<大項目> 原子力安全研究
<中項目> 原子力施設などの安全研究
<小項目> 軽水炉の安全研究
<タイトル>
シビアアクシデント時の格納容器の健全性に関する研究 (06-01-01-10)

<概要>
 原子炉格納容器は、核分裂生成物(FP)が原子炉施設外に放出されることを防止する最後の障壁であり、その健全性を保つことは安全上極めて重要である。そのため、シビアアクシデント時に格納容器等に加わる負荷および格納容器からのFP漏えい量を明らかにするための実験および解析が内外で実施された。わが国では、日本原子力研究所(現:日本原子力研究開発機構)の事故時格納容器挙動試験(ALPHA)計画を初めいくつかの研究が実施された。
<更新年月>
2006年08月   

<本文>
 シビアアクシデント時には原子炉格納容器内では図1に示すような諸事象が起こることが考えられており、格納容器の健全性を損う事象として以下の事象が挙げられる。
(1) 溶融物と冷却水との接触にともなう水蒸気爆発。
(2) 溶融物落下にともなうコンクリートとの相互作用によるコンクリートの浸食。
  FPを含むエアロゾル、可燃性・非凝縮性ガスの発生。
(3) 可燃性ガスの爆発、燃焼。
(4) 溶融物噴出による格納容器の直接加熱。
 上記の諸事象は格納容器の温度、圧力を上昇させる要因となるもので、これらの事象の解明はシビアアクシデント時の格納容器の健全性を評価するうえで極めて重要であることから、各国で種々の研究が行われた。
1.原子炉格納容器内での諸現象
 水蒸気爆発は、高温で溶融した炉内構造物が格納容器下部に存在する冷却水と接触し、水が急激に蒸発し、高圧や衝撃力を発生する現象である。この現象は製鉄所での事故や火山の溶岩流出等でも見られる。このような溶融物と水の相互作用に関する研究は、米国、欧州(伊、独、仏等)、韓、日等で行なわれてきた。わが国では、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)のALPHA計画等および原子力発電技術機構(NUPEC)のCOTELS計画がある。これらの実験では、テルミット(酸化鉄と金属アルミニウムの粉末)やスズ、ステンレス鋼等の金属、溶融炉心模擬材料(酸化ウラン、酸化ジルコニウム等の混合物)等を溶融し水中に落下させ、水蒸気爆発の発生条件、衝撃力の大きさ等が調べられた。
 一方、水蒸気爆発の解析コードも開発され、国際協力により各国で開発された解析コードの相互比較や実験データとの比較、実機解析に適用する上での課題検討などを含む研究が行われた(OECD/SERENA計画)。このような解析コードを確率論的安全評価(PSA)に適用する試みも行われた。
 溶融炉心とコンクリートの反応(MCCI:Molten Core Concrete Interaction)およびMCCI中に水を注いだ場合の溶融炉心の冷却性については、ドイツ、日本、米国で調べられた。この反応では、コンクリートの侵食やFPを含むエアロゾル、炭酸ガスの非凝縮性ガスおよび水素や一酸化炭素の可燃性ガスが発生する。溶融炉心に金属ジルコニウムが含まれているとコンクリートの侵食速度が倍近くに増大するなどの現象が観測された。
 水素燃焼や爆ごうについては、米国サンディア国立研究所(SNL:Sandia National Laboratories)では水素/空気の燃焼に及ぼす水蒸気や炭酸ガス等の希釈気体の影響を調べ、また大規模施設(FLAME)を用いて炎の伝播通路の形状や障害物の影響が調べられた。またスプレイ作動下の燃焼試験や受動的触媒水素再結合器の有効性試験等も行なわれた。米国ブルクヘブン国立研究所(BNL:Brookhaven National Laboratory)は日本の(財)原子力発電技術機構と共同で、爆ごうの発生条件に及ぼす温度、組成、障害物等の影響を調べた。また、可燃性ガスの発生が爆ごうに至るか否かは発生ガスの移動および分布が関係するので、ドイツでは大型実験装置(HDR)によって水素の模擬気体としてヘリウムを用い、水素分布について調べた。
2.原子炉格納容器の健全性
 原子炉容器から格納容器への炉心溶融物噴出による格納容器直接加熱実験では、米国のSNLにおいて1/10および1/6スケール(SURTSEYおよびCTTF)実験が行なわれた。またアルゴンヌ国立研究所(ANL:Argonne National Laboratory)では1/40スケール(COREXIT)の装置で実施された。図2は直接加熱試験装置の一例で、SNLで用いられたSURTSEY試験施設である。直接加熱の影響はBWRよりPWRの方が厳しいので何れの試験もPWR格納容器を対象にしており、これらの試験ではPWRでも格納容器が破損する確率は極めて小さいとの知見を得ている。
 格納容器は、設計基準事象に対しては、余裕を持って健全性を維持できるように設計されているが、シビアアクシデント時に受ける負荷に対しては、ケーブル貫通部が破損したり、格納容器本体の変形により貫通部のシールから多量の漏洩(リーク)が発生し、格納機能を失う恐れもある。このため、シビアアクシデント時の格納容器の健全性を調べる一連の研究をSNLで実施した。
 鋼製格納容器の静的内部荷重に対する挙動を調べるため、1/32および1/8スケールの格納容器モデルを窒素ガスで加圧する実験を行った。1/8スケールの試験体は(図3参照)、支持部を兼ねる底部(設計圧13.9MPa)を除き、本体部は実際の格納容器を模擬して0.38MPaで設計された。貫通部周辺の変形によるリークへの影響をみるため、機器搬入口や運転員エアロックの周辺には歪ゲージや変位計等を多数配置した。試験では、実機の格納容器のように健全性試験、総合漏洩検査を実施した後、高圧試験を行った。
 強化コンクリート製格納容器については、1/6スケールの試験体を用いて同様な試験を実施した。試験体は高さ約11.1m、内径6.6m、設計圧0.42MPaであり、8層の鉄筋を入れ、鋼製ランナーをアンカーによりコンクリートに固定するなど、極力実物を模擬し、2つの機器搬入口、2つの運転員ハッチ、配管群なども含まれた。試験は窒素により段階的に加圧して実施した。
 実際の格納容器はより複雑な構造をしていることから、上記の試験結果を直接実機格納容器挙動の評価に用いるのは適当ではなく、解析手法の妥当性を評価するためのデータを提供することが試験の目的である。
<図/表>
図1 シビアアクシデント時に格納容器内で起こり得る主な事象
図2 SNLにおける格納容器直接加熱実験に用いられたSURTSEY施設の概要
図3 鋼製格納容器1/8縮小モデル試験体

