放射線管理室 (09-04-10-08)

＜本文＞
１）放射線管理室は、原子炉施設や放射性同位元素など取扱施設において、主として放射線業務従事者を対象に、また必要な場合には一般公衆も含めて、放射線管理担当者が客観的な立場から放射線防護に関する実務を行うために設けられている。
２）このため、放射線管理担当者により、放射線作業環境の放射線レベルや放射性物質による汚染レベルを、常に基準値以下に維持することを目的に、施設内の表面汚染検査や線量当量率測定および空気中の放射性物質を測定する等の、定期または不定期のサーベイが実施される。また、放射線防護の徹底を図るために、作業により生じる被ばくや汚染の状況、予想される異常、事故等について事前に評価、検討し、その結果に基づいて適切な防護措置を決める等、放射線防護の専門家としての助言と技術的援助を行う。
３）放射線管理室の設置は法令で義務付けらているものではないが、汚染レベルの測定と２）で述べた放射線安全管理の実務を、的確に実施する上で極めて重要である。放射線管理室は業務の便宜上放射線監視室と放射能測定室に分類されることもある。それらの規模および具備すべき条件は、管理対象施設の大きさ、取り扱う放射性物質の種類、作業内容、測定対象などにより異なる。なお密封線源のみを取扱う施設では、放射能測定室は不要である。
４）通常、放射線監視室は、狭義の意味で放射線管理室と同等に扱われることが多く、放射線監視設備もこの中に設置される。
　図１にアイソトープ使用施設における放射線管理室の例を、また、表１に常備すべき放射線管理用資機材の例を示す。
５）放射線管理室は、放射線施設全体の管理がし易いように、一般的に管理区域の出入口に近い場所の非管理区域側に設けられる。ここには放射線取扱主任者またはその監督下にある放射線管理担当者が常駐し、放射線管理業務全般の実務を行う。
６）また、放射線監視室には、施設内作業環境の放射線レベルおよび排気、排水等に含まれる放射性物質の放出状況が監視できるように、放射線エリアモニタ、空気汚染モニタ等の放射線監視設備が設置され、ここで常時モニタの指示値と警報が確認できる。最近では、監視の強化および管理の効率化をはかるための、これらモニタのデータや被ばく管理データの処理を行う計算機も設置されているところもある。
７）放射能測定室には、管理区域内の表面汚染、線量当量率、管理試料などを測定するための放射線測定器類が常備されている。これらの測定器類としては、GM計数管式測定装置、比例計数管式測定装置、ガンマ線スペクトロメータおよび各種サーベイメータ等があるが、施設の状況に適した機種が選定され、常備されている。
８）放射能測定室は、サンプリングした試料など比較的弱い放射能を測定する必要があるため、通常、放射線施設内でも放射線レベルの最も低い、管理区域内の出入口の近辺に設けられる。また、微量の放射能を測定する場合は、外部からの放射線の影響を少なくするために測定装置そのものを遮へいする等の対策が必要な場合もある。

＜図／表＞

＜参考文献＞
（1）辻本　忠、草間朋子：「放射線防護の基礎」、日刊工業新聞社（2001年3月）
（2）日本アイソトープ協会（編）：「アイソトープ便覧」、丸善（改訂３版、1984年）
（3）日本アイソトープ協会（編）：「医療用アイソトープの取扱いと管理」、丸善（改訂３版、1985年3月）
（4）日本アイソトープ協会（編）：主任者のための放射線管理の実際、1994年12月
（5）「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」
（6）「各原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」