<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高速増殖炉
<小項目> 高速増殖炉の安全性
<タイトル>
海外諸国の高速炉における事故・故障・トラブル(ナトリウム漏えいを除く) (03-01-03-10)

<概要>
 海外諸国の高速炉において起きた、ナトリウム漏えい関係を除いた主な事故・故障・トラブルについて、すなわち、炉心・燃料関係では、EBR-1の炉心溶融、DFRとBR-5の燃料被ふくの破損、E.FERMIの燃料溶融、Phenixの反応度低下;蒸気発生器関係では、BR-5、EBR-2、BN-350、PFR、BN-600およびPhenixの水漏えい、E.FERMIとPFRの伝熱管破損;ポンプ等の動的機器類では、BR-5の一次系のポンプ、EBR-2の一次系・二次系のポンプ故障、FFTFの一次系のポンプ故障とPFRの一次系への潤滑油混入;その他では、Super Phenixの主容器の内部構造物の振動、同炉の一次系カバーガスへの空気混入、Phenixの二次系での溶接欠陥について記述している。
<更新年月>
2006年12月   

<本文>
 図1に世界の高速炉における主要な事故・故障・トラブルおよび図2に世界の高速炉の現状を示す。つぎに、ほぼ年代順に事故の概要を述べる。
1.炉心・燃料関係
 開発初期の海外高速炉の燃料破損事例と「もんじゅ」での対応状況を表1および表2に示す。
1.1 EBR-1炉の炉心溶融(1955年11月29日、米国)
 EBR-1は世界で初めて発電(150kWe)を行ったループ型実験炉で、金属燃料を用い、一次系と二次系ともにNaKを用いている。炉心はMark-1からMark-4にわたり計4回取り替えられている。事故はMark-2炉心(U−2%Zr合金燃料、304SS被ふく)で起こった。温度係数(出力の一部で正)を調べるため、故意に2つの安全系を外して出力上昇試験をしていた。運転員が急速スクラムボタンを押すつもりで誤ってスロースクラムボタンを押してしまい、ただちに急速スクラムボタンを押したが間に合わず、燃料温度が上昇し炉心全体体積の40〜50%が溶融してしまった(図3参照)。外部への放射能放出は無視できる程であった。後で燃料棒の湾曲が原因と判明したので、Mark-3炉心では燃料ピンの湾曲を防ぐため、燃料ピンにワイヤスペーサを巻き付け、燃料集合体ラッパ管に収めることにした。
1.2 DFR炉の燃料被ふくの破損(1960年4月、英国)
 DFRは電気出力15MWeのループ型実験炉で、ナトリウムボンドの金属ウラン(U−7%Mo)中空燃料を用い、一次系二次系ともに冷却材としてNaK液体金属を用いている。取り替えのため燃料を吊り上げていたとき、2本の燃料棒が被ふく管(ニオブ製)の最上部で破損し、破損箇所より下部が下方のNaKヘッダーへ落下した。燃料のボンド材であるナトリウムが製造過程で湿分等の不純物を吸収し、燃料の貯蔵期間中に被ふく材の腐食等をもたらしたのが破損の原因と考えられ、ボンド材のナトリウムの純度を改善した。
1.3 BR-5炉の燃料被ふくの破損(1960年〜1961年、ロシア)
 BR-5は熱出力5MWtのループ型実験炉で、酸化物燃料を用い、一次系にNaを二次系にNaKを用いている。二重管型蒸気発生器(二重管の間は水銀)を採用し、Nak−水反応を避けている。1960年10月にカバーガス中に133Xeが発見されたが運転を続け、その後137Csも発見されたので、1961年9月に炉停止した。被ふくに脆性破壊によるクラック(軸方向:8〜10cm、幅:1mm)が発見された。
1.4 E.FERMI炉の燃料溶融(1966年10月5日、米国)
 E.FERMI炉は電気出力60MWeの金属ウラン(U−10%Mo)を用いたループ型実験炉である。出力上昇試験中、炉容器底部に設けられている整流板の整流溶融防止カバー(1枚;ジルコニウム製)取り付け部が流体振動で破損し、その結果燃料集合体の冷却材入口の一部を閉塞し当該燃料集合体の冷却材流量低下が起こり、当該燃料集合体が溶融破損を起こした(図4参照)。異物による流路閉塞を起こさないように、ジルコニウム製カバーを取り外すとともに燃料集合体下端に突起物をつけ、破損燃料検出法等を改善した。