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
BWRの原子炉格納容器 (02-03-04-02)
PWRの原子炉格納容器 (02-04-04-02)
シビアアクシデント時の炉心溶融進展に関する研究 (06-01-01-09)
シビアアクシデント時のFP挙動とソースターム評価 (06-01-01-11)

<参考文献>
(1) 西沢 嘉寿成ほか:軽水炉のシビアアクシデント研究の現状、原子力学会誌、Vol.35、No.9、p.762−794 (1993)
(2) 杉本 純ほか:シビアアクシデント研究に関するCSARP計画の成果、原子力学会誌、Vol.39、No.2、p.123−134 (1997)
(3) 早田 邦久ほか:事故時格納容器挙動試験(ALPHA)計画、原子力工業、Vol.38、No.8, p.38−44 (1992)
(4) D. Magallon et al., Results pf phase−1 of OECD programme SERENA on fuel−coolant interaction, The 1st European Review Meeting on Severe Accident Research (ERMSAR−2005), Aix−en−Provence, France, (2005)
(5) K. Moriyama et al., Evaluation of containment failure probability by ex−vessel steam explosion in Japanese LWR plants, Journal of Nuclear Science and Technology, vol.43, no.7, pp.774−−784 (2006)
(6) M.T. Farmer, et al., Status and Future Direction of the Melt Attack and Coolability Experiments (MACE) Program at Argonne National Laboratory, Proc. the Ninth International Conference on Nuclear Engineering (ICONE−9), ICONE−9696, Nice, France (2001)
(7) Y. Maruyama, et al., A Study on Concrete Degradation during Molten Core/Concrete Interactions, Nucl. Eng. Des., 236, 2237−−2244 (2006)
RIST RISTトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