<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 技術開発
<タイトル>
日本の評価済核データベースJENDLの開発 (02-08-01-07)

<概要>
 JENDL(Japanese Nuclear Data Library)とは、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)核データセンター(現核データ評価研究グループ)とシグマ委員会(日本原子力学会のシグマ特別専門委員会と日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)のシグマ研究委員会で構成)が協力して開発している、日本の標準として利用できる評価済核データライブラリである。米国のENDFライブラリ、欧州のJEFFライブラリと並んで世界3大ライブラリの一つとして、世界で大きな地位を占めている。原子力分野や産業界、その他での一般利用を目的としたJENDL汎用ファイルと、利用目的を限ったJENDL特殊目的ファイルが作成されている。汎用ファイルとしては、406核種を擁するJENDL?4.0が平成22年5月に公開されている。また特殊目的ファイルとして、JENDL高エネルギーファイル等の開発が進められている。開発の終了したJENDLのデータはすべて、日本原子力研究開発機構核データ評価研究グループのホームページ及び、NEA、IAEAといった世界の核反応データセンターネットワーク(旧4センターネットワーク)を通して公開されている。
<更新年月>
2011年10月   

<本文>
1.開発の経緯
 わが国の原子力自主開発に不可欠な核データ整備のため、日本原子力学会並びに産業界からの要請(素性の分かったデータを使いたいという強い産業界からのリクエスト)に応えて昭和38年日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)にシグマ委員会が組織された。その後、昭和43年には核データ研究室(昭和52年には核データセンターと改称)が日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)内に設置され、核データの質、量両面における向上を図るべく評価済核データファイルの評価作業が開始された。
 これまで実施してきている汎用ライブラリ作成の概要を、図1に示すが、昭和40年代に高速炉を対象として評価済核データライブラリJENDLの整備が開始され、52年にJENDL-1を公開、その後JENDL-2、JENDL-3.1、3.2、3.3と新しい版を公開して核融合炉、遮蔽設計、軽水炉とその対象をひろげてきている。さらに、平成22年5月には406核種からなるJENDL-4.0を公開した。JENDLは、低エネルギーから20MeVまでの中性子に関する日本の核データの標準ライブラリとしての地位を確立すると同時に、世界の3大ライブラリ(ENDF/B(米)、JEFF(欧)、JENDL(日))の一翼を担う主要ライブラリとしての地位を固めてきた。この間、その時々の最新の核データは、「常陽」、「もんじゅ」、HTTR、ITER、さらにはオメガ計画J-PARC計画等の日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)、旧動燃;JNC(現日本原子力研究開発機構)の原子力開発プロジェクトに利用されてきた。こうした特性は、汎用ライブラリが、その時々のデータニーズを果敢に取り込み、評価核種の選定やエネルギー範囲についての評価の重点の置き方等に対して利用プロジェクトからの要請に対して、機敏に対応してきた結果である。時間の経過に従ったJENDL汎用ファイルの収容データの強化の度合いを表1に示す。
 各JENDL汎用ファイルの開発の歴史については別項(<02-08-01-08>「JENDL汎用ファイルの変遷」)を参照されたい。
2.JENDL汎用ファイルJENDL-4.0
 最新の汎用評価済核データファイルJENDL-4.0は平成22年5月に公開されている。JENDL-3.3が平成14年5月に公開された後、JENDL-3.3の使用経験や原子力の様々な分野からの要望により、従来はあまり注目されていなかったFPやMA(マイナーアクチニド)のデータ、それに誤差評価に必要な共分散データの充実を図ることとし、JENDL-4.0の開発を進めてきた。特に、MAについてはAc-225からFm-255までの79核種の核反応データを収納している他、すべての核種に誤差データも付与している。JENDL-4.0の収納核種数は406(405核種+1天然元素)で原子力の利用・研究開発に必要なほぼ全ての核データが収納されている。旧版JENDL-3.3と比べ収納核種数の増加、最新の測定データや理論計算による精度向上を図り、質・量ともに充実した核データライブラリとなっている。FPやMAのデータ精度の向上による核燃料の燃焼計算等の信頼性向上、二次ガンマ線データの充実による放射線遮蔽や発熱計算の高度化等が期待できる。ユーザーからのニーズを積極的に取り入れU-235のkeV領域における捕獲断面積やAm-241の捕獲断面積のAm-242g及びAm-242mへの分岐比の再評価等を実施し、高速域での臨界性やMAの生成量評価での性能の向上が図られている。公開に当たっては、熱中性子炉、高速炉、遮蔽、核融合ニュートロニクス等様々な炉物理体系でのベンチマークテストを実施し、優れた性能を示していることが確認されている。JENDL-4.0に収納されている核種のリストを表2-1及び表2-2に示す。JENDL-4.0の評価データはENDF/BやJEFFの次期版に取り入れられようとしている等世界的にも高く評価されている。
3.JENDL特殊目的ファイル
 特殊目的ファイルは汎用ライブラリを基に、特定の利用分野のために必要なデータ部分の精度を向上させた高付加価値のデータファイルである。これまで、放射化断面積ファイル、ドシメトリーファイル、核融合炉用ファイル、アクチニドファイル、(α,n)ファイル、ガス生成ファイル、高エネルギーファイル、光核反応データファイル、FP崩壊データファイルが整備され公開されている。これらの開発の経緯及び現状については別項(<02-08-01-09>「JENDL特殊目的ファイルの概要」)を参照されたい。
4.データ公開について
 JENDL-4.0を含めて、核データセンター(現核データ評価研究グループ)が作成したJENDLファイル(JENDL汎用ファイル及び特殊目的ファイル)は、全て公開されており、以下の場所から誰でも自由にDown Loadして使用できるようにしている。
 日本原子力研究開発機構核データ評価研究グループホームページ http://wwwndc.jaea.go.jp/index_J.html
 JENDL-4.0データに関しては、
 ・original data (共鳴パラメータ表示データ)
 ・point wise data(ポイント断面積表示データ:0 K,300Kのみ)
 ・断面積Plot図
が利用可能である。また、当該ホームページから、上記データがすべて入ったJENDL-4.0 DVDも配布している。これらのデータは、OECD/NEAをはじめ、IAEA/NDS等の核データに関する旧4センターネットワークを通して公開されている。
 ・OECD/NEA: http://www.oecd-nea.org/dbdata/
 ・IEAE/NDS: http://www-nds.iaea.org/
 ・BNL/NNDC: http://www.nndc.bnl.gov/
<図/表>
表1 JENDL汎用ライブラリーの変遷
表2-1 JENDL-4.0収納核種(1/2)
表2-2 JENDL-4.0収納核種(2/2)
図1 JENDL評価済核データファイルの開発

