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<概要>
 環太平洋原子力協議会(PNC)は環太平洋地域における原子力科学・技術およびその利用に関する情報交換と協力の推進を目的に、1988年に米国原子力学会(ANS)の主唱で設立された。1998年現在、加盟しているメンバーはANSの他にカナダ原子力学会、カナダ原子力協会、韓国原子力産業会議、日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)、日本原子力学会、それに中国、台湾、メキシコ、オーストラリア、インドネシアの各原子力学協会、およびANS南米支部の8か国、2地域の12機関である。
 PNCは、環太平洋原子力会議(PBNC)を主催するとともに、環太平洋地域に共通する原子力関連の重要事項について、ワーキング・グループによる検討を行っている。
<更新年月>
1999年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.設立経緯
 環太平洋原子力協議会(PNC:Pacific Nuclear Council)は、環太平洋地域における原子力科学・技術およびその利用に関する情報交換と協力の促進を目的として、1988年に設立された非政府・国際組織である。1998年現在、米国原子力学会(ANS:American Nuclear Society)、カナダ原子力学会、カナダ原子力協会、韓国原子力会議、日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)、日本原子力学会、それに中国、台湾、メキシコ、オーストラリア、インドネシアの各原子力学協会、およびANS南米支部が参加している。
 ANSは、1976年から環太平洋地域における原子力分野の交流を促進するために、ANS国際トピカル会議として環太平洋原子力会議(PBNC:Pacific Basin Nuclear Conference)を開催してきた。1985年5月のソウルでの第5回PBNCにおいて、地域における原子力開発利用上の共通課題と協力方法について意見交換するため、環太平洋原子力協力委員会(PBNCC:Pacific Basin Nuclear Cooperation Committee)を設立した。
 PBNCCは、運営委員会と5のワーキンググループを設置し、活動を開始した。日本は日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)を窓口として関係者が参画していた。その後、PBNCCの運営委員会でその組織および位置付けの明確化の提案があり、ANSはこれを受けて規約案の検討を行い、1988年6月のANS理事会で新しい組織(PNC)の規約案を承認した。
 1988年11月に、ANS、カナダ原子力協会、韓国原子力産業会議がPNC規約に署名し、PNCが発足した。日本は日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)と日本原子力学会が連名で加盟することになり、1989年4月に署名した。その後、環太平洋地域の他の関係機関にもPNCへの加盟を呼びかけ、1998年現在で8か国2地域12機関の規模にまで発展した。
2.目的
 PNCの目的は次のとおりである。
(1)会員間の協力を促進し、原子力科学技術の平和利用を共有する。
(2)PNCが検討するに値する環太平洋地域に共通の関心がある原子力関連のトピックスを選定する。これら検討されるべきトピックスは、環太平洋地域特有の利益と関心を反映したものとする。PNCは地域協力の遂行に重点を置いた地域的組織であり続けることが意図されている。
(3)特別なワークショップおよびワーキンググループを運営する上で適切な政策・手順を策定する。
(4)特別なワーキング・グループあるいは委員会、ワークショップの開催およびPNCの発表に関する適切な政策・手順を策定する。特別のワークショップに対してPNCは、そのトピックスおよび関連のワーキング・グループの選定を行う。ワーキンググループ間で調整を必要とする際には、PNCがワークショップ調整委員会を指定する。
3.組織・運営
 PNC規約による会員の資格は、これまでPBNCを主催し、若しくは過去にPBNCCの活動に積極的に参加してきた専門の原子力機関をもって構成するとしている。利益を共有する機関は連名による加盟が可能だが、投票権は1票のみで、カナダおよび日本の各2機関はこの連名による加盟をしている。会費の不払いあるいは自由意志による脱退が行われない限り会員資格は無期限となっている。環太平洋地域の原子力専門機関で、PNC主催の活動へ積極的参加を希望する機関は、協議会の決定により付与される会員資格の取得を申請できることになっている。
 各加盟機関は、PNCの上記の目的を実施するため協議会を構成する正式な代表1名を指名し、任期2年の会長を選任する。PNCは参加機関からの会費で運営されている。事務局は当初はANSにおいていたが、現在は会長の所属する機関が担当している。
