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<概要>
 JRR−2(Japan Research Reactor No.2)は、1960年に初臨界に達して以来、36年間利用運転され、1996年12月の恒久運転停止後、1997年8月解体工事が着手された。解体は1997年から2007年にかけて4段階に分けて実施する計画で進め、第1段階、第2段階(1998〜1999年度)及び第3段階(2000〜2003年度)の工事を計画どおり終了した。引き続き最終第4段階(2004〜2007年度)の解体工事を開始する計画であったが、解体計画の見直しを行い、第4段階開始までの間、密閉措置されている原子炉本体を安全貯蔵するとともに残存する原子炉施設を維持管理することとなった。さらに、2005年の届出制から認可制への原子炉等規制法の改正に併せ、廃止措置計画の見直しがなされた。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.はじめに
 JRR−2は、米国アルゴンヌ国立研究所のCP−5型原子炉を原型とした熱出力10MW、濃縮ウラン燃料、重水減速冷却非均質型の研究用原子炉である。1960年10月1日に臨界となり、以来約36年間にわたり原子炉用燃料・材料の照射試験、RIの生産、中性子ビーム実験、医療照射(BNCT)及び人材の育成など原子力の研究、開発の広範な分野に多大の貢献をしてきた。ATOMICAデータの構成番号<03−04−02−01>を参照。
 所期の目的を達成したこと等から日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の「長期事業計画」に基づき、1996年12月19日に運転を停止し、1997年5月に旧科学技術庁(現文部科学省)に解体届の提出を行い、解体に着手した。
2.廃止措置計画と解体工事経過
2.1 廃止措置計画
 廃止措置の実施にあたっては、国の基本方針をもとに、「原子炉施設の解体に係る安全確保の基本的考え方−JPDRの解体にあたって−」(1985年12月19日、原子炉安全委員会決定)を参考にしつつ、安全の確保を大前提に、解体届に述べる基本的考え方に従い実施し、解体を第1段階から第4段階まで4段階に分けて行うこととした。最終第4段階では、JRR−3改造での解体撤去等を参考とした原子炉本体一括撤去工法により原子炉本体を一括撤去し、新たに設置する原子炉の保管廃棄施設に保管廃棄することとした(IAEA Stage3解体撤去相当)。また、残存する原子炉建屋等の諸施設は他の施設に転用して有効利用を図ることとした。この計画に基づき1997年解体工事を開始し、2004年2月計画どおり第3段階を終了したが、第4段階で発生する放射性廃棄物の低減化等を考慮し、計画の見直しを行い、第4段階開始までの期間、第2段階で密閉措置した原子炉本体を安全貯蔵することとなり2004年3月解体届の変更を行った。さらに、2005年の原子炉等規制法改正に伴う廃止措置計画認可申請にあわせ廃止措置計画の見直しを行った。2006年5月申請し、2006年11月認可された廃止措置計画において、当初解体届で計画した原子炉本体の一括撤去・保管廃棄方式は行わず、原子炉本体及び原子炉建屋を完全解体撤去することに計画を変更した。表1にJRR−2廃止措置工程を示す。
 解体届に基づき、第3段階まで計画どおり終了した解体工事の経過を次に示す。
2.2 解体工事経過
(1)第1段階(1997年度)
 主な解体工事は、1)原子炉の機能停止、2)熱遮へい軽水並びに炉心及び一次冷却系統施設内の重水の抜き取り、3)冷却系統設備の貯蔵タンク3基(重水、軽水、非常用重水系統の貯蔵タンク)の系統からの切り離しなどであった。
(2)第2段階(1998〜1999年度)
 主な解体工事は、1)残存放射物質の試料採取、2)原子炉冷却系統施設の系統隔離、3)燃料交換キャスク等の撤去、4)重水の搬出、5)実験設備等の撤去、6)原子炉本体の密閉措置、7)二次冷却設備等の撤去、8)放射線管理施設の一部撤去等であった。
 原子炉本体の密閉措置に先立ち、まず一次冷却系等の配管及び換気ダクトを切り離し、原子炉本体と原子炉冷却系統施設等の系統隔離を実施したが、重水タンクに接続している一次冷却系配管については、配管内等からのストリーミングにより作業場所の空間線量率が高く、被ばく管理のためにアルミニウムで遮へい措置を行い、閉止蓋で密閉した。次いで、原子炉本体を密閉し安全に貯蔵するため、原子炉本体上部、原子炉本体側面及び接続配管撤去部の開口部を全て溶接密閉した。図1に密閉措置後の原子炉本体の状況を示す。なお、トリチウムを含んだ重水約15トンの処理は、カナダへの譲渡、搬出により1997年終了した。
(3)第3段階(2000〜2003年度)
 主な解体工事は、1)機器類の汚染除去試験、2)使用済燃料貯蔵プール水の抜取り及び機器類撤去、3)原子炉冷却系統施設等の機器類撤去、4)未使用燃料収納ラックの撤去、5)計測制御系統施設の撤去、6)コンクリート等の放射性物質の測定試料採取、7)その他使用を修了した付属設備等の一部撤去(オイルダンパ、非常用電源設備の一部、中性子エリアモニタ、スタックガスモニタの撤去)工事であった。
