<大項目> 基礎基盤研究および先端的研究
<中項目> 原子力利用分野拡大に関する研究開発
<小項目> 新概念の原子力システム
<タイトル>
第4世代原子炉の概念 (07-02-01-11)

<概要>
 第4世代原子炉(GEN-IV)とは、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の達成を目標とする次世代原子炉概念である。概念の選定作業を国際的な枠組みで進めるため、米国、日本、英国、韓国、南アフリカ、フランス、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、スイスの10か国で第4世代国際フォーラムGIF)を2001年7月結成した。この結果、2030年までの実用化を目指す概念(GEN-IV)として、超臨界圧軽水冷却炉ナトリウム冷却高速炉鉛合金冷却高速炉超高温ガス炉ガス冷却高速炉、及び溶融塩炉の6概念が選定された。また、2015年までに導入可能な国際短期導入炉INTD)として、改良型BWRABWR-2、ESBWR、HC-BWR、SWR-1000)、改良型圧力管型炉(ACR-700)、改良型PWR(AP600、AP1000、APR1400、APWR+、EPR)、一次系一体型炉(CAREM、IMR、IRIS、SMART)、及びモジュラー型高温ガス炉(GT-MHR、PBMR)の5種類の概念群が選定された。
<更新年月>
2011年07月   

<本文>
1.第4世代原子炉とは
 第4世代原子炉(Generation IV:GEN-IV)とは、「第1世代」(初期の原型炉的な炉)、「第2世代」(現行の軽水炉等)、「第3世代」(改良型軽水炉、東電柏崎刈羽のABWR等)に続き、米国エネルギー省(DOE)が2030年頃の実用化を目指して2000年に提唱した次世代の原子炉概念で、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の目標を満足するものである。
2.第4世代原子炉及び国際短期導入炉概念の選択経緯
 このプログラムを国際的な枠組みで推進するため、米国、日本、英国、韓国、南アフリカ、フランス、カナダ、ブラジル、アルゼンチンの9か国が2001年7月に第4世代国際フォーラム(Generation IV International Forum:GIF)を結成し、その後スイスも参加して2002年9月には参加国は10か国となった。さらに2003年にはユーラトムが、2006年には中国とロシアがGIF憲章に署名している。憲章への署名は協力への関心を表明したものであり、実際の協力活動は枠組協定(Framework Agreement)への署名をもって行われる。2005年2月に、日本、米国、フランス、カナダ及び英国は、枠組協定(第4世代の原子力システムの研究及び開発に関する国際協力のための枠組協定)に署名し、締約国となった。その後、スイス、韓国及びユーラトムが加入、2007年12月に中国、2008年4月に南アフリカが加入書を寄託した。なお、英国は後に枠組協定から抜けている。枠組協定参加国は6つのGIF対象システムのうち、少なくとも1つの研究活動に参加する。
 第4世代原子炉概念については、米国の原子力エネルギー研究諮問委員会(Nuclear Energy Research Advisory Committee:NERAC)が中心になって作成したガイドラインに基づいて、2001年4月に関係各国から原子炉概念を公募した。2001年5月に技術作業グループ(Technical Working Group:TWG)が発足し、概念の選択及び開発ロードマップの検討を開始した。TWGは、評価方法を検討するグループと、水炉、ガス炉、液体金属炉、以上のいずれにも属さない非古典的概念炉の炉型別検討グループ、及び炉型横断的なクロスカットグループから構成されており、日本からも研究機関、電気事業者、大学等の専門家が参加している。第4世代原子炉の概念は、関係各国から公募したアイデアを上記TWGで検討し、その結果をロードマップ統合チーム(Roadmap Integration Team:RIT)がレビューして概念候補を選定し、GIFにおける議論を経て決定された(図1)。
 なお、第4世代原子炉は当初は2030年までに導入可能な次世代炉を対象としていたが、2002年2月のGIFロンドン会議において、米国から、2015年までに導入可能で、改良型軽水炉(ALWR)と同等以上の性能を有する改良型炉を国際短期導入炉(International Near Term Deployment:INTD)として第4世代計画の枠内で選択したいとの提案があり、全加盟国の了承を得た。ただし、第4世代原子炉は国際的な共同研究開発をターゲットとしているのに対して、国際短期導入炉は基本的には当事国の責任で研究開発を進めるものである。国際短期導入炉については既に第4世代原子炉として提案済みの概念の他に、2002年6月まで追加公募を受け付けた。
 第4世代原子炉については、最終的には2002年7月のGIFリオデジャネイロ会議において、第4世代原子炉の6概念、国際短期導入炉の5概念群が決定された。表1に選択された概念の一覧を示し、以下に各概念の概要を述べる。
3.第4世代原子炉(GEN-IV)の概要
(1)超臨界圧軽水冷却炉(SCWR:Supercritical-Water-Cooled Reactor System) 図2参照