1.5 Phenix炉の反応度低下(1989年8月〜1990年9月、フランス)
 Phenix炉は電気出力250MWeの酸化物燃料を用いたタンク型高速原型炉である。1973年8月に臨界、1974年7月に発電を開始しほぼ順調に運転していたが、1989年〜1990年9月に合計4回にわたり、急激な反応度低下により原子炉スクラムした。これは初めに反応度(中性子検出器信号)が異常に低下し、その後もとに戻るというものである(図5参照)。原因としては燃料集合体変位等が考えられ、燃料集合体上部の変位を検出する装置を新たに設置して、まず5%出力、続いて3分の2出力で運転を継続してきたが、上記の反応度低下の事象は再現せず、2000年3月現在、原因は究明できていない。
2.蒸気発生器関係
2.1 BR-5炉の水漏えい(1960年8月〜10月、ロシア)
 上述したように二重管型(二重管の間は水銀)蒸気発生器を採用している。61本中8本の内管に10〜70mmの亀裂が生じ、また、1本の外管が破損したが、NaK−水反応には至らなかった。内管の亀裂の原因は、塩素存在下のステンレス鋼の応力腐食割れと推定され、一方、外管の破損原因は蒸気発生器の製造時の損傷によるとされた。
2.2 E.FERMI炉の伝熱管応力腐食割れと水漏えい(1962年6月、12月、米国)
 1962年6月に行われた耐圧試験でNo.2蒸気発生器伝熱管湾曲部から水漏えいがあり亀裂が発見された。組み立て中に用いられた洗浄液が残存し、これが原因で応力腐食割れを起こした。伝熱管束全体を交換した。1962年12月12日には、臨界前試験中にNo.1蒸気発生器から水漏えいしNa−水反応が起き圧力解放板が作動した。伝熱管とその支持部の隙間が大き過ぎたので流体振動が起き肉厚が薄くなり破損し水漏えいが起き、水漏えいによるNa−水反応のため周辺部伝熱管も損傷し45本の伝熱管破損となった。振動防止対策を施した。
2.3 EBR-2炉の水漏えい(1965年2月、米国)
 EBR-2は電気出力20MWeのタンク型実験炉である。蒸気発生器の管−管板溶接部のピンホールから水漏えいが起きたが、二重管型であるのでNa−水反応には至らなかった。
2.4 BN-350炉の水漏えい(1973年〜1975年、カザフスタン)
 BN-350は電気出力350MWeのループ型原型炉で、発電と海水脱塩を併用している。伝熱管から5回の大小の水漏えいがあり、大リークではNa−水反応を起こした。1973年の大リークでは発生した水素を大気へ放出させ燃焼させたのが米国の偵察衛星に捉えられた。製造時の品質管理不十分と伝熱管下部鏡板部の溶接部欠陥が原因とされた。
2.5 PFR炉の水漏えい(1974年〜1977年、英国)
 PFRは電気出力250MWeのタンク型原型炉である。運転初期の1974年から1977年まで、蒸発器2基、過熱器2基、再熱器1基からの小さな水漏えいが計12回起きた。水漏えい部はいずれも伝熱管と管板との溶接部で発生しており、製造時の溶接不良あるいは不適切な施行(溶接部残留応力除去を行っていなかった等)に起因すると思われ、欠陥が進展し貫通孔が生じ水漏えいに至ったと推定された。
2.6 BN-600炉の水漏えい(1980年7月〜8月、ロシア)
 BN-600は電気出力600MWeのタンク型原型炉であり、直管型伝熱管の蒸気発生器を採用している。伝熱管から数回の水漏えいが発生し6月の漏えい時には伝熱管10本の破損があった。伝熱管の母材部および溶接部の微小欠陥が運転中に進展した。
2.7 Phenix炉の水漏えい(1982年4月、12月、1983年2月、3月、フランス)
 1982年4月にはNo.2蒸気発生器再熱部伝熱管から水漏えいし小規模のNa−水反応が起きた(図6参照)。圧力開放板の作動には至らなかったが、窒素ガス注入弁が作動せず、蒸気側にナトリウムが流入した。12月にはNo.1蒸気発生器、1983年2月にはNo.3蒸気発生器、3月にはNo.1蒸気発生器の再熱部伝熱管から水漏えいしたが、圧力開放板の作動には至らなかった。いずれの場合でもナトリウム水素検出計がNa−水反応を早めに検知し、伝熱管1本のみの破損に抑えられた。再熱部伝熱管水漏えいは突き合わせ溶接部で発生しており、低サイクル熱疲労と推定された。
