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<概要>
 ITER計画に貢献し、核融合原型炉の早期実現を目指す国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業は、青森県六ヶ所村の日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)のサイトを拠点として、1)原型炉設計・研究開発(R&D)センター、2)核融合計算シミュレーションセンター及び3)ITER遠隔実験センター(REC)の3つのセンター活動を行っている。
 原型炉設計・研究開発調整センターの活動は、2030年代中葉からの核融合発電実証への道筋を確かなものにするための原型炉概念設計活動、及び日欧が共通に関心を有する主要課題における工学R&D活動を推進・調整するものである。核融合計算シミュレーションセンターの活動では、核融合用スーパーコンピューターを駆使して、既存実験装置やサテライト・トカマクJT-60SA及びITER等におけるシミュレーション研究、実験データ解析研究、核融合炉材料研究、及び原型炉設計研究等を推進するとともに、これらのシミュレーション研究と核融合炉システム研究、実験データ解析研究から得られる成果を統合し、原型炉のための核融合発電プラントに向けた全ての概念の統合(統合モデル化)を行うことが最終目標である。ITER遠隔実験センターに関する活動は、ITERへの実験参加に先立ってJT-60SA等を対象としてRECが持つ機能の完備性を実証すること、及びITERの運転の準備として用いられる核燃焼トカマクシミュレーターを開発することにある。
<更新年月>
2013年08月   

<本文>
 ITER計画に貢献し、核融合原型炉の早期実現を目指す国際核融合エネルギー研究センター事業(IFERC事業)は、青森県六ヶ所村の原子力機構のサイトを拠点として、1)原型炉設計・研究開発(R&D)センター、2)核融合計算シミュレーションセンター及び3)ITER遠隔実験センターの3つのセンター活動を行っている。
1.原型炉設計・研究開発調整センター(DEMO Design R&D Centre)
 原型炉設計・研究開発調整センターの活動は、2030年代中葉からの核融合発電実証への道筋を確かなものにするため、具体的には原型炉概念設計活動及び日欧が共通に関心を有する主要課題における工学R&D活動を推進・調整するものであり、以下にその詳細を示す。
1.1 原型炉設計活動
 原型炉設計活動では、核融合エネルギーによる発電の早期実現を目指し、1)原型炉の設計上の特徴を確定すること、2)実現可能性のある原型炉の共通概念を描き出すこと、3)原型炉へのロードマップを確立すること、4)物理及び工学研究開発課題を明らかにすること、5)共通の関心を有する研究開発課題を確認すること、6)日欧で実施される原型炉概念設計及び関連する研究開発活動を調整すること、を目的に10年間の活動を行う。しかし、原型炉の概念は各国のエネルギー政策における核融合発電の位置づけに依存することから、原型炉に対する考え方は日欧においても大きな隔たりがある。このため、原型炉設計活動では最初の3年間(第1期活動)で、日欧専門家によるワークショップを通して意見交換を行い、後半の7年間(第2期活動)で実施する日欧共同作業にむけた共通作業項目の洗い出しを行った。事業チームに原型炉設計ユニットを設置し、日欧実施機関と協力して原型炉設計統合プロジェクトチーム(IPT)を組織している。
 第1期活動での共同設計活動で実施する共通項目の洗い出しでは、1)原型炉の役割、2)燃焼プラズマ物理の設計課題、3)プラズマ工学の設計課題、4)炉工学技術の設計課題、5)原型炉システムの課題、及び 6)原型炉設計システムコードの6大項目について議論を行ってきた。特に、原型炉の役割に関しては、日欧専門家間ではほぼ同様の研究開発ロードマップを期待しており、日欧で共同設計作業を実施する意義が大きいことを確認している。以上の議論をベースに、第2期活動の日欧共同作業項目を設定し、タスクを日欧実施機関で分担して進めるための準備が進められた。2013年夏現在、日欧の連携を密にして共同作業を行うとともに、サテライト・トカマク事業とも連携協力を行い、原型炉概念設計活動を推進している。BA活動終了時には、日欧による原型炉概念設計案と関連する文書が提出される見通しである。
1.2 工学R&D活動
 BA活動で実施する工学R&D(以下、原型炉R&D)項目は、核融合原型炉の概念設計のための活動を支えることを意図したものであり、限られた資源のなかで特に発電ブランケットに関する研究開発が喫緊、かつ最重要課題である。中でも、ブランケット構造材料としての低放射化フェライト鋼、液体流路保護材料及び先進的構造材料としてのSiC/SiC複合材料、先進中性子増倍材料、先進トリチウム増殖材料、及び原型炉では定常または準定常運転を想定し、燃料供給系・発電ブランケットからのトリチウム回収系など新たなトリチウム取扱技術開発を含むトリチウム工学をR&D項目として選定した。
 図1に原型炉R&Dの研究体制を示す。日本側は六ヶ所サイトに研究施設を整備し、それを核として共同研究の形で大学等の協力も得て、全日本の体制で進めている。一方、欧州側は、EU加盟の各国の研究機関(CIEMAT、ENEA、CRPP、SCK・CEN、KIT)が各領域の研究開発を分担実施している。BA活動期間の初期3年間は、六ヶ所BAサイトにおける原型炉R&D棟の整備に加えて、日欧における予備的研究開発に関する評価検討とワークショップを中心に活動を行ってきた。日本側は、既に2008年2月より予備的な研究を開始した。その後、順調に施設・設備の整備と研究開発を進めている(図2)。一方、欧州側は、実質的な研究を2008年に開始し、訓調に研究開発を実施している。今後は、六ヶ所サイトでの研究活動を強化するとともに、欧州側の各研究所で開発した材料等を六ヶ所サイトの研究施設に持ち込み、日欧共同実験を行うことを計画している。
 一方、原型炉設計活動の進捗に応じて、原型炉設計活動によって得られた成果に基づき、BA活動期間中及びBA活動終了後に実施すべき、関連するR&D活動項目を明らかにし、R&D活動の調整を行う必要がある。併せて、原型炉R&D活動の成果を、原型炉設計活動に反映させる予定である。
2.核融合計算シミュレーションセンター(CSC:Computational Simulation Centre)
 核融合計算シミュレーションセンターの活動では、核融合用スーパーコンピューターを駆使して、既存実験装置やサテライト・トカマク及びITER等におけるシミュレーション研究、実験データ解析研究、核融合炉材料研究、及び原型炉設計研究等を推進するとともに、これらのシミュレーション研究と核融合炉システム研究、実験データ解析研究から得られる成果を統合し、原型炉のための核融合発電プラントに向けた全ての概念の統合(統合モデル化)を行うことが最終目標である。このための計算機は、欧州実施機関により調達されることから、導入する計算機システムの技術仕様を確定するために、BA運営委員会のもとに日欧の計算機専門家から構成される特別作業グループ1が2008年9月に設置された。2010年までに同作業グループで、市場調査の実施手順評価、調達可能な業者の確認、資料招請内容の作成、ベンチマークコードの評価・選定、計算機要求性能の評価等が行われ、計算機及び周辺機器の技術仕様の検討等精力的な活動が行われた。その結果、2010年4月に、計算機、周辺機器、及び関連サービスに関する仕様が確定した。その後、調達を担当する欧州実施機関が中心となって計算機関連機関・企業と調整を進め、2011年3月に導入機を契約し、2012年1月から計算機運用を開始した。なお、今回導入した計算機システム(図3)は、Linpackで1.23ペタフロップス(1秒間に浮動小数点数演算を1000兆(1015 回処理)を達成しており、2013年6月現在で日本第2位、世界第20位の性能となっている。なお、CSCの利用規則等は、2011年1月に組織された特別作業グループ2で議論・策定するとともに、常設委員会(Standing Committee)の実施要項を策定し、CSCを利用する課題の選定、CPU時間やストレージ等の計算機資源の配分を決定する等の役割を担っている。2012年1月から開始した運用において、利用者約360名、平均利用率70-90%を達成している。
3.ITER遠隔実験センター(REC:Remote Experimentation Centre)
 ITER遠隔実験センターに関する活動は、BA活動期間の最後の2年間に本格的に実施される事が予定されている。RECにおける目的は、ITERへの実験参加に先立って、サテライト・トカマクJT-60SA等を対象としてRECが持つ機能の完備性を実証すること、及びITERの運転の準備として用いられる核燃焼トカマクシミュレーターを開発することにある。また、RECにおいて具体的に実施する活動内容を、今後日欧実施機関と密接に協力し、精査して調整する予定である。
<図/表>
図1 BA活動における原型炉工学R&Dの研究体制
図1  BA活動における原型炉工学R&Dの研究体制
図2 原型炉R&D棟に整備された機器(一部)
図2  原型炉R&D棟に整備された機器(一部)
図3 核融合計算シミュレーションセンターに導入された計算機
図3  核融合計算シミュレーションセンターに導入された計算機

