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<概要>
 原子力施設で発生した固体廃棄物は、管理区域から搬出する前に、線量率表面汚染密度の搬出モニタリングが行われ、廃棄物処理施設で処理あるいは貯蔵保管するために当該施設から搬出される。そのモニタリング結果は、固体廃棄物が法令の運搬基準に適合しているかどうかの判断のための情報となる。また、このモニタリングによって、廃棄物収納不備等による放射性汚染の拡大を防止でき、汚染による作業者や一般公衆の被ばくを未然に防止できる。
<更新年月>
2004年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1) 原子力施設で発生する固体廃棄物は、廃棄物の種類、レベルに応じて、専用の廃棄物容器に分類収納され、図1に示すように、通常、各施設の管理区域から、廃棄物処理施設へ搬出(運搬)される。さらに、廃棄物処理施設で減容処理等を実施した後、最終処分まで安全に貯蔵保管するため、保管廃棄施設へ搬出(運搬)される。固体廃棄物の搬出モニタリングは、このような廃棄物処理や貯蔵保管のための搬出(運搬)にともなって実施されるもので、線量率、表面汚染密度等((4)参照)の測定確認が行われる。
(2) 低(中)レベル固体廃棄物の搬出時には、ドラム缶50リットル、200リットル等の廃棄物容器が運搬容器として用いられ、金属類の不燃性雑固体廃棄物及び紙類の可燃性雑固体廃棄物等に、それぞれ、分類、収納されている。これらの固体廃棄物は、廃棄物容器に収納された状態で、車両(トラック、コンテナ車等)に積載され、各施設の管理区域から搬出される。
(3) 原子力発電所や大型研究施設では、事業所内に廃棄物処理及び貯蔵保管に必要な施設を持っており、処理や保管のための搬出は事業所内運搬基準を適用して行われるケースが多い。一方、ほとんどのRI(放射性同位元素、Radioisotope)取扱施設(病院、大学、研究所など)は、独自の処理、保管の施設がないため、図2に示すように、日本アイソトープ協会へ車両で集中集荷し、廃棄物処理、貯蔵保管を行っており、事業所外運搬基準を適用して行われるケースが多い。このような、放射性固体廃棄物の運搬においては、原子炉等規制法、放射線障害防止法、運輸省令等の法令に定められた運搬基準が適用され、事業所内運搬と事業所外運搬について、それぞれ、基準が定められている。
(4) 固体廃棄物搬出時には、廃棄物表面の線量率、表面汚染密度の測定が行われ、さらに、車両積載後は、車両の表面汚染密度、車両表面から1m及び運搬に従事する者が通常乗車する場所の線量率の測定が行われ、運搬基準に適合しているかどうかが確認される。
(5) 搬出モニタリング時の線量率測定においては、通常は、γ線用サーベイメータ(GM型、電離箱型等)を使用している。再処理施設等のTRU廃棄物超ウラン元素のプルトニウム等を含む廃棄物、Transuranic Waste)のように、自発性核分裂や核反応等によって中性子線を発生する核種を含む場合は、中性子線用サーベイメータ(レムカウンタ等)を用いた中性子線量率の測定も併せて行っている。
(6) 搬出モニタリング時の表面汚染密度測定においては、廃棄物からの放射線の影響があるため、直接測定法に代わって拭き取り法(スミア法)等による間接測定法を採用することが多く、その測定には、表面汚染検査計や放射能測定装置(GM、ガスフローカウンタ等)を使用している。通常、表面汚染密度の測定評価は、β(γ)汚染について行い、再処理施設等のTRU廃棄物のようにα核種を含む場合は、α汚染についても行っている。
(7) 原子力発電所等では、固体廃棄物の搬出に際し、図3に示すように、大量に発生する低レベル放射性廃棄物の搬出時の検査及び放射線測定(線量率、表面汚染密度、放射性核種、放射能など)の自動化を図り、作業の効率化と廃棄物取り扱い者の被ばく低減を図っているところもある。
<図/表>
図1 放射性固体廃棄物の搬出、処理、貯蔵系統例
図1  放射性固体廃棄物の搬出、処理、貯蔵系統例
図2 RI廃棄物の集荷、搬出経路例
図2  RI廃棄物の集荷、搬出経路例
図3 固体廃棄物の搬出モニタリングの自動化の例
図3  固体廃棄物の搬出モニタリングの自動化の例

<関連タイトル>
放射性廃棄物 (09-01-02-01)
放射性気体廃棄物 (09-01-02-02)
作業環境モニタリング (09-04-06-01)
表面汚染モニタリング (09-04-06-04)
表面汚染検査計 (09-04-03-08)
サーベイメータ(α線、β線、γ線、中性子等) (09-04-03-04)
再処理施設からの放射線(能) (09-01-02-06)

<参考文献>
(1) 日本原子力学会:廃棄物の管理と安全性:「原子燃料サイクル」研究専門委員会、1990年3月
(2) ワイド特集:放射性廃棄物処理・処分−内外の動向を探る−:原子力工業 Vol.29, No.4.1983
(3) 低レベル放射性廃棄物の搬出検査技術:原子力工業 Vol.35, No.4,1989
(4) 日本原子力産業会議:放射性廃棄物管理ガイドブック、1988年版
(5) 保健物理部の紹介:日本原子力研究所保健物理部パンフレット
(6) プルトニウム廃棄物処理開発施設:動力炉・核燃料開発事業団東海事業所パンフレット
(7) 青木成文:放射性物質輸送のすべて
(8) IAEA安全シリーズ No.6、放射性物質安全輸送規則 1985年版:情報センター出版会
(9) 国際原子力機関:放射性廃棄物管理用語集(日本語版)IAEA-TEC DOC-447(RWMC-89-P-12)
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