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<概要>
 カナダの主に原子力と放射線の研究・開発を進める機関のうち、核燃料サイクルに関連するカナダ原子力公社AECL、基礎研究から応用研究まで広範囲に進める大学、カナダ国立研究機構NRC・CNRC及び関連する学協会等を紹介する。
<更新年月>
2010年10月   

<本文>
1.カナダの原子力・放射線利用の概要と研究開発
 カナダは豊富なウラン資源に恵まれ、その90%は輸出され、10%は国内でCANDU炉燃料に利用される。使用済燃料は直接処分の予定である。また、医療や工業用の放射性同位体RIの研究・開発と製造・販売は1949年以来の実績があり、放射線の工業、農業などへの利用も進んでいる。そのため、多様な分野の基礎的研究、CANDU炉に関する研究・開発、RIや放射線の工業・医療分野の利用に関する研究開発などがある。
2.主な研究・開発の機関
 原子力利用の研究開発は、カナダ原子力公社(AECL:Atomic Energy of Canada Limited)、大学、カナダ国立研究機構(NRC・CNRC:National Research Conseil Canada)などで主に進められている。以下に、主要な機関について述べる。
2.1 カナダ原子力公社(AECL:Atomic Energy of Canada Limited)
 表1の(1)にAECLの研究所を示す。AECLのチョークリバー研究所(CRL:Chalk River Laboratory)はカナダの原子力研究の要であり、二基の研究炉、加速器等を整備し大学等と協力して基礎研究とともに、以下に示す8項目;(1)炉安全、(2)ソフトウエア、(3)炉物理・燃料、(4)燃料チャンネル、(5)システム、(6)水素と重水、(7)環境放出・保健物理、(8)研究情報・管理の研究・開発を進めている。また、CANDU-600の改良と新CANDU炉(ACR-1000)の開発も担当している。NRU炉(National Research Universal)を利用するRIの製造・販売では、MDS Nordion社と協力している。
 ホワイトシェル研究所(Whiteshell Laboratory)は、1998年に廃止になり研究炉や施設の廃止措置が進められているが、放射性廃棄物処分の研究・開発を進める地下研究施設(URL:Underground Research Laboratory)は継続利用されている。その他の研究開発は、チョークリバー研究所に統合中である。
2.2 カナダ国立研究機構(NRC:National Research Conseil Canada)
 表1の(2)に示す中性子利用研究センター(NRC-CNBC:NRC Canadian Neutron Beam Centre)は、カナダ国立研究機構に属する。チョークリバー研究所のNRU炉(National Research Universal)を利用して、中性子線技術、物質科学・技術、生物科学、構造科学、表面科学等の推進と工業利用を支援する。
2.3 大学など
 表2に示す大学にはSLOWPOKE-2型研究炉が6基、そのほか多くの加速器があり、物理・化学、放射化分析などの基礎から利用までの多岐にわたる研究・開発を進めている。表3に示すトロント大学等の大学は、原子力工学研究ネットワーク(UNENE:University Network of Excellence in Nuclear Engineering)を組んでいる。
 UNENEは、世界のCANDU炉所有会社グループ(COG:CANDU Owners Group)と契約し、(1)材料・化学、(2)燃料チャンネル、(3)安全・許認可、(4)保健物理・環境等の研究・開発を進めている。表3の右の欄に大学に対応してその研究課題を示す。
 表4に、放射光、プラズマ、核物理・素粒子研究が目的の高エネルギー加速器を備える研究所を示す。
2.4 学協会など
 表5に、原子力利用及び開発に関連する学協会を示す。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 カナダ原子力公社とカナダ中性子ビームセンター
表1  カナダ原子力公社とカナダ中性子ビームセンター
表2 原子力関連の大学及び組織
表2  原子力関連の大学及び組織
表3 原子力工学研究大学ネットワークUNENEとCANDU炉所有会社COGの協力
表3  原子力工学研究大学ネットワークUNENEとCANDU炉所有会社COGの協力
表4 高エネルギー加速器関連の組織
表4  高エネルギー加速器関連の組織
表5 原子力利用に関連する学協会など
表5  原子力利用に関連する学協会など

<関連タイトル>
カナダのウラン鉱業政策と資源量(レッドブック2003) (04-02-01-09)
60Co線源の利用状況 (08-01-03-22)
放射線利用の概要 (08-01-04-01)
フランスの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-05)
英国の研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-06)
米国のエネルギー関連研究機関と原子力学会 (13-01-03-20)
カナダの原子力政策・計画 (14-04-02-01)
カナダの原子力発電開発 (14-04-02-02)
カナダの核燃料サイクル (14-04-02-05)
カナダの放射性廃棄物管理 (14-04-02-07)

<参考文献>
(1)Govinda Timilsina, Thorn Walden, Paul Kralovic, Asghar Shahmoradi, Abbas Naini, David McColl, Phil Prince and Jon Rozhon,“THE CANADIAN NUCLEAR INDUSTRY:CONTRIBUTIONS TO THE CANADIAN ECONOMY”, Chapters 1, 4 and 6, Canadian Energy Research Institute(2008),
(2)OECD/NEA - About us - Country profile - Canada,
http://www.nea.fr/general/profiles/canada.html
(3)IAEA, Country Nuclear Power Profile, Canada, http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/cnpp2009/countryprofiles/Canada/Canada2003.htm
(4)カナダ原子力公社、AECL:Atomic Energy of Canada Limited,
http://www.aecl.ca/, 研究開発計画
チョークリバー研究所, ホワイトシェル研究所
(5)カナダ中性子ビームセンター、NRC‐CNBC:Canadian Neutron beam center,

(6)原子力工学研究ネットワーク、UNENE:University Network of Excellence in Nuclear Engineering, http://www.unene.ca/
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