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<概要>
 米国のエネルギー関連の研究所は、エネルギー省(DOE)の傘下に21研究所があり、そのうち基礎的な科学研究所は10、国家保安関連は3、原子力発電1、化石燃料1、再生可能エネルギー1、環境管理1、環境・生態学2、計測・標準1、教育1である。また環境保護庁(EPA)には環境放射能関連の2研究所がある。それぞれの研究開発の概要を以下に示す。また米国原子力学会について概要を述べる。
<更新年月>
2011年12月   

<本文>
1.分類
 米国のエネルギー開発・利用に関連する国立研究機関は主にエネルギー省(DOE)の下にあり、図1に示すように科学研究、原子力安全、化石燃料、エネルギー効率・再生可能エネルギー、原子力発電、健康・環境管理等に関連する研究所に分類されている。これらの研究機関から、米国の次世代エネルギーシステムへの取組がうかがえる。
 健康・環境管理に関しては、環境保護庁(EPA)の下にも環境放射線に関する研究開発とサービス業務の研究所がある。
2.国立研究所の研究開発課題
2.1 科学研究関連の研究所
 表1にDOEの自然科学研究の10研究所の主な研究課題とホームページを示し、図1にそれらの所在地を示す。表1に明らかなように、一つの研究課題に複数の研究所が取り組む体制をとっている。新しい科学・技術分野に取り組み高い研究開発の効率を望むため、多様な考え方の採用と、相互に刺激しながら研究開発の競争を促している。
 凝縮系物理・物質科学の研究開発は、少なくとも6研究所で進められ、素粒子物理・核物理科学の研究開発は7研究所で、核融合プラズマ物理研究はオークリッジ国立研究所とプリンストンプラズマ物理研究所が担当している。それぞれの研究所は、最新鋭の施設・機器と大きな研究利用者用の支援施設を持っている。
2.2 米国の核安全管理に関する研究所
 表2の1-3に示すように、ローレンスリバモア、ロスアラモス及びサンディア国立研究所は表記課題の研究所に分類されている。研究開発の課題に共通して核爆弾の不拡散、核テロの防止、米国と世界の保安の技術開発がある。
2.3 エネルギー開発と利用関連の研究所
 表2の4-6に示すように、アイダホ国立研究所、国立エネルギー技術研究所及び国立再生可能エネルギー研究所は、米国のエネルギーについては当面は原子力、化石燃料及び再生可能エネルギーの三本柱で進むことを示している。サバンナリバー国立研究所は次世代の原子炉開発や核燃料サイクル関連、大気環境技術の技術開発を担っている。
2.4 教育、生態学、分析、環境科学等の研究所
 表3にDOEの教育、生態学、分析、環境科学等の研究所を示す。このうちサバンナリバー生態研究所(SREL)は、サバンナリバーサイトにあるジョージア大学の施設である。DOEを含む多くの機関が同研究所に資金を投じており、米国の生態学研究の中心的機関である。DOEはこの研究所をDOE傘下の研究所に分類している。核物質の計測研究や核標準物質開発関連は、ニューブラウンスウィック研究所(NBL)が担っている。次世代の研究・技術者の育成に関する教育は、広報PAを含め主に科学・教育オークリッジ研究所(ORISE)が担っている。環境放射能に関する研究は、放射能・環境科学研究所(RESL)が中心である。
2.5 環境保護庁(EPA)の環境放射能に関する研究所
 表4にEPAの環境放射能に関する二つの研究所を示す。環境放射能、屋内大気の放射能のモニタリング、緊急チームによる原子力事故等への対応等のサービス業務に重点が置かれた機関である。
3.米国原子力学会(American Nuclear Society:ANS
 米国原子力学会(ANS)は、1953年の国連総会におけるアイゼンハワー大統領の演説、原子力平和利用(Atoms for Peace)の翌1954年にオークリッジ国立研究所で創設されたNPO(非営利団体)である。現在の本部はイリノイ州La Grange Parkにある(表5)。
 創設の目的は、国内外の原子力科学と技術利用への貢献であり、1955年から学会誌「Nuclear Science and Engineering」を発行している。会員数は、46ヵ国、11,000人。本会には21の常設委員会、18の専門委員会、5特別委員会等がある。現在の特別委員会の一つに、「日本福島事故委員会」があり、米国民と米指導者に事故と放射線影響の明確な解析結果を示すため活動している。また、この事故の日本支援のため日本援助資金(Japan Relief Fund)を募っている。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 DOEの科学研究所
表1  DOEの科学研究所
表2 DOEのエネルギー開発と利用関連の研究所
表2  DOEのエネルギー開発と利用関連の研究所
表3 DOEの教育、生態学、分析、環境科学等の研究所
表3  DOEの教育、生態学、分析、環境科学等の研究所
表4 EPAの環境放射能に関する研究所
表4  EPAの環境放射能に関する研究所
表5 米国原子力学会(American Nuclear Society: ANS)
表5  米国原子力学会(American Nuclear Society: ANS)
図1 米国DOE国立研究所の所在地
図1  米国DOE国立研究所の所在地

<関連タイトル>
米国エネルギー省の国立研究所の運営と技術移転 (13-01-02-13)
英国の研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-06)
カナダの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-03)
フランスの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-05)
ドイツの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-04)
西欧の主な研究機関と原子力学会(英、仏、独を除く) (13-01-03-17)
アジア・オセアニアの研究機関一覧 (13-01-03-01)
欧州原子力学会(ENS) (13-01-03-07)
中南米の研究機関一覧 (13-01-03-18)

<参考文献>
(1)DOEの研究所と科学研究所
及び
http://science.energy.gov/laboratories/
(2)EPAの研究所
http://www.epa.gov/aboutepa/narel.html及び
http://www.epa.gov/aboutepa/rienl.html
(3)米国原子力学会ホームページ、About Us、
http://www.new.ans.org/about/
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