニー1・2・3号機、アーカンソー・ニュークリアワン1号機の6基(2001年9月現在)しかないが、報告書では、現在稼働中の103基の原子力発電所のうち約90%で運転認可が延長されると予想している。
 そうした上で、NRCに対して、安全に配慮しながら、稼働中の原子力発電所の運転認可を延長したり定格出力を上げるにあたっての手続きの促進をはかるよう勧告している。また、エネルギー省(DOE)長官と環境保護庁(EPA)長官に対しては、原子力発電が環境の改善に寄与する可能性を評価するよう指示している。このことは、クリントン政権の8年間に原子力は大気汚染物質を排出しない電源としての優遇措置を受けていないと考えている原子力業界にとって重要な点である。
2.再処理の検討も盛り込む
 使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物(核廃棄物)の処分問題については、連邦政府が処分の責任を果たさなければならないと再確認した上で、フランスや日本などが進めている再処理路線にも言及している。こうした方法を採用したとしても、地下貯蔵所の必要性がなくなるわけではないと指摘している。一方で、使用済み燃料を燃料として再利用可能な物質と高レベル放射性廃棄物に分けることによって、地下貯蔵所の最適な利用がはかれるとの考えを示している。また、加速器を用いた核変換(消滅処理)に関心が高まってきていると述べ、この方法と再処理との併用により核廃棄物の量と毒性を大きく減らせると強調している。
 報告書では、先進的な核燃料サイクルと次世代の原子力技術を開発するという枠内で、放射性廃棄物の発生量を大きく削減でき核拡散抵抗性に優れた(核拡散につながりにくい)燃料のコンディショニング法の研究、開発、導入を見込んだ政策をアメリカとしても再検証すべきであると勧告している。そして、こうすることによって、アメリカとしても分離されたプルトニウムの世界的な蓄積を阻止することができるとの見解を示している。さらに、アメリカとしては、先進的な核燃料サイクル技術を持つ友好国との協力のもとに、クリーンでより効率的な、しかも放射性廃棄物の発生量が少ない、核拡散抵抗性の高い再処理と燃料処理技術を開発するため、米国と緊密な協力関係にあり、高度に開発された燃料サイクルを確立している国際パートナーと共同で技術を検討する必要があると勧告している。
 このほか報告書は、核融合について、まだ開発の初期段階にあり利用可能なエネルギー源になるまでにはかなりの時間がかかるとしながらも、排出物がない、発生する放射性廃棄物の寿命が短い、炉心溶融や核拡散の心配がない――などの理由から、将来のエネルギー源としてみた場合には有望との考えを示している。このため、核融合を含む次世代技術を開発するよう大統領がDOE長官に対して指示するよう勧告している。
3.国家エネルギー政策の勧告内容
 今回まとめられた国家エネルギー政策は、第1章「全体を再吟味する―エネルギーに関してアメリカが直面する課題」、第2章「国内を直撃―エネルギー価格の高騰が家庭や地域、ビジネスに及ぼす影響」、第3章「アメリカの環境を保全する―国民の健康と環境を維持する」、第4章「エネルギーを適切に利用する―エネルギーの節約と効率の向上をはかる」、第5章「新世紀のエネルギー―国内のエネルギー供給の拡大」、第6章「自然の力―再生可能エネルギーと代替エネルギーの利用拡大」、第7章「アメリカのエネルギー・インフラ―包括的な供給システム」、第8章「国際協力を強化する―国家エネルギー安全保障と国際関係の強化」――で構成されている(アメリカのエネルギー状況は図1図2図3図4および図5を参照)。
 ブッシュ政権のエネルギー政策の目玉ともいうべき第5章では、原子力以外にも、国内のエネルギー供給を拡大することをめざした各種の方策が勧告されている。具体的には、新技術の採用によって既存の油田とガス田からの石油と天然ガスの回収を強化するとともに、北極圏国立野生動物保護区(ANWR)での探査、ならびに仮にそこで資源が発見された場合には開発を認可するため、内務省長官が議会と協力して作業を行うよう大統領が指示することを求めている。またDOE長官に対して、競争を促進し顧客を保護し、信頼性を高め、再生可能エネルギーを促進し、効率を改善するための包括的な電気事業法を提案するよう大統領が指示することを勧告している。
 さらに報告書は、環境を保全しながら発電量を増やすという目標の達成に寄与する技術に注目することが重要であると認識しているとした上で、(1)石炭クリーン技術の研究に10年間にわたって20億ドルを投入する、(2)現行の研究開発に関する優遇税制を永久的に延長する、(3)連邦政府機関に対して、環境技術の進歩を促進する規制面でのアプローチを探求させる――ことによって、先進的な石炭クリーン技術を開発することを勧告している。水力発電については、許認可手続きにかかる時間と経費を削減する必要性があると指摘。許認可手続きがより明確な効率的なものとなるよう、大統領が連邦エネルギー規制委員会(FERC)に働きかけることを求めている。
