<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 海外の原子力関連機関
<小項目> 民間機関(WANO・UI・ENS等)
<タイトル>
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)

<概要>
 国際放射線単位測定委員会(ICRU)は、1925年の第一回国際放射線医学会(ICR)からICRに置かれ1950年まで存続した「X線単位委員会」が始まりである。ICRUは設立当初から非営利組織(NPO)で非政府組織(NGO)であり、世界の物理学者、科学者、技術者等がボランティアで参加している。活動資金は、欧州委員会EC)、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)の国立ガン研究所、国際原子力機関IAEA)、世界の大学を含む25以上の関連機関や産業から得ている。事業目的は、(1)放射線と放射能の単位、(2)放射線医学的診断、放射線治療、放射線生物学、核医学放射線防護、産業・環境活動等における放射線と放射能の計測と手順、及び(3)この手順の決定に必要な物理的データの検討と適切な勧告、である。ICRUで課題を検討し報告するのは合計10の「報告書作成委員会(RC)」である。RCは、放射線防護、放射線科学、核医学、放射線治療(ガン治療)等の分野に関連し、放射能・放射線の単位・量の定義、計測と換算係数、計測技術や機器の標準化、基礎データの整備等を検討し、成果をICRU報告書(ICRU Report)に発表する。また、米国環境保護庁EPA)の支援による報告書「福島第一原子力発電所事故に関し環境に放出された放射線量の評価とモニタリング」を準備中である。
<更新年月>
2014年09月   

<本文>
1.国際放射線単位測定委員会(ICRU)の概要
1.1 ICRU設立の経緯と事業目的
(1)設立の経緯:1925年の第一回国際放射線医学会(ICR: International Congress of Radiology)に、放射線利用の基本とも言える「X線単位委員会(X-Ray Unit Committee)」が置かれた。1928年の第二回ICRには、放射線による健康影響を検討する「国際X線及びラジウム防護委員会(IXRPC)」が置かれた。
 1950年の第六回ICRにおいて、放射線利用の拡大から「X線単位委員会」は「国際放射線単位測定委員会(ICRU:International Commission on Radiation Units and Measurement)」となった。また、「国際X線及びラジウム防護委員会(IXRPC)」は、核実験による大衆の放射線被ばくへの懸念等から「国際放射線防護委員会ICRP)」になった。その後独立した両委員会は、放射線の「単位と計測」と「利用と影響」の観点から兄弟委員会とも言われている。
(2)ICRUの事業目的:ICRUは、(1)放射線・放射能の量の単位、(2)放射線医学的診断、放射線治療、放射線生物学、核医学、放射線防護、産業活動と放射線・放射能の計測と利用の手順、及び(3)この手順決定に必要な物理的データ等に関する検討と勧告、を目的に活動している。
 目的に沿ってICRUは、放射線計測に関する情報とデータを収集しその検討を進めるとともに、米国放射線防護測定審議会NCRP)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)、国際放射線防護委員会(ICRP)、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、国際標準化機構(ISO)、及び国際度量衡局(BIPM)と緊密に協力し情報交換等を行っている。
1.2 ICRU委員会と予算
(1)委員会と報告書作成委員会
 ICRUは当初から非営利組織(NPO)で非政府組織(NGO)であり、世界の物理学者、科学者、技術者がボランティアで参加している。互選によるICRU委員(コミッショナー)は、2014年には会長と副会長を含め14名(最大15名)である。
 ICRUで放射線利用等に関する様々な課題を検討し報告するのは、報告書作成委員会(委員会:Report Writing Committee)である。この委員会は必要に応じて設けられるアドホック委員会であり、「RC」と称されICRU委員が委員長となる。
 表1に、2014年現在の10の「RC」とその検討課題を示す。併せて、国際放射線防護委員会(ICRP)との協力委員会の検討課題を示す。
(2)予算
 ICRUは、ボランティアで運営されていたが、近年になり欧州委員会(EC)、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)の国立ガン研究所、国際原子力機関(IAEA)、大学を含め25以上の各国機関や関連産業から資金援助を受けている。その他、個人や多くの機関が直接・間接的にICRUの活動を支えている。

