<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 安全審査指針等
<小項目> 放射性廃棄物処理・処分に関する安全規制
<タイトル>
日本のクリアランス制度 (11-03-04-10)

<概要>
 旧原子力安全委員会等において、1997年5月から2005年3月にかけクリアランスの判断基準、原子炉施設及び核燃料使用施設におけるクリアランスレベル濃度基準、原子炉施設におけるクリアランスレベル検認のあり方等について検討が行われた。日本におけるクリアランスの判断基準は、ICRPIAEA等の考え方を取り入れ、個人線量で年間約10マイクロシーベルト(μSv)が妥当であるとされた。
 その後、2005年5月の原子炉等規制法の改正に伴いクリアランス制度が成立し、同年12月に施行規則が制定された。これらの規制整備に基づき、日本原電(株)ら東海発電所の廃止措置により発生する解体物等について、経済産業省にクリアランスのための認可申請が行われ、2007年5月、最初の確認書が交付された。さらに同年11月、JRR-3の改造工事に伴って発生したコンクリート廃棄物約4,000トンについて認可申請が行われ、2013年末までに約3,000トンが確認を受けた。
 また、ウラン加工、TRU核種を取り扱う施設等から発生する解体物等を対象とするクリアランスレベルについては、2014年2月に原子力規制委員会規則として、2005年12月の施行規則に追加し、制定された。
<更新年月>
2014年10月   

<本文>
1.日本におけるクリアランス制度の導入までの経緯
 旧原子力安全委員会は、廃止措置等により発生する解体物等のクリアランス基準について、IAEA-TECDOC-855が1996年に出版されたのを契機に、旧原子力安全委員会放射性廃棄物安全基準専門部会において、1997年5月から2005年3月までの間に検討を行った。その結果、クリアランスの判断基準は、ICRP、IAEA等の考え方を取り入れ、個人線量で年間約10μSvが妥当であるとされた。この線量に基づき、原子炉施設及び核燃料使用施設を対象に、最も厳しい条件を考慮して放射能濃度基準値(単位:Bq/g)が導出された。また、原子炉施設におけるクリアランスレベル検認のあり方等についても検討された。
 その後、2005年5月の原子炉等規正法の改正に伴いクリアランス認可制度が成立した。この法改正により同年12月施行規則を制定し、経済産業省令第112号及び文部科学省令第49号の別表に示す放射能濃度は、国際的整合性の観点から、最終的にIAEAの指針RS-G-1.7で推奨する人工起源の放射性核種の放射能濃度値を取り入れた。さらに、ウラン加工、TRU核種を取り扱う施設等から発生する解体物等を対象とするクリアランスレベルについては、2009年に旧原子力安全委員会等で検討され、2014年2月に原子力規制委員会規則第一号として、2005年12月の施行規則に追加して制定された。
2.原子炉等規制法におけるクリアランス制度
 原子力施設等の廃止措置や運転・保守に伴って発生する解体物等の中には、放射能濃度が極めて低く、人の健康への影響が無視でき、「放射性物質として扱う必要がない物」が含まれている。これらを測定・評価し、放射能濃度基準値以下であることを確認したものを一般資材として再利用、又は処分することができる制度を「クリアランス制度」と呼ぶ。
 クリアランス制度に基づき、クリアランスレベル検認制度(以下「検認」という)が整備された。この検認とは、クリアランスレベルを用いて「放射性物質として扱う必要がない物」であることを原子力事業者が判断し、その判断に加えて規制当局が適切な関与を行うことである。原子炉の廃止措置を例に検認の流れを図1に示す。国による測定・判断方法の認可及び国により測定・判断結果の確認の2段階に整理されている。
 まず、原子力事業者において事前の評価により、クリアランスレベル検認対象物(以下、「対象物」という)の汚染状況や物量を把握した上で、対象物の測定及び判断の方法を策定し、その内容の妥当性について認可を受ける。次に、認可を受けた測定・判断の方法に基づき、汚染の形態(放射化汚染、2次的な汚染)等を考慮し、放射化計算又は適切な測定器を用いて、対象物中の放射性核種濃度を測定する。
 原子力事業者が行った測定・判断の結果については、国が基本的には記録に基づいて確認を行うが、検認の客観性を高める観点から、必要に応じ抜き取りによる測定が行われる。
2.1 クリアランスに関する法律
 クリアランスに関する法律は、原子炉等規制法の第六十一条の二(放射能濃度についての確認等)及び第七十二条の二の二(環境大臣との関係)に定められた。放射能濃度についての確認等について、次のように定めている。
 第六十一条の二の1項では、「原子力事業者等は、工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして原子力規制委員会規則で定める基準を超えないことについて、原子力規制委員会規則で定めるところにより、原子力規制委員会の確認を受けることができる。」こと、2項では、「前項の確認を受けようとする者は、原子力規制委員会規則で定めるところによりあらかじめ原子力規制委員会の認可を受けた放射能濃度の測定及び評価の方法に基づき、その確認を受けようとする物に含まれる放射性物質の放射能濃度の測定及び評価を行い、その結果を記載した申請書その他原子力規制委員会規則で定める書類を原子力規制委員会に提出しなければならない。」こと、3項では、「第一項の規定により原子力規制委員会の確認を受けた物は、この法律、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)その他の政令で定める法令の適用については、核燃料物質によって汚染された物でないものとして取り扱うものとする。」と述べられている。
 また、上記、法第六十一条の二に関連して、法第七十二条の二の二(環境大臣との関係)に環境省の意見、環境省への連絡等ついて、次のように定めている。
 その1項では、「廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第一項に規定する廃棄物をいう。第三項において同じ。)の適正な処理を確保するため特に必要があると認めるときは、第六十一条の二第一項又は第二項の規定の運用に関し原子力規制委員会に意見を述べることができる。」こと、2項では、「原子力規制委員会は、第六十一条の二第一項の確認をし、又は同条第二項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を環境大臣に連絡しなければならない。」こと、3項では、「原子力規制委員会は、環境大臣に対し、第六十一条の二第一項の確認を受けた物が廃棄物となった場合におけるその処理に関し、必要な協力を求めることができる。」と述べられている。
2.2 クリアランスに関する規則について
 「放射能濃度についての確認等」に関する規則は、原子炉等規制法の改正に伴い原子力規制委員会規則として定めている。(表1参照)
 放射能濃度(Bq/g)の基準は、発電用原子炉施設等を対象に「製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」の別表第一(第2条関係)に33核種(表2参照)を定め、加工施設等を対象に別表第二(第2条関係)にウランの5核種(表3参照)を定めている。
 また、試験研究炉、使用施設等を対象に「試験研究の用に供する原子炉等に係る放射能濃度についての確認等に関する規則」の別表第一(第2条関係)に改定前の49核種にウランの5核種を加え定めている(表4-1表4-2参照)。
2.3 日本原子力学会標準(クリアランス判断方法)
 日本原子力学会は、クリアランス認可基準の第六条(測定及び評価の基準)に参考となる日本原子力学会標準「クリアランス判断方法:2005」、また「ウラン取扱施設におけるクリアランスの判断方法:2010」を定めている。これらの標準には参考となる附属書を提供している。主な項目を次に示す。
・測定・評価計画の策定
 事前調査の方法(評価対象核種及び放射線測定条件の選定方法)、評価対象の設定方法、測定点の設定方法、放射能濃度の評価方法等
・評価対象核種濃度の測定・評価方法
・クリアランス判断(判断方法、クリアランス判断の裕度の設定方法)
・「放射性廃棄物でない廃棄物」の判断方法
・品質マネジメントシステム
・記録
3.日本原電(株)東海発電所のクリアランス認可の申請と確認書交付の例
 平成18年6月、「東海発電所において用いられた資材等に含まれる放射能濃度の測定及び評価方法の認可申請」(金属の一部:約2,000トン)が行われ、同年9月に認可された。その後、経済産業省は、認可申請の第一回分としてクリアランス対象廃棄物107トンの放射能濃度測定結果について、平成19年5月、確認書を交付した。2013年5月までにクリアランスレベル以下であり一般の資材として再利用された実績は、遮蔽体79体、ベンチ61脚、配管サポート用コンクリート基礎の埋込金具223個、クレーン荷重試験ウエイト89個である。
4.JRR-3の改造工事に伴って発生したコンクリート廃棄物のクリアランス
 JRR-3の改造工事に伴って発生したコンクリート廃棄物約4,000トンについて、2007年11月に文部科学大臣へ認可申請が行われ2008年7月に認可された。2013年末までに約3,000トンの確認を受け、研究所内の戻し材や駐車場の路盤材等に約1,800トンが再利用された。
<図/表>
表1 発電用原子炉等及び研究炉施設等を対象とする放射能濃度についての確認等に関する規則の条項
表2 発電用原子炉施設等を対象とする放射能濃度の基準
表3 加工施設等を対象とするウラン廃棄物の放射能濃度の基準
表4-1 研究炉施設等を対象とする放射能濃度の基準(1/2)
表4-2 研究炉施設等を対象とする放射能濃度の基準(2/2)
図1 クリアランスレベル検認の流れ(原子炉施設の廃止措置の例)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
クリアランスに対する米国の取組み (05-01-03-25)
放射性廃棄物としての規制免除についての考え方 (11-03-04-04)
各国における放射性廃棄物規制除外(クリアランス)の動向 (11-03-04-05)