2.8 PFR炉の伝熱管破損(1987年2月、英国)
 第2ループ過熱器伝熱管から小規模水漏えいに続いて大規模水漏えいが起き、圧力開放板が作動し安全保護系が働いた。40本の伝熱管が破損し、70本が損傷を受けた(図7および図8参照)。過熱器内ナトリウム入口の同心内筒状流路曲板ギャップ不具合により最内層伝熱管の一部に振動がおき、13本の伝熱管と内筒が接触を繰り返し減肉を起こし、1本に貫通亀裂を起こして小規模水漏えいが発生し、さらにナトリウム水素検出計の故障により、規模が拡大した。伝熱管材料をオーステナイト系鋼から9Crフェライト系鋼に変更し、構造も改良した。
3.ポンプ等動的機器
3.1 BR-5炉の一次系冷却材ポンプフランジ結合部トラブル(1960年、ロシア)
 一次系ポンプ(機械式)フランジ結合部パッキンからナトリウムが漏えいした。冷却材の循環・停止等にともなう温度変動が起因とされた。フランジ結合部にパッキンカバーを設けるとともに、その後パッキンカバーの構造と下部軸受け部を改修した。
3.2 EBR-2炉の一次系と二次系のポンプ故障(一次系の故障:1963年4月、8月、1965年7月、1970年5月;二次系の故障:1964年4月、ロシア)
(1)一次系ポンプ(機械式)が1963年4月(No.1ポンプ)と8月(No.2ポンプ)が激しく振動した。ポンプ軸がたわんでいて軸とラビランスがかじっていた。1965年7月と1970年5月にはラビランスシール部のナトリウム付着による回転不良が起きた。設計不良と思われる。一次系ポンプのポンプ軸とシールを交換した。ポンプの構造を図9に示す。
(2)二次系ポンプ(電磁式)ポンプダクトのクラックからのナトリウム漏れが発見された。ポンプダクト振動による疲労破壊と思われる。代替えポンプと交換した。
3.3 FFTF炉の一次系のポンプ故障(1979年6月、米国)
 FFTF炉は、熱出力400MWtの材料照射試験用ループ型試験炉である。機能試験中、一次系ポンプ(機械式)のナトリウム液位が異常上昇した。回復後以前の10倍以上の振動が生じた。この原因は一次系隔離弁の閉止手順の誤りからで、これによってポンプ軸が不均一に加熱され変形を生じ振動を生じた。
3.4 PFR炉における一次系ナトリウムへの潤滑油の混入(1991年6月、英国)
 100%出力で運転中、一次主循環ポンプNo.2の上部ベアリングが過熱しプラントを停止させた。これは、ポンプの軸封ガス(アルゴン)の流量低下を回復すべくアルゴンガス系統を負圧にしたため、ポンプ内のナトリウムの液位が上昇しドレンタンク内のベアリング潤滑油を押出し、その結果油量の不足によりベアリングが過熱し、同時に推定約35リットルの潤滑油が一次系ナトリウムに混入した。ベアリングの交換等を経て、1992年12月末に運転を再開している。
4.その他
4.1 Super Phenix炉における炉容器内の構造物の振動(1985年、フランス)
 Super Phenix炉は、電気出力1240MWeのタンク型高速実証炉で、1985年9月に臨界、1986年1月に初送電を達成した。同炉は低温ナトリウムを炉容器壁に沿って流す炉壁冷却方式である(図10参照)。性能試験中の1985年3月、溢流するナトリウムとの相互作用により炉壁冷却に関わる内部構造物に予測を超える振動が確認されたが、ナトリウムの自由液面を0.5m下げる等の対策により解消した。
4.2 Super Phenix炉における一次系カバーガスへの空気の混入(1990年6月、フランス)
 定格の90%出力で運転中のところ、一次ナトリウム純化系の2基のコールドトラップが相次いで閉塞した。これは、カバーガス系のコンプレッサーのシール膜が部分的に裂けたため空気が混入したもので、酸素の混入量は、酸化ナトリウムで300〜350kgと推定された。カバーガスの純度監視装置や同シール膜の破損検出計装を新たに設置した。