2.ICRUの近年の活動と成果
 表2に、検討分野とその検討項目別に最近の成果を示す。
2.1 放射線防護(表2の1)
 放射線防護の目的は、原子力と放射線利用による放射線被ばくからの作業者と公衆の防護及び環境保全である。表の報告内容(報告年毎)は、被ばく線量の正確な計測、個人被ばく線量計と環境放射線量のモニターによる計測、平常時と事故時とで異なる被ばくの態様の検討、低レベルの環境放射線量と放射性物質量の計測、内部被ばくで問題になるベータ線放出物質の計測・評価などに関するものである。被ばく線量と放射線リスクの関連に関しては、半減期、放射線エネルギー等を考慮した換算係数が報告された。
 米国環境保護庁(EPA)の支援で、「福島第一原子力発電所事故に関し環境に放出された放射線量の評価とモニタリング」に関して調査し報告書を準備中である。
2.2 放射線科学(表2の2)
 放射線による物理、化学、生物化学、医薬品開発、工業利用、放射線リスクの評価等に関する報告である。
(a)放射線・放射能の単位と量の定義:基礎的で報告は多い。ICRUの報告書作成委員会「RC000」は、2011年のICRUレポートNo.60を改訂した報告ICRUレポートNo.85aを発表した。
(b)放射線の測定法と機器の標準化:様々な放射線の生体影響の評価は容易ではないが、同等効果線量(equi-effective dose)の概念を導入した報告を準備している。
(c)放射線と物質の相互作用:一般人の放射線被ばくの原因になる屋内のラドンの影響に関する報告を準備している。また、国際放射線防護委員会(ICRP)と協力して、成人の「数値ファントム」に関する報告ICRP-Publ 110(2009)を発表した。
2.3 画像診断と核医学(表2の3)
 放射線と放射性医薬品は広く医療に利用されている。進歩の著しい画像診断技術において、患者の最小の放射線リスクによる最大の利益の為に、共通の概念、用語、計測技術等が必要になっている。その為、CT技術、画像の評価技術等が報告された。放射性医薬品については内部被ばくのモデル計算が検討されている。
 生理機能・分子イメージング技術は、患者の診断、腫瘍のステージ判断、治療計画等に役立つと期待される進歩の著しい最先端技術であり、報告が準備されている。
2.4 放射線治療:ガン治療(表2の4)
 これまで、電磁波(X線、γ線)、電子線、陽子線、中性子線、アルファ線、重粒子線等のストッピングパワー(電離数/単位距離)と正確な線量測定法、共通の文言による適切な処方と記録の記述形式の統一方法等が報告された。
 ガンの放射線治療には、正確な照射部位、放射線の種類による放射線量を定めることが必要であり、適切な情報交換が望まれる。ICRUは、継続してこれらの課題に取組んでいる。
 
3.今後の計画、褒賞制度及び情報の入手
(1)今後の計画
 ICRUの役割は、医療、科学、工業、環境等における放射線利用と放射線防護に関し、明白で統一的な概念と量及び単位の定義とその計測法の提供である。このため、ICRUは基礎的なデータを蓄積して継続的に再評価するとともに、医療等の利用分野の拡大に対応して適切で正確、かつ実用的な情報提供に努めている。
(2)グレイメダル賞
 グレイメダル賞は、1967年に創設された褒賞制度である。名称は、イギリスの物理学者で放射線の生物影響について研究し放射線生物学の分野を拓いたルイス・ハロルド・グレイ博士に由来する。これまでに、放射線腫瘍学、医用画像及び基礎科学の三分野で順送りに傑出した研究開発者に贈られている。2013年までに16名が授与された。
(3)情報の入手
 表3にICRUの近年の活動成果報告を示す。ICRUのレポートは、英国オックスフォード大学プレスから出版されており、パソコンのホームページを利用し全ての情報を入手できる。国内では日本アイソトープ協会、日本放射線技術学会等からICRUのレポートを入手できる。表4に発行準備中のレポートを示す。そのほか、ICRUは、広報誌(Journal of the ICRU)を英国オックスフォード大学プレスから年2回の割合で発行している。
(前回更新:2004年11月)
<図/表>
表1 ICRUの報告書作成委員会(RC)と課題(2014年)
表2 検討分野別の近年の主要なICRUレポート
表3 2007−2012年のICRUレポート
表4 準備中のICRUレポート

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
欧州委員会 (13-01-01-08)
国際原子力機関(IAEA)による放射線防護活動 (13-01-01-18)
国連科学委員会(UNSCEAR) (13-01-01-19)
世界保健機関(WHO) (13-01-01-21)
米国放射線防護審議会(NCRP) (13-01-02-07)
国際放射線防護委員会(ICRP) (13-01-03-12)
日本アイソトープ協会 (13-02-01-14)

<参考文献>
(1)ICRU ホームページ、http://www.icru.org/
RIST RISTトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