 このうち、2002年及び2003年に実施した原子炉冷却系統施設等の機器類撤去工事においては、トリチウムで高濃度に汚染していた重水系機器類の解体時に、前年度までに実施した機器類の汚染除去試験の結果を反映し、熱風乾燥炉を用いた通気除染法による機器類のトリチウム除染を行った。図2に重水系機器類の解体撤去状況を、図3に原子炉冷却系統施設の機器類撤去工事前後の重水ポンプ室の状況をそれぞれ示す。
2.3 解体工事に伴い発生した放射性廃棄物の管理状況(第1段階から第3段階まで)
(1)放射性気体廃棄物
 従来どおり排気系の高性能フィルタでろ過した後、スタックダストモニタ等により放射性物質の濃度が基準値以下であることを監視しながら排気筒から放出した。排気口における放射性物質の濃度は告示に定める濃度限度以下であった。
(2)放射性液体廃棄物
 従来どおり廃棄液用タンクに一時貯留した後、廃棄物処理場へ搬出した。なお、炉室内手洗い等からの一般排水については、同じく廃棄液用タンクに一時貯留した後、法令で定められている周辺監視区域外の濃度限度以下であることを確認後、一般排水溝へ排出した。
(3)放射性固体廃棄物
 固体廃棄物及びビニール等の解体付随廃棄物は、放射能レベル毎に区分し、所定の廃棄物収納容器に収納し、炉室の一時保管場所に保管した後、所内の放射性廃棄物処理施設へ搬出した。また、所定の廃棄物収納容器に収納できない大型の燃料交換キャスク、実験設備等の遮蔽体等については、必要な密閉措置を施した後、放射性廃棄物処理施設へ搬出した。第1段階の解体工事で発生した放射性固体廃棄物は、金属類約8トン、解体付随廃棄物約2トンであった。第2段階の解体工事で発生した主な放射性固体廃棄物は、金属類約266トン、コンクリート類が約12トン、解体付随廃棄物が約3トンであった。第3段階の解体工事で発生した主な放射性固体廃棄物は、金属類約98トン、コンクリート、樹脂類約3トン、解体付随廃棄物が約29トンであった。
3.廃止措置の今後の進め方
 解体届においては、最終第4段階の解体工事を2004年度に開始することとしていたが、計画の変更により、第4段階開始までの期間、密閉措置されている原子炉本体の安全貯蔵及び原子炉保安規定に基づき、残存する原子炉施設の維持管理を行ってきている。なお、2005年の原子炉等規制法改正に伴う廃止措置計画の見直しにより、放射性廃棄物の処理・処分等を考慮し、原子炉本体を原子炉建屋内で解体後、原子炉建屋を解体撤去し、さら地化することとした。図4に廃止措置計画認可申請書における廃止措置前後のJRR−2原子炉施設配置図を示す。
今後、解体工事再開までの期間に、原子炉本体解体時の高線量炉心構造物の取り扱い、解体で発生する大量のトリチウム汚染したコンクリートの処分及び解体方法等についての検討を行い、解体工事における被ばくの低減化及び放射性廃棄物の低減化を具体化していくことが必要である。
(前回更新:2004年9月)
<図/表>
表1 JRR−2廃止措置工程
表1  JRR−2廃止措置工程
図1 密閉措置後の原子炉本体の状況
図1  密閉措置後の原子炉本体の状況
図2 重水系機器類の解体撤去状況
図2  重水系機器類の解体撤去状況
図3 機器類撤去工事前後の重水ポンプ室の状況
図3  機器類撤去工事前後の重水ポンプ室の状況
図4 廃止措置前後のJRR−2原子炉施設配置図
図4  廃止措置前後のJRR−2原子炉施設配置図

<関連タイトル>
JRR-2 (03-04-02-01)
原子力施設廃止措置に関するOECD/NEA国際協力 (05-02-01-08)
東海発電所(GCR)の廃止措置計画 (05-02-03-14)
研究炉の廃止措置 (05-02-04-01)
旧JRR-3(日本)の一括撤去 (05-02-04-08)
JPDRの解体 (05-02-04-09)
JPDRの解体(1992年度以降) (05-02-04-10)

<参考文献>
(1)JRR−2管理課:JAERI−Tech94−0140 JRR−2の運転と利用の成果(1994)
(2)日本原子力研究所:日本原子力研究所東海研究所JRR−2原子炉施設の解体届(1997)
(3)日本原子力研究所:日本原子力研究所東海研究所JRR−2原子炉施設の解体届の変更届(1998、1999、2000、2002、2003、2004)
(4)原子力科学研究所JRR−2原子炉に係る廃止措置計画認可申請書(2006)
(5)番場正男:研究炉「JRR−2」の解体計画と現状、デコミッショニング技報 第22号、p.6(2000年8月)
(6)中野正弘ほか:研究炉「JRR−2」廃止措置、デコミッショニング技報 第30号、p.11(2004年9月)
(7)中野正弘ほか:JRR−2の解体(1)、JAERI−Tech2003−072
(8)鈴木武ほか:JRR−2の解体(2)、JAERI−Tech2005−018
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