4.3 Phenix炉における二次冷却系での溶接部の欠陥等(1992年〜1993年、フランス)
 高温ナトリウムの合流による局所的な熱疲労で、主配管の溶接部と膨張タンクにき裂やナトリウムの漏えいした痕跡が確認された。321ステンレス鋼配管の高温となる部分の溶接部にも経年脆化による多数の欠陥が発見され、316ステンレス鋼に交換した。図11に、フェニックスの配管合流部でのナトリウム温度差に起因する配管溶接部の損傷の「もんじゅ」での反映事項を示す。
(前回更新:2000年3月)
<図/表>
表1 開発初期の海外高速炉の燃料破損事例
表2 高速炉における燃料破損について
図1 世界の高速炉における主要な事故・故障・トラブル
図2 世界の高速炉の現状
図3 EBR-1炉の炉心溶融状況
図4 E.Fermi炉燃料集合体の破損状況
図5 Phenix炉で生じた反応度(中性子検出器信号)低下
図6 Phenix炉蒸気発生器の水漏えい個所
図7 PFR炉蒸気発生器の破損伝熱管および損傷伝熱管の位置
図8 PFR炉の伝熱管破損による水漏えいの「もんじゅ」での反映事項
図9 EBR-2炉の一次系主循環ポンプの構造図
図10 Super Phenix炉の原子炉構造
図11 フェニックスの配管合流部でのナトリウム温度差に起因する配管溶接部の損傷の「もんじゅ」での反映事項

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
高速増殖炉と軽水炉の相違 (03-01-02-03)
高速増殖炉の炉心設計 (03-01-02-04)
高速増殖炉の燃料設計 (03-01-02-06)
ナトリウムの特性 (03-01-02-08)
高速増殖炉の蒸気発生器 (03-01-02-11)
海外諸国の高速炉におけるナトリウム漏えい事故 (03-01-03-08)

<参考文献>
(1)科学技術庁(編):FBR広報素材資料集「トラブルと対策」、日本原子力文化振興財団(1995年3月)
(2)中川弘ほか:世界の高速実験炉運転経験の評価(1)〜(5)、原子力誌、11(6)、p.362-368(1969)(世界各国の高速炉で起きた事故・故障・トラブルについて解説している)
(3)福田達:高速増殖炉技術開発の最近の動向(3)高速増殖炉用蒸気発生器、原子力工業、31(1)(1985)
(4)L.Martin et al.:Leak Before Break Operating Experince from European Fast Reactors,Proc. Int. Conf. on Fast Reactor and Fuel Cycles,Vol-1,Oct.1991,Kyoto
(5)資源エネルギー庁ホームページ:原子炉安全小委員会もんじゅ安全性確認検討会(第4回)配布資料4-3「海外の高速炉におけるトラブル事例等の反映について」(平成18年3月)、http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g60417b03j.pdf
(6)J.H.Kittel et al.:EBR-1 Melt Down-Physical and Mettallurgical Changes in the Core,Nuc.Sci.Eng.,4(2)(1958),p.191,p.193
(7)E.P.Alexanderson,A.L.Wagner(eds.):FERMI-1 New Age for Nuclear Power,ANS(1979),p.240
(8)P.R.Gallie et al.:PFR Superheater Under Sodium Leak,LILET’88,Avignon(Oct.1988)
(9)Ways L.Chase:Heat Transfer Systems,;J.G.Yevict et al.(eds.):Fast Reactor Technology-Plant Design,MIT Press(1966),p.172
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