 PNCは、加盟機関の代表による運営会議を年2回開催し、活動の計画・評価・調整を行っている。発足以来の定常的な活動として、PBNC会議の後援(後に管轄)およびワーキング・グループ活動がある。ワーキング・グループ活動としては、PBNCCから継続の、1)人員の訓練、2)原子力安全、3)コードと基準、4)パブリック・アクセプタンス、5)放射性廃棄物管理に関する活動を行ってきたが、これらの活動は終了し、現在はタスク・グループ活として、1)パブリック・アウトリーチ、2)放射性廃棄物対応、3)組織再編成の検討を実施している。
 なお、1997年11月からPNC再編成の検討を始めており、上記目的の見直しを含む組織の再編成の検討が進んでいる。
4.活動の内容
(1)PBNC会議の開催
 PBNC会議は、環太平洋地域各国の原子力分野での情報交換、国際協力、交流等を図る目的で、ANSが国際トピカル会議として始めたものである。第1回PBNC会議は1976年にハワイで開かれ、以後約2年ごとに東京、アカプルコ、バンクーバー、ソウル、北京、サンディエゴ、台北、シドニー、神戸、バンフで開催されてきた。PNCの発足後はANS管轄・PNC後援のもとで開催されてきた。1998年5月のバンフでの第11回PBNC会議から、会議開催の管轄がANSからPNCへ移り、現在はPNCが開催の決定をしている。第12回は2000年10月にソウルで、第13回は2002年に中国で開催の予定である。会議の規模として、最近の3回のPBNC会議の論文数、参加人数、参加国を下記に示す。
第9回 シドニー(1994年 5月) 188論文 470人 35か国
第10回 神戸  (1996年10月) 192論文 600人 17か国
第11回 バンフ (1998年 5月) 182論文 630人 29か国
 注目すべきは、環太平洋という名のついた会議にもかかわらず、欧州の仏・英を始め環太平洋地域以外の地域の多くの国が参加していることである。これは環太平洋地域、特にアジア地域の経済が将来にわたって成長が期待されており、これに伴うエネルギー供給における原子力の役割が大きいことによると考えられる。
 PBNC会議は、電力需要の伸びが低くエネルギー間の競争が激しい欧米諸国と、経済成長率が高く原子力利用を拡大しつつある、あるいはこれから着手しようとしているアジア諸国との、原子力利用推進に関る課題について意見交換する場であると位置付けられる。PBNC会議の主催機関もプログラム委員に欧州の代表を含めたり、プレナリーセッションに他の地域の講演を入れるなど、持続可能な発展のためにグローバルでオープンなプログラム作成を行っている。
(2)ワーキンググループによる活動
 ワーキンググループ(WG)は、参加国に共通する課題について参加機関の専門家が共同で検討する組織で、その検討結果は、PNCの運営会議に報告され、最終的には報告書として参加機関に配布される。当初からのWG活動のテーマ、すなわち、1)人員の訓練、2)原子力安全、3)コードと基準、4)パブリック・アクセプタンス、5)放射性廃棄物管理については、1998年現在いずれも初期の目的を達成、報告書を作成してその活動を終了している。現在、活動しているタスク・グループ(TG)は、1)パブリック・アウトリーチ、2)高レベル放射性廃棄物/使用済燃料管理、3)組織再編成である。
1)パブリック・アウトリーチTG
 このTGは以前からのパブリック・アクセプタンスWGを発展させたもので、パブリックにアウトリーチ(outreach)する方策などの検討をしている。PBNC会議においてはパネルセッションを開き意見交換を場を提供している。
2)放射性廃棄物対応SG
 神戸での第10回PBNC会議の閉会セッションにおける、池亀組織副委員長(東電)の「PNCが情報交換の場から、放射性廃棄物の管理問題など域内の共通課題について共同の対応を考える場になって欲しい」との提案を受けて、このステアリンググループ(SG)が結成された。高レベル放射性廃棄物(HLW)および使用済み燃料(SF)の管理について、環太平洋地域における共同対応の可能性、方策について検討を行っている。
3)組織再編成STG
 1997年11月の運営会議において、環太平洋地域における経済、エネルギー、原子力状況の変化に積極的に対応してより活発な活動をするため、PNCの組織の再編成を検討することが決められ、再編成を検討する特別タスクグループ(STG)が発足した。PNCの目的、加盟会員資格、資金、活動方法の見直しなど、組織再編成全般について検討を進めている。

最後に、環太平洋原子力関係会議および活動組織の概要を一括して、表1に示す。
<図/表>
表1 環太平洋原子力関係会議・組織一覧
表1  環太平洋原子力関係会議・組織一覧

<関連タイトル>
日本原子力学会 (13-02-02-04)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力学会(編集発行):日本原子力学会誌 VOL.31,No.5 p.118(1989年5月)
(2)(社)日本原子力学会(編集発行):日本原子力学会誌 VOL.33,No.5 p.68(1991年5月)
(3)(社)日本原子力学会(編集発行):日本原子力学会誌 VOL.36,No.9 p.58(1994年9月)
(4)(社)日本原子力学会(編集発行):日本原子力学会誌 VOL.39,No.1 p.47(1997年1月)
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