 再生可能エネルギーと(原子力以外の)代替エネルギーについても利用の拡大を明記しており、2020年までに水力以外の再生可能エネルギー源が総発電電力量の2.8%を占めるべきであるとするとともに、バイオマスや風力、地熱、太陽光といった再生可能エネルギーの生産量を拡大するため、連邦政府が所有する土地の利用が制限されていないかどうかを再検討する必要があるとしている。また、こうしたエネルギーの拡大には研究開発での資金的な援助が必要とした上で、2002会計年度で3920万ドルの増額を求めている。このうち風力とバイオマスを用いた発電については、税額控除(現在はkWhあたり1.7セント)を延長、拡大するための法律制定を財務省長官が議会と協力して行うよう大統領が指示することを勧告している。住宅向けの太陽エネルギー設備に関しては、2000ドルを限度に、新たに15%の税額控除をする法律を制定することを求めている。
 省エネに言及した第4章では、DOEによるエネルギー効率に関した公教育プログラムを強化することに加えて、家電製品のエネルギー効率の改善を大統領がDOE長官に指示するよう勧告している。また、電熱併給(CHP)プロジェクトについて、減価償却期間を短縮あるいは投資税額控除をすることによって、CHPプロジェクトによるエネルギー効率の改善を奨励するため、財務省長官が議会と協力して作業を行うよう大統領が指示することを求めている。一方、EPA長官に対しては、CHPをはじめとしたクリーンな発電技術の採用を促進するため、地元ならびに州政府と協力して作業を行うよう勧告している。このほか、道路の混雑を緩和するための技術や戦略の検討・推進に加えて、燃費の良い自動車に対する税額控除を行う方策についても検討を行う必要があるとしている。
 インフラ整備に言及した第7章では、州間の送電網の信頼性を改善するとともに、FERCの支配下にある独立した規制組織に執行権限を与える法律を制定することを勧告している。また、アラスカの原油が中断されることなく引き続きアメリカ西海岸に供給されることを保証するための方策をとることも求めている。
4.エネルギー政策の勧告盛り込んだ法案が下院で成立
 ブッシュ政権が公表した国家エネルギー政策の内容を盛り込んだ法案が2001年8月2日、下院で成立した。この法案は、8つの下院委員会がまとめた4つの別々の法案を一本化したものである。原子力関係では、原子力研究開発プログラムへの資金提供などが盛り込まれている。アラスカでの石油掘削を認める提案については、民主、共和両党から強い反対があったものの、共和党203、民主党36、無所属1の合計240人(総数435議席)が法案を支持、成立した。なお、上院でも同様な法案の審議が行われている。最終的には、両院で法案のすりあわせが行われ、最終的に一本化された後、大統領の正式署名をもって法律として成立することになっている。
<図/表>
図1 アメリカのエネルギー消費と供給予測
図2 アメリカの2000年における電源構成
図3 アメリカのエネルギー生産量
図4 電源別にみた発電量予測
図5 各電源の運転コストの推移

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<関連タイトル>
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
アメリカの原子力開発体制 (14-04-01-03)
アメリカの核燃料サイクル (14-04-01-05)
一般教書の水素燃料イニシアティブ(ブッシュ大統領) (14-04-01-32)

<参考文献>
(1) National Energy Policy-Reliable, Affordable, and Environmentally Sound Energy for America's Future (May 2001)
(2) Energy Policies of IEA Countries:2000 Review(International Energy Agency)
(3) International Energy Outlook 2001, March 2001(Energy Information Administration/Department of Energy)
(4) ホワイトハウスHP・国家エネルギー政策報告書(URL http://www.whitehouse.gov/energy/National-Energy-Policy.pdf)
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