<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の諸量
<タイトル>
年摂取限度(ALI) (09-04-02-14)

<概要>
 年摂取限度(ALI)とは、線量限度に等しい預託実効線量を与える放射性物質の体内への急性摂取量(または一回摂取量)である。年摂取限度は、20mSvの年平均実効線量限度に基づいて計算される。したがって、内部被ばくによる実効線量0.02(Sv)を、その摂取した放射性核種の線量係数e(50)(Sv/Bq)で割ることによりALI(Bq)が得られるという関係がある。
<更新年月>
2002年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.年摂取限度
 年摂取限度(Annual Limit on Intake:ALI)とは、線量限度に等しい預託実効線量を与える放射性物質の体内への急性摂取量(または一回摂取量)である。ICRP(1990年勧告)は、いかなる1年間についても50mSvという限度つきで、年平均値20mSvを与える5年間100mSvの実効線量限度を勧告している。内部被ばくの場合、年摂取限度は20mSvの実効線量に基づいて計算される。したがって、年平均実効線量限度0.02(Sv)を線量係数e(50)(Sv/Bq)で割ることによりALI(Bq)を求めることができる。すなわち、
        ALI = 0.02/e(50)
である。
2.線量係数
 放射性物質が体内に摂取され、体内の臓器・組織に沈着した場合、問題とする臓器・組織の受ける線量を算出することは容易でないことが多い。これは、この内部被ばく線量を算出するために、体内で問題になる臓器・組織に沈着している放射性物質の量を測定する必要があり、しかもその量の時間的変化を追跡しなければならないからである。一般に、体内の臓器・組織における放射性物質の沈着量を測定するには、かなりの設備を必要とし、技術的にも容易でなく、体外からの放射線被ばくによる線量を測定する場合に比べて誤差も比較的大きい。
 内部被ばくの場合は、人が摂取した放射性物質の量と、人体の臓器・組織が受ける線量の大きさとの関係を算出しておくことにより、摂取した放射性物質の量を基準にして、人の被ばくを管理する方式がとられている。そのため、ある放射性核種1Bqを急性摂取したときの預託実効線量を実効線量係数(単位Sv/Bq)と呼び、むしろ年摂取限度よりよく用いられるようになった。線量係数には、放射性核種1Bqを急性摂取したときの臓器・組織の預託預託等価線量を表す等価線量係数もある。
3.放射線管理での利用
 放射性核種を体内に摂取する経路には、鼻または口から呼吸気道を通じて摂取する「吸入」、口から入って飲み込まれる「経口摂取」及び体内に循環する血液中への直接または傷口を通しての侵入がある( 図1 )。主な摂取経路は吸入及び経口摂取で、線量係数はこれら二つの経路に対して与えられているのがふつうである。摂取した放射性物質の量と体内の臓器・組織が受ける線量の大きさとを関連づけるためには、人体の解剖学上のデータ、すなわち人体の各臓器の質量、大きさ、形状、位置などに関するデータ、人体における生理学上のデータ、体内における放射性物質の各臓器・組織への沈着の速度と割合及び排出速度などに関するデータなどが必要である。これらのデータは標準人と呼ばれる典型的な人を想定するために集められている。さらに、職業被ばくのみならず、環境における公衆の被ばくも放射線防護の対象になるので、年齢層別に標準的な人の各種データが調べられていて、被ばく線量計算などに用いられる。
 放射性物質の1回の摂取によって、臓器・組織が受ける線量は必ずしも一年以内に終わるとは限らない。個人の放射線量は管理上、放射線業務従事者及び成人では摂取後50年間、子供については摂取時から70歳までに受けることになる線量(これを預託線量という)をすべて、放射性物質を摂取したその年にまとめて受けたと仮定して、その年の外部被ばくの線量と合算し、定められた限度を超えないようにしている。
 そこで、外部被ばくがなく、内部被ばくのみが発生した単純な場合を想定して、放射性物質の摂取による預託線量が年平均線量限度20mSvの値に等しい摂取量の大きさを求め、これを年摂取限度(ALI)と呼び、ALIを補助限度と呼ぶこともある。しかし、現在は計算の基になる線量係数の方が多く用いられ、ALIはあまり表面に出てこなくなって、法令の告示や規則にも線量係数が載せられている( 表1 )。
 前述のように、年摂取限度ALI(Bq)と実効線量係数 e(50)(mSv/Bq)との間には、ALI=20/e(50)の関係がある。放射線作業の環境管理のために、ALIを標準的な放射線業務従事者の作業時の年間呼吸量で割って得られる誘導空気中濃度(DAC)を用いると作業環境管理が便利であり、この誘導濃度の考えは法令に取り入れられて「空気中濃度限度」(ATOMICA構成番号 <09-04-02-15>参照)として用いられている。
<図/表>
表1 放射性核種の摂取量から内部被ばく線量に換算する線量係数の例
図1 体内における放射性核種の主な代謝経路

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<関連タイトル>
線量限度 (09-04-02-13)
実効線量 (09-04-02-03)
預託線量 (09-04-02-09)
空気中濃度限度 (09-04-02-15)
集団線量比率(CR) (09-04-02-16)

<参考文献>
(1) (社)日本アイソトープ協会:(和訳)ICRP Publication 60“国際放射線防護委員会の1990年勧告”、丸善(1991)
(2) (社)日本アイソトープ協会:(和訳)ICRP Publication 30(社) 仁科記念財団、“作業者による放射性核種の摂取の限度 Part 1”、丸善(1980)
(3) (社)日本アイソトープ協会:(和訳)ICRP Publication 68“作業者による放射性核種の摂取についての線量係数”、丸善(1996)
(4) (社)日本アイソトープ協会:(和訳)ICRP Publication 78“作業者の内部被ばくの個人モニタリング”、丸善(2001)
(5) ICRP Publication 72, ”Age−dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides: Part 5−Compilation of Ingestion and Inhalation Dose Coefficients.” Annals of the ICRP, Vol.26, No.1,Pergamon,(1996)
(6) (社)日本アイソトープ協会(編集・発行):アイソトープ法令集I2001年版、丸善(2001)、p.241
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