<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 環境中の放射能
<小項目> 環境放射能の種類
<タイトル>
天然の放射性核種 (09-01-01-02)

<概要>
 地球上には種々の天然放射性核種が存在する。量的に最も多量に存在するものは、カリウム40、ウラン系列核種およびトリウム系列核種で、これらは地球の誕生時から地殻中に存在してきた原始放射性核種である。その他微量ではあるが、宇宙線と大気との相互作用によって生じた宇宙線起源核種(または宇宙線生成核種)や核分裂性核種自発核分裂による生成核種など種々の天然放射性核種がある。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 地球上に存在する天然放射性核種は、その起源別に大きく2つに分けられる。1つは地球の誕生時から地殻中に存在してきたもの(原始放射性核種または地球起源放射性核種)、もう1つは、宇宙線と大気との相互作用によって生じたもの(宇宙線起源核種)である。この他、核分裂性核種(232Th、235U、238U)の自発核分裂や、宇宙線中性子による誘導核反応から生じた放射性核種、太古には存在していたが半減期が十分に長くないため現在では事実上天然には存在しないもの(死滅放射性核種)などもあるが、量的には無視し得る程微量である。以下に主たる天然放射性核種である原始放射性核種と宇宙線起源核種について述べる(図1参照)。
1.原始放射性核種
 地球を起源とする原始放射性核種には、放射性系列を構成しないものと構成するものとがある。前者には、40K(半減期12.7億年)や87Rb(半減期475億年)の他100億年以上の長い半減期を有する約10程度の核種がある。従来は被ばく源としては40Kと87Rbを考慮に入れれば十分であったが、ICRP60(1990年勧告)において自然放射線源による被ばくも考慮することになり、他の核種についても検討が行われている(表1参照)。後者には、232Th(半減期140億年)を親とするトリウム系列核種、238U(半減期45億年)を親とするウラン系列核種、235U(半減期7億年)を親とするアクチニウム系列核種がある。これらの質量数はそれぞれ4n、4n+2、4n+3(nは整数)で表わされる。4n+1で表わされる系列は237Np(半減期214万年)を親とするネプツニウム系列であるが、半減期が十分に長くないため、現在では天然に存在しない。以下に、被ばく上大半の寄与を占める40K、87Rb、ウラン系列およびトリウム系列核種について述べる。
1.1 カリウム40(40K;半減期12.7億年)
 ウラン系列核種、トリウム系列核種と並び、自然放射線による被ばく源として最も重要な核種の1つであり、全カリウム中の0.0117%存在する。地殻中含有量は地質等により変動があるが、通常は土壌1kg当り100〜700Bq程度である。また、カリウムは人体中に必須元素として存在し、成人男子では体重1kg当り2g含まれる。これを40Kの量に換算すると約60Bq/kgに相当する。
1.2 ルビジウム87(87Rb;半減期475億年)
 40K、ウラン系列核種およびトリウム核種系列に比べると被ばくへの寄与は小さいが、放射性系列を構成しない核種としては40Kに次いで重要な核種である。人間環境中でのルビジウムの挙動には不明な点が多いが、人体中87Rb濃度は約8.5Bq/kgである。
1.3 ウラン系列核種
 ウラン系列は、ウラン238(238U;半減期45億年)を親とし15の主要核種から成る。この壊変系列を図2に示す。
 238Uは土壌1kg中に10〜50(平均25)Bq程度含まれ、通常の自然放射能地域における年間食品摂取量は約5Bqと推定されている。
 この系列核種の中には、ラジウム226(226Ra;半減期1600年)や、希ガスであるラドン222(222Rn;半減期3.8日)が含まれている。222Rnは散逸によって土壌等から空気中へ移行し、その濃度は屋外空気中で通常0.1〜10Bq/m3である。一方、屋内では家屋の建材や構造によって大きな幅があり、スウェーデンの調査では約900Bq/m3という例もあったが、通常は5〜25Bq/m3程度である。この222Rnを吸入することによる年間実効線量は世界平均で約1100μSvで、自然放射線による最も大きな被ばく源である。
1.4 トリウム系列核種
 トリウム系列は、トリウム232(232Th;半減期140億年)を親とし12の主要核種から成る。この壊変系列を図3に示す。
