<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の諸量
<タイトル>
放射線荷重係数と組織荷重係数 (09-04-02-02)

<概要>
 放射線防護の分野では、被ばくにより生じる可能性のある障害の大きさを防護基準としている。防護実務における被ばく線量としては生ずる障害の大きさを表す等価線量実効線量が用いられる。等価線量は、器官・組織の吸収線量放射線荷重係数と云われる器官・組織のミクロ的にみたエネルギー吸収の仕方による障害の起こし易さの係数を乗じた線量である。係数の数値としては、現在は放射線の種類やエネルギーによって1,5,10,20のいずれかの数値が与えられている。一方、放射線感受性は人体の各器官・組織によって異なる。全身が均等に被ばくすることもあるが、多くの場合は不均等被ばくである。この場合、器官・組織ごとの等価線量を論ずるよりは、被ばくした各器官・組織の放射線感受性の係数を等価線量に乗じて合計し、全身が均等に被ばくした場合に換算した線量として一元的に論ずることが便利である。この係数を組織荷重係数、全身均等被ばくに換算した線量を実効線量と称する。
<更新年月>
2006年01月   

<本文>
(1)放射線荷重係数(WR:radiation weighting factor)
 X線、Ra は発見後直ぐに診断、治療に用いられ、ほぼ同時にいろいろな障害が発生することが見出され、1910代中頃から障害防止が図られてきた。X線による障害の大きさはX線の線質(エネルギー)により異なることは予想されていた。明確に論じられるようになったのは1930年頃で、1931年に線質による感受性の差異を表す要因として、165keV X線を基準にとり、障害の大きさを表すRBE:relative biological effectiveness:生物学的効果比という係数を設定し、浴びた放射線の量にこのRBEを乗じて障害の大きさを示す線量とする考えが提案された。
 1929年に加速器が発明され、放射線の種類および取り扱われる放射性物物質の種類が増加して放射線の種類やエネルギーと障害の関係を知る必要がでてきた。第二次大戦中のマンハッタン計画における放射線防護では、特に中性子のエネルギーの高低と障害の関係を知る必要があり、RBEの研究が進行した。
 1953年、ICRPは障害の大きさを表す線量としてRBE線量(単位レム)を定義した。そして、RBEの数値としては実用上1、1.7、2、10、20などが与えられた。RBEはもともと放射線生物学の分野で使用された考えであり、通常は1〜2桁の丸めない数値で得られている。このRBE線量には、RBEの数値としてどちらの数値を用いているのか混乱が生じため、1962年にICRP,ICRU はRBEという用語は生物学の分野でのみ用いることにし、放射線防護では新しく線質係数(QF:quality factor)を設定して用いることにした。QFの数値としては線エネルギー付与:LETと関係付けて1〜20の数値を与えた。ICRP1990年勧告においてICRPはQFを「放射線荷重係数 WR:radiation weighting factor)と改称した。現在与えられているWRの数値を表1に、中性子のエネルギーとWRの関係を図1に示す。
(2) 組織荷重係数(WT:tissue weighting factor)
 被ばくは全身均等になることもあるが、多くの場合ある特定の器官・組織が集中的に被ばくする。特に放射性物質を呼吸あるいは経口摂取によって体内に取り込む内部被ばくの場合はほとんどの場合が不均等被ばくであって、障害の評価には被ばくする器官・組織の線量のほかに放射線感受性の差異が問題となる。身体を構成するいろいろな器官・組織の放射線感受性を評価できなかった1950年代では、主に被ばくする各器官・組織の幾つかを関連臓器として着目し、この中で最大の障害を引き起こす実際問題としては最大の被ばくを受ける器官・組織の被ばくを取り上げ、他の器官の被ばくは原則として無視するという簡略化された考えを取らざるを得なかった。取り上げられた器官・組織を決定器官:critical organと命名した全身が決定器官となることもある。この決定器官の被ばく線量が定められた最大許容線量をもたらす放射性物質の量を最大許容身体(器官)負荷量:MPB(O)B:maximum permissible body(organ)burdenとして導出し、さらに長期間にわたりある濃度での吸入・摂取が続く場合にこの負荷量をもたらす空気中、水中の放射性物質の濃度、最大許容空気中(水中)濃度:MPC(maximum permissible air(water) concentration)を導出して管理基準とした。1959年、ICRPはPub2で約240核種について、最大許容器官負荷量を与えた。決定器官としては、可溶性の場合については全身、骨、肝臓、脾臓などの器官が、不溶性の場合には肺、胃腸管などが取り上げられている。
 その後、器官・組織の相対的感受性についての知見が整理され、ICRPは1977年勧告で初めて赤色骨髄、肺、甲状腺、骨表面など6器官および残りの器官について、確率的影響(ガン/白血病および遺伝的影響)についての相対的感受性を数値で示し、器官の「リスク全体に対する割合を表す荷重係数:WT」との名称(1990年勧告で組織荷重係数:WTと改称)を与えた。器官の等価線量にこのWTを乗じることにより(複数の器官・組織が被ばくする場合は合計する)不均等被ばくを均等被ばくの場合に換算して表すことが出来るようになった。ICRP1990年勧告では12の器官・組織と残りの器官について「組織荷重係数:WT」が与えられ、現在に至っている。これらの数値を表2に示す。
<図/表>
表1 放射線荷重係数
表2 組織荷重係数
図1 中性子に対する放射線荷重係数

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<関連タイトル>
線エネルギー付与(LET)・生物学的効果比(RBE)・放射線荷重係数(WR) (09-02-02-11)
放射線の種類と生物学的効果 (09-02-02-15)
線量および防護に用いられる諸量 (09-04-02-01)
実効線量 (09-04-02-03)
被ばく管理のための種々の線量 (09-04-02-05)

<参考文献>
(1)グリーニング(著)、森内和之、高田信久(訳):「放射線量計測の基礎」、地人書館
(2)日本アイソトープ協会(訳):「国際放射線防護委員会の1990年勧告」ICRP Pub. 60 (1991)、丸善
(3)日本アイソトープ協会(訳):「国際放射線防護委員会勧告」ICRP Pub. 26 (1978)
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