<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> 中国
<タイトル>
中国の原子力発電開発 (14-02-03-03)

<概要>
 中国の原子力発電開発は、軽水炉の開発、次に高速増殖炉の開発であり、最終的に核融合炉の開発を目標としている。中国の軽水炉開発は加圧水型軽水炉(PWR)が中心であり、海外の技術と資金を導入し(1)原子力技術の自主開発、(2)海外炉の導入・改良・国産化を同時に進行させてきた。国務院が2007年10月に発表した2005〜2020年を対象とする「原子力発電中長期計画」では、2020年時点の運転中原子力発電の設備容量は4,000万kW(国内総発電設備容量の約4%)であったが、2016年から始まる「第13次5ヶ年計画(2016〜2020年)」では、年3〜5基の新規発電所の建設を承認し、2020年時点の設備容量は5,800万kWに拡大すると発表している。
 2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、安全対策が見直され、内陸部での原子力発電所の建設を2016年以降に延期するとともに、以降の新規発電炉は「第3世代原子炉」を採用するとの方針を打ち出している。一方、急増する国内の電力需要への対応と世界原子力市場への参入を目標に、沿海部の原子力発電所の新規稼働は年2〜3基のペースで続いている。2030年には、米国を上回る110基以上が稼働する見通しである。なお、PWR以外の高温ガス炉、高速増殖炉をはじめとする先進炉の研究開発も着実に進められている。
<更新年月>
2016年01月   

<本文>
1. 原子力発電の現状
 世界原子力協会(WNA)によると、2016年1月時点の中国における運転中の原子力発電所(以下「原発」)は30基・ネット発電電力量2,689万kWである。これは、米(99基・9,899万kW)、仏(58基・6,313万kW)、日(43基・4,048万kW)、露(35基・2,605万kW)に次ぐ世界第5位に位置する。一方、建設中の原発は24基・2,689万kWにのぼり、これは全世界の建設中原発の約38%に相当する。さらに、許認可を受けた計画中の原発は40基・4,659万kW(世界の約26%)で、世界一の規模である。
 なお、2011年3月に起きた東京電力福島第一原発事故の影響を受け、水質汚染リスクの高い内陸部の原発(34基・3,828万kW)は、エネルギー発展「第12次5ヶ年計画(2011〜2015年)」中の建設延期を発表したが、2016年以降、国家発展改革委員会の委託を受けた中国工程院による安全性確認作業が終了次第、順次建設を再開する見通しとなっている。一方、中国沿岸部にある原発に関しては、福島事故後2011年8月に嶺澳II期2号機(CPR1000、108万kW)が営業運転を開始し、その後15基が稼働して2020年までに運転中・建設中・計画中の原発基数は約90基となり、中国は米国に次ぐ原子力大国となる見通しである。なお、原発の平均設備利用率は2012年には89.2%、2013年には88.9%、2014年には86.32%で比較的安定している。表1−1及び表1−2に中国の原発の概要を、図1にその立地点を示す。
2. 原子力発電開発の動向
2.1 原子力発電開発の経過
 中国の原子力開発は1950年代中頃に軍事利用を中心に始まったが、1970年代に転換期を迎え、1982年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「エネルギー長期戦略・原子力発電計画」が発表され、2000年までに1,000万kWの原発を建設するという具体的な数値目標が初めて示された。しかし、1979年の米国・スリーマイルアイランド事故や1986年の旧ソ連・チェルノブイリ事故、また米国の対中原子力設備禁輸制裁等の影響を受けて、原子力発電開発計画には遅れが生じたものの、中国初で自主設計炉である秦山I期1号機(CNP300、30万kW)が1985年3月に着工、1994年4月に営業運転を開始している。
