<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 放射線による生物影響
<小項目> 自然放射線と健康
<タイトル>
ブラジルの高自然放射線地域における住民の健康調査 (09-02-07-03)

<概要>
 ブラジル南部大西洋岸のモナザイト岩石地帯と海岸から内陸のミナスゲレス州の火山性噴出物地帯は自然放射線のレベルが高く、モナザイト地帯のガラパリでは個人被曝線量率が屋外と屋内とを併せて平均5.5mGy/年、範囲は0.9〜28mGy/年であり、ミナスゲレスのポソスドカルダスでは空間線量率が約245mGy/年に達する場所がある。これら高自然放射線地域の住民の末梢血リンパ球染色体異常対照地域と比べて増えていた。しかし、健康への影響は認められなかった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)自然放射線のレベルと地質
 ブラジルにはエスピリトサント(Espirito Santo)州及びリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)大西洋岸に沿って広がるモナザイト岩石地帯と海岸から内陸のミナスゲレス(Minas Gerais)州に向かって伸びる火山性噴出物地帯の2種類の高自然放射線地域がある。
 モナザイト地帯のガラパリ(Guarapari)は住民数12000、夏の避暑客約30000人の町であり、そこの空間線量率は街路で約1×10-6 〜2×10-6 Gy/時(約8.8〜17.5mGy/年)、海岸で2×10-5 Gy/時(175mGy/年)、住民317人についてTLDにより測定した個人の被曝線量率は屋内と屋外とを併せて平均6.3×10-7 Gy/時(5.5mGy/年)、範囲は約1×10-7 〜3.2×10-6 Gy/時(0.9〜28mGy/年)である。ガラパリにおける線量率の分布を 図1 に示す。
 また、ここから50km南のメイペ(Meaipe)という住民3000人の漁村でも屋外の線量率は平均1×10-6 Gy/時(8.8mGy/年)、最高で約1×10-5 Gy/時(88mGy/年)である。この地域にはいわゆるモナザイトの「黒い砂」の層があり、モナザイトにはトリウム6%、ウラン0.3%を含まれている。海岸の砂は25〜30%がモナザイトである。
 ミナスゲラス州のポソスカルダス(Pocos de Caldas)の町近くの丘では空間線量率が約2.8×10-5 Gy/時(245mGy/年)に達するような高線量の場所がある。同州のアラサ・タピラ(Araxa・Tapira)では空間線量率が約4×10-6 Gy/時(35mGy/年)である。この地域の地質は燐酸カルシウムの複合化合物である燐灰石が多く、燐灰石はウランは微量であるが、トリウムの含有量が高い。燐灰石は燐酸肥料(あるいはその原料)として使われる。

(2)健康への影響
 これらの高自然放射線地域住民の健康への影響を知る手段として末梢血リンパ球の染色体異常が調べられた。
 ガラパリの住民202人とその対照地域の住民147人についての調査結果によると、染色体異常(欠失、2動原体、リング)の頻度はガラパリと対照地域とでは有意に異なっており、検査細胞数中の染色体異常の割合(%)は対照地域の0.98%に対して1.30%とガラパリの方が高くなっている( 表1 )。この染色体異常の原因は外部放射線よりもトリウムに由来する220Ra、212Pb、212Biの内部被曝であろうと推測されている。しかしながら、エスピリト・サント州の夫婦8000組とその妊娠終結(生・死・流産)44,000回について、産児の性比、先天性異常、流産、死産、乳児
死亡、生殖能(受胎率、出産率)を調べた結果によると、対照群と比較して、「良い」影響も「悪い」影響も認められなかった。
<図/表>
表1 ガラパリにおける染色体異常
図1 ガラパリにおける線量率の分布

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<関連タイトル>
中国の高自然放射線地域における住民の健康調査 (09-02-07-01)
インドの高自然放射線地域における住民の健康調査 (09-02-07-02)
自然放射線(能) (09-01-01-01)

<参考文献>
(1) T.L. Cullen,Review of Brazilian Investigations in Areas of High Natural Radioactivity. p49-64 in: Proceedings of the International Symposium on Areas of High Natural Radioactivity,Pocos de Caldas, Brasil, 1975
(2) M. A. Barcinski et al.,Am. J. Hum. Genet. 27,802,(1975)
(3) A. Freie-Maia et al.,Health Physics 34,61(1978)
(4) UNSCEAR Report,Annex B,p.88,1982
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