<大項目> バックエンド対策
<中項目> 原子力施設の廃止措置
<小項目> 発電炉の廃止措置
<タイトル>
海外主要国における発電炉の廃止措置の実績 (05-02-03-01)

<概要>
 一般に発電用原子炉の寿命は30年から60年程度と見込まれている。原子力平和利用開始の初期に建設された発電炉の幾つかは運転を停止し、また、事故や経済性の観点から寿命を迎える前に運転を停止した発電炉も幾つか存在する。世界全体で運転を停止し廃止措置される発電炉は、2015年8月時点で小型のパイロットプラントを含め156基に達する。このうち、現在までに解体の完了した発電炉は23基であり、残りの多くは、解体中、安全貯蔵準備のための工事中、あるいは安全貯蔵中である。米国、フランス、イタリア等では、運転停止した後の解体開始時期を早める方向に進んでいる。
<更新年月>
2015年12月   

<本文>
 商業用原子力発電施設(以下「発電炉」という。)は、2015年1月時点で、31カ国において431基が運転中であり、また建設中のものが76基、計画中のものが104基ある。
 一方、2015年8月現在までに停止し、閉鎖された世界の発電炉は、156基あり、その一覧を表1−1表1−2及び表1−3に、また、発電炉の炉型別閉鎖基数を表2に示す。主要国の閉鎖基数は、米国34基、英国29基、ドイツ28基、日本16基、フランス12基、ブルガリア4基、イタリア4基、ロシア4基、カナダ6基、スロバキア3基、スウェーデン3基である。また炉型別では、主なものとして軽水炉が82基、炭酸ガス冷却炉(GCR)が東海発電所を含め36基が閉鎖され廃止措置された。海外における代表的な発電炉廃止措置の実績を表3に示す。
 軽水炉の廃止措置の技術は2000年代に大きく前進したことから、次世代に負の課題を先送りせず、プラントの建設・保守に係る経験者を活用することが得策であると判断され、最近では即時解体する例が増えてきた。米国の発電用実証炉シッピングポート、日本の動力試験炉(JPDR)など1990年代半ばまでの解体実地試験の経験・知見は、米国、ドイツ等で実施された21基の解体撤去に反映されている。海外主要国の発電炉廃止措置の現状とこれまでの主な廃止措置の事例を以下に述べる。
1. 米国
 現在までに閉鎖したパイロットプラントを含む発電炉は34基であり、このうち、すでに13基は解体を終了している。米国では多くの発電炉が20年の運転認可延長が認められ、また、既存の発電炉が平均90%以上の高稼働率を実現し、経済性も向上したことから、1999年から2012年の間に閉鎖した発電炉はなかった。しかし、2013年以降2014年12月にかけて、経済性及び機器の不具合による再稼働が困難な5基が閉鎖された。
(1)シッピングポート原子力発電所(5.2万kWe、PWR
 米国エネルギー省(DOE)が開発した最初の発電炉であり、1957年から1982年にかけて運転された。1985年から1989年にかけて解体作業が実施され、跡地は他の用途に使用できる状態に復元された。この炉の廃止措置は、炉内構造物を含む原子炉容器を一括撤去する工法を採用し、発電炉の解体実証試験として実施された。この実績は、大型軽水炉のトロージャン廃止措置の先行例となった(ATOMICAデータ「シッピングポート(米国)の解体撤去(05-02-03-08)」を参照)。
(2)ヤンキーロー原子力発電所(18.5万kWe、PWR)
 蒸気発生器及び原子炉容器は一括撤去・処分された。発電所サイトは、最終サーベイ後、2007年に無制限解放された。(注:「無制限解放」とは用途を問わず敷地、建屋等の自由な再利用を認めることをいう。これに対して、用途を限定した上で再利用を認めることを「条件付解放」という。)
(3)トロージャン原子力発電所(117.8万kWe、PWR)
 炉内構造物を含む原子炉容器(約1000トン)は一括撤去工事が行われ、1999年8月にハンフォード処分場へ輸送、埋設された。2005年には規制に係る解体が完了した(ATOMICAデータ「トロージャン原子炉の廃止措置(05-02-03-16)」を参照)。その後、冷却塔及び原子炉建屋を解体した。
(4)メインヤンキー原子力発電所(90万kWe、PWR)