 秦山I期にやや遅れた1982年12月、中国政府(国務院)はフランスからの技術導入による大亜湾(M310、98万kW×2基)の建設を正式に承認。1987年から1988年にかけて大亜湾1号機、2号機が相次いで着工。それぞれ1994年2月と5月に営業運転を開始した。電力の7割は香港へ、残りの3割は華南地域へ供給され、香港向けの原子力発電による電力は、香港消費電力の約4分の1を占めることになった。1996年以降は、4ヶ所の原発(秦山II期、嶺澳I期、秦山III期、田湾)が相次いで建設を開始した。
 1982年以降、原子力発電開発の事業主体は中央政府直系の国有企業である中国核工業総公司(CNNC:China National Nuclear Corporation)で、原子力発電開発は自主開発と海外技術の国産化の2本立ての戦略で現在に至っている。なお、1998年〜1999年にかけて国務院の機構改革が行われ、原子力規制の分離・独立や、原子力事業への市場経済の導入と企業体制化の確立が行われた。原発はそれぞれ独立した発電会社(IPP)であり、持ち株会社として、CNNCを分割して設立した中国核工業集団公司(以下「新CNNC」)、中国広東核電集団有限公司(以下「CGNPC」)及び中国電力投資集団公司(CPI、現、国家電力投資集団公司SPI)らが支配権を有している(図2参照)。
2.2 原子力発電開発の位置づけ
 2010年の中国の原子力発電設備容量は、ようやく日本の5分の1の規模にあたる1,000万kWを超えたに過ぎなかった。2001年3月に策定された第10次5ヶ年計画(2001年〜2005年)では、三峡ダムなど大規模水力・火力発電所の増設に重点が置かれ、原子力は「適度に開発」という方針であった。しかし、2002年以降顕在化した電力不足を契機に、省エネ・環境という観点を踏まえ、2003年の秋には原子力発電の「積極的開発」という方針に転換した。特に、2008年のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機への対策として、中国政府は4兆元にのぼる大型景気対策を打ち出し、原発の建設を一層加速させる方針に切り替えた。
 具体的には2020年までに原子力発電の設備容量を7,000万kWに増やし、総発電電力量に占める原子力の割合を2010年時点の2%から2020年には7〜8%に引き上げる方針を打ち出した。BP統計(British Petroleum Statistical Review of World Energy)によると、2014年の中国の総発電電力量は対前年比4%増の5.65兆kWh(世界の24%)であり、世界第一位の発電量となっている。
 なお、国務院は2015年5月、製造業の今後10年間の行動綱領である「中国製造2025」を公表した。現在、主力電源である石炭火力は産炭能力と鉄道輸送能力が限界に近く、大気汚染など環境上の問題も大きいことから、電力設備はクリーン化、低炭素化を目指すとした。原子力発電開発に関しては、安全で安定した発展を促進する方針を示している。独自の知的財産権を有する発電炉の開発と輸出能力の強化を目標に、大型加圧軽水炉CAP1400やHL1000のほか、高温ガス炉、ナトリウム冷却高速増殖炉、トリウム溶融塩炉の開発が重点項目として挙げられた。
3. 原子力発電開発戦略
3.1 炉型における中国自主開発と海外輸入炉の国産化の状況
 中国の原子力発電開発は、軽水炉の開発、次に高速増殖炉の開発であり、最終的に核融合炉の開発を目標としている。中国の軽水炉の開発は、加圧水型軽水炉(PWR)が中心であり、海外の技術と資金を導入し(1)原子力技術の自主開発と、(2)海外炉の導入・改良・国産化を同時に進行させている。(1)は潜水艦の軽水炉技術を持つ新CNNCが自主国産化CNP路線として、(2)は元水力電力部系のCGNPCが海外導入国産化CPR路線として進めてきた。海外からの導入炉は、各国の意向を受けて、フランスからフランスが初めて国産技術のみで開発した150万kW級新型PWR(N4シリーズ)をベースにしたPWR、ロシアからVVER−1000(ロシア型PWR)、カナダからCANDU−6(カナダ型重水炉)と様々で、その上で国産設計炉もあり、運転管理や燃料製造の効率化の観点から、国産化と並んで標準化が大きな課題となっている。
