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<概要>
 東京電力(株)をはじめとした電力会社で用いられているBWR用ウラン燃料の構成、設計および製造について述べる。
<更新年月>
2006年11月   

<本文>
1.BWR燃料集合体の構成
 BWR燃料の主要諸元仕様を表1に示す。BWR燃料は、圧力約73気圧、温度約285℃の飽和沸騰水の条件下で使用される。サイクル初期の余剰反応度を抑えるため、熱中性子吸収断面積の大きいガドリニウムの酸化物を少量添加したペレットを用いたガドリニア(Gd2O3)入り燃料棒が燃料集合体あたり数本用いられている。また、照射中のペレット等の変形による燃料被覆管の局所的な歪による損傷を減少させるために、延性の大きなジルコニウムを内張りしたジルカロイ−2被覆管(ライナー管)を用いている。
 燃料集合体の構成図(9×9型)を図1に、横断面図例(8×8型)を図2に示す。BWR燃料集合体(9×9A型)は、9×9正方状に配置された74本の燃料棒と2本のウォーターロッドより成り立っており、それらは7個のスペーサー、上部および下部タイプレート各1個によって支持されている。燃料集合体は、それを取り囲むチャンネルボックスを装着して原子炉内で使用される。
 燃料集合体には、局所的な高出力部分が現れないように、数種類の濃縮度の燃料棒が組み込まれている。
 燃料棒は、ペレットを1列にしてヘリウムガスで充填した燃料被覆管に入れ、管の両端をジルカロイ−2端栓で溶接して密封した構造となっている。燃料棒には、ペレットより放出された核分裂生成ガスをためるための空所(プレナム)が設けられている。プレナムの体積は、放出される核分裂生成ガスや他のガスによって過大な内圧とならぬよう充分な大きさを持っている。プレナム部には、輸送時または取り扱い時のペレットの移動を防ぐためのコイルばね(プレナムスプリング)が入っている。
 ウォーターロッドはジルカロイ−2管に端栓をつけたもので、軸方向にスペーサーを保持している。ウォーターロッド管は上下端近くに数個の穴をあけて内部に冷却水が入るようになっている(図2)。
 スペーサーは、ジルカロイ−2製の筒状の丸セル管とニッケル・クロム・鉄合金(インコネル)のスプリングで燃料棒の間隔を規定通りに保持している。
 上部および下部タイプレートは、ステンレス鋼の鋳物で製作されており、上部タイプレートには燃料集合体を移動する場合に使用する「つかみ部分」がついている。
 9×9B型集合体の構造はA型とほぼ同様であるが燃料棒の径がわずかに小さい。また、ウォーターロッド管の替わりに角形のウォーターチャンネルが設けられている。
2.BWR燃料の構造設計
 燃料集合体の構造設計においては、使用材料、使用温度、圧力条件および照射効果を考慮して、次の点を配慮して設計を行う。
 (a)被覆管にかかる応力は地震時も含めて設計応力強さ限界を超えないこと。
 (b)被覆管の累積疲労サイクル数は設計疲労寿命を超えないこと。
 (c)使用中に燃料棒の変形等による過度の寸法変化を生じないこと。
 (d)このほかに、水素脆化、フレッテング腐食、焼きしまり、ペレット・被覆管相互作用などについても防止・軽減対策をとること。
3.BWR燃料の製造
 上記のような構造をもったBWR燃料は、燃料集合体組立工程図(図3)に示す手順で製造される。UO2粉末はプレス機で円柱状に加圧成型するが、あらかじめ成型しやすいようにUO2粉末に有機物の潤滑剤等を添加・混合する粉末処理が行われる。Gd2O3入り燃料棒用のペレットを加工する場合には、この粉末処理工程でGd2O3粉末を所定量だけUO2粉末に添加混合する。加圧成型したペレットは、水素ガスを含む雰囲気の電気炉中で1700℃以上の高温で加熱処理を行うことにより、収縮して緻密なセラミックスとなる。この工程を焼結といい、ペレット中の微小な気孔は数%程度になる。ペレットは燃料棒とするために燃料被覆管中に挿入するが、ペレットと被覆管の間に所定の隙間(ギャップ)を設けるためペレットの外周部を研削してペレット直径を精密に管理する。 被覆管は、下部端栓を溶接した後ペレットとプレナムスプリングを挿入し、次いで上部端栓を溶接して燃料棒になる。溶接には、不活性ガス雰囲気中でタングステン電極と被覆管溶接部間のアークにより行う、いわゆるTIG溶接が一般的に用いられる。特に、上部端栓溶接時にはヘリウムガス雰囲気中で溶接を行い、燃料棒中に所定圧力のヘリウムガスを封入する。溶接不良は核分裂生成物の漏れの原因となるため、溶接部はX線透過検査等でその健全性を確認する。また、ペレットの表面には空気中の湿分が吸着される可能性があり、燃料棒中に密封する前に乾燥しておくことが必要である。
 BWR燃料では、複数種類の濃縮度の燃料棒を使用し、さらに1本の燃料棒中でも複数の濃縮度種類のペレットを使用するので、密封した燃料棒中のペレットの濃縮度を非破壊検査によって確認することが行われている。下部タイプレート、スペーサ、ウォータロッドを組み立てた後、これに燃料棒を組み入れる。全燃料棒の組み入れ終了後、各燃料棒の上部にエクスパンション・スプリングを取り付け、最後に上部タイプレートを装着して燃料集合体とする。
 完成した燃料集合体は、燃料輸送容器中に厳重に梱包して原子力発電所へ輸送され、発電所でチャンネルボックスを装着して原子炉で使用される。
 わが国では、BWR燃料は東京電力(株)、東北電力(株)、中部電力(株)、
中国電力(株)、北陸電力(株)、日本原子力発電(株)の6電力会社で使用されている。
(前回更新:1998年10月)
<図/表>
表1 BWR燃料集合体の主要諸元
表1  BWR燃料集合体の主要諸元
図1 BWR燃料集合体の概略図
図1  BWR燃料集合体の概略図
図2 BWR燃料集合体の横断面図
図2  BWR燃料集合体の横断面図
図3 BWR燃料集合体の組立工程図
図3  BWR燃料集合体の組立工程図

<関連タイトル>
世界の核燃料製造会社とその生産規模 (04-06-01-06)
ペレット製造工程 (04-06-02-03)
燃料棒加工工程 (04-06-02-04)
集合体組立工程 (04-06-02-05)
燃料加工における検査工程及び品質保証 (04-06-02-06)
PWR用ウラン燃料 (04-06-03-02)
ABWR燃料 (04-06-03-03)

<参考文献>
(1)東京電力:柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(平成4年10月)
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい、 原子力安全研究協会(平成10年7月)、p.51−143
(3)科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):原子力安全委員会安全審査指針集 改訂8版、大成出版社(1994年10月)、p.942−952
(4)武井一浩:BWR燃料の高性能・高燃焼度化、核燃料工学−現状と展望−日本原子力学会(1993年11月)、p.115−135
(5)広瀬、土井:核燃料工学の基礎 第2回 軽水炉燃料(1)、日本原子力学会誌、Vol.46、No.7(2004年)、p.410−417
(6)田辺、広瀬、土井:核燃料工学の基礎 第3回 軽水炉燃料(2)、日本原子力学会誌、Vol.46、No.6(2004年)、p.467−473
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