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<概要>
 欧州型高速炉(EFR)は2010年代に商業用として使用することを目的として欧州各国が共同で開発を進めている高速増殖炉FBR)である。電気出力1520MWのナトリウム冷却タンク型であり、設備の基本構成は既設のプラントと同様であるが、経済性、安全性の向上を図ったものである。1988年に開発が開始され、1993年に概念設計と予備安全評価が終了したが、その後本計画は設計研究の段階で終了とされている。
<更新年月>
2004年11月   

<本文>
1.概要
 欧州型高速炉(EFR:European Fast Reactor)は欧州各国が共同で開発を進めている高速増殖炉(FBR)である。目標は2010年代に商業用として使えるプラントの開発である。1988年3月にフランスのEdF、イタリアのENEL、英国のNE/CEGB、ドイツ、ベルギー、オランダ等出資のSBKより成る欧州型高速炉ユーティリティグループ(EFRUG)の要請により設計会社EFR社が作られて設計が開始された。1990年6月にはリオンにプロジェクトセンターが置かれ、英国NNC、ノバトム、ベルゴニユークリア、ドイツのインターアトム、イタリアのアンサルドの5センターで開発を進める体制となった。R&DはフランスCEA(原子力庁)の研究所、ドイツのKfK、ベルギーのCEN/SCKおよびUKAEA(英国原子力公社)が担当してきた(以上組織名は当時のもの)。
 1988年3月から1990年3月までに概念設計が行われ、各国で先行して設計されたFBRの良いところを取り入れることを目指した。1990年4月から1993年3月まではこの概念設計について安全性と経済性からの検証が行われ、サイトを特定しない安全評価書が作成された。当初の予定では引き続いて建設準備にはいる予定であったが、スーパーフェニックスでの運転実績がまだ出ていなかったこと等から、EFRUGは建設準備段階への移行を遅らせている。この間、検査性の向上と安全設計の改善によるによる経済性の向上等の設計開発作業が続けられた。その後本計画は設計研究の段階で終了とされている。
2.設計概要
 EFRは電気出力1520MWのナトリウム冷却タンク型の高速増殖炉である。その主要設計目値を表1に示す。
 炉心はプルトニウム富化度が異なる2領域より成り、軸方向と径方向に増殖用ブランケットを持っている。炉心配置を図1に示す。346の燃料集合体、150のブランケット集合体がある。周辺部には127本の取替用燃料集合体が置かれている。燃料集合体は直径8.2mmの331本の燃料棒より成る。24本の制御棒と炉停止の多様性確保のための9本の後備停止用制御棒がある。炉心の最大燃焼度は20%を目標としている。
 1次冷却系は、3ループ構成で、原子炉と共に直径17mの原子炉容器の中に収められている。原子炉容器部の断面図を図2に示す。1次系ナトリウムから2次系ナトリウムへ熱を伝える中間熱交換器は6基で直管の伝熱管を使用している。1次冷却系ポンプは3台で、それぞれ2基の中間熱交換器に接続している。この構成と機器の小型化によって燃料交換のための回転プラグが小さくなり原子炉容器のコンパクト化が可能となった。2次冷却系は6基の蒸気発生器と6基の2次冷却系ポンプを備えており、6ループ構成である。電源喪失時には自然循環による余熱除去が可能である。原子炉容器と2次冷却系配管はナトリウム漏洩防止ジャケット付きである。
 原子炉容器内には6基の余熱除去冷却器があり、2次系ナトリウムは原子炉建屋上部に置かれている空気冷却器で冷却される。自然循環専用の3系統とポンプによる強制循環と自然循環の両方が可能の3系統の構成となっており、受動的安全を指向している。
 原子炉系建屋配置を図3に示す。中央に円筒形の原子炉建屋(格納容器)があり、原子炉建屋はサテライト配置の三つの蒸気発生器建屋と円環状のサービス建屋で囲まれている。原子炉建屋は鉄筋コンクリート製で格納容器バウンダリを構成している。補助建屋には新燃料および使用済燃料取扱と機器の除染保守等取扱のためののエリアがある。
 原子炉系建屋全体は一体の基礎の上に建てられている。原子炉建屋、蒸気発生器建屋およびサービス建屋はもう1層の基礎盤を持ち水平方向の免振構造となっている。
3.経済性
 EFRは燃料の高燃焼度化、設計の簡素化、安全グレード設備の限定、機器台数と重量の低減、建屋体積の低減、建設期間の短縮、機器への接近性の向上等によって経済性の向上を図っている。EFR社による発電コストの試算値は次の通りであり、軽水炉と競合が可能であるとしている。


 スーパーフェニックス   EFR(実証炉)    EFR(実用炉)  
資本費35.318.613.5
運転費 7.6 5.3 4.4
燃費計 8.5 4.2 4.0
合 計51.428.121.9
(単位0.01フラン/kWh、1986年価格)


<図/表>
表1 EFR主要設計要目値
表1  EFR主要設計要目値
図1 EFR炉心配置
図1  EFR炉心配置
図2 EFR原子炉部
図2  EFR原子炉部
図3 EFR原子炉系建屋配置
図3  EFR原子炉系建屋配置

<関連タイトル>
フランスの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-05)
イギリスの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-06)
ドイツの高速増殖炉の研究開発 (03-01-05-07)
イタリアの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-10)

<参考文献>
(1)EFR Associates(Pamphlet):”A Summary of The European Fast Reactor”
(2)J.C.Lefevre(EFR Associates)et al.:European Fast Reactor Design、第28回IAEA/IWGFR年回報告,p209−228
(3)Lefevre J.C. et al.: European Fast Reactor Design, Nucl. Eng. Des. 162(2/3),133−143(1996)
(4)Marth W. : Story of European Fast Reactor Cooperation, KFK−5255(1993)
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