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
JENDL汎用ファイルの変遷 (02-08-01-08)
JENDL特殊目的ファイルの概要 (02-08-01-09)

<参考文献>
(1)S.Igarashi et.al.,“評価済核データライブラリー、JENDL-1の概要”,日本原子力学会誌,20,30(1978)
(2)Kikuchi Y.,Nakagawa T.,Asami T.,Kawai M.,Matsunobu H.and Kanda Y. :” Second Version of Japanese Evaluated Nuclear Data Library(JENDL-2)”,J.Nucl.Sci.Technol.,22,593(1985)
(3)K. Shibata,T. Kawano,T. Nakagawa,O. Iwamoto,J. Katakura,T. Fukahori,S. Chiba,A. Hasegawa,T. Murata,H. Matsunobu,T. Ohsawa,Y. Nakajima,T. Yoshida,A. Zukeran,M. Kawai,M. Baba,M. Ishikawa,T. Asami,T. Watanabe,Y. Watanabe,M. Igashira,N. Yamamuro,H. Kitazawa,N. Yamano and H.Takano: ”Japanese Evaluated Nuclear Data Library Version 3 Revision-3: JENDL-3.3,”J.Nucl.Sci.Technol.39,1125(2002)
(4)K. Shibata, O. Iwamoto, T. Nakagawa, N. Iwamoto, A. Ichihara, S. Kunieda, S. Chiba, K. Furutaka, N. Otuka, T. Ohsawa, T. Murata, H. Matsunobu, A. Zukeran, S. Kamada, and J. Katakura: "JENDL-4.0: A New Library for Nuclear Science and Engineering," J. Nucl. Sci. Technol. 48, 1 (2011)
(5)日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)エネルギーシステム研究部核データセンター:原研核データセンターパンフレット、核データ 明日の原子力利用のために(2000年3月)
(6)日本原子力研究開発機構核データ評価研究グループホームーページ(http:// wwwndc.jaea.go.jp/index_J.html)
(7)長谷川明、中川庸雄、片倉純一、千葉敏、深堀智生、川合将義:「原子力研究における最近10年の歩み その概要と展望 1.核データの評価」、日本原子力学会誌,vol.41,p.287(1999)
(8)柴田恵一、岩本修、千葉豪:「原子力開発のための中性子核反応データベース−評価済み核データライブラリーJENDL-4.0の完成、日本原子力学会誌、Vol. 52, 801 (2010)
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