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<概要>
 原子力発電技術機構は、昭和51年3月に設立された財団法人である。当初は、「原子力工学試験センター」という名称であったが、平成4年4月に「原子力発電技術機構」と改称した。原子力発電技術機構は、原子力発電用機器などの安全性・信頼性を実証する各種の工学試験、安全解析、情報の収集・分析などのほか、広く一般に正確な情報を提供する広報活動も行ってきた。工学試験は、多度津工学試験所、勝田工学試験所等で実施され、多度津工学試験所には、世界最大の大型高性能振動試験台設備が備えられて耐震実証試験が行われた。その後、平成15年に独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)の設立に伴い、安全規制に関連した事業がJNESに移管され、また、耐震実証試験も平成17年3月に終了し、残る事業を財団法人エネルギー総合工学研究所が継承して、平成20年3月末に組織を解散した。
<更新年月>
2009年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.組織
 (財)原子力発電技術機構(Nuclear Power Engineering Corporation:NUPEC)は、昭和51年(1976年)3月に電力業界、電機業界、建設業界などの民間企業の協力により設立された。当初は、原子力工学試験センターと呼ばれ、多度津工学試験所、勝田工学試験所等での原子力発電用機器の信頼性実証試験を主たる業務としていたが、昭和55年(1980年)に安全解析所が設置され、国が行う原子力発電所の設置等に係る安全審査の合理化、効率化を図り、その内容の信頼性と客観性を高めるための補助的・専門的機関の役割も担うようになった。平成4年(1992年)4月には社会一般への広報活動を含めた総合的な事業展開を目指した組織改変が行われ、名称が原子力発電技術機構に改められた。
 その後、国の行政改革の一環として、平成15年(2003年)10月に原子力規制行政の支援を担う(独)原子力安全基盤機構(JNES)が設立され、NUPECの安全規制に関連した事業はJNESに移管された。さらに、残る事業(安全解析業務、廃止措置関連業務、および工学試験の成果を活用する事業)は(財)エネルギー総合工学研究所に移管され、NUPECは平成20年3月末に解散した。
2.事業の概要
 上記のとおり、NUPECでは原子力発電用機器などの安全性・信頼性を実証する各種の工学試験、安全解析、情報の収集・分析などのほか、広く一般に正確な情報を提供する広報活動が行われた。また、海外機関との共同研究や情報交換など幅広い国際協力も実施された。以下に、主要な事業の概要をまとめる。
2.1 工学試験
 原子力発電用機器、配管、燃料集合体などの安全性と信頼性の工学試験は、
 イ.現在使用されている機器、技術などについての安全性・信頼性を実証する信頼性実証試験、
 ロ.新たに改良・改善された技術や、今後必要となる技術についての安全性・信頼性を確認する確証試験、
 ハ.今後開発が期待される技術の調査・試験、
と大きく3つに分けられる。
 工学試験では、その目的に応じて実物大あるいは実物に近い大きさで、実際の使用条件さらにはより過酷な条件で、その安全性・信頼性の確認が行われる。NUPECにおける主要な工学試験は以下のとおりである。
 (a)耐震試験
 原子力発電所の大型機器や安全上重要なシステムについて、試験体を大型高性能振動台で加振し、大地震に対する耐振性を実証する。すなわち、機器などの振動特性、耐震設計手法の妥当性、安全裕度の確認や、地震時の制御棒挿入性や、原子炉停止時の冷却系などの作動機能の信頼性を確認する。これらの試験を行うため、世界最大の大型高性能振動試験台設備を備えた多度津工学試験所が昭和57年8月に発足した。その主要性能を表1に示す。多度津試験所では、この大型高性能振動台を用いて、国からの委託試験を中心に、実物大またはそれに近い大型機器や安全上重要なシステムの試験体の耐震信頼性実証試験を行ってきた。また、試験所敷地内の第四紀層地盤を利用し、第四紀層地盤の耐震安定性確証試験も実施した。委託試験の全体工程を図1に、国からの受託試験の実績を図2にそれぞれ示した。なお、耐震実証試験は平成17年3月に終了し、同9月末に多度津試験所は閉鎖した。
 (b)プルトニウム有効利用型炉心安全性調査
 将来型軽水炉についての技術およびシステムの調査および安全性、運転性、保守性、経済性などの評価のための技術調査を実施した。また、プルトニウムの有効利用炉心の調査、MOX炉心解析手法の評価も行った。
 (c)原子力発電所の廃止措置技術実証
 原子炉圧力容器炉内構造物などの解体技術、解体前の放射能低減技術および除染効果計測技術、解体廃棄物の放射能測定・除染技術および処理高度化技術、建屋内残存放射能分布の測定・評価技術、原子炉遠隔解体システム技術などの開発を行った。
 (d)シビアアクシデントの研究
 原子炉格納容器の信頼性実証試験を行うとともに、将来型軽水炉の安全技術開発事業として、BWRの炉容器下部の散水冷却によるシビアアクシデント時の事故拡大防止技術(アクシデントマネジメント技術)の開発試験を行った。
2.2 安全解析業務
 安全解析分野では、国の安全審査の解析計算に必要な解析コードの改良整備、国に対して第3者的解析計算を行うほか、安全審査関係のデータの整理分析、事故・異常事象発生時の解析計算など行い、その成果を国の行う許認可に係る安全審査の円滑な遂行に役だててきた。
2.3 国際協力
 試験研究の分野での海外機関との共同研究や情報交換の実施、旧ソ連・東欧・開発途上国などに対する原子力安全に係わる協力、IAEAやOECD/NEAなどの国際機関の活動への参加など幅広い国際協力が行われた。
(前回更新:2004年3月)
<図/表>
表1 大型高性能振動台設備の主要性能
表1  大型高性能振動台設備の主要性能
図1 多度津工学試験所における国からの委託試験の全体工程
図1  多度津工学試験所における国からの委託試験の全体工程
図2 多度津工学試験所における国からの受託試験実績
図2  多度津工学試験所における国からの受託試験実績

<関連タイトル>
日本の主な原子力関連機関一覧 (13-02-02-01)

<参考文献>
(1)(財)原子力発電技術機構(編):原子力発電技術機構の概要(1996年9月)
(2)内藤正則:(財)原子力発電技術機構の解散と今後の事業展開、日本原子力学会誌、Vol. 50, No.4 (2008)
(3)(財)原子力発電技術機構:多度津工学試験所の歴史と役割、(財)日本エネルギー総合工学研究所ホームページ
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