<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護用の測定
<タイトル>
個人線量計 (09-04-03-03)

<概要>
 放射線を取扱う施設において、管理区域に立ち入る者は放射線測定器を着用し、その立ち入り期間中の外部被ばく線量を測定しなければならない。このように個人外部被ばくモニタリングに利用される測定器または測定用具を個人線量計という。個人線量計には、蛍光ガラス線量計、熱ルミネッセンス線量計(TLD)、OSL(光刺激ルミネセンス)線量計、フィルムバッジ、電離箱式線量計及び電子式線量計等の種類があり、使用目的、対象線種などによりそれぞれの機能に応じて使い分けられている。
<更新年月>
2005年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.個人モニタリング
 放射線作業に従事する作業者に対しては、放射線による障害の発生を防止するために常にその被ばく線量を把握するための測定を行うことが法律的な義務になっている(例えば、放射線障害防止法第20条)。個々の作業者の被ばく線量を測定するために、個人モニタリングが実施され、被ばく線量の評価と公式な記録・報告が行われているが、このうち、外部放射線に対するモニタリングには、個人線量計が使用される。個人線量計は、作業者が管理区域に立ち入っている期間常時身につけ、その作業者が受ける被ばく線量を積算して測定するようになっている測定器で、次のような種類がある。
   a) 蛍光ガラス線量計(ガラス線量計)
   b) 熱ルミネッセンス線量計
   c) OSL線量計
   d) フィルムバッジ
   e) 固体飛跡検出器
   f) 電離箱式線量計
   g) 電子式線量計
   h) その他の線量計
 個人の外部被ばくの測定で求める量は実用量の1センチメートル線量当量及び70マイクロメートル線量当量で、それぞれ実効線量及び皮膚の等価線量と見なすことができる。なお、眼の水晶体は、1センチメートル線量当量または70マイクロメートル線量当量のうち安全側になる値をとってよいことになった。
 現在広く使用されている個人線量計の例を図1に示す。これらの個人線量計の内には、通常、1ヶ月ないし3ヶ月間連続して使用し、その測定値を公式な被ばく線量として記録するためのいわゆる基本線量計があり、フィルムバッジ、熱ルミネセンス線量計、OSL線量計などは、電源を必要とせず、また長期間の安定性に優れているので、基本線量計として利用される。基本測定器は、放射線作業の場に出て来る可能性のあるいろいろな種類とエネルギーの放射線の線量を測定する目的からいずれも複数の素子(マルチエレメント)による測定方式をとっている。一方、被ばくする可能性がある作業ごとの管理に用いられる測定器は補助線量計と呼ばれる。使用者自身が現場で線量を読み取れるようになっている線量計(例えば、図1のポケット線量計)、及び、警報音を利用して放射線作業の管理に利用されるアラームメータなどが補助線量計である。
2.個人線量計の特徴
a)蛍光ガラス線量計(ガラス線量計)
 放射線を照射したガラスに紫外線を当てると蛍光を発生するいわゆるラジオフォトルミネッセンス(RPL)現象を利用した線量計がガラス線量計である。ガラス線量計には、フェーディング(潜像退行)(*1)がきわめて少ない、素子間の均一性に優れている、読取によるデータの消失がないなどの優れた特長がある。
 図2(写真)は、X線、γ及びβ線の測定にガラス線量計素子を用い、中性子線測定に固体飛跡検出器(エッジピット)を用いて個人線量計をつくった例で、ガラスバッジと呼ばれている。
b)熱ルミネッセンス線量計
 熱ルミネッセンス線量計(TLD:Thermo Luminescence Dosimeter)は、固体の熱ルミネッセンス現象を利用した線量計で、高感度で温湿度等の環境変化にあまり影響されず、また測定に際して現像等の複雑な処理が不要なため、小規模の事業所での独自の被ばく管理に適している面がある。さらに自動測定化も可能で、多数の測定をきわめて短時間で実施できるなどの特長がある。しかしながら、一回の測定で、積算線量に係る情報が消失してしまうため注意を要する。
 図3は、硫酸カルシウム及びテトラホウ酸リチウムTLD素子を用いて個人線量計をつくったものである。
c)OSL線量計(Optically Stimulated Luminescence Dosimeter)
 放射線との相互作用によりそのエネルギーを蓄積した物質に光照射を加えたとき現れる蛍光を光刺激ルミネセンスといい、発光のメカニズムは、TLDとよく似ているが、通常の熱刺激では開放されない、より深いエネルギー準位の捕獲中心に取り込まれた電子を利用している。光刺激によって開放される電子は全体の一部であるため繰り返し測定ができる。個人線量計として使用されているものは、蛍光物質にアルミニウムを使用している。シート状に成型加工した酸化アルミニウムに、いくつかの金属薄板(フィルタ)または格子を被せた反応の差から固有のエネルギー依存性の補償等を行うものがつくられている(図4)。
d)フィルムバッジ
 フィルムバッジは、写真フィルムを適当なフィルタを装備したケースに入れて使用するもので、機械的に丈夫で、安価であり、そのうえ現像したフィルムは長期間にわたって保存できると言う特長がある。その測定の過程において暗室や化学薬品処理を必要とするため、実際は専門の測定サービス会社などにおいて実施されている。
e)固体飛跡検出器
 α線や核分裂片等の重荷電粒子がポリカーボネート等の絶縁性固体中を通過し、その通路近傍において固体に付与されるエネルギーが一定のしきい値を超えるとき、固体中に損傷を形成する。この損傷を化学的に腐食することによって光学顕微鏡で観測可能な大きさまで拡大することができる。こうした現象を利用した線量計が固体飛跡検出器である。
 中性子の測定に使用する固体飛跡検出器の場合、中性子との核反応によって重荷電粒子を放出するコンバータ(ラジエータともいう)と、その粒子の飛跡を検出する絶縁性固体の組み合わせから構成されるが、速中性子の測定にはコンバータとしてポリエチレンフィルムが使用される。
f)電離箱式線量計
 一般に「ポケット線量計」として知られる線量計は、γ(X)線の被ばく線量を簡便に測定できる電離箱式の線量計である。この線量計は、予め電荷を充電した電離箱内に放射線が入射し、その放射線による電離作用によって放電する現象を利用したもので、電離箱内に置いた先端が二股に分かれた水晶に働く斥力の変化の度合いを目視で読み取ることで被ばく線量を評価するので直読式線量計とも呼ばれる。次に記す電子式線量計が普及する以前は、作業ごとの被ばく管理及び一時立入者の被ばく管理によく使用されていた。
g)電子式線量計
 半導体検出器を使用した線量計であり、デジタル表示で被ばく線量が直読可能であること、警報機能を付帯できること、測定記録が通信システムにのりやすく入退域管理、トレンド管理等にも利用できることから最近急速に利用が広がりつつある。
 従来、このタイプの線量計は、日管理や作業管理のための使用が主であったが、堅牢性や電子技術の進歩によって信頼性が向上した結果、被ばく記録用の個人線量計としても利用が可能になった。
h)その他の線量計
 上記の他に中性子測定用の線量計として、バブル線量計、金属の箔を利用した熱中性子及び低速中性子検出器、また、より高いエネルギーの中性子を測定するしきい反応放射化検出器などがあり、それぞれの特徴をいかして利用されている。
3.個人線量計の選択基準
 個人線量計は、その特徴を十分に検討し、個々の放射線作業に対して最適なものを選択しなければならない。このため以下のような項目について検討する必要がある。
   a) 測定の目的
   b) 使用する場所の放射線の種類とエネルギー
   c) 作業の状況と線量率の時間的変動
   d) 作業場の環境条件(温湿度、雰囲気中の化学物質など)
 しかしながら、種々の放射線、様々の状況下における個人の被ばく線量を測定するためには、必要に応じて異なった種類の個人線量計の組み合わせ使用、また、身体に対して均等でない放射線場の場合には、複数の線量計の着用もなされる。さらにまた、作業の状況によっては、指、手先等の被ばくを測定するため、局部被ばく線量計(図1参照)も使用される。

