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<概要>
 二酸化ウランは、一般に濃縮された六フッ化ウランから作られる。製法によって物性や主要不純物であるフッ素含有量などが異なる。金属ウランは、四フッ化ウランと金属カルシウムまたは金属マグネシウムとを混合し、熱して還元反応で作られる。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1) 二酸化ウランの製造
二酸化ウランは、ウラン濃縮操作によって、ウラン235が濃縮された六フッ化ウランより作られる。その方法はいくつかあるが、主要なものについて、次に述べる。
(a) 湿式法(1)
 初期からおこなわれている一般的な方法といえよう。ボンベに充填された六フッ化ウランは外部加熱によってガス化されて、水の中に吹き込まれると、表1の(1)式のようにフッ化ウラニルが生じる。次いで水中にアンモニアを吹き込むと、表1の式(2)に示すように重ウラン酸アンモニウムが生成される。
沈澱条件や沈澱ウラン化合物によって、最終製品である二酸化ウランの物性が異なるので、アンモニア水溶液中に六フッ化ウランを吹き込むなどの方法もとられる。重ウラン酸アンモニウムは、洗浄、仮焼されて三酸化ウランとなる。次いで反応塔中で水素還元されて二酸化ウランが製造される。
(b) 湿式法(2)
 六フッ化ウランの気体を硝酸アルミニウム溶液中に吹き込むと表1の(3)式に示すように硝酸ウラニルが生成される。
この溶液をトリブチルフォスフェイト(TBP) で溶媒抽出し、水で逆抽出すると不純物を含まない硝酸ウラニル溶液が得られる。これにアンモニアを吹き込み、重ウラン酸アンモニウムを沈澱させ、前法のように処理して二酸化ウランを製造する。
(c) 乾式法
 六フッ化ウラン、過熱水蒸気および水素を反応させて二酸化ウランを製造する。反応は表1の(4)式に示すように、まず六フッ化ウランと過熱水蒸気または水素との反応では、気相−気相反応(1および2式) で、それによって生成された固体と過熱水蒸気または水素との固相−気相反応(3〜5式) で二酸化ウランが製造される。
 この反応を流動床反応炉またはロータリ炉でおこなう。フッ化ウラニルまたは八三酸化ウランの中間固体生成物から二酸化ウランが製造されるので、反応が完結して中間生成物が残留しないようにする。
 製造された二酸化ウランから燃料用のペレットが作られるが、その際に焼結と成型に関する物性と不純物であるフッ素含有量が重要である。
(2) 金属ウランの製造
 金属ウランを燃料として使用しているのは、ガス冷却炉のほか研究用などの原子炉である。また、レーザを用いる濃縮の原料として金属ウランが使用されている。この場合は天然比(ウラン235は 0.7%)のウランを原料とする。
 現在おこなわれている方法は、ウラン原料として四フッ化ウランを使用し、金属カルシウムまたは金属マグネシウムで還元して金属ウランとする。
 金属カルシウムは反応に必要な量より10%程度以上多い量を、四フッ化ウランと混合し、フッ化カルシウムをライニングした鉄製るつぼに充填し、マグネシウムリボンなどで直接、点火する。反応は速やかにおこり、約1800℃に温度は上昇する。溶融したウランは、るつぼ下部に、その上部に溶融残渣(スラッグ)が溜まるので、自然冷却後、塊状金属ウランを取り出す。反応式を表1の式(5)に示す。
 金属マグネシウムを用いる方法は、反応に必要な量よりも10%程度多い金属マグネシウムと四フッ化ウランとを混合し、フッ化マグネシウムをライニングした鉄製るつぼに充填して蓋を閉め、外部から500 〜600 ℃に加熱すると発熱反応によって1500℃程度まで温度は上昇する。冷却後、下部に溜まった金属ウランを取り出す。反応式を表1の式(6)に示す。
 金属マグネシウムは、金属カルシウムよりかなり安価である。ライニング材は、両法とも金属ウランと共に生成された残渣を粉砕して使用する。
 このようにして製造されたウラン金属塊は、一般にダービ (derby)といわれる。ダービは表面の不純物を除き真空またはアルゴン雰囲気などで高周波溶融や消耗電極アーク溶融などをおこない鋳造する。
<図/表>
表1 反応式
表1  反応式

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年)
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