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<概要>
 日中原子力協定は、1983年の第3回日中閣僚会議の合意以来6回の協議を経て1986年7月に発効している。
 協力の条件として平和目的への限定、核爆発利用の禁止、IAEA保障措置の適用、核物質防護措置の実施等が定められている点は、例えば日仏間、日英間の原子力協定の場合と同様である。
 この協定の下での具体的な協力内容としては、専門家の交流、情報交換の他、中国の商業用第1号炉の秦山原子力発電所の運転開始に伴う安全分野の協力が今後期待されている。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
1.協定締結の経緯
 1983年9月の第3回日中閣僚会議において、原子力分野での政府協議を行うことで、両国政府の意見が一致した。これを受けて、同年10月26日から第1回政府間協議が東京で開催され、その後、北京、東京において交互に合計5回の協議が行われた。1985年7月5日に北京において交互に仮署名が行われ、同年7月31日、第4回日中閣僚会議の際に、わが国の安倍外務大臣、中国の呉学謙(ウーシュエテエン)国務委員兼外交部長との間で署名が行われた。その後、所要の手続きを経て、1986年7月10日に発効した。
2.意義
 中国は、自国の経済開発を最重要課題の一つとしており、この関連で原子力エネルギー開発計画を推進し、諸外国との原子力平和利用分野での協力を積極的に進めるとしている。本協定の締結は、原子力分野における日中関係の安定的発展の基盤となるものである。 また核兵器国である中国との間で、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の適用に関する規定を含む協定を締結したことで、核不拡散体制の面からも本協定の意義は大きい。
3.協定の内容
 この協定は、前文、本文10か条、末文および2つの付属書からなっており、これに関連して合意議事録が作成されている( 表1−1 および 表1−2 参照)。
 この協定が定める協力の条件から、(1)再処理の規制、(2)形状・内容の変更、(3)20%以上の濃縮への規制、(4)プルトニウムと高濃縮ウランの貯蔵への規制、および(5)返還請求権の規定が除外されているのは、日仏間、日英間の原子力協定の場合と同じである。この協定における協力の条件は、次の事項である。
 (1) 平和目的への限定
 (2) 核爆発利用の禁止(平和的、軍事的の両方共)
 (3) 第三国移転には事前の同意が必要(ただし、包括的同意が得られている)
 (4) IAEAの保障措置の適用
 (5) ロンドン・ガイドラインに沿った核物質防護(PP)措置の実施
4.実際に行われている主な協力関係
 この協定は、協力の方法として専門家および情報の交換、核物質などの供給、役務の提供などをあげており、協力の分野としては、
 (イ) 放射性同位体元素および放射線の研究および応用
 (ロ) ウラン資源の採鉱および採掘
 (ハ) 軽水炉および重水炉の設計、建設および運転
 (ニ) 軽水炉および重水炉の安全上の問題
 (ホ) 放射性廃棄物の処理および処分
 (ヘ) 放射線防護および環境監視
 (ト) 両国政府が合意するその他の分野
と規定している。
 さらに、協力を平和的目的に限定して、
 (1) 協定の対象物に対しては、国際原子力機関の保障措置が適用されること
 (2) 主要規定に対する違反がある場合には適切な措置がとられること
などを規定している。
 現在、日中間では、この協定のもとで、専門家および情報の交換を中心とした協力が行われているが、中国においては、1994年4月に商業用第1号炉である秦山原子力発電所が運転を開始したこともあり、今後は安全分野における一層の協力が期待されている。
<図/表>
表1−1 日中原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−1  日中原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−2 日中原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)
表1−2  日中原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)

<関連タイトル>
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成4年版(1992年11月)
(2) 外務省原子力課(監修):原子力国際条約集、(社)日本原子力産業会議(1993年6月10日)p.12−14
(3) 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック 1994年版、(社)日本原子力産業会議(1994年3月)
(4) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力平和利用に関する二国間協力、第11章国際協力の推進、原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)p.382−387
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