 232Thは、土壌1kg中に7〜50(平均25)Bq程度含まれる。この系列の中には、希ガスであるラドン220(220Rn;半減期55秒−トロンとも呼ばれる)が含まれ、ウラン系列中の222Rnと同様、重要な吸入被ばく源となる。222Rnによる年間実効線量は、世界平均で約220μSvと推定されている。
2.宇宙線起源核種(宇宙線生成核種)
 宇宙線起源核種には多くの種類のものがあるが、線量寄与分は僅かである。ここでは、その中で比較的線量寄与の大きなトリチウム3H)、ベリリウム7(7Be)、炭素14(14C)、ナトリウム22(22Na)について簡単に述べる。宇宙線起源核種はこの他に、ベリリウム10(10Be;半減期150万年)、ケイ素32(32Si;半減期172年)、リン32(32P;半減期14.3日)、リン33(33P;半減期25日)、硫黄35(35S;半減期87.5日)、塩素36(36Cl;半減期30万年)などがある。
2.1 トリチウム(3H;半減期12.3年)
 トリチウムは、宇宙線中性子と大気との破砕反応14N(n,3H)12Cなどで生じ、大気や海水中に含まれる。3Hの99%(1.3E+18Bq)はHTOの形をとる。核実験が行われる以前の時期に測定された地表水の放射能濃度は、大陸上で200〜900Bq/m3 トリチウムは、宇宙線中性子と大気との破砕反応14N(n,3H)12Cなどで生じ、大気や海水中に含まれる。3Hの99%(1.3E+18Bq)はHTOの形をとる。核実験が行われる以前の時期に測定された地表水の放射能濃度は、大陸上で200〜900Bq/m3、海水中で100Bq/m3であった。
、海水中で100Bq/m3 トリチウムは、宇宙線中性子と大気との破砕反応14N(n,3H)12Cなどで生じ、大気や海水中に含まれる。3Hの99%(1.3E+18Bq)はHTOの形をとる。核実験が行われる以前の時期に測定された地表水の放射能濃度は、大陸上で200〜900Bq/m3、海水中で100Bq/m3であった。
2.2 ベリリウム7(7Be;半減期53日)
 7Beは、宇宙線と大気中の酸素や窒素との反応によって生じ、温帯では地表水中に3000Bq/m3 トリチウムは、宇宙線中性子と大気との破砕反応14N(n,3H)12Cなどで生じ、大気や海水中に含まれる。3Hの99%(1.3E+18Bq)はHTOの形をとる。核実験が行われる以前の時期に測定された地表水の放射能濃度は、大陸上で200〜900Bq/m3、海水中で100Bq/m3であった。
、雨水中に700Bq/m3程度含まれている。
2.3 炭素14(14C;半減期5730年)
 14Cは、高層大気中で低速の宇宙線による14N(n,p)14C反応によって生じ、大気中、海水中、有機物中に含まれる。
2.4 ナトリウム22(22Na;半減期2.6年)
 22Naは、宇宙線と大気中アルゴンとの反応により生じ、雨水や海水中に含まれる。
<図/表>
表1 規制対象とすべきか検討を要する自然放射性核種(ウラン・トリウム系列を除く)
図1 天然の放射性核種とその起源
図2 ウラン238壊変系列
図3 トリウム232壊変系列

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
自然放射線(能) (09-01-01-01)
人工放射線(能) (09-01-01-03)
地球上に存在する放射性核種 (09-01-01-06)
宇宙線の発見 (16-02-01-02)

<参考文献>
(1)1997年度版 国連科学委員会報告書「放射線の宣言と影響」、1982年版 国連科学委員会報告書「放射線とその人間への影響」、原子放射線の影響に関する国連科学委員会総会への1998年報告書「放射線の線源、影響及びリスク」、原子放射線の影響に関する国連科学委員会の総会に対する1993年報告書「放射線の線源と影響」、原子放射線の影響に関する国連科学委員会の総会に対する2000年報告書「放射線の線源と影響」
(2)I.G.ドラガニックほか(松浦辰男ほか訳):放射線と放射能−宇宙・地球環境におけるその存在と働き、学会出版センター(1996.1)
(3)Richard B.Firestone, Virginia S.Shirley, Coral M.Baglin, S.Y.Frank Che,and Jean Zipkin edeitor;Table of isotopes 8th ed,John Wiley & Sows(1998)
(4)山本 英明:「除外と免除」概説−概念と議論の現状−、保健物理、38(4)(2003)、p.318-326
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