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<概要>
 放射線作業に従事する作業者の被ばくの形態は三つに分類できる。放射性物質を体内に取り込むことによって生じる被ばくを内部被ばく、体外からの放射線の照射による被ばくを外部被ばく、さらに外部被ばくの特殊な形態として人体のある特定の部位のみが被ばくする場合を局部被ばくという。また皮膚が放射性物質で汚染された場合にも被ばくが伴う。
<更新年月>
2004年03月   

<本文>
 人が放射線により被ばくする形態は、大別すると内部被ばくと外部被ばくに分類できる。内部被ばくは、呼吸や経口摂取(食事、飲水等)によって体内に取り込まれた放射性物質により引き起こされる内部組織器官の被ばくのことをいう。一方外部被ばくは体外の放射線源によって人体が外から照射を受ける場合の被ばくのことをいう。
1)内部被ばく
 内部被ばくは、主に非密封の放射性物質を取り扱う施設での作業のほか、環境中に事故等により放出された放射性物質を食物、呼気等を通して摂取することなどにより発生する。従って、内部被ばくを防止するためには、非密封の放射性物質の管理が厳格に実施されることが必要である。このため実際の放射線作業においては、グローブボックスやフードを利用したり、防塵・防ガス用のマスクを装着して作業をする等、放射性物質を体内に取り込まないようにする方法が工夫されている。
2)外部被ばく
 放射性物質や放射線発生装置を取り扱う場所(管理区域)では、常に外部被ばくを受ける可能性について留意しなければならない。外部被ばくをもたらす放射線は強透過性の放射線と弱透過性の放射線とに分けられる。強透過性の放射線としてはγ線中性子線があげられる。これらの放射線は人体内部の組織や器官にも容易に到達して被ばくを生じさせる。一方、弱透過性の放射線としてはβ線や低エネルギーのX線軟X線)がこれに該当する。弱透過性の放射線は人体内部にまで到達することができず、人体のごく表層部の有感組織に影響を及ぼす。これらの外部被ばくは放射線防護の三原則(時間、距離、遮蔽)を利用することにより、可能な限り低く抑えられねばならない。
3)局部被ばく
 グローブボックス内で放射性物質を取り扱う場合、手袋(グローブ)を介して直接同物質を取り扱う手指が、他の部分に比べ大きな被ばくを受ける。この例のように、放射線作業の形態によっては、人体のある一部分のみが他よりも大きな被ばくを受ける場合がある。このような被ばくを局部被ばくという。
4)皮膚被ばく
 その他の被ばくの形態として、放射性物質で皮膚が汚染し、その部分が局所的に被ばくを受ける場合等がある。このため非密封放射性物質を取り扱う作業においては、たとえ少量であっても常に手袋(グローブ)を着用するとともに、管理区域の出入りに際しての汚染チェックを忘れないようにする必要がある。

 人体の被ばくの程度は、人体深部の主要臓器に対しては、内部、外部を合わせて実効線量当量(単位Sv)で、また局部被ばくや皮膚の被ばく、ある特定の臓器、器官に対しては等価線量(単位Sv)でそれぞれ数値化して表わされる。
<関連タイトル>
実効線量 (09-04-02-03)
線量限度 (09-04-02-13)
外部被ばくの評価 (09-04-04-03)
内部被ばくの評価 (09-04-04-04)
局部被ばく(四肢の被ばく)の評価 (09-04-04-05)

<参考文献>
(1)International Atomic Energy Agency, Basic Requirements for Personnel Monitoring,IAEA Safety Series No.14 (1980)
(2)International Commission on Radiation Protection,General Principles of Monitoring for Radiation Protection for Workers. ICRP Publication 35 Ann. ICRP 9(4).(1982)
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