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<概要>
 サテライト・トカマク事業は、大型トカマク装置JT-60の本体部を常伝導コイルから超伝導コイルに置き換え、ITERの運転に貢献するとともに原型炉のためのデータを取得するためにJT-60SAを建設し、運転することを目的としている。JT-60SAの各機器は日欧の実施機関が分担して製作し、那珂研で組立が行われる。我が国の分担では、超伝導ポロイダル磁場コイルの一部が完成するとともに、真空容器に関しては10個の40°セクターの内6セクターが完成している。真空容器内機器については、1万枚以上に及ぶプラズマ対向壁用の黒鉛及び炭素繊維材タイルの製作が進行中である。欧州分担機器については、超伝導トロイダル磁場コイル導体の製作が開始され、クライオスタットについては、クライオスタットベースが那珂研に搬入され、本体室での設置が開始されている。
<更新年月>
2013年08月   

<本文>
 日欧BA協定により実施されるサテライト・トカマク計画事業と日本の国内計画の下、先進超伝導トカマクJT-60SAを建設・運転するJT-60SA計画が日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)の那珂核融合研究所(以下、那珂研)で進められている。JT-60SA計画のミッションは、ITERへの支援及び原型炉へ向けた研究を行い、核融合エネルギーによる発電の早期実現に貢献することである。図1に示すJT-60SAは、プラズマ電流5.5 MA、主半径約3m、トロイダル磁場強度2.25 T(テスラ)において臨界プラズマ条件クラスの超高温重水素プラズマを電流拡散等のプラズマ特性時間よりも長い100秒間維持できる装置で、原型炉に想定される高プラズマベータ条件での完全電流駆動の実証を追究し、能動的なプラズマ安定化を行い、ITERで想定される高プラズマ密度でのHモード閉込めを先行試験するための先進的な機能を有している。
 2008年12月までに、日欧実施機関を含む統合設計チームが中心となって1)目標プラズマ性能を確保しつつ、高ベータプラズマと両立するダイバータ形状の最適化を含めプラズマ配位の実現可能領域を拡張し、高ベータプラズマの生成に有効なプラズマの形状制御性を向上、2)真空容器内に高速プラズマ位置制御コイル並びに高ベータプラズマの実現に不可欠な抵抗性壁モード安定化用コイル、及び遠隔保守機能を備えたダイバータ機器の設置が可能、等の高い柔軟性を併せ持つ設計を完了し、JT-60SA計画は2019年のファーストプラズマを目指して計画が進められている。
 JT-60SAの各機器は日欧の実施機関が分担して製作し、那珂研で組立てが行われる。2007年に超伝導ポロイダル磁場コイルの仕様が決定された以降、企業との契約による機器製作が開始されている。日本分担機器については、那珂研に超伝導ポロイダル磁場コイルの導体製作棟及びコイル巻線棟が建設され、超伝導導体の製作が開始された。2012年には全6対の内最下部のコイルが完成した(図2)。また、真空容器に関しては、最初の40°セクター(トーラス方向の40°分)のインボード及びアウトボード部分が2011年4月に那珂研に納入され、2010年に竣工した真空容器組立棟において両者が溶接された(図3)。2013年夏現在で、全10セクターの内6セクターが完成している。真空容器内機器については、1万枚以上に及ぶプラズマ対向壁用の黒鉛及び炭素繊維材タイルの製作が進行中である。ダイバータカセットは、製作が開始されるとともに、ダイバータの強制冷却用配管の流量試験が完了した。並行して、炭素材モノブロックターゲット開発のための耐熱試験が進められている。
 欧州分担機器については、超伝導トロイダル磁場コイルの設計が完了し、2010年末より超伝導導体の製作が開始された。2011年には、トロイダル磁場コイルの冷却試験用クライオスタットが完成するとともに、高温超伝導リードの技術仕様が確定した。クライオスタットについては2010年にクライオスタットベースの製作が開始され、2013年に那珂研に搬入された(図4)。イタリアが担当するクエンチ保護回路は設計が完了し、2011年に製作が開始されるとともに、イタリアとフランスが担当する超伝導コイル等の電源の技術仕様が確定した。
 JT-60SAは既存の建屋を再利用するため、本体室に設置されていた既存のJT-60を解体する必要があったが、JT-60解体作業は予定通り実施され、2012年10月に終了した。JT-60SA本体の組立てとしては、那珂研に搬入されたクライオスタットベースの設置作業が2013年から開始されている。
 このような建設活動と並行して、JT-60SAにおけるプラズマ実験に向け、2010年にはJT-60SAリサーチプランの検討が日欧共同で開始された。より多くの研究者の参加を求めて、日本では原子力機構及び核融合エネルギーフォーラム、欧州では欧州実施機関及びEFDA(European Fusion Development Agreement)を通じて、日欧の研究者の意見集約を図る体制が整ってきた。JT-60SAの最新情報については、JT-60SA Newsletterとして毎月ウェブで公開されている。JT-60SAリサーチプランも、2011年よりウェブ公開されており、今後改訂毎に更新される予定である。
<図/表>
図1 JT-60SA鳥瞰図
図1  JT-60SA鳥瞰図
図2 完成した最下部超伝導ポロイダル磁場コイル
図2  完成した最下部超伝導ポロイダル磁場コイル
図3 完成した真空容器40°セクター
図3  完成した真空容器40°セクター
図4 完成したクライオスタットベース
図4  完成したクライオスタットベース

<関連タイトル>
核融合炉開発の展望 (07-05-01-04)
トカマク型核融合装置の研究開発 (07-05-01-06)
三大トカマク装置の特徴と研究成果 (07-05-01-07)
幅広いアプローチ活動の概要 (07-05-04-01)

<参考文献>
(1)核融合研究開発部門編集チーム:JT-60SA計画の進捗状況(1)、エネルギーレビュー 2012-3 (2012) 52.
(2)核融合研究開発部門編集チーム:JT-60SA計画の進捗状況(2)、エネルギーレビュー 2012-4 (2012) 48.
(3)二宮博正:特集 核融合発電研究開発の現状と展望 幅広いアプローチ活動の取組および研究の進展と課題、電気評論 6 (2011) 17.
(4)鎌田裕:小特集 幅広いアプローチ計画の概観と展望 5. サテライトトカマク装置(JT-60SA)、プラズマ・核融合学会誌 86 (2010) 240.
(5)S. Ishida, P. Barabaschi, Y. Kamada and the JT-60SA Team: Overview of the JT-60SA project, Nucl. Fusion 51 (2011) 94018
(6)JT-60SAウェブサイト:http://www.jt60sa.org/
(7)文部科学省ホームページ:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/09/05/1338894_5.pdf
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