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<概要>
 2003年1月1日現在の世界のウラン資源量は、$130/kgU以下のコストで回収可能な資源量が4,588千tU、うち$80/kgU以下のコストで回収可能な資源量が3,537千tU、回収コスト$40/kgU以下の資源量は2,523千tUである。
 2003年1月1日現在、世界の原子炉441基の発電設備容量は364GWe(net)である。2020年時点で高ケースでは発電設備容量は現行の33%、低ケースでは現行の15%増加すると予測されている。発電設備容量の変化に伴う世界のウラン需要量は、2002年の66,815tUから2020年時点には高ケースで86,0700tU(+29%)に、低ケースで73,495tU(+10%)に増加すると予測される。これに対して、ウラン生産能力は、2003年の約47,000tU/年から2005年に約51,000tU/年、2010年には約63,000tU、2020年には約62,000tUになると予測される。
 この需要と生産とのアンバランス(不足分)は、米ロ政府の余剰軍事用核物質の売却、民間余剰在庫の取崩し等により満たされる見通しである。しかしながら、鉱山の開発が計画通り進まず、一時的に鉱山生産量が予測より減少した場合や、余剰軍事用核物質の供給に混乱が生じた場合には、市場バランスが崩れる可能性が考えられる。
<更新年月>
2005年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.ウラン資源量
 OECD//NEA・IAEAの共同報告「URANIUM−RESOURCES, PRODUCTION AND DEMAND−2003,(2004)」(以下、「レッドブック(2003)と記す」)によると、2003年1月1日現在の世界のウラン資源量は、$130/kgU以下のコストで回収可能な資源量が4,588千tU、うち$80/kgU以下のコストで回収可能な資源量が3,537千tU、回収コスト$40/kgU以下の資源量は2,523千tUであった。
 最大のウラン資源国はオーストラリアで、1,058千tU(130米$/kgU以下で回収可能な資源量)賦存している。これは世界の資源量の23%に相当する。これに、カザフスタン(847千tU)、カナダ(438千tU)、南アフリカ(395千tU)、米国(345千tU)、ロシア(264千tU)、ナミビア(258千tU)、ニジェール(227千tU)が続く。これら8ヶ国で世界のウラン資源量の約84%を占めている。
 回収コスト$130/kgU以下の資源量、回収コスト$80/kgU以下の資源量および回収コスト$40/kgU以下の資源量は、現在の世界の原子炉必要量(2002年、66.815千tU)の約69年分に相当する。
 2003年1月1日現在の世界のウラン資源量の分布を図1に示す。
2.需要予測
 「レッドブック(2003年)」は、2020年までの世界の原子力発電設備容量と、原子炉関連ウラン必要量の見通しを示している。2010年、2015および2020年の原子力発電設備容量については、既存原子炉の寿命予測および新設原子力発電設備容量に関する不確実性を反映して、高ケースと低ケースの2つの予測をしている。
 2003年1月1日現在、世界で441基の原子炉が運転され、発電設備容量は364GWe(net)であった。高ケースでは発電設備容量は2020年時点で483GWe netに増加し(現行の33%増)、予測対象期間の平均年間成長率は1.6%と予測されている。低ケースでは2020年時点で418GWe netに増加(現行の15%増加)すると予測されている。
 発電設備容量の変化に伴い、世界のウラン必要量は2002年の66,815tUから2020年時点には高ケースで86,0700tU(+29%)に、低ケースで73,495tU(+10%)に増加すると予測される。
 原子力発電設備容量の伸びは地域毎に異なり、ウラン需要量の伸びも異なっている。2020年までに北米では原子力発電設備容量ほぼ変わらず、西欧およびスカンジナビアでは減少する。北米では2010年まではウラン需要量は減少、2015年には増加に転じ、その後、再度減少すると予測されている。一方、東アジアでは原子力発電設備容量が著しく増大し、2020年のウラン需要量は2002年のほぼ2倍に増加する見通しである。図2に2020年までの地域別ウラン需要量の予測を示す。