 東大、東芝を中心にわが国が研究を主導している概念である。現行実用中の軽水炉は、亜臨界圧力(BWR:7.2MPa,PWR:15.5MPa)なので、蒸気と水を分離しタービンに送る必要がある。超臨界圧 22.1Pa以上では気水の分離が必要ないので、原子炉で加熱した冷却水で直接タービンを駆動して発電できる。この技術を応用した超臨界圧軽水冷却炉は、水の臨界圧 22.1MPa以上の高圧(25MPa)かつ高温(500℃)で運転するため、高い熱効率(約45%)が達成できるとともに、貫流サイクルが採用できるので、気水分離系、再循環系が不要となり、機器の簡素化による経済性向上が図れる。本概念には稠密炉心を採用する高速炉と、水減速棒を使用する熱中性子炉があり、いずれもGEN-IVとして採択された。
(2)ナトリウム冷却高速炉(SFR:Sodium-Cooled Fast Reactor System) 図3参照
 酸化物燃料と先進湿式再処理方式を組み合わせた概念と、金属燃料乾式再処理を組み合わせた概念がまとめてGEN-IV概念に採択された。いずれもわが国がFBRサイクル実用化戦略調査研究で検討している概念である。特に前者の代表的な概念としては、「もんじゅ」開発を踏まえてJNC(核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構))が検討中の大型ループ型炉があり、原子炉構造のコンパクト化、ループ数削減、一次系機器の合体等による経済性向上を特徴としている。
(3)鉛合金冷却高速炉(LFR:Lead-Cooled Fast Reactor System) 図4参照
 このカテゴリーには、鉛冷却大型炉(1200MWe)、鉛ビスマス冷却小型炉(400MWe)、及び鉛ビスマス冷却バッテリー炉(120-400MWe)の3種類の概念が包含されている。鉛冷却大型炉としてはロシアで開発中のBRESTが参考になる概念である。また、バッテリー炉は、15〜30年の超長期運転が可能であり、分散電源や水素製造、海水脱塩などを目的としている。また、原子炉モジュールは工場生産し現地に据え付け、使用後の炉心はそのまま燃料リサイクルセンターに輸送するもので、核拡散抵抗性にも優れている。
(4)超高温ガス炉(VHTR:Very-High-Temperature Reactor System) 図5参照
 900℃以上の原子炉出口温度で運転できる超高温ガス炉で、高効率発電とともに熱化学水素製造などの高温プロセス利用が可能である。わが国では、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)がHTTRの建設・運転をベースとして研究開発の推進を主導し、電気出力30万kWの高温ガス炉ガスタービン発電システムを設計検討している。また、米国やフランスでも高温ガス炉技術の開発を進めており、これらの技術は以下のガス冷却高速炉にも活用できる。
(5)ガス冷却高速炉(GFR:Gas-Cooled Fast Reactor System) 図6参照
 提案されている概念は、電気出力288MWeのヘリウム冷却炉で、出口温度は850℃、熱効率48%である。炉心はピンまたは板状燃料を用いたブロック型をベースとしている。フランスを中心に検討が進められているが、燃料形状、炉心構造など、概念の基本部分についてはまだ未決定で、燃料サイクル技術を含めて開発要素が多い。
(6)溶融塩炉(MSR:Molten Salt Reactor System) 図7参照
 液体のトリウム及びウランのフッ化物を燃料として黒鉛炉心チャンネル内を流れる熱中性子炉である。炉心で発生した熱は中間熱交換器により外部に取り出す。FPは液体燃料から連続的に除去され、アクチニドはリサイクルされる。この炉は、電気出力1000MWeの大型炉で、運転圧力は低圧(0.5MPa以下)であるが、液体燃料の温度は700℃であり、高い熱効率が達成できる。ただし、構造材料開発等の課題があり、第4世代原子炉の中では実用化は最も遅れる見通しである。
4.国際短期導入炉(INTD)の概要
 INTDについては、概念を炉型ごとにまとめて、5個の概念群として整理されている。
(1)改良型BWR(Advanced Boiling Water Reactors)
 BWR概念としては、ABWRの発展型であるABWR-2、ヨーロッパ型単純化BWR(ESBWR)、わが国(原研(現日本原子力研究開発機構)、東芝、日立)が提案した高転換BWR(HC-BWR)である低減速スペクトル炉(図8)、単純化BWR(SWR-1000)が採択された。
(2)改良型圧力管型炉(Advanced Pressure Tube Reactor)
 カナダで次世代CANDU炉として開発中の重水減速軽水冷却圧力管型炉(ACR-700)で、運転中の燃料交換が可能である(図9)。本炉は軽水炉燃料の再利用も可能(DUPIC技術)で、燃料サイクルに柔軟に対応できる。
(3)改良型PWR(Advanced Pressurized Water Reactors)
 PWR概念としては、受動的安全機能を有するAP600、及びその発展型のAP1000(図10)、APWRの発展型であるAPWR+、ABB System80+の発展型として韓国で開発中のAPR1400、及びヨーロッパ型PWR(EPR)が採択された。
(4)一次系一体型炉(Integral Primary System Reactors)
