<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 再処理
<小項目> 再処理施設
<タイトル>
海外諸国の使用済燃料貯蔵の現状 (04-07-03-17)

<概要>
 海外における使用済燃料の貯蔵管理の状況は、各国の原子力政策に応じて異なっているが、再処理もしくは直接処分のいずれの方針を採用した場合も、長期にわたって大量の使用済燃料を貯蔵することが必要となる。
 使用済燃料を直接処分する方針の米国では、連邦政府によるユッカマウンテン処分場の建設が振出しにもどり、貯蔵能力に余裕のない電力会社は独自に敷地内に独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)を建設している。再処理、直接処分のいずれを選択するかを電力会社の判断に任せたドイツは、ゴアレーベンとアーハウスに中間貯蔵施設を建設し、使用済燃料の貯蔵を行っている。なお、原子力法の改正で2005年7月以降に発生する使用済燃料については再処理しないことになっている。直接処分を選択しているスウェーデン、スイスなどは、発電所敷地外に中央集中型の中間貯蔵施設(AFRS)を設置、または建設を進めている。原子力発電所から発生する使用済燃料は中間的に一時貯蔵されており、使用済燃料の最終処分はまだ行われていないため、増加傾向にある。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
1.世界の使用済燃料貯蔵容量と発生量
 2012年1月1日現在、世界30ヵ国で427基、合計出力約3億8,300万kWの原子力発電所が運転中であるが、これらの原子力発電所から発生する使用済燃料の管理は、各国の原子力政策に応じて異なっている。再処理もしくは直接処分のいずれかが選択されるが、たとえ使用済燃料を廃棄物として「直接処分」するというワンススルー政策を採用している国でも、使用済燃料は中間的に貯蔵されており、使用済燃料の最終処分はまだ行われていない(図1参照)。貯蔵の方法としては、水プール貯蔵及び乾式キャスク貯蔵(金属キャスク、ボールト貯蔵、縦型サイロ、横型サイロ、コンクリートキャスク)が採用され(図2参照)、今後かなり長期間にわたって使用済燃料の貯蔵が必要になると予想されることから、経済性の向上を目指した貯蔵技術の改良、輸送を考慮したキャスクの開発も進んでいる。
(1)プール貯蔵・・・使用済燃料は原子炉建屋に付属する使用済燃料貯蔵プール内の水中に設置された金属製の枠組み(ラック)に収納される。ラック格子の適切な間隔により、臨界を防止する。使用済燃料からの発熱はプール水により除去され、水、建屋(コンクリート)により放射線遮へいを行う。特に発熱量の高い使用済燃料の貯蔵に適している。なお、湿式の水プール方式は古くから実績はあるものの、プールの増設は発電所のレイアウト面や経済面から得策とは考えられず、1990年からほとんど増加していない。
(2)金属キャスク貯蔵・・・使用済燃料輸送用の容器(キャスク)と同一の技術で、使用済燃料からの発熱は、キャスク周辺の空気の自然対流により冷却される。放射線は、キャスク及び建屋(コンクリート)によって遮へいされ、放射性物質はキャスクにより密封、キャスク内の中性子吸収材入り仕切りの配置により臨界防止を行う。
(3)ボールト貯蔵・・・使用済燃料からの発熱は、収納管周辺の空気の自然対流により冷却される。建屋(コンクリート)により放射線を遮へいする。放射性物質は収納管及びキャニスタの二重構造により密封する。キャニスタ内仕切板の配置により臨界防止を行う。
(4)サイロ貯蔵及びコンクリートキャスク貯蔵・・・使用済燃料をキャニスタに封入した上で、コンクリート製サイロに収納する方式をサイロ貯蔵、コンクリートキャスクに収納する方式をコンクリートキャスク貯蔵という。使用済燃料からの発熱は、キャニスタ周辺の空気の自然対流により冷却され、放射線は胴部コンクリートにより遮へいされる。放射性物質は、キャニスタの蓋の二重密封構造により密封される。使用済燃料をキャニスタ内バスケット格子に適切に配置することにより、臨界防止を行う。
2.各国における使用済燃料貯蔵管理の現状と動向
 原子力発電所の使用済燃料は、各発電所の敷地内でかなり長期にわたって大量に貯蔵することが必要な状況にあり、各国はそれぞれ大容量かつ集中的貯蔵施設を既に建設または操業している。また、それと並行して最終処分のための処分研究を実施している。表1に諸外国の使用済燃料取扱状況を、表2-1及び表2-2に軽水炉使用済燃料の貯蔵状況を、表3に最終処分の現状を示す。以下、欧米主要国の使用済燃料貯蔵の現状と動向を示す。
(1)米国
 2011年1月時点で104基、1億524万kWの原子力発電所が運転中であり、2010年には総発電電力量の19.6%を供給した。1基あたりでは平均して毎年約15〜20MTU(Metric Ton of Uranium)の使用済燃料が発生している。商用原子炉から出た累積使用済燃料は2010年12月末には65,200MTU、高レベル放射性廃棄物の最終処分量は70,000MTUとされている。
