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<概要>
 再処理施設から放出される処理済廃気中に含まれる放射性核種の発生源は主として 剪断・溶解工程であり、主な核種はヨウ素、クリプトンおよびトリチウムである。ヨウ素の除去には銀をコーティングまたは含浸させた吸着剤が効果的に用いられている。クリプトンの分離・回収・貯蔵法については技術開発中であり、クリプトンは回収しないまま放出している。
<更新年月>
1999年04月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 使用済燃料中に含まれる揮発性核種は、主として剪断・溶解工程で廃気に移行する。したがって、剪断・溶解工程の放出廃気(オフガス)は、セル換気などの廃気と合流、希釈される前に、揮発性核種の除去処理を行う必要がある。主な揮発性核種はヨウ素(I)、クリプトン(Kr)およびトリチウムである。ただし、トリチウムはほとんど全て酸化されてトリチウム水になり溶液系に流入し、廃気中に混入するのはごく微量であることが判っている。
 東海再処理施設では剪断・溶解工程からのオフガスは処理装置(NOX 吸収塔、アルカリ洗浄塔、銀ゼオライト吸着塔、HEPAフィルタなどよりなる)で処理されるが、クリプトンは除去されず、主排気塔より大気に放出される。
(1) ヨウ素の除去
 使用済燃料中のヨウ素の含有量はかなり多く〔核分裂生成物の約1%(重量)〕、そのうち約75%が長半減期(1700万年)の放射性ヨウ素129である。ヨウ素は反応性の強いハロゲン元素で、種々の化学形をとる。溶液中にヨウ素が存在すると処理工程の各所のオフガス系に分散放出される特性がある。また抽出・分離工程で溶媒と反応し除去困難の化合物をつくる。それ故、溶解工程で酸度および温度調節してヨウ素を液相からオフガス中に追い出し、オフガス中で一挙にヨウ素を捕捉する方法が採られている。
 オフガス中のヨウ素は次のような方法で除去される。
(a) アルカリ水溶液による洗浄
 オフガスを苛性ソーダ水溶液で洗浄すると、ヨウ素は NaIの形で水溶液中に吸収される。しかしながら、有機ヨウ素は除去されない。
(b) 銀による固定
 銀、鉛、水銀などの金属はヨウ素と強く結合する。銀は高価であるが最も優れたヨウ素の固定剤である。銀をゼオライト、シリカゲル、またはアルミナなどにコーティング、または含浸させたヨウ素固定剤が用いられている。これらをカラムに充填し、約 150℃に加熱し、ヨウ素を含むオフガスを通すとオフガス中のすべての形の揮発性ヨウ素は安定なヨウ化銀として固定化される。固定剤として 表1 に示すように、 AgX(X型モレキュラーシーブに銀を添着したもの)、AgZ(Z型モレキュラーシーブに銀を添着したもの)、AC-6120R(非晶性シリカに硝酸銀を含浸したもの)などが用いられている。
(2) クリプトンの除去
 再処理工程から環境に排出する廃ガス中の放射能の大部分はクリプトン(Kr)85によるもので、これは剪断・溶解工程で使用済燃料中から放出されたものである。
(a) クリプトンガスの分離・回収法
 クリプトンは不活性元素で、常温では気体であり、ヘリウム、アルゴンおよびネオンと同様に希ガスと総称されている。空気中に含まれる希ガスを分離する技術は空気分離産業においては多年の実績がある。再処理廃ガス中には、空気、水分、窒素酸化物、炭化水素、炭酸ガスなどが含まれているので、クリプトンを回収するためにはこれらの成分をあらかじめ分離しなければならない。実用性に富んだ処理法として、液化蒸留法、低温活性炭法、溶媒吸収法および隔膜法などがあげられる。これらの方法のうち、液化蒸留法は日本およびドイツで技術開発が進められているが、稼働中の再処理施設はもとより、建設中の施設もクリプトンの回収は計画されていない。
(b) 貯蔵法
 回収されたクリプトンは化学的に不活性な気体であり、これを安定化合物に変換し固定化することが難しく、現状では、貯蔵法として一般ガスと同様にシリンダー充填方式が唯一の方法である。貯蔵に関しては 85Krは半減期が10.7年であるので、100 〜200 年間ガス漏洩を防ぎ、安全貯蔵をしなければならない点に留意する必要がある。安全貯蔵技術としてクリプトンガスのゼオライトまたは金属格子への封入法の技術開発も進められている。
<図/表>
表1 ヨウ素の各種固定剤
表1  ヨウ素の各種固定剤

<関連タイトル>
再処理廃棄物の特性 (04-07-02-05)
再処理施設からの放射性廃棄物の処理 (05-01-02-03)
東海再処理施設における放射性気体廃棄物管理状況(1977年度〜2002年度) (12-04-01-01)

<参考文献>
(1)放射性液体廃棄物」: 動燃技報−再処理特集(1985)
(2)放射性廃棄物管理ガイドブック(1988 年版) 原産
(3)清瀬量平: 原子力化学工学(第3分冊)使用済燃料とプルトニウムの化学工学(1984)
(4)原子力安全委員会:平成6年版 原子力安全白書、平成7年3月
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