<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> インド
<タイトル>
インドの原子力開発と原子力施設 (14-02-11-02)

<概要>
 インドは、国内に豊富にあるトリウム及びウラン資源を利用した自前のエネルギー源の確保を長期目標としている。第1段階ではウラン燃料を国産化して、天然ウラン重水炉による発電とプルトニウム生産を図る。第2段階では、プルトニウムを利用した高速増殖炉を建設。国産トリウムを照射して、再処理により新たな燃料物質であるウラン233を生産する(現在の段階)。最終段階はウラン233を使う増殖炉(新型重水炉(AHWR)あるいは加速器駆動システム(ADS))を建設し、トリウムサイクルを確立する予定である。なお、インドは1970年代及び1990年代に核実験を行い、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないことから、他の欧米原子力諸国との関係を悪化させた。しかし、2008年10月、米国と原子力協定を締結。「原子力供給国グループ(NSG)ガイドライン」が修正され、欧米諸国から核関連品目の供給が認められるようになり、インドは原子力開発を拡大する方針を示している。
 2015年1月現在、3サイト20基、合計出力478万kWの商業用原子炉が運転中であり、さらに7基が建設中、18基が計画段階にある。2014年12月末にはロシアROSATOM社製であるクダンクラム1号機(VVER-1000/V12)が営業運転を開始、ジャイタプールではフランスAREVA社製EPRの建設計画も進められている。
<更新年月>
2015年01月   

<本文>
1.はじめに
 2015年1月末現在、インドでは6サイト20基、合計出力478万kWの商業用原子炉が運転中であり、さらに7基が建設中、18基が計画段階にある(表1及び図1参照)。これらの原子力発電所は、水力、石炭火力などの代替電源が入手しにくい地域(西部、南部、北部)に優先的に立地され、地元の州電力局に供給されている。同国は2050年までに総発電電力量に占める原子力発電の比率を現在の3%から25%に拡大する目標を掲げ、原子力発電開発を進めている。
 インドは1970年代及び1990年代に核実験を行い、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないなど、他の欧米原子力諸国とは異なる独自の原子力路線を進めてきた。しかし、2008年9月に「原子力供給国グループ(NSG)ガイドライン」が修正され、2008年10月に米国と原子力協定を締結。続いてフランス、ロシア、カザフスタン、英国、カナダ等とも相次いで協定が締結され、海外から核関連品目の供給が認められるようになった。これに伴い、ウラン燃料の海外調達や海外輸入炉の導入が可能になり、インド政府は2020年までの増設目標20GWeを40GWeに変更、原子力開発規模を拡大する方針を示している。
 2014年12月31日にはロシアROSATOM社製VVER-1000/V412であるクダンクラム1号機が営業運転を開始、2号機も建設中である。また、クダンクラム3、4号機がロシアから低金利融資を受けて、2013年3月に計画入りしている。グジャラート州ミティビルディでは、ウェスチングハウス(WH)社製原子炉(AP-1000、6基×100万kW)建設構想のための環境影響評価(EIA)が進行中であり、マハラシュトラ州ジャイタプールにおいてもアレヴァ(AREVA)社製原子炉(EPR、最大6基×165万kW)の建設計画が進められている。
 ウラン燃料に関しては、ロシア原子力関連企業アトムストロイエクスポルト(ASE)社がクダンクラム原子炉の燃料を供給しているが、原子力協定締結により、オーストラリアやカナダのウラン調達も可能になってきている。一方、これらの原子力産業市場の拡大を背景に2010年8月、インド議会は原子力損害賠償責任法を成立させた。同法は原子力事故時に、国及び発電事業者と原子力供給メーカーの賠償責任を問うもので、海外企業参入の障壁となっていた。これに対し、2015年1月末の米印首脳会談で、原子力保険プールを設置し、メーカーリスクを分散させることで合意されている。また、核燃料の軍事転用に関しては、2014年7月、国際原子力機関(IAEA)による原子力施設の抜打ち査察を認める追加議定書にインドが批准・発効したことで、欧米諸国が示す懸念を払拭している。
2.原子力発電開発
2.1 インドの原子力路線