 米国では、使用済燃料は再処理せずに直接処分する方針で、2002年にはネバダ州ユッカマウンテンを処分サイトとして決定、2008年9月から原子力規制委員会(NRC)により処分場の建設許可に関する安全審査を行なっていたが、ネバダ州自体が反対を表明していたことから、エネルギー省(DOE)は2010年3月に許認可申請を取下げ、使用済燃料・固体放射性廃棄物の安全で長期的な管理方策を検討・提言するブルーリボン委員会を設置した。委員会は2012年1月に最終報告書をDOE長官に提出しているが、その要点は、将来の放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分場の立地選定は同意に基づくアプローチとすること、高レベル放射性廃棄物管理プログラムの責任をDOEから独立した新しい組織へ移すことなどであり、処分場建設計画は行詰まりを見せている。
 このような状況の下で、大部分の使用済燃料は発電所サイト内に貯蔵され、原子炉プールの貯蔵容量に余裕のない電力会社は、独自に敷地内に独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI:Independent Spent Fuel Storage Installation)を建設している。なお、ISFSIは乾式貯蔵施設であるが、NRCの安全審査方法でサイト固有認可と一般認可がある(ATOMICAデータ「アメリカの使用済燃料の中間貯蔵(14-04-01-27)」を参照)。2007年末時点のISFSIサイトは33州、44箇所で認可を受け、このうち41箇所で実際に使用済燃料が貯蔵されていたが、2010年11月時点では33州、59箇所に増加している。なお、米国ではキャスク単位で設備更新が可能で解体撤去がしやすく、経済的なコンクリートキャスク等が主流である。図3に独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の設置状況の推移を、図4に各貯蔵方式の採用実績の推移(施設数ベース)を示す。
(2)ドイツ
 2011年1月現在、17基、2,152万kWの原子力発電所が運転中であり、2011年には総発電電力量の28.4%を供給した。年間1基当たり発生する使用済燃料は15〜30tHM(ton Heavy Metal)、ドイツ全体では約400tHM発生し、2009年までの累積貯蔵量は13,097tHMに達している。そのうち、6,670tHMが再処理されており、残りのうち53%相当の3,420tHMが使用済燃料プールで管理されている。原子炉の運転寿命を迎える2025年までに17,200tHMの使用済燃料が発生すると見積もられている。ドイツでは、1994年の原子力法改正で、電気事業者が再処理または直接処分のいずれかを選択できるようになり、使用済燃料の再処理に関しては英国(BNFL)及びフランス(Cogema、現AREVA-NC)と約8,500tの再処理委託契約を結んだ。しかし、2002年4月原子力法の全面改正により、原子力の段階的撤退が決定され、2005年7月以降に発生する使用済燃料については再処理しないことになった。
 このような状況下で、7電力会社が出資している原子力サービス会社(GNS)は、「ゴアレーベン燃料中間貯蔵会社」及び「アーハウス燃料中間貯蔵会社」を設立し、それぞれゴアレーベン(Gorleben)とアーハウス(Ahaus)に中間貯蔵施設を建設し、そこで使用済燃料を30〜50年間貯蔵する方針となった。
 ゴアレーベン貯蔵施設は、使用済燃料だけでなく、海外再処理からの返還高レベル廃棄物も併せて貯蔵し、床面積7,000m2、使用済燃料キャスク貯蔵容量420基、許可貯蔵期間40年の貯蔵能力を有し、1995年に最初の使用済燃料キャスクを搬入した。ドイツ全体の再処理量の内訳はフランスCogemaが5,400t、英国BNFLが850t、東ドイツ時代にソ連Mayakで293tとなっている。返還廃棄物の80%がガラス固化体で1996年〜2008年までに86キャスク、2,408キャニスタをゴアレーベンへ搬入した。しかし、使用済燃料の輸送に関して反対運動が激化したこともあり、同施設への使用済燃料搬入は1997年が最後で、その後は海外からの返還高レベル廃棄物のみ搬入されている。現在発生した使用済燃料は各原子力発電所のサイト内で保管されている(図5参照)。
 アーハウス貯蔵施設は、主として高温ガス炉の使用済燃料キャスク及び研究炉の使用済燃料キャスクが貯蔵され、金属キャスクで420基、1,500t相当の貯蔵能力を有している。
 なお、ゴアレーベンは1977年に高レベル放射性廃棄物処分場候補サイトとして選定され、岩塩ドーム特性調査が1970年代から継続して行われてきたが、2000年10月以降新たな探査活動が暫時凍結された。しかし、2009年10月に成立した現連立政権により、2010年11月から探査活動は再開されている。
(3)フランス
 2011年1月現在、58基、6,588万kWの原子力発電所が運転中であり、2010年には総発電電力量の74.1%を賄った。年間約1,200t発生する使用済燃料のうち、850tが再処理され、残りは発電所または再処理工場のプールに貯蔵される。再処理に伴って発生する高レベル放射性廃液をガラス固化したガラス固化体及びその他の長寿命中レベル放射性廃棄物については、放射性廃棄物等管理計画法において、可逆性のある地層処分が行われる。2015年に地層処分場の設置許可を申請し、2025年の操業開始を目指している。(注:可逆性のある地層処分とは、処分事業を段階的に実施し、各段階で利用可能な知見に基づき、幅広い観点に立った処分場設計の変更、定置された廃棄物の回収を行うなどの選択肢を残すことを可能とする柔軟性のある処分をいう。)
(4)旧東欧諸国