<参考文献>
(1)IAEA Safety Standards Series:“Application of the Concepts of Exclusion, Exemption and Clearance”Safety Guide No.RS-G-1.7(08/2004)、
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1202_web.pdf
(2)原力安全委員会、放射性廃棄物・廃止措置専門部会:原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について(平成16年12月16日)、http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/haiki/page5/050408-1.pdf
(3)総合資源エネルギー調査会、原子力・保安部会 廃棄物安全小委員会:原子力施設におけるクリアランス制度の整備について(平成16年12月)、http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g41224b10j.pdf
(4)原子力規制関係法令研究会(編著):2014年版原子力規制関係法令集(I、II)、大成出版社(2014年9月)
(5)伊藤 洋一:原子力施設におけるクリアランス制度の整備について、日本原子力学会誌、Vol.47、No.3(2005)
(6)日本原子力発電(株):東海発電所の廃止措置「クリアランス金属の再生加工」、http://www.japc.co.jp/project/haishi/clearance_results.html
(7)製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則(平成十七年十一月二十二日経済産業省令第百十二号)最終改正:平成二六年二月二八日原子力規制委員会規則第一号。
(8)試験研究の用に供する原子炉等に係る放射能濃度についての確認等に関する規則(平成十七年十一月三十日文部科学省令第四十九号)最終改正:平成二六年二月二八日原子力規制委員会規則第一号。
(9)里山 朝紀、南里 朋洋、岸本 克己:「JRR-3の改造工事に伴って発生したコンクリート廃棄物のクリアランス」原子力バックエンド推進センター(RANDEC)、デコミッショニング技法第49号(2014.3.28)、http://www.randec.or.jp/publish/documents/gihou/Decommissioning%20gihou_49.pdf
(10)原子力安全委員会:「ウラン取扱施設におけるクリアランスレベルについて」009年10月、http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/sonota/houkoku/houkoku20091005.pdf
(11)日本原子力学会標準:「ウラン取扱施設におけるクリアランスの判断方法:2010」(AESJ-SC-F020:2010)
RIST RISTトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