 現在運転している発電プラントの大半は、カナダAECLとインド原子力発電公社(NPCIL:Nuclear Power Corporation of India Ltd)が共同開発した加圧水型重水炉(PHWR)であり、濃縮ウランを必要としない。共同開発した1基目のラジャスタン1号機(RAPS-1、1973年運転開始)以外はすべてNPCILの国産技術である。ただし、タラプール1・2号機(TAPS-1&2、BWR、1969年運転開始)のみは、NPT発効以前に米国GEが建設したもので、IAEAの保障措置の下で、ロシアからの輸入濃縮ウランを使用している。インドは国内に豊富にあるトリウム資源とわずかな低品位ウラン資源を利用した「先進型重水炉によるトリウムサイクル」路線を、長期的目標としている。トリウムサイクル路線は以下の3段階で構成される。
(1)第1段階
 ウラン燃料を国内生産し、それを使う天然ウラン重水炉(PHWR)を建設して、発電とプルトニウム生産を図る。このため、インドはカナダの重水炉(CANDU炉)の技術導入を行った。現在、発電炉技術と再処理プルトニウム生産技術は確立している。
(2)第2段階
 得られたプルトニウムを使う高速増殖炉を建設し、発電とプルトニウム生産を行うとともに、国産トリウムを照射し再処理して、新たな燃料物質であるウラン233を生産するというもので、現在はこの途中段階にある。
(3)第3段階
 ウラン233を使う増殖炉(先進型重水炉(AHWR)あるいは加速器駆動システム(ADS))を建設し、発電とウラン233の生産を進め、トリウムサイクルを確立するとしている。
 なお、重水炉は軽水炉よりもプルトニウムの生産効率が高く、濃縮工場がなくとも核物質の兵器転用が可能となるため、核拡散リスクが高い特徴がある。
2.2 原子力研究開発
 インドの原子力開発は、1945年にタータ基礎研究所が設置され、H.J.バーバ博士が所長に就任したことから始まる。1948年には原子力法が制定され、同法に基づき、1948年に原子力委員会(AEC)が資源学術研究省の下に設置された。1954年8月には首相直属の機関として原子力省(DAE)が設置され、原子力関連研究機関の支援を行うと同時に、原子力委員会が策定した原子力政策を実行していった。まず、1954年にはトロンベイ地区(ムンバイ市内)にタータ基礎研究所の原子力部門を移転し、後にインドの原子力研究開発の中核となるバーバ原子力研究センター(BARC)の礎を築いた。表2に研究炉の一覧を示す。
 インドは、アジア初の原子炉アプサラ(APSARA、最大熱出力1MWt)の運転を1957年に開始した。1950年代後半当時、インドの発電設備は石炭火力が中心であったが、産炭地は電力消費地と遠く離れていることから、原子力委員会は1958年、電力消費地の隣接地に原子力発電所を建設することを決定した。決定当初は1963年の米・印・IAEA間の協力協定のもと、ムンバイから北へ約100km離れたタラプール(Tarapur)に、米国ベクテル社とGE社によって2基の沸騰水型炉(BWR)を建設した。これらは当初210MWe級とする予定であったが、技術的問題から160MWeになった。タラプール1、2号機(Tarapur:BWR、16万kW×2基)は1969年10月28日に送電網に接続して商用運転を開始し、これらはアジア初の沸騰水型炉となった。
 インドはこれと平行して重水炉開発も着々と進めた。1960年には減速材に重水を利用したカナダ型のサイラス研究炉(Cirus:40MWt、金属ウラン燃料)が初臨界に、1964年にはサイラス炉の使用済燃料からプルトニウム抽出に成功した。商業炉開発としては、カナダとの原子力通商協力により、重水炉の導入が図られ、ラジャスタン1・2号機の建設が進められた。1973年12月にラジャスタン1号機(Rajasthan:CANDU、10万kW)が運転を開始した。しかし、翌1974年5月に、インドは初の核実験を成功させたことから、カナダはインドへの原子力援助を停止することになった。インドは自主開発を続け、1981年4月、ラジャスタン2号機(Rajasthan:PHWR、20万kW)の運転に成功した。
2.3 原子力開発体制
 インドにおける原子力開発体制は、原子力委員会(AEC)を頂点にし、原子力規制委員会(AERB)、また研究開発部門、公共部門、産業部門、支援機関を統括する原子力省(DAE)を中心にした組織体制が整備されている(図2参照)。原子力規制委員会(AERB)は独立の規制機関として、原子力委員会(AEC)の下に置かれている。なお、インドでは原子力開発の強化のため、1978年から原子力発電所の建設・運転の所管を原子力省からインド原子力発電公社(NPCIL)に移管している。