 国産化・標準化炉の開発については、フランスのフラマトムANP社、フランス電力会社(EDF)及びアルストム社の協力により、上海核工程研究設計院(SNERDI)が中心となって100万kW級の国産標準型PWRであるCNPシリーズの開発を進めた。CNP−650は秦山第IIにおいて建設、運転に入り、海南省・昌江でも建設が進んでいる。さらに大型炉であるCNP−1000、北京核工程研究設計院(BINE)によるCNP−1500が開発された。CNP−1000に関しては、運転サイクルが18〜24ヶ月(燃焼度:60GWd/トン)、耐用設計年数が60年。建設費はCNP−600の1,330ドル/kWに対して、CNP−1000は1,300ドル/kWと低減されており、発電コストも5セント/kWhと経済性が高いという特長がある。また、海外炉の導入・改良炉の開発に関しても、フランスEDFからの導入による大亜湾(M310、出力98万kW)をベースに、2ループの60万kW級原子炉への設計変更、さらに100万kW級への設計変更を行った。
 こうした結果、「第11次5ヶ年計画(2006〜2010年)」では、(1)原子炉の海外輸出を念頭に新CNNCが開発したCNP1000の普及、(2)CGNPCが大亜湾をベースに出力を108万kWに改良した第2世代原子炉CPR1000とその改良炉ACPRの普及(知的財産権はアレバ社にあるが、中国国内では自由に建設できる)、(3)100万kW級第3世代原子炉自主化プロジェクトとして米AP1000の導入及びフランスEPR1750の導入が並行して進められることになった。
(3)の海外炉の導入・国産化においては、WH社製、受動的固有安全炉と呼ばれる100万kW級の新型炉AP1000(PWR)の導入で、中国は三門1号機の建設を2009年4月から開始、40基以上建設する計画である。AP1000の知的財産権はWH社が持つが、技術移転を踏まえた4基以降、国内建設は中国国家核電技術公司(SNPTC、現、国家電力投資集団公司SPI)の裁量となる。
 さらに、AP1000をベースに135万kWを越える設計の場合、中国側に知的財産権が移るため、現在140万kW級原子炉CAP1400を開発中で、石島湾計画を進めている。そのほか、原子炉の輸出用として、中国が知的財産権を有する第3世代原子炉の開発が2013年4月から始まっている。
 また、華龍(HL1000:Hualong)炉は、自主開発を進めてきた第3世代原子炉ACP1000と導入国産化炉ACPR1000の技術を融合したものである。HL1000の炉心部にはACP1000を、補助系統にはACPR1000の技術が多数採用され、主な設計パラメータは、設計寿命が60年、燃料交換サイクル18〜24ヶ月、炉心溶融確率が10-6/炉年未満、大規模初期放射性物質放出確率(LERF)10-7未満で、大型の二重格納容器を持つ。実証炉として福建省・福清5号機の建設が2015年5月から進んでいる。図3に中国における各原子炉の国産化率の状況及び炉型開発の状況を示す。
 なお、中国における原子力発電の燃料サイクルは、ウラン資源開発から放射性廃棄物処分まで全て国産自給の方針であり、再処理プルトニウムリサイクル路線を取る。これらの核燃料製造施設は、過去の軍事産業を防衛するため、内陸奥深くに分散立地している。一方、原子力発電機器・発電設備の国産化に関する国内の製作基地は、ハルビン、四川/東方タービン、上海/上海重工集団に集約される(図4参照)。
3.2 原子力発電の対外輸出戦略
 中国では政府・企業の協調により、建設から設備製造、技術サポート、国家銀行ローン貸与まで、多元化した国際プロジェクトへの競争力を強化している。既にパキスタンではチャシュマ原発1・2号機で中国自主開発炉CNP300(出力30万kW)が2009年及び2011年から運転中である。そのほか、ルーマニア、アルゼンチン、英国、トルコ、南アフリカなどで原子力発電設備の輸出や建設提案を行っている(表2参照)。
3.3 主な新型炉の開発状況
 中国における原子炉の研究開発はPWR以外にも、高温ガス炉や高速増殖炉のほか、熱併給や海上浮揚式原子力プラントに利用されるモジュール方式の小型炉(SMR)、トリウムを利用する溶融塩炉、劣化ウランを利用する進行波炉、回収ウランを利用する先進重水炉等について行われている。
1)高温ガス炉の開発
