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<概要>
 原子炉施設等の解体で発生する放射性廃棄物は、発生施設区分ごとに規制され、それぞれ放射能汚染のレベルに応じて適切な処分が進められる。
 平成17年11月原子炉等規正法の改正に伴い、施設の「廃止措置計画の認可制度」並びに「放射性物質として扱う必要のないもの物」(クリアランス制度)に関する規制が制定された。さらに平成19年12月の原子炉等規制法の改正に伴い、再処理工程等から発生する核分裂生成物等の放射能レベルの高い廃棄物(高レベル放射性廃棄物)の地層処分を「第一種廃棄物埋設」、また、低レベル放射性廃棄物余裕深度処分および浅地中処分は「第二種廃棄物埋設」に区分された。
 原子力施設等から発生する多様な放射性廃棄物は、低レベル廃棄物に該当し、余裕深度処分対象から浅地中処分並びにクリアランス対象廃棄物までを含む広範囲な放射性廃棄物である。余裕深度処分、浅地中処分(ピットおよびトレンチ処分)の濃度上限値は、政令および埋設規則により濃度上限値が定められた。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足したため、本データに記載の解体廃棄物の区分についても見直しが行われる可能性がある。また、上記事故の際に生成した燃料デブリの処理処分が新たな検討課題となっている
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.解体廃棄物の特徴
 「低レベル放射性廃棄物」という名称は原子力施設等から発生する高レベル以外の放射性廃棄物の総称的な名称として使われている。
 原子炉施設等の廃止措置に伴い施設の解体撤去等で生ずる廃棄物は、施設等の運転維持管理により発生する放射性廃棄物に比べて、低レベル放射性廃棄物に相当する解体廃棄物(解体機器等の金属廃棄物や施設構造材等の解体コンクリート廃棄物等)が極めて多量に発生する等の特徴があげられる。その他、解体、廃止措置に伴って外部から持ち込まれた器材、資材等を解体廃棄物と区分し「付随廃棄物」と呼ぶ場合がある。
2.発生源等を考慮した解体廃棄物の区分
 IAEAでは、原子炉解体に伴う放射性廃棄物を発生源と放射能レベルから表1のように区分されており、解体撤去作業、廃棄物処理等の計画検討に有効と考えられている。
 解体廃棄物を安全かつ合理的に処理処分するためには、廃棄物の放射能レベル毎の区分やその種類、形状等の特性を考慮して、適確に区分管理あるいは分別管理することが必要である。この区分にあたっては、解体作業方法、廃棄物の処理方法および廃棄物の処分方法を考慮した上で、解体後の廃止措置に係る作業が円滑に行えるよう、あらかじめ十分な廃止措置計画を立てて行う必要がある。
 原子力の利用が進み、近年、老朽化した原子力施設等の増加により、また、東海発電所等の廃止措置の実施段階に至ったことから、平成17年11月に原子炉等規制法が改正され、「廃止措置計画の認可申請制度」並びに「放射性物質として扱う必要のないもの物」(クリアランス制度)が導入された。
3.低レベル放射性廃棄物の埋設施設の放射能レベル区分
 わが国における放射性廃棄物の浅地中処分の実績は、現在までに発電所における低レベル廃棄物を対象にしたピット処分(青森県六ヶ所村、日本原燃(株))と、研究所等廃棄物の極低レベル放射性廃棄物を対象にしたトレンチ処分(茨城県東海村、日本原子力研究開発機構)がある。また、低レベル放射性廃棄物のうち原子炉の炉内構造物のように比較的濃度の高い放射性廃棄物については、約100m程度深い処分、いわゆる余裕深度処分する計画が進められている。
 余裕深度および浅地中処分埋設施設の放射能濃度上限値を、表2に示す。これらの区分値は、政令および埋設規則により定められている
(1)余裕深度処分対象の廃棄物:TRU等廃棄物、炉心等廃棄物など、低レベル放射性廃棄物の内、比較的高い放射能レベルの廃棄物で、一般的な地下水利用に余裕を持った深度にトンネル型あるいはサイロ型のような地下空洞にコンクリート構造物を設置し、廃棄物を収納し埋め戻す形態の処分が想定されている。
(2)浅地中処分の廃棄物:原子力施設等から発生する上記(1)を除いた多くの施設、研究用施設や医療施設等から発生した放射性廃棄物が対象となる。低レベル廃棄物は、廃棄物の放射能レベル等の特性に応じて、処分形態が適切に規制されており、コンクリートピットへの処分(容器に固型化して人工構築物を用いた処分施設に処分)や人工構築物を設けない素掘りトレンチなどの処分(固形化を要しない)があり、発電所等の廃棄物について処分が実施されている。
4.クリアランス対象物
 原子炉施設等の解体で生ずる廃棄物には、微量の放射能を含むものが多い。微量の放射性物質を含むが人の健康に対するリスクが無視できる固体状物質を「放射性物質として扱う必要のないもの」(クリアランス物:再利用又は産業廃棄物として取扱い可能なもの)として区分されている。クリアランスレベルについては、平成17年11月22日経済産業省令第百十二号および平成17年11月30日文部科学省令第四十九号)に定められている。(日本のクリアランス制度(ATOMICA 11-03-04-10)を参照)
5.放射性廃棄物でない廃棄物(非放射性廃棄物)
 原子炉施設等の解体で生ずる廃棄物の中には、放射能レベルという観点とは別に、解体対象物の使用履歴、設置場所の状況、運転記録等に基づく汚染の有無から、放射性物質による汚染のない廃棄物(「放射性廃棄物でない廃棄物」/非放射性廃棄物)が区分されている。この区分に該当する廃棄物は、一般産業における施設等の解体廃棄物と同様の扱いが可能である。(原子力安全委員会:低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(第2次中間報告)平成4年2月報告 4.「放射性廃棄物でない廃棄物」の範囲について、参照(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。))
(前回更新:2006年12月)
<図/表>
表1 IAEAによる原子炉解体に伴う放射性廃棄物の分類
表1  IAEAによる原子炉解体に伴う放射性廃棄物の分類
表2 浅地中処分及び余裕深度処分における濃度上限値
表2  浅地中処分及び余裕深度処分における濃度上限値

<関連タイトル>
わが国の放射性廃棄物の種類と区分 (05-01-01-04)
海外における放射性廃棄物処理処分の動向(IAEA報告) (05-01-03-12)
解体に伴う廃棄物の処理・処分の方法 (05-02-01-07)
各国における放射性廃棄物規制除外(クリアランス)の動向 (11-03-04-05)
日本のクリアランス制度 (11-03-04-10)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理ガイドブック(1994年版)(1994年7月)
(2)原子力安全委員会放射性廃棄物安全基準専門部会:報告書、低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(第2次中間報告)(1992年4月)
(3)原子力安全委員会「低レベル放射性固体廃棄物の埋設処分に係わる放射能濃度上限について」(平成19年5月21日)
(4)原子力規制関係法令研究会(編著):2008年版原子力規制関係法令集−大成出版(2008年9月)
(5)原子力安全・保安院ホームページ:放射性廃棄物の種類とその処分方法
(6)原子力安全委員会:低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(第2次中間報告)、報告4「放射性廃棄物でない廃棄物」の範囲について(平成4年2月)
(7)文部科学省研究炉等安全規制検討会:試験研究用原子炉施設等の安全規制のあり方について(平成17年1月14日)
(8)文部科学省 放射線審議会事務局:資料第24-3号「日本における放射性廃棄物の埋設処分の概要について」(平成21年1月13日)
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