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<概要>
 原子力発電所から取り出される使用済燃料は内部に燃え残っているウランプルトニウムの他、核分裂生成物等の放射性物質を多く含んでおり、通常原子力発電所内の使用済燃料プールで一定期間冷却した後、輸送容器に収納され、再処理工場へ海上輸送されている。この使用済燃料の輸送容器は新燃料の輸送容器と比べ格段に厳重に放射線や発熱に対する安全対策が施されている。軽水炉からの使用済燃料用の輸送容器としては、HZ型、EXCELLOX型、TN型、NFT型などがある。この輸送物はB型(核分裂性)輸送物として法律で規制を受けている。
<更新年月>
2002年01月   

<本文>
 原子力発電所の使用済燃料は、外観は新燃料集合体と同じであるが、ウランの他に、ウランが中性子を吸収してできたプルトニウム、ウラン等の核分裂によりできた核分裂生成物等の放射性物質を含んでいる。このため、原子炉から取り出された使用済燃料は、通常、発電所内のプールで放射能を弱めた後で輸送される。さらに、使用済燃料は核分裂生成物の崩壊により熱も発生する。したがって、使用済燃料の輸送に当たっては、新燃料と比べ格段に厳重に、放射線の遮へいおよび除熱などの安全対策が必要となる。使用済燃料の輸送容器は、遮へい性能・除熱性能・密封性能が良く、かつ、臨界にならない構造であることが必要である。さらに輸送中の環境変化、落下、火災などに備えて堅固な構造であることが要求される。輸送物はB型(核分裂性)輸送物として、厳しい技術基準を満足するように設計・製作される。
 軽水炉使用済燃料用輸送容器の例を 図1 (TN−12A)、 図2 (HZ−75T)、 図3 (EXCELLOX−4)に示す。現在、使用済燃料は、ほとんどが海上輸送となり、TN型、HZ型、EXCELLOX型およびNFT型(BWR 用)が、それぞれ国内、英国およびフランスの再処理工場に輸送するために使用されてきた。輸送物確認実績を 表1 に示す。寸法は、いずれの輸送容器も、直径約2m、長さ約6m、重量は約80〜100トンである。海上輸送に用いられる船舶は、国際海事機関(IMO)において採択されている海上人命安全条約SOLAS条約)および照射済燃料等の国際海上安全輸送規則(INFコード)の基準に適合する船舶であり、損傷時復原性、二重船殻構造、耐衝突構造等を有する船体構造となっている( 図4 参照)。
 輸送容器の構造は、HZ型、EXCELLOX型およびNFT型が容器の内部に冷却水が入った湿式(Wet)タイプ、TN型が容器の内部に空気が入った乾式(Dry)タイプであり、取扱い方法が異なる。遮へい材として、EXCELLOX型ではγ線には鉛材、中性子線にはレジン層を用いているのに対し、TN型およびNFT型(BWR用)ではγ線に対しては厚い鋼材、中性子線にはレジン層を用いている。HZ型ではγ線には鉛材、中性子線にはエチレングリコール水を用い、かつ、除熱能力を高めるため強制冷却が可能となるように冷却管を容器内に設けている。
<図/表>
表1 原子力発電用核燃料物質等の輸送物確認実績
表1  原子力発電用核燃料物質等の輸送物確認実績
図1 使用済燃料輸送容器(TN−12A)
図1  使用済燃料輸送容器(TN−12A)
図2 使用済燃料輸送容器(HZ−75T)
図2  使用済燃料輸送容器(HZ−75T)
図3 使用済燃料輸送容器(EXCELLOX−4)
図3  使用済燃料輸送容器(EXCELLOX−4)
図4 運搬船の内部構造
図4  運搬船の内部構造

<関連タイトル>
発電所用ウラン燃料の輸送 (11-02-06-02)
わが国の核燃料物質輸送に係る安全規制 (11-02-06-01)
六フッ化ウランおよび二酸化ウランの輸送 (11-02-06-03)
研究炉用燃料およびMOX燃料の輸送 (11-02-06-05)

<参考文献>
(1) 原子力安全委員会:平成12年版原子力安全白書、財務省印刷局(2001年4月27日)、p.143−146
(2) 通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1999年版、電力新報社(1999年10月23日)、p.192−200
(3) 科学技術庁原子力安全局核燃料規制課ほか(監修):放射性物質等の輸送法令集1997年版、日本原子力産業会議(1997年1月)
(4) 青木成文:放射性物質輸送のすべて、日刊工業新聞社(1990年6月)
(5) 松岡 理:核燃料輸送の安全性評価、日刊工業新聞社(1996年11月)
(6) 放射性物質安全輸送規則 1996年版解説、(財)原子力安全技術センター(2000年3月25日)
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