 中国初の高温ガス炉(HTR−10:ペブルベッド型高温ガス炉)は、北京郊外の精華大学核能技術設計院で、2000年12月に臨界、2003年1月に発電併入した。この炉はドイツの技術で作られたもので、熱出力1万kW、電気出力2,600kWの発電を行う原型炉に近い実験炉である。
 さらに、実証炉(HTR−PM、電気出力10万kWモジュール×2基)が山東省石島湾で、2012年12月から建設を開始している。設備国産化率は75%に達し、独自の知的財産権を有する。運転開始は2017年の予定である。また、60万kWの高温ガス炉実用炉の開発も、2013年3月から中核能源科技有限公司を中心に進められている
2)高速増殖炉の開発
 中国政府は高速増殖炉を核融合炉へとつなぐ最重要炉として、2000年5月に北京郊外の原子能科学研究院に、熱出力6.5万kW、電気出力2.5万kW、燃焼度60GWd/t〜100GWd/tの実験炉(CEFR)の建設を開始した。建設費は3億2500万ドルを超える。この実験炉はロシアの設計(BN20)を基に、日本を含むIAEAの設計安全レビューを受けたもので、2010年7月に初臨界、2011年7月に発電併入した。初装荷燃料はロシアから輸入したUO2(19.6%及び64.4%濃縮ウラン)燃料で、取替燃料はMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料)である。
 実証炉は新CNNCを設置主体としてロシア型80万kW(BN800)をベースに設計を進めている。原子炉の建設は福建省・三明で、第13次5ヶ年計画(2016〜2020年)中に開始する予定である。
<図/表>
表1−1 中国の原子力発電所の概要(1/2)
表1−2 中国の原子力発電所の概要(2/2)
表2 中国の原子力発電輸出計画
図1 中国の原子力発電所立地地点
図2 中国の原子力事業者の体制
図3 中国における炉型の開発
図4 中国主要原子力機器製作拠点の立地図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
中国原子能機構、中国核工業集団公司及び国家核安全局 (13-01-02-03)
中国のエネルギー資源、エネルギー需給、エネルギー政策 (14-02-03-01)
中国の電力事情と発電計画 (14-02-03-02)
中国の核燃料サイクル (14-02-03-04)
中国の原子力国際協力 (14-02-03-05)
中国のエネルギー事情 (14-02-03-06)
中国の原子力開発体制 (14-02-03-07)

<参考文献>
(1)日刊工業新聞社:原子力eye 50(12)、中国、p.24−25(2004)
(2)(社)日本原子力産業協会:中国の原子力発電開発:エネルギー逼迫による必要性、2014年1月、http://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2014/11/china_data1.pdf
(3)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2016(2015年10月)、中国
(4)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2015(2014年10月)、中国
(5)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2015年版(2015年4月)、中国
(6)中国核電消息網:核電所一覧、http://www.heneng.net.cn/index.php?mod=npp
(7)世界原子力協会(WNA):Nuclear Power in China、(Updated February 2016)、http://www.world-nuclear.org/info/Country-Profiles/Countries-A-F/China--Nuclear-Power/
(8)日中科学技術交流協会:福島事故後の中国原子力開発 第27回原子力委員会資料第3号、2013年7月、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2013/siryo27/siryo3.pdf
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