[用語解説]
(*1)潜像退行:個人被ばく線量測定に使われるフィルムバッジでは、フィルム現像後に得られる黒化濃度は、被ばく後現像されるまでの期間により変化し、期間が長いほど黒化濃度が減少する、これを潜像退行という。これは照射によって生じた潜像が時間の経過および着用期間中の温度、湿度によって消失してゆくためで、一般に高温高湿なほど潜像退行が著しい。
<図/表>
図1 いろいろな種類の個人線量計
図2 ガラス線量計を用いた個人線量計
図3 TLD素子を用いた個人線量計
図4 OSL素子を用いた個人線量計

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
実効線量 (09-04-02-03)
線量限度 (09-04-02-13)
個人モニタリング (09-04-07-01)
外部被ばくモニタリング (09-04-07-02)
個人線量計の着用 (09-04-07-03)
個人線量データの管理 (09-04-07-04)

<参考文献>
(1)(財)原子力安全技術センター:“被ばく線量の測定・評価マニュアル、p.49-76、(2000).
(2)石川達也、村上博幸:“蛍光ガラス線量計の基本特性”;JAERI-Tech 94-034、(1994)
(3)(株)千代田テクノル:フィルムバッジニュースNo.244、pp.6-10、(1997)
(4)石黒秀治、武田伸荘:“Li2B4O4(Cu)素子による自動読取型個人被曝線量計の開発(I)−β線、γ線線量当量評価法−”、保健物理,Vol.16,pp.305-316,(1981)
(5)石黒秀治、武田伸荘:“Li2B4O4(Cu)素子による自動読取型個人被曝線量計の開発(I)−中性子線量当量評価法−”、保健物理,Vol.17,pp.27-36,(1982)
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