3.生産予測
 「レッドブック(2003年)」は、ウラン生産国19ヶ国からの報告に基づいて、2020年までのウラン生産能力(鉱山が現実的に達成可能な生産量)を示している。生産能力は、2003年の約47,000tU/年から2005年に約51,000tU/年、2010年には約63,000tU、2015年には約63,000tU、2020年には約62,000tUになると予測される。表1に2020年までの世界のウラン生産能力を示す。
 中国、インド、パキスタンおよびルーマニア等のごく一部のウラン自給政策を採っている国を除き、ほとんどのウラン生産国はウラン生産を民間に委ねている。したがって、ウラン生産能力の予測は現在の低ウラン価格を反映したものになっている。
4.需給予測
 2002年に20ヶ国で生産されたウラン生産量(36,042tU)は、原子炉必要量(66,815tU)の58.7%を充当したに過ぎなかった。「レッドブック(2003年)」の生産能力見通しでは、2003年時点で生産能力は需要量より約20,000tU不足している(図3)。2005年以降は、低ケースと高ケースでは様相が少し異なっているが、いずれのケースでも生産能力は需要量を満たすことはできない。図4に2020年までの世界の原子炉必要量とウラン生産能力の対比を示す。
 これらの不足分は、15〜20年間にわたって市場に供給される米国政府とロシア政府が保有する核兵器から取出された高濃縮ウラン(HEU)を希釈して得られた低濃縮ウラン(LEU)(天然ウラン換算で合計約182,000tU)および天然ウラン、民間余剰在庫、減損ウラン再濃縮使用済燃料再処理により補われることになる。
 したがって、今後10〜15年以上に渡って、これら代替供給がウラン生産を補足し続ける可能性が高い。今後、ウラン生産の大部分は低市場価格に対応した、より効率的で、より低コストの生産者によって賄われる見通しである。代替供給源からの継続的な供給の可能性と、低コスト生産者からのウラン供給量が増加するとの見通しは、ウラン市場価格の上昇圧力が今後十年間以上にわたって比較的緩やかであろうことを示している。しかしながら、鉱山の開発が計画通り進まず、一時的に鉱山生産量が予測より減少した場合や、余剰軍事用核物質の供給に混乱が生じた場合は、市場のバランスが崩れ、価格が高騰する可能性がある。
<図/表>
表1 2020年までの世界のウラン生産能力
表1  2020年までの世界のウラン生産能力
図1 世界のウラン資源量の分布
図1  世界のウラン資源量の分布
図2 2020年までの地域別ウラン需要量(高ケース・低ケース)の予測
図2  2020年までの地域別ウラン需要量(高ケース・低ケース)の予測
図3 OECD諸国/世界のウラン生産量とウラン需要量の推移(1988−2003年)
図3  OECD諸国/世界のウラン生産量とウラン需要量の推移(1988−2003年)
図4 2020年までの世界の原子炉必要量とウラン生産能力の対比
図4  2020年までの世界の原子炉必要量とウラン生産能力の対比

<関連タイトル>
ウラン生産国と資源状況 (04-02-01-06)
世界原子力協会(WNA) (13-01-03-02)
ロシアの高濃縮ウランの処分計画 (14-06-01-18)
米国の余剰プルトニウム処分計画 (14-04-01-26)

<参考文献>
(1)OECD/NEA,IAEA:URANIUM−RESOURCES, PRODUCTION AND DEMAND−2003, レッドブック(2003年)OECD(2004)
(2)OECD/NEA,IAEA:URANIUM−RESOURCES, PRODUCTION AND DEMAND−1999, レッドブック(1999年)、OECD(2000)
(3)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2005年版・各論、p.304−315(2004年10月)
(4)武井 毅:最近の世界のウラン需給状況と市場動向、原子力eye,Vol.51,No.2(2005年2月号),p.54−59
(5)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2000/2001年版(2000年10月)、p.124−p.135
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