 また、原子力研究の中心はバーバ原子力研究センター(BARC)で、高速炉の研究開発はインディラ・ガンジー原子力研究センター(IGCAR)が担当している。原子力省傘下にはこのほかに放射光Indus-1を開発している先端技術センター(CAT)、プラズマ研究所、タータ基礎研究所等がある。放射線利用としては、放射線育種、放射線滅菌、食品照射、核医学診断等が活発化しているほか、IAEAの地域活動(RCA計画)にも協力している。また、BARCには教育訓練センターがあり、インドの原子力を支える人材を養成している。
2.4 高速増殖炉の研究開発
 インドでは独自の長期原子力路線に従って、インディラ・ガンジー原子力研究センター(IGCAR)を中心に、第二段階の高速増殖炉(FBR)サイクルの確立に着手している(図3参照)。1972年5月、国産高速臨界実験装置プルニマ1号炉(二酸化プルトニウム燃料、低出力)を完成したほか、カルパッカム(Kalpakkam)郊外にあるIGCAR内に熱出力4万kW、電気出力1.32万kWの高速増殖実験炉FBTR(ウラン・プルトニウム混合炭化物燃料、ナトリウム冷却、ループ型)を建設した。FBTRはフランスのラプソディと同型で、1985年10月に臨界に達した。その後、故障が続いたが、1997年7月22日にタミルナードゥ州営送電網に送電を開始、2030年までの運転が見込まれている。また、2003年9月には500MW級の高速増殖炉原型炉(PFBR)の建設が承認され、バラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム(BHAVINI)社が建設中である(図4参照)。燃料サイクル施設については、FBRT燃料をPUREX法で再処理するための鉛ミニセル(LMC)が運転中であり、PFBR燃料再処理の実証プラント(DFRP:1t/年)を建設している。また、商業規模でPFBR燃料の再処理・燃料製造を行い、廃棄物を処理する一体型の高速炉燃料サイクル施設(FRFCF)建設計画も進行している。
3.核燃料サイクル
 インドは独自基本戦略に基づいて原子力開発を進め、ウラン濃縮を除き、ほぼ燃料サイクルを完結している。図5にインドの主要な原子力施設を示す。
3.1 ウラン資源及びトリウム資源
 2014年9月に発行されたOECD/NEA-IAEAのウラニウム2014によると、インドのウラン資源は 119,900tU(確認資源97,800tU+推定資源22,100tU)となっている。コスト区分別の資源量は報告されていないので、US$260/kgU以下の主に低品位ウランの合計資源量とみなされている。鉱床タイプ別で見ると、炭酸塩型38.7%、変成岩型32.3%、砂岩型11.5%、不整合関連型11.4%で、1960年代から2000年初めまでの開発は全てSinghbhum地区に産する鉱脈型ウラン鉱床であったが、2012年から炭酸塩・層準規制型の鉱床であるTummalapalle鉱山で採掘を開始した。製錬はJadugudaプラント(2500鉱石トン/日)、Turamdihプラント(3000鉱石トン/日)、Tummalapalleプラント(3000鉱石トン/日)の3か所である。2011年の年間必要量は930トンU、2020年には約3000トンUと予想されている。一方、トリウム資源は、ラジャスタン(Rajasthan)州北東部に位置する中−新原生代Delhi層群の変堆積岩帯に沿って報告されており、コスト区分US$80/kgU以下で約84万6500トンを有するといわれる。
 なお、ウランやトリウムの掘削と製錬は、原子力省の原子力鉱物部(AMD)が全額出資するウラン公社(UCIL)が担当し、インド稀土公社は南部に2か所の鉱物砂分離プラント、トロンバイにトリウム施設を持つ。
3.2 燃料の成型加工
 比較的初期に輸入依存から国内生産に切り替えており、最初の成型加工工場はバーバ原子力研究センター(BARC)内で1959年に操業を開始し、サイラス研究炉用燃料を製造している。DAE所有で核燃料コンプレックス(NFC:Nuclear Fuel Complex)が運転するハイデラバード原子燃料施設は、1972年から1975年にかけて段階的に操業を開始し、濃縮不要のPHWR用燃料製造とタラプール原子力発電所(BWR)用燃料の加工、濃縮六フッ化ウランの二酸化ウラン粉末への転換、ラジャスタン原子力発電所用天然ウラン燃料の加工(300トンHM/年)等を行っている。プルトニウム燃料の製造は1965年からBARCで行われている。
3.3 再処理
 現在、PHWRで発生した民生用使用済燃料は、バーバ原子力研究所(BARC)のTrombayプラント、タラプール(Tarapur)及びカルパッカム(Kalpakkam)のプラント(いずれも処理能力100t/年)で再処理されている。