<関連タイトル>
核融合炉開発の展望 (07-05-01-04)
トカマク型核融合装置の研究開発 (07-05-01-06)
核融合炉工学の研究開発課題(5)ブランケット工学 (07-05-02-05)
核融合炉工学の研究開発課題(6)材料工学 (07-05-02-06)
核融合炉工学の研究開発課題(8)トリチウム工学 (07-05-02-08)
幅広いアプローチ活動の概要 (07-05-04-01)
サテライト・トカマク事業 (07-05-04-04)

<参考文献>
(1)核融合研究開発部門編集チーム:IFERC事業の進捗状況、エネルギーレビュー 2012-6 (2012) 52.
(2)二宮博正:特集 核融合発電研究開発の現状と展望 幅広いアプローチ活動の取組および研究の進展と課題、電気評論 6 (2011) 17.
(3)荒木政則他, 小特集 幅広いアプローチ計画の概観と展望 4. 国際核融合エネルギー研究センター事業、プラズマ・核融合学会誌 86 (2010) 231.
(4)M. Araki, et al., Progress of IFERC project in the Broader Approach Activities, Fusion Eng. and Design, 85 (2010) 2196.
(5)T. Nishitani, et al., Fusion materials development program in the broader approach activities, J. Nucl. Mater. 386-388 (2009) 405.
(6)文部科学省ホームページ:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2013/09/05/1338894_2.pdf
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