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<概要>
 燃料の検査工程は、各製造加工工程と対応しており、品質管理および製品検査のためにある。燃料の品質保証は、体系的・組織的なプログラムに基づく活動により実施され、開発から炉内使用までの全分野が関連性をもつ。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.検査工程
 燃料の各製造加工工程において、品質管理および製品確認のための検査を行う。 表1 に各検査項目を示す。 図1BWR 燃料集合体の組立工程と検査工程を、 図2PWR 燃料集合体の組立工程と検査工程を示す。
 転換工程の二酸化ウラン粉末は、表1の検査項目の他に比表面積や粒度などの物性データを測定する。ペレット製造工程では、特に水分と水素の含有量を少なくするように厳しく管理する。これは、燃料棒のジルカロイ被覆管中にジルコニウム水素化物が生成することを防ぐためである。燃料棒加工工程では、溶接部をX線 透視検査により健全性を確認する。燃料集合体組立工程では、燃料棒相互間隔、曲り、外観、寸法、制御棒はめ合いなどを検査する。また、原子力発電所へ輸送したあとも、燃料集合体に異常のないことを確認する。
2.品質保証
 日本における軽水炉燃料品質保証の特徴は、燃料加工メーカ、原子炉メーカ、電力会社、規制当局(通産省(現経済産業省))が緊密な連携を保ち、品質保証活動を行なっていることである。この品質保証活動を体系的・組織的に制定した品質保証プログラムは、国際的に公認されているIAEAの品質保証実施基準や、アメリカの連邦規則10CFR-50 Appendix-B などとも対応する。
 燃料の品質保証活動は、開発・設計・製造・炉内使用の全分野において、有機的に機能するよう実施されている。燃料の製造加工においては、材料・設備・工程・要員認定・識別・加工・検査・試験・治工具・検査機器・保管・出荷などの管理をしている。また、加工方法・設備・要員の変更に対しても確認・認定を行う。部材購入に当っては、部材が所定の信頼水準で仕様値に適合していることを保証するため、購入者が部材供給者の資格認定を行う。さらに、完成した燃料集合体を搬出したあとでも、輸送先の原子力発電所において使用前検査を実施する。
 燃料加工メーカは、部品から製品にいたるまでの加工・検査データをコンピュータへ入力しておき、それらデータを検索できるトレーサビリティ・システムを整備している。このシステムと、原子炉における燃料使用データを照合評価して、さらに品質の向上した燃料を供給することも品質保証活動の一環である。
<図/表>
表1 燃料加工における主要な検査項目
表1  燃料加工における主要な検査項目
図1 BWR燃料集合体の組立工程と検査工程
図1  BWR燃料集合体の組立工程と検査工程
図2 PWR燃料集合体の組立工程と検査工程
図2  PWR燃料集合体の組立工程と検査工程

<関連タイトル>
六フッ化ウランから二酸化ウランへの再転換 (04-06-02-01)
ペレット製造工程 (04-06-02-03)
燃料棒加工工程 (04-06-02-04)
集合体組立工程 (04-06-02-05)

<参考文献>
(1)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(改定新版)、原子力安全研究協会(平成2年7月)
(2)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年6月)
(3)関西電力:大飯発電所原子炉設置変更許可申請書、昭和61年12月
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