<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 原子力施設の安全規制
<小項目> 核燃料物質等の輸送の安全規制
<タイトル>
核燃料輸送容器の臨界安全性と遮蔽安全性 (11-02-06-12)

<概要>
 核燃料物質(以下燃料という)を燃料製造工場から原子力発電所へ、また原子力発電所から再処理工場へ運搬するなど、一般に原子力施設の間を運搬する場合には特別に設計された輸送容器を用いる。燃料が一個所に集中して集まると核分裂連鎖反応が急激に生じ、発熱するとともに強い放射線を放射するいわゆる臨界事故が発生する。また、原子力発電所から運搬される使用済み燃料には強い放射能を持った放射性物質が含まれており、強い放射線を常に放射している。このため、燃料を小分けして運搬したり、核分裂反応を引き起こす中性子を吸収する材料を用いるなどして臨界を防止するとともに、気密性が高く放射線の遮蔽能力の強い構造を持った輸送容器を用いて臨界安全性および遮蔽安全性を確保している。
<更新年月>
2010年10月   

<本文>
1.輸送容器に関する法的規制
 ウランプルトニウムのような核燃料物質(以下「燃料」という)および コバルト60 、カリホルニウム252などの放射性同位元素や放射性廃棄物など一般に放射性物質といわれるものは、その取扱い運搬などが原子力規制関係法令(「核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」、「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律」など)によって規制されている。輸送容器の臨界防止と放射線遮蔽を図1に示す。
2.臨界安全性
 燃料は一箇所に一定量集まると核分裂連鎖反応が持続する臨界状態となり、さらに一定量以上集まると核分裂連鎖反応が急激に起こるいわゆる臨界事故が生じる。臨界事故では大きなエネルギーが放出されるとともに強い放射線が放射される。このため、燃料の取扱い、貯蔵、運搬などにおいては、技術的に考えられる如何なる場合にも臨界にならないよう臨界安全性が確保されている。
3.臨界安全管理
 一般的な燃料の取扱いに関する臨界安全管理では、一定の質量以上の燃料は扱わない質量管理、一定の形状・寸法以上の燃料は扱わない形状・寸法管理、一定の濃度以上の燃料は扱わない濃度管理、核分裂によって生ずる中性子はそのスピードが水素などに衝突すると減速し燃料との反応がより効果的になるため、燃料に水、プラスチック、人などの中性子減速材を近づけない減速材管理などを行う。また、中性子を吸収あるいは遮蔽するためボロン、カドミウムおよびコンクリート材料などを併用している。
4.輸送容器の臨界安全性
 輸送容器の臨界安全性を確保するためには、燃料を小分けして一定量以下で運搬すること、あるいは原子力発電所から再処理工場へ使用済燃料集合体(集合体)を運搬する輸送容器のように一度に何体もの集合体を運搬する輸送容器では、集合体と集合体の間の間隔を一定の値以上確保して燃料が一箇所に集中しないようにしたり、核分裂反応に寄与する中性子を吸収するボロン(ホウ素)などを含有した材料をその間隙に設置すること、などの技術的対策を施している。このような対策を施すと、移動中に誤って輸送容器が河川に水没したり、複数の輸送容器が隣り合ったりあるいは積み重なっても臨界にはならない。
5.計算による臨界安全性の評価
 燃料を配置した輸送容器の臨界安全性は上記のような配慮により達成されるが、臨界状態に対してどの程度の安全裕度があるかは核的な計算によって評価されるのが一般的である。その場合のガイドとしては、日本原子力研究開発機構が編集している「臨界安全ハンドブック」がある。同ハンドブックには一般に用いられる計算方式の信頼性評価の方法が示されている他、同機構が整備している計算システムについて、それを使用した場合の安全裕度および計算誤差等について示されている。
 なお、計算によらずに臨界安全性を評価する場合の判断基準には上記の「臨界安全ハンドブック」の他、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどにおいて公開されている臨界安全ハンドブックやガイドも利用できる。
6.遮蔽安全性
 燃料や放射性同位元素は放射能を持っており常に放射線を放射している。このため、これらの放射性物質を運搬する輸送容器はその表面および表面から1メートル離れた位置の放射線量(線量当量率)が一定の値以下になるよう設計されており、一般公道をこれらの輸送容器が通行しても周辺の住民に放射線障害を与えないよう遮蔽安全対策が施されている。ガンマ線および中性子線などの放射線を遮蔽するためには鉄、鉛、ホウ素、プラスチック、水などが用いられ、これらの材料が輸送容器内に配置されている。
7.輸送容器表面の放射線量率
 核燃料物質等車両運搬規則(昭和53年運輸省(現国土交通省)令第72号)および「放射性同位元素等車両運搬規則(昭和52年運輸省令第33号)」によれば、上記の輸送容器表面および表面から1メートルの位置での許容される線量当量率の最大値はそれぞれ2ミリシーベルト毎時および100マイクロシーベルト毎時である。
<図/表>
図1 輸送容器の臨界防止と放射線遮蔽

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
わが国の核燃料物質輸送に係る安全規制 (11-02-06-01)
発電所用ウラン燃料の輸送 (11-02-06-02)
使用済燃料の輸送 (11-02-06-04)
研究炉用燃料およびMOX燃料の輸送 (11-02-06-05)
輸送容器の安全性 (11-02-06-10)

<参考文献>
(1)旧科学技術庁原子力安全局(監):原子力規制関係法令集、大成出版(1996年1月)
(2)日本原子力研究開発機構:臨界安全ハンドブック第2版(1999年3月)
(3)旧科学技術庁原子力安全局:核燃料輸送容器−その構造と安全性−、1986年3月
(4)旧科学技術庁原子力安全局核燃料規制課ほか(監):放射性物質等の輸送法令集1996年版、日本原子力産業会議(1996年1月)
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