 この炉は経済性が悪いため、1997年8月に閉鎖され、即時解体が選択された。原子炉容器はパッケージ化(総重量1175トン)され、2003年7月に処分場に輸送、埋設された。使用済燃料はサイト内に建設された貯蔵施設(ISFSI)に保管された。原子炉格納容器建屋等の解体、最終サーベイも終わり、2005年にISFSI以外の発電所サイトと建屋が無制限解放された。
2. 英国
 運転中の発電炉は、日本原子力発電(株)東海発電所と同型のマグノックス型ガス炉(GCR)が1基、改良型ガス炉(AGR)が14基及びPWRが1基である。一方、閉鎖した発電炉は25基のGCRなどを含めて合計29基である。なお、運転中の1基のGCRも2016年までに閉鎖する予定である。英国では、総合的な廃止措置戦略の構築及び廃止措置の合理化の観点から、法律に基づき、原子力廃止措置機関(NDA)が2005年4月に設立された。NDAは、主にBNFL及び英国原子力公社(UKAEA)の原子力施設の廃止措置に対して総合的に責任を持ち、規制との調整を含め、安全なクリーンアップ、債務保証及び効率的なコスト管理を推進する組織であり、省庁から独立した公的機関と位置付けられている。
 GCRの10サイト(計25基)の廃止措置は、原子炉の安全貯蔵(C&M:Care and Maintenance)に向けて工事中であり、ブラドウェルが2017年までに、また、バークレーが2021年までに、他のサイトも2028年までにC&Mに到達する。
(1)ウィンズケール原子力発電所(WAGR)(3.6万kWe、AGR)
 セラフィールドのWAGRは、AGR実証炉として建設、運転された。解体撤去作業は、解体実地試験として1982年から開始され、2基の熱交換器については、内部を除染し、放射能レベル低減後にドリッグ放射性廃棄物処分場に輸送された。炉心黒鉛ブロック、原子炉容器等の解体作業は、マニピュレータ式遠隔解体装置を用いて行い、2006年に解体を完了した(ATOMICAデータ「英国WAGRの解体(05-02-03-10)」を参照)。
(2)トロースフィニッド原子力発電所(23.5万kWe、GCR、2基)
 この発電所は経済性を理由に1993年7月に閉鎖された。現在、原子炉のC&Mに向けて工事中であり、2027年に完了する。原子炉本体の解体は、長期の安全貯蔵を経て2074年に開始、最終サイト解放を2083年としている。
3. ドイツ
 福島第一原子力発電所事故の影響を受けて脱原子力政策がとられ、2011年中に8基、2015年6月に1基が閉鎖された。現在、9基の発電炉が稼働している。これまでに閉鎖した発電炉は、9基のBWR、8基のPWR、6基の旧ソ連型のPWR型(VVER)などを含めて合計28基であり、このうち10基が解体を完了している。
 ドイツでは、即時解体方式の採用を原則に各プラントの廃止措置計画が進められている。脱原子力を目指す改正原子力法が2002年に成立し、電力会社と政府の合意に基づき2003年に閉鎖したシュターデ原子力発電所(67.2万kWe、PWR)は、2016年末までに解体を完了する予定である。また2005年5月に閉鎖されたオブリッヒハイム原子力発電所(35.7万kWe、PWR)は、解体中である。2011年以降に閉鎖した9基は、現在、廃止措置準備中である。
(1)ニーダアイヒバッハ原子力発電所(KKN)(10.6万kWe、HWGCR)
 カールスルーエ研究所のKKNの廃止措置では、まず炉内構造物、原子炉容器等の放射化した機器を1990年から1993年にかけて遠隔解体用マニピュレータを用いて解体し、次いで生体遮蔽体を制御爆破や電気式油圧掘削機等を用いて解体した。原子炉建屋は、除染後の1993年10月に管理区域の解除を行い、一般工法を用いて解体した。その後、1995年8月にサイト緑地回復式典が行われ、さらに、原子力法による規制解除のためのサイト解放宣言が1997年11月に行われた(ATOMICAデータ「ドイツKKN炉の解体(05-02-03-11)」を参照)。
(2)グンドレミンゲン原子力発電所A号炉(25.2万kWe、BWR)
