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<概要>
 環境集中監視システムは、原子力施設の周辺住民等の健康と安全を守るため、原子力施設周辺に設置してあるモニタリングステーション等の各測定点における空間放射線量率、気象要素等の計測データを自動収集し、平常時及び異常時における環境中の放射線を連続監視すると共に、収集データの管理、記録、整理、解析を目的として設置されている。このシステムは、原子力発電所や地方自治体等の環境モニタリングの連続監視に活用されている。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)システム構成の概要
 環境集中監視システムは、環境放射線モニタリングシステムとも呼ばれ、また、広義の意味ではテレメータシステムと呼ばれる。このシステム構成は、原子力施設の規模によって異なっているが、一般には、環境放射線モニタ、テレメータ、中央処理装置、警報発生装置、データ表示装置、ディスプレイ装置、ラインプリンタ、データ記録装置等から構成されている。中央処理装置は、補助メモリ、入出力装置、通信装置、無停電電源装置等から構成されている。また、テレメータ親局、中央処理装置及びディスプレイ装置等の周辺機器を含めて、中央監視装置とも呼ばれている。環境集中監視システムの一例を 図1 に示す。
(2)連続収集・監視機能
 環境集中監視システムは、原子力施設周辺に設置してある環境放射線モニタからの各計測データをテレメータ子局(測定局内に設置され、測定器からの測定信号や監視信号を親局へ送信する装置)からテレメータ親局(中央監視局でのデータ送受信装置)に時々刻々伝送し、集中的に監視する伝送系と直ちに中央処理装置の専用プログラムで処理・解析され、自動警報発生や経時変化グラフ等を出力する装置で構成されている。また、収集データの欠測を極力防ぐために、テレメータ親局又は中央処理装置の二重化(バックアップシステム)や無停電電源装置が使用されている。
 テレメータ親局には、コンピュータが組み込まれており、収集データの実用単位への変換、警報出力、監視用地図盤へのデータ表示、プリンタ装置への出力及び短時間のデータ保存等の機能を有している。収集されたデータは、磁気ディスク及び磁気テープに保存される。過去のデータが必要となれば、磁気ディスクや磁気テープから読出が行われ、データを再現することが出来る。
(3)データ収集時間
 環境集中監視システムによるデータ収集間隔は、10分を標準にしているが、平常の変動幅を大きく外れて異常と判断した場合には、データ収集間隔が2分程度と短くし、また、過去1時間の短時間間隔のデータを記録できるようになっている。
(4)データ伝送と伝送項目
 データ伝送には、災害時等を予測して専用回線(NTTの特定通信回線、私設有線等)を使用しているものが多いが、経済性、伝送の難易度を考慮して無線あるいは有線による自動伝送を行っている。伝送内容は、モニタリングポスト及びモニタリングステーションによる空間放射線量率、大気浮遊塵中の放射能濃度及び気象観測等の計測データの他に、局舎系、測定器系、伝送装置系の異常時に関する情報である。伝送項目の代表例を 表1 に示す。
(5)監視とデータ処理
 原子力施設からの放射線(能)寄与の有無の判断及びその環境への影響の評価を迅速に行うために、以下のようなデータ処理がなされている。
データ処理項目
 1)測定結果の出力(空間放射線量率等の短時間(2分)間隔のデータ、10分値データ、1時間値データ、日報、月報、四半期報、年報等)
 2)警報音発生
 3)異常表示ランプの点灯
 4)監視用地図盤へのデータ表示
 5)グラフィックディスプレイ装置によるトレンド表示(経時変化のグラフ表示)、オーバービュー表示(現在値表示)
(6)アプリケーション機能
 環境集中監視システムには、上記の機能の他に、放射線異常の有無の判断及び線量評価を支援するために、空間放射線量率や大気中放射能濃度を計算により推定するプログラムが組み込まれている施設もある。地方自治体が設置している環境集中監視システムは、緊急時迅速放射能影響予測システム(ネットワーク)(SPEEDI)と通信回線で接続されており、緊急時における大気中放射能濃度やそれによる被ばく線量の計算予測の結果がディスプレイ表示されるようになっている。また、熱ルミネッセンス線量計(TLD)の読み取り装置を本システムに接続して、データ整理及び記録保存を行っている施設もある。
<図/表>
表1 代表的なデータ伝送項目
表1  代表的なデータ伝送項目
図1 環境集中監視システムの一例
図1  環境集中監視システムの一例

<関連タイトル>
環境放射線モニタリング (09-04-08-02)
緊急時環境放射線モニタリング (09-04-08-04)
気象観測 (09-04-08-05)
緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI) (09-03-03-01)
人工放射線による被ばく (09-01-05-06)
世界における人工放射線による放射線被ばく (09-01-05-07)

<参考文献>
(1) 北原義久、成田 脩、篠原邦彦、浅野智宏:動燃(東海)における環境監視へのコンピュータシステムの利用、保健物理、16,151-163(1981)
(2) 片桐、小林 他:Monitoring Low Level Environmental Gamma Exposure by the Centeralized Radiation Monitoring System, JAERI-M 9578(1981)
(3) 近藤健次郎:高エネルギー加速器周辺の放射線管理、保健物理、19,33-44(1984)
(4) 薮田肇:環境線量等の図形表示装置の概要、JAERI-M85-134,保健物理−管理と研究,No.27,175-176(1985)
(5) 佐藤信之:環境放射線(能)データ処理システムの概要、JAERI-M85-134,保健物理−管理と研究,No.27,177-180(1985)
(6) 和田茂行、西川元之:敦賀発電所の放射線管理業務の電算化システムについて、保健物理、22、116-121(1987)
(7) 清水勇:環境放射線監視装置の更新・整備、JAERI-M88-226,保健物理−管理と研究,No.30,177-179(1988)
(8) 宮島光弘:加速器周辺のモニタリング、保健物理、24,357-365(1989)
(9) 上野正幸:関根浜附帯陸上施設の放射線監視システム、JAERI-M89-212,保健物理−管理と研究,No.31,174-177(1989)
(10) 片桐浩、小林秀雄:環境放射線監視システム、監視制御システム実用便覧、823-843、フジテクノシステム(1989)
(11) 内閣総理大臣官房 原子力安全室(監修):原子力安全委員会安全審査指針集、環境放射線モンタリングに関する指針、改訂10版、大成出版社(2000.11)
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