 タラプール再処理工場(PREFRE:100トン/年)は1977年に完成し、タラプール、ラジャスタン、マドラス発電所(PHWR)で取り出される使用済燃料の再処理と、研究炉(Cirus、Dhruva)の使用済燃料の再処理を行う。プルトニウムは、AFFFでMOX燃料に加工して高速増殖実験炉(FBTR)に供給される。また、1996年3月に竣工したカルパカム再処理プラント(FRFRP:100トン/年)は、PHTR及びFBTRの使用済燃料からプルトニウムを分離し、AFFFでMOX燃料に加工して高速増殖実験炉(FBTR)に供給される。
3.4 重水製造
 重水製造は、1962年運転開始のナンガル(Nangal、処理能力:6.6t/年、電解蒸留法)から1991年運転開始のマヌグル(Manuguru、処理能力:185t/年、硫化水素・水素交換法)まで合計8か所あるが、ナンガルは2002年に運転を終了したため、合計製造能力は556.5トン/年である。これらの施設は自主開発で建設したもので、製造プロセスはアンモニア・水素交換法によるものが6か所あり、これらは肥料工場とリンクしている。そのほか、マヌグル工場はBARCが開発した水素・硫化物・水法によって重水を製造している。
3.5 放射性廃棄物
 タラプール、ラジャスタン、ナローラ、トロンバイの原子力施設には、低中レベル廃棄物管理施設(WMF)が、また、カルパッカム地点を対象に集中廃棄物管理施設(CWMF)がある。高レベル廃棄物固化プラント(WIP)では、1990年にPREFREからの廃棄物の固化に成功している。
 PHWR使用済燃料は、1990年からタラプール発電所敷地内湿式貯蔵施設で、また、1994年からラジャスタン発電所敷地内乾式貯蔵施設で管理されている。BWR使用済燃料は、1990年からタラプール発電所敷地内乾式貯蔵施設で管理されている。
(前回更新:2007年10月)
<図/表>
表1 インドの原子力発電所
表2 インドの研究炉一覧
図1 インドの原子力発電所配置図
図2 インドの原子力行政組織
図3 インドの3段階方式の原子力開発計画における物質供給フロー
図4 高速増殖原型炉(PFBR)の原子炉断面図
図5 インドの原子力関係機関・施設配置図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
インドの国情およびエネルギー政策 (14-02-11-01)
インドの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-11)

<参考文献>
(1)海外電力調査会(編):海外諸国の電気事業 第1編 追補版2、(2011年12月)、インド
(2)日本原子力産業協会(編):原子力年鑑、2014年版(2013年10月)、インド
(3)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2014年版(2014年4月)
(4)日本原子力産業協会:躍進するアジアの原子力:インドの原子力開発 インド共和国、2010年1月、http://www.jaif.or.jp/ja/asia/india_data3.html
(5)URANIUMU:RESOURCE,PRODUCTION AND DEMAND 2014 OECD-NEA and IAEA,India
(6)インド原子力省(DAE):組織図(http://www.dae.nic.in/?q=node/634)、Atomic Energy Establishments in India(http://dae.nic.in/?q=node/260)
(7)インド財務省:ECONOMIC SURVEY 2013-14 STATISTICAL APPENDIX、
http://indiabudget.nic.in/es2013-14/echap-01.pdf
(8)インド原子力発電公社(NPCIL):http://www.npcil.nic.in/main/Maps.aspx
(9)インド原子力省(DAE):組織図(http://www.dae.nic.in/?q=node/634)、Atomic Energy Establishments in India(http://dae.nic.in/?q=node/260)
(10)IAEA発電炉情報システム(PRIS):India、
http://www.iaea.org/PRIS/CountryStatistics/CountryDetails.aspx?current=IN
(11)原子力委員会 国際問題懇談会(第1回):インドの原子力開発 基礎資料、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/mondai/siryo/mondai01/sanko2.pdf
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