 この発電炉は、1980年に停止し、欧州共同体の廃止措置プロジェクトとして解体技術の開発、解体物のリサイクルを主眼に解体実証試験に供された。1983年に解体が開始され、2005年に完了した。解体金属廃棄物は、タービン建屋内に除染設備を設け、サイトからの無制限搬出物60%と制限付リサイクル(溶融)対象物33%とを分別し、最終処分する廃棄物の割合を7%までに低減した。なお、原子炉格納容器及びタービン建屋は、技術センターに転用された。
(3)グライフスバルト原子力発電所(44万kWe×5基、VVER-440(V-230)型)
 旧東ドイツのVVER型発電炉は、安全性に問題があると判断され、東西ドイツ統一後に運転期間1年未満から最高24年までのものを含めて、すべての炉を1990年に停止した。8基の発電炉(うち3基は未完成)からなるサイトでは、2012年を目標に解体撤去が進められ、2013年に完了した。この計画では多少コストが高いものの、発電炉の経験者の活用及び雇用確保を優先して即時解体法が採用された。このサイトには大型の廃棄物中間貯蔵施設が建設され、解体と平行して解体廃棄物の処理と貯蔵及び使用済燃料の保管が行われている。サイトの再利用計画として、すでに天然ガス発電所等のために一部を売却、またタービン建屋は再利用されている。
(4)ヴィルガッセン原子力発電所(67万kWe、BWR)
 1995年8月に炉心シュラウドのひび割れが見つかり、1995年9月に閉鎖が決定された。その2年半後に解体現場の線量率を下げ、解体を容易にするためのCORD法(酸化・還元化学除染法)による一次冷却系の除染が行われた。2014年に解体が完了した。
4. フランス
 現在、58基のPWRを保有し、全発電電力量の約75%を原子力発電が占めている。一方、発電炉で停止したものは、ガス炉8基、高速炉2基、軽水炉1基など合計12基である。
 廃止措置の基本戦略は、放射能の高い炉心部のみを遮蔽隔離し、この状態で約40〜50年間放射能を減衰させ、最終的にすべてを解体撤去する遮蔽隔離方式であった。しかし、この戦略は2001年に変更され、フランス電力公社(EDF)所有の第一世代原子炉(8基)及びスーパーフェニックスを、早期に解体する方針となった。また、高速増殖炉フェニックスは、1991年から始めた超ウラン元素の核種変換プログラムの終了に伴い、2010年2月に閉鎖された。
(1)ショーA原子力発電所(32万kWe、PWR)
 ショーA炉は、経済性を理由に1991年に停止し、レベル2(安全貯蔵準備活動)を2004に達成した。2010年から本格解体を開始、2021年までに完了する計画である。
(2)モンダレー原子力発電所EL-4(7.7万kWe、HWGCR)
 EL-4はEDF最初の発電炉で重水減速炭酸ガス冷却型である。原子炉本体の解体を2019年から開始し、サイト解放を2032年頃とする計画である。
(3)ビュジェイ1原子力発電所(55.5万kWe、GCR)
 EDFが最後に建設したGCR炉で1994年まで運転された。レベル2を2012年末に達成、2015年現在蒸気発生器を撤去中である。原子炉本体の解体を2020年に開始し、2033年頃までに完了する計画である。
(4)サンローラン原子力発電所(A1:40.5万kWe、A2:46.5万kWe、GCR)
 サンローランA1炉及びA2炉の解体は、ビュジェイ1の経験を取り入れて行う計画である。2010年に解体撤去の許可が得られ、2040年頃に解体を完了する計画である。
(5)シノン原子力発電所(CHINON A1:8.4万kWe、A2:23万kWe及びA3:37.5万kWe、GCR)
 解体撤去は、A3、A1、A2の順に実施する計画である。A3は、現在、蒸気発生器の解体中であり、原子炉本体の解体は2023年以降に開始する予定である。3基の解体完了を2040年頃としている。
5. スペイン
 現在、7基の軽水炉が稼働し、電力供給の約18%(約550億kWh)を担っている。一方、3基の発電炉が閉鎖されている。バンデロス−1(50万kWe、GCR)は、廃止措置作業が進められ原子炉本体のみを安全管理している(ATOMICAデータ「バンデロス−1原子炉の廃止措置(05-02-03-17)」を参照)。ホセ・カブレラ原子力発電所(16万kWe、PWR)は、2006年に閉鎖された。廃止措置の本格作業を2010年2月に開始し、2016年までに解体完了、2017年末までに敷地を回復する計画である。また、サンタ・マリアデガローニャ原子力発電所(46.6万kWe、BWR)は、経済性を理由に2012年12月に閉鎖された。
