<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の諸量
<タイトル>
実効線量 (09-04-02-03)

<概要>
 実効線量とは、全身が均等に照射されても不均等に照射されても、また放射線線質が変わっても、確率的影響が起きる確率を表現するようにつくられた線量概念である。実効線量は、臓器・組織の吸収線量を基にして、線質が異なった放射線の吸収線量には、放射線荷重係数を乗じて等価線量とし、更にその等価線量に全身に対する臓器・組織ごとの相対的な放射線感受性を表す組織荷重係数を重みづけして得た数量を、関連するすべての臓器・組織について合計したものである。この線量概念は、わが国の法令にも取り入れられている。
<更新年月>
2004年03月   

<本文>
1.放射線被ばくによる確率的影響の発生確率は、放射線の線質(種類とエネルギー)によって異なるとともに、被ばくした臓器・組織にも依存する。ICRPは、1990年勧告で、異なった複数の組織への異なる線量を組み合わせて確率的影響の全体とよく相関するように選んだ係数として、組織荷重係数を定めた。確率的影響の発生確率に結び付けて線量を評価するためには、被ばくした組織・臓器(t)の等価線量(Ht)を、その組織の相対的な放射性感受性を表す組織荷重係数(Wt)をもって荷重して、身体のすべての臓器・組織について合計する。この総和を実効線量(E)という。すなわち、
     E=Σ(Wt×Ht)
である。ここに、等価線量(Ht)は、線質rの放射線によって照射された臓器・組織tの平均吸収線量(Dtr)に、その放射線の放射線荷重係数(Wr)を乗じて、関連するすべての放射線について和をとったものである。すなわち、Ht=Σ(Wr×Dtr)、あるいは、
     E=Σ[Wt・Σ(Wr×Dtr)]
で、臓器・組織の平均吸収線量を放射線荷重係数と組織荷重係数で2重に荷重して、おのおのの段階で和をとったものである。
 吸収線量のSI単位は、J/kg(ジュール/キログラム)で特加名称はグレイ(Gy)である。放射線荷重係数と組織荷重係数は、ともに無次元の数であるが、吸収線量とは意味が変わるので、特別名称シーベルト(Sv)が与えられている。
2.ICRPは、1990年勧告で、低線量・低線量率での放射線被ばくの確率的影響に関する線量−効果関係に基づき単位線量当たりの致死的リスクを推定して、これを名目致死確率係数として示した。臓器・組織の確率的影響に対しては、非致死性疾患および全世代の遺伝的影響、および放射線誘発がんの種類による平均寿命損失について推定したリスクへの相対的寄与で名目致死確率係数を重みづけして損害デトリメント)を求め、全身についてのデトリメントの総計に対する各臓器・組織の組織荷重係数を定めた(表1)。
3.実効線量は、測定することが極めて困難な量であるため、実際の放射線管理では、別に定義される量や実効線量から誘導される量が用いられている。外部被ばく線量の測定には、国際放射線単位測定委員会(ICRU)が定義した直径30cmの人体軟組織等価の球の深さ1cmにおける線量当量(1cm線量当量と呼ばれている)が用いられており、これは実効線量を安全側に評価するものである。また、内部被ばく線量評価には、摂取量から実効線量を算定するための実効線量係数及び実効線量当量限度を考慮して決められる放射性核種毎の年摂取限度(ALI)が誘導限度として用いられる。
4.実効線量は、通常モンテカルロシミュレーションによって計算される。このシミュレーションには、人体を数学的に表現した数学人体模型(ファントム)が用いられる。計算結果は、ICRP Pub1.30(内部被ばく線量評価)及びICRP Pub1.51(外部被ばく線量評価)等にまとめられている。
<図/表>
表1 実効線量の計算に用いる組織荷重係数

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<関連タイトル>
線量および防護に用いられる諸量 (09-04-02-01)
放射線荷重係数と組織荷重係数 (09-04-02-02)

<参考文献>
(1)日本アイソトープ協会(訳):ICRP Publication.26、国際放射線防護委員会勧告、丸善、(1984年12月)
(2)日本アイソトープ協会(訳):ICRP Publication.30、作業者による放射性核種の摂取の限度 Part 1?Part 3、丸善
(3)日本アイソトープ協会(訳):ICRP Publication.51、体外放射線に対する防護のためのデータ、丸善、(1988年)
(4)日本アイソトープ協会(訳):ICRP Publication.60、国際放射線防護委員会の1990年勧告、丸善、(1992年7月)
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