<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護の基礎
<タイトル>
作業環境管理と個人管理 (09-04-01-10)

<概要>
 放射線防護は、放射線作業環境線量率、空気中放射能濃度および表面汚染を管理することにより、放射線業務従事者(作業者)の被ばくの低減化を図る「作業環境管理」と、放射線業務従事者各人の被ばく線量を測定するとともに健康診断等の検査によって個人の放射線安全を確保する「個人管理」とがあり、作業者の放射線健康管理は「作業環境管理」と「個人管理」の両方によって確保されている。
<更新年月>
2005年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.個人管理の対象と方法
 放射線管理における個人管理は、(a)被ばく線量管理と(b)健康管理によって実施される。被ばく線量管理の対象となるのは、管理区域に立ち入るすべての者である。ただし、一時的に立ち入る者で放射線業務従事者(以下、「作業者」と呼ぶ)でない場合には、外部被ばくについて1センチメートル線量当量が100μSvを超えるおそれがなく、内部被ばくについては吸入・摂取による実効線量が100μSvを超えるおそれがないならば測定しなくてもよいとされている(放射線障害防止法施行規則による)。放射線障害防止の法体系を図1に示す。
 個人の被ばく線量管理の方法は、外部被ばく線量に関しては、1センチメートル線量当量、70マイクロメートル線量当量をそれぞれ個人モニタ(蛍光ガラス線量計、TLD等)を用いて測定することになっており、管理区域に立ち入っている期間中は連続して測定することとされている。ただし、測定が困難な場合は、サーベイメータなどの放射線検出器で代用してもよく、さらに困難な場合には作業環境測定値等から被ばく線量を評価してもよい。測定部位は、原則として男性は胸部、女性は腹部であるが、体幹部(頭部・頚部、胸部・上腕部、腹部・大腿部)のうちで被ばくする実効線量が最大となるおそれのある部位については、これもあわせて測定しなければならない。
 内部被ばく線量は、放射性物質を吸入・摂取した際にはすぐに、放射性物質を吸入・摂取するおそれのある場所に立ち入る者については、男性の場合は3ヶ月を超えない期間毎に、女性(妊娠不能と診断された者を除く)は、1ヶ月を超えない期間毎に測定しなければならない。方法は、ホールボディカウンタによる全身計測、バイオアッセイ、及び空気中放射能濃度による算定のいずれかを用いる。いずれの場合にも、測定または推定された摂取量(Bq)に、吸入・摂取した場合または経口摂取した場合それぞれに対して(放射線障害防止法の告示に)与えられている実効線量係数(mSv/Bq)を乗じて実効線量を求める。実効線量は摂取したすべての核種について合計して求める。皮膚、水晶体または妊娠中である女子の腹部の等価線量については、同じ組織について合算し、外部被ばく線量もこれに含めて算定する。
 外部被ばく線量及び内部被ばく線量は、作業者個々人について合算され、年実効線量限度(5年につき100mSv、年あたり最大50mSv)による規制・管理の対象とされる。
2.健康管理の対象と方法
 健康管理の対象となるのは、管理区域に立ち入るすべての者であり、はじめて立ち入る前及び立ち入り開始後は1年を超えない期間ごとに特殊健康診断を実施することとされている(放射線障害防止法)。ただし、労働安全衛生規則では放射線業務をはじめ有害業務に従事する作業者に対しては、一般健康診断と特殊健康診断それぞれ6月を超えない期間ごとに実施しなければならないとされている。電離放射線障害防止規則(電離則)に規定されている特殊健康診断の検査項目は、(1)問診:被ばく歴の有無(有の者に対しては作業の場所、内容、期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他)の調査、(2)末梢血液中の白血球数及び白血球百分率、(3)末梢血液中の赤血球数及び血色素量またはへマトクリット値、(4)白内障に関する眼の検査、(5)皮膚の検査、である。6月を超えない期間ごとに行う定期の健康診断では、問診以外の項目は、医師が必要と認めるときに行えばよい。放射線障害防止法と電離則では、実施頻度、検査項目の省略等が異なるが、詳細は関係法令集やテキストを参照されたい。