(前回更新:2014年1月)
<図/表>
表1−1 世界の閉鎖発電炉一覧(1/3)
表1−2 世界の閉鎖発電炉一覧(2/3)
表1−3 世界の閉鎖発電炉一覧(3/3)
表2 世界の発電炉の炉型別閉鎖基数
表3 海外における代表的な発電炉廃止措置の実績一覧

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
海外主要国における廃止措置の考え方 (05-02-01-10)
ドイツにおける原子力発電所廃止措置計画 (05-02-03-03)
フランスにおける原子力発電所廃止措置計画 (05-02-03-04)
英国における原子力発電所廃止措置計画 (05-02-03-05)
米国における発電炉廃炉計画 (05-02-03-06)
シッピングポート(米国)の解体撤去 (05-02-03-08)
英国WAGRの解体 (05-02-03-10)
ドイツKKN炉の解体 (05-02-03-11)
トロージャン原子炉の廃止措置 (05-02-03-16)
バンデロス−1原子炉の廃止措置 (05-02-03-17)

<参考文献>
(1)宮坂靖彦:“米国の発電用原子炉デコミッショニングの最新動向”、
デコミッショニング技報、第21号、(2000年3月)p.21-34
(2)宮坂靖彦:“トロージャン原子力発電所のデコミッショニング”、
デコミッショニング技報、第19号、(1998年12月)p.62-68
(3)NDA(Nuclear Decommissioning Authority):“Business Plan”(3/2015)
(4)L.Weil:“Decommissioning of Nuclear Installations in Germany”
Avignon-France,(1998年3月15-18日)
(5)R.Rapp et al:“Decommissioning of Nuclear Facilities in Germany-Status
at BMBF Sites”Avignon-France,(1998年3月15-18日)
(6)Helmut Steiner,et al:“Practical Experience in Decommissioning
KRB-A plant,Gundremmingen,Germany?DD&R(8/2005)
(7)“Decommissioning in Germany”p38-40,Nuclear Eng.Inter.(2/2013)
(8)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、 2015年版(2015年4月)
(9)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック、2015年版(2015年12月)
(10)U.S.NRC:“Status of the Decommissioning Program 2014 Annual Report”
(11)G.LAURENT:“EDF Nuclear plant under decommissioning Status of
activities/program”SCIENTIFIC CONFERENCE Uranium Graphite Reactors
Decommissioning,Lituania 14th/16th of July,2014、http://www.iae.lt/
static/prezentacijos/status_of_activities_program_laurent_1_day_1part.pdf
(12)Manuel Rodriguez,et al:“Decommissioning of Jose Cabrera NPP”p34-36,
Nuclear Eng.Inter.(October 2013)
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