 循環ポンプ、蒸気発生器等の一次冷却系を原子炉容器内に設置して大破断事故の可能性を排除した炉型で、CAREM(アルゼンチン)、IRIS(ウェスティングハウス社、SMART(韓国)、IMR(三菱)などの概念の総称である。 図11 に、IMRの概念図を示す。このプラントの基本構成は、エネルギー輸送方式が間接サイクルであり、原子炉系には自然循環方式の一体型を採用し、蒸気発生器を出力運転時蒸気生成のみならず、起動停止時及び事故時の崩壊熱除去にも使用することでシステムを簡素化している。
(5)モジュラー型高温ガス炉(Modular High Temperature Gas-Cooled Reactors)
 プリズマティックモジュラー炉(GT-MHR)(図12)及びペブルベッドモジュラー炉(PBMR)の概念が含まれる。この概念は第4世代炉として採択された超高温ガス炉の技術開発の先導的な役割を期待されている。
<図/表>
表1 第4世代原子炉と国際短期導入炉の選択結果
図1 第4世代原子炉の概念選択およびロードマップ作成組織
図2 第4世代原子炉概念(1):超臨界圧軽水冷却炉
図3 第4世代原子炉概念(2):ナトリウム冷却高速炉
図4 第4世代原子炉概念(3):鉛合金冷却高速炉
図5 第4世代原子炉概念(4):超高温ガス炉
図6 第4世代原子炉概念(5):ガス冷却高速炉
図7 第4世代原子炉概念(6):溶融塩炉
図8 国際短期導入炉概念の例(1):改良型BWR(HC-BWR)(低減速スペクトル炉)
図9 国際短期導入炉概念の例(2):改良型圧力管型炉(ACR-700)
図10 国際短期導入炉概念の例(3):改良型PWR(AP-1000安全系概念)
図11 国際短期導入炉概念の例(4):一次系一体型軽水炉(IMR)
図12 国際短期導入炉概念の例(5):モジュラー型高温ガス炉(GT-MHR)

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<関連タイトル>
溶融塩炉 (03-04-11-02)
低減速スペクトル炉の炉概念 (03-04-11-09)
第4世代原子炉 (07-02-01-10)
スーパー軽水炉(超臨界圧軽水冷却炉) (07-02-01-13)

<参考文献>
(1)William D. Magwood IV,"Roadmap to the Next Generation of Nuclear Power Systems: A vision for a powerful future", Nuclear News, November 2000, p.35-38
(2)DOE:Generation IV Nuclear Energy Systems:http://gen-iv.ne.doe.gov
(3)U.S.DOE:A Technology Roadmap for Generation IV Nuclear Energy Systems, December 2002, http://gif.inel.gov/roadmap/pdfs/gen_iv_roadmap.pdf
(4)原子力委員会:第7回革新炉検討会(2002年11月7日)報告書付録1「各国の動向」、http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/teirei/siryo2002/siryo44/siryo2_3_2_1.(pdf)3/13
(5)岡 芳明、塚越誠一:高温高性能軽水冷却原子力発電プラント 貫流型超臨界圧軽水冷却原子炉の概念、日本原子力学会誌、Vol.44, No.8, p.600-605(2002)
(6)比村守也:高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究 フェーズ1、サイクル機構技報 No.12 別冊(2001)
(7)V. M. Poplavski, et al. "Review of Fast Reactor Operating Experience Gained in 1998 in Russia", the 32nd Meeting of IAEA Int. Working Group on Liquid Metal Fast Reactors, Vienna, May 18-19(1999)
(8)Y. Yan, et al., "Design and Development of GTHTR300", The 1st Int. Topical Meeting on HTR Technology, Petten, Netherlands, April 22-14, (2002)
(9)日本原子力研究所エネルギーシステム研究部(編):“革新的原子力技術と安全性研究”、平成13年度日本原子力研究所成果報告会(2001)、p.12
(10)向井 卓:三菱重工業における次世代炉開発の取り組み、原子力eye、Vol.48,No.1, p.35-39(2002)
(11)国富一彦、他:高温ガス炉ガスタービン発電システム、日本原子力誌、Vol.43, No.11, p.43-48(2001)
(12)牧野義明:一体型モジュラー軽水炉(IMR)、日本原子力誌、Vol.43, No.11, p.23-28(2001)
(13)松井一秋他:第4世代原子力システム技術開発、日本原子力誌、Vol.45, No.3, p.161-172(2003)
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