 作業者が、実効線量限度(または等価線量限度)を超えて被ばくしたとき(またはおそれのあるとき)は、当該作業者について臨時健康診断を実施するとともに、管理区域への立ち入り制限、立ち入りの禁止、放射線被ばくのおそれの少ない業務への配置転換等の措置を行うこととされている。また、これら臨時健康診断およびそれに付随する措置については、10日以内に文部科学大臣に届ける義務がある。
3.管理区域内の作業環境管理の対象と方法
 施設内の作業環境の管理は、線量率の測定管理、表面汚染の測定管理、空気中放射能濃度の測定管理によって行う。測定場所は、管理区域内でもっとも線量当量率が高くなるおそれのある場所や汚染がおきやすい場所が複数選ばれる。線量率の管理が目的であるエリアモニタの値は、空気吸収線量率(μGy/h)を1センチメートル線量当量に便宜的に換算して用いるが、作業者の被ばく線量を算定する場合や、管理区域及び事業所の境界における線量を評価するためには、エネルギー補償済みのサーベイメータを用いるか、さもなければ測定機器の放射線エネルギーに対する応答特性データを用いて、照射線量を1センチメートル線量当量に換算しなければならない。測定回数は、放射線作業を開始する前に一回、作業開始後は、非密封放射性同位元素を取り扱う作業の場合は、1月を超えない作業期間ごとに一回、密封放射性同位元素及び放射線発生装置を取り扱う作業の場合には、使用方法に変更がなければ6月を超えない期間毎に一回測定することとされている。
 管理区域の空気中放射能濃度の測定は、ろ過捕集法(フィルタ)や液体捕集法(バブリング)などの方法で空気をサンプリングして測定する。また表面密度の測定は、スミア法や表面汚染測定用のサーベイメータを用いて測定する。管理区域において人が常時立ち入る場所では、外部被ばく線量としては1センチメートル線量当量が、1mSv/週を超えないように、空気中の放射能濃度としては、8時間についての平均濃度が空気中濃度限度(DAC)を超えないように、また人が触れる物の表面の放射能の表面密度を表面密度限度を超えないように作業環境が管理されなければならない。また外部被ばく線量と空気中放射能濃度からの内部被ばく線量が複合する場合には、各々の限度に対する比率の和が1以下になるように管理しなければならない。表面汚染は、放射能の表面密度が表面密度限度の1/10を超えるものについては管理区域外に持ち出さないこととされている(α核種は1cm2あたり0.4Bq以下、α核種以外は1cm2あたり4Bq以下)。
4.記 録
 放射線管理に関する記録は、作業環境管理、個人管理ともに保存しなければならない。個人管理の記録は、作業者が事業所をやめる際に最終的に記録を引き渡すまで継続して記録・保存しなければならない。また、人に関する測定結果は、その写しを3ヶ月毎に本人に通知しなければならないことになっている。
<図/表>
図1 放射線障害防止の法体系

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<関連タイトル>
ICRPによって提案されている放射線防護の基本的考え方 (09-04-01-05)
廃液中または排水中の濃度限度 (09-04-02-07)
年摂取限度(ALI) (09-04-02-14)
空気中濃度限度 (09-04-02-15)

<参考文献>
(1)日本アイソトープ協会(編):アイソトープ法令集2001年版、日本アイソトープ協会(2001年1月)
(2)「放射線の防護」丸善(1978)
(3)吉澤康雄著:「放射線健康管理学」、東京大学出版会(1984)
(4)吉沢康雄著:「放射線管理のやり方・考え方」、東京大学出版会(1978)
(5)ICRP Publication 26,Pergamon Press,1977
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