 旧ソビエト連邦(ソ連)時代から原子力発電所を導入した東欧諸国は、ソ連へ使用済燃料を搬出していたが、ソ連解体後の1992年にロシアが環境保護法を制定したため、ロシア国外で発生した使用済燃料の再処理が困難となった。ロシア政府は2001年7月、国外で発生した放射性廃棄物の貯蔵及び処分は禁じるが、使用済燃料の再処理ならびに中間貯蔵は可能とする政策に変更した。中間貯蔵に関しては、クラスノヤルスク-26原子力施設を転用して、国内に処分場を持たない国から6,000トンの使用済燃料を受け入れ、40年間貯蔵管理するという国際使用済燃料管理であるが、ロシアに不確定要素が多いことから、東欧諸国では使用済燃料の貯蔵対策として中間貯蔵施設の建設を計画した。例えば、ハンガリーのパクシュ原子力発電所では、使用済燃料の搬出を前提に、貯蔵プールの容量は3年分であったが、水プールのリラッキングにより5年分に増やした。また、ロシアヘの搬出の不透明さと、返還されたガラス固化体の貯蔵から、1990年に発電所内に使用済燃料貯蔵施設を建設することを決定し、1997年から貯蔵を開始している。貯蔵方式はボールト方式であり、貯蔵期間は50年としており、この間に最終的な処分方法を検討する。
(前回更新:2005年1月)
<図/表>
表1 諸外国の使用済燃料の取扱い
表2-1 諸外国の使用済燃料貯蔵状況(1/2)
表2-2 諸外国の使用済燃料貯蔵状況(2/2)
表3 諸外国の高レベル放射性廃棄物処分の現状
図1 世界で発生する使用済燃料発生量の推移
図2 使用済燃料の貯蔵実施例
図3 米国における独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の設置状況 の推移
図4 米国における各貯蔵方式採用の推移(施設数ベース)
図5 ドイツにおける原子力発電所サイト内貯蔵の状況

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
使用済燃料の貯蔵施設 (04-07-03-15)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分の概要(1)−仏、英編− (05-01-03-07)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(2)−ベルギー、スイス、カナダ編− (05-01-03-08)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(4)−独、スウェーデン、フィンランド編− (05-01-03-17)
アメリカの使用済燃料の中間貯蔵 (14-04-01-27)

<参考文献>
(1)内閣府原子力政策担当室:核燃料サイクルを巡る現状について(2011年2月21日)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei4/siryo2-1.pdf
(2)米国原子力規制委員会(NRC):U.S. Independent Spent Fuel Storage Installations、http://www.nrc.gov/waste/spent-fuel-storage/locations.pdf
(3)柳下拓也、三枝利明、ほか:諸外国における使用済燃料中間貯蔵技術の動向、日本原子力学会誌、Vol.42 No.11、p.64-78(2000年11月)
(4)米国原子力安全規制委員会(NRC)使用済燃料貯蔵・輸送部:Dry Cask Storage of Nuclear Spent Fuel, http://www.blsmeetings.net/NRC2011StateLiaisonConference/
presentations/EastonDryCaskStorage.pdf
(5)日本原子力産業協会:世界の原子力発電の動向2011年次報告(2011年5月)
(6)世界原子力協会(WNA):Nuclear share figures, 2000-2010,
http://www.world-nuclear.org/info/nshare.html
(7)国際原子力機関(IAEA):Operation and Maintenance of Spent Fuel Storage and Transportation Casks/Containers January (IAEA-TECDOC-1532),
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/te_1532_web.pdf, Selection of Away-From-Reactor Facilities for Spent Fuel Storage (IAEA-TECDOC-1558),
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/te_1558_web.pdf
(8)国際原子力機関(IAEA):Management of Radioactive Waste and Spent Fuel in Germany(2010年5月)、http://www-ns.iaea.org/downloads/rw/conferences/spentfuel2010/sessions/
session-two-b/session-2b-germany.ppt
(9)米国電力研究所(EPRI):Industry Spent Fuel Storage Handbook,
http://www.brc.gov/sites/default/files/documents/1021048.pdf(2010年7月)
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