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<概要>
 中国は、高速炉を第2世代の原子力エネルギーの第1選択肢として考えてきた。高速炉技術の研究開発は1960年代初めに開始したが、1987年に国の高技術研究発展計画に組み込まれてから、高速実験炉の開発に力が注がれるようになった。現在、熱出力65MW(電気出力20MW)の高速実験炉(CEFR)を建設中で、2007年の臨界を予定している。韓国は1992年から液体金属冷却高速炉の開発に着手、2003年に原型炉KALIMER−600(600MWe)の概念設計は終了した。ブラジルはILR−350(350MWe、鉛冷却高速炉)の設計研究中である。
<更新年月>
2004年11月   

<本文>
1.中国の高速炉の開発状況
 中国の高速増殖炉の開発は、中国の国家科学技術委員会が管理する高技術研究発展計画の中のエネルギー技術分野の課題の一つとして1987年に組み込まれて、北京から40km離れている原子能科学研究院高速炉研究センターで進められている。1988年に高速実験炉CEFR(熱出力65MW、電気出力20MW、タンク型;表1図1および図2)の設計研究を開始、1990年から1993年12月まで概念設計、1995年2月から1997年8月までロシアの協力を得て予備設計を終え、1997年から独自に詳細設計を進めている。2000年5月に許可がおりて建設が開始した。2002年8月の時点で原子炉建家の約40,000m2のフロアが完成した。2007年中の初臨界を予定している。
中国は高速炉にプルトニウム燃焼炉の役割をまず与え、増殖炉としての実証は長期的観点で考えている。
 実験炉以降の計画については、実験炉の成果を踏まえて検討されることになるが、2020年頃600MWeの原型炉(CPFR)完成、2025年頃1000MWe規模の実証炉完成というステップを予定している。
2.韓国の高速炉の開発状況
 韓国は、1991年に慮泰愚大統領(当時)の「朝鮮半島の非核化と平和構築のための宣言」によって、再処理・濃縮施設の保有を放棄したが、液体金属冷却高速炉(LMR)開発計画として1992年9月から韓国原子力委員会の承認を受けて開発がスタートした。同年、熱出力392MW、電気出力150MW(送電端)の液体金属冷却炉KALIMER(Korea Advanced Liquid Metal Reactor)の基本技術開発に着手し、1997年7月から概念設計を開始した。2002年からの概念設計のフェーズ3では出力を600MWeに増加し、不核拡散と燃料サイクルの概念、経済性と安全性の向上、高温構造解析技術等を盛り込んだ設計に変更され、KALIMER−600となった。2003年にKALIMER−600の概念設計は終了した。表2に設計目標を、図3炉心構成を、図4に冷却系を示す。現在フェーズ4の計画が検討中であり、最終的な予定は2004年秋に決定される見込みである。このKALIMER−600は、タンク型(プール型)、ウラン−ジルコニウム合金燃料、免震構造である。
3.ブラジルの高速炉の開発状況
 ブラジルにおける高速炉の開発は、1992年以降高速実験炉REARA−60のリファレンス設計が進められた。設計の主要目は、熱出力60MW、電気出力20MW、タンク型、ウラン−10%ジルコニウム合金の金属燃料など、アメリカのPRISM、EBR−2を参考にして設計が進められていたが、財政的制約のため中断した。
現在は学術的活動のみが続けられ、アメリカの提唱する第四世代原子炉(GEN−IV)計画に参画している。現在電気出力350MWeのILR−350(Integrated Lead Fast Reactor)の設計研究を進めている。図5にプラントの概念図を示す。それは、ロシアやアメリカの鉛冷却高速炉の特徴を活かし、金属燃料を使用した安定性の高い炉で、発電のみではなく高温処理による工業上の利用も計画している。また燃料サイクルのための燃料処理施設と統合された一体型の設計のため、安全性と非核拡散の信頼性が高い。
<図/表>
表1 中国の高速実験炉CEFRの設計主要目
表1  中国の高速実験炉CEFRの設計主要目
表2 韓国の液体金属冷却炉KALIMER−600の設計目標
表2  韓国の液体金属冷却炉KALIMER−600の設計目標
図1 中国の高速実験炉CEFRの炉心
図1  中国の高速実験炉CEFRの炉心
図2 中国の高速実験炉CEFRの原子炉
図2  中国の高速実験炉CEFRの原子炉
図3 韓国の液体金属冷却炉KALIMER−600の炉心
図3  韓国の液体金属冷却炉KALIMER−600の炉心
図4 韓国の液体金属冷却炉KALIMER−600の冷却系
図4  韓国の液体金属冷却炉KALIMER−600の冷却系
図5 ブラジルの液体金属炉ILR−350プラント概念図
図5  ブラジルの液体金属炉ILR−350プラント概念図

<関連タイトル>
アメリカの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-04)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)
中国の原子力発電開発 (14-02-03-03)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 1999/2000年版、1999年10月、p169−170
(2)IAEA/IWGFR:Annual Meeting,”The Status of Fast Reactor Technology Development in China”(1997年5月)
(3)IAEA/IWGFR:Annual Meeting,”Status of Liquid Metal Reactor Development Activities in Korea −An Introduction to KALIMER−”(1997年5月)
(4)IAEA/IWGFR:Annual Meeting,”Fast Reactor Research Activities in Brazil”(1997年5月)
(5)日本原子力産業会議(編):原産マンスリー No.19(1997年5月)、p17?19
(6)Daogang Lu & Mi Xu: The Status of Fast Reactor Technology Development in China, IAEA TWG−FR, 37th Annual Meeting, May (2004) (Private Communication)
(7)Dohee Hahn: ” Status of Fast Reactor Technology Development Programme in Korea”, IAEA TWG−FR, 37th Annual Meeting, May (2004) (Private Communication)
(8)Jose R. Maiorino et al, ” Nuclear Energy in Brazil and the R&D Status on Fast Systems National Report”, IAEA TWG−FR, 37th Annual Meeting, May (2004) (Private Communication)
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