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<概要>
 蒸気発生器は、一次冷却系側(炉心)で発生した熱を二次冷却系側に伝達させる熱交換器である。炉心で加熱された一次冷却水は蒸気発生器において二次系側に蒸気を発生させ、その蒸気でタービン発電機のタービンを回転させて電気を発生させる。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.蒸気発生器の構造
 PWRに用いられている蒸気発生器(SG)は、 図1 に示すように、立置逆U字管再循環式熱交換器である。蒸気発生器は、一次側水室、逆U字形伝熱管部、および二次側気水分離部からなっている。
 一次側水室は半球形で仕切板により出入口部に分離され、それぞれに一次冷却材管が取付けられ、点検用のマンホールが設けられている。
 逆U字形伝熱管部は、三千数百本の逆U字形伝熱管群よりなり、その両端は管板に拡管取付けの上シール溶接されている。伝熱管の直管部は管支持板により、また曲管部は振れ止め金具により支持されている。伝熱管群の外周に円筒形の外筒を設け、下部胴との間に下降水路を形成している。管群外筒の頂部には、気水分離器が設けられている。管板上面部にはブローダウン管が設置されており、二次側の水質管理のため必要に応じてブローダウンを行う。
 気水分離部は、スクリュー形の気水分離器と波形の湿分分離器とで構成されている。気水分離装置部を内蔵する上部胴には、その頂部に主蒸気管が、また伝熱管群より上の円筒胴部に主給水管が取付けられている。
 一次冷却材は、入口水室より流入し逆U字形伝熱管を通って二次側に熱を伝達した後出口水室に入り一次冷却材出口管を通って流出する。
 蒸気発生器二次側への給水は、伝熱管群上に設けられた給水内管よりスパージャ・リングを経て流入し、伝熱管群を取囲んでいる管群外筒と蒸気発生器胴の間の環状水路を再循環水と混合しながら下降し、管板上で上方に方向転換して伝熱管群内を上昇しながら一次冷却材と熱交換を行い蒸気を発生する。
 上昇する蒸気−水混合流は、気水分離器に入り蒸気と水に分離される。分離された水は再び給水と混合されて再循環する。一方、水と分離された蒸気は、湿分分離器により湿分を取除かれ、蒸気発生器頂部から主蒸気管を経てタービンへ供給される。
2.蒸気発生器の設計
 蒸気発生器は、原子炉冷却材圧力バウンダリを構成し、事故の防止並びにその結果の抑制のため安全上重要な設備であり、その健全性と機能を維持できるよう設計されている。
  1) 材料
  蒸気発生器に使用する主要構造材料は、使用実績が豊富でかつその材料特性が十分把握されているものとし、原子力用として特に次の点に考慮を払い選定する。
  a.溶接性などの良好な加工性
  b.脆性破壊に対する十分な靱性を有した材料であること
  c.良好な耐食性(伝熱管)
  蒸気発生器本体には低合金鋼、低合金鍛鋼および鋳鋼が、伝熱管にはTTインコネル600もしくはTTインコネル690(Ni-Cr-Fe合金)が使われている。なお一次冷却材と接触する部分は、耐食性を考慮し、水室内面にはステンレス鋼が、管板一次側面には伝熱管の溶接取付も考慮し、インコネル600が肉盛りされる。
  2) 応力解析
  蒸気発生器は、設計使用期間中に繰り返される起動、停止、負荷変動、事故などの過渡変化に対し詳細に応力解析を行い、基準を満足することを確認している。
  3) 性能
  炉心で約325℃に加熱された一次冷却水は、15000ton/h(1基)の流量で蒸気発生器に入り、そこで二次側水と熱交換して約289℃に冷却されて原子炉へ戻る。二次側では、タービンプラントより約220℃の給水が蒸気発生器へ導かれ、ここで約55kg/cm2の飽和蒸気となって、約1700ton/hの流量で再びタービン側へ送られる。1台の蒸気発生器の蒸気発生量は約250〜295MWe相当であり、これらの運転パラメータはプラントにより若干異なるが、伝熱性能に十分余裕をもって設計されている。
3.蒸気発生器の運転経験と改良
   表1 に蒸気発生器形式の変遷とその特徴を示す。
  わが国においては、PWR原子力発電所の運転が開始された1970年代初め以来、蒸気発生器は、大別して
  1) 二次系の水処理に採用されたりん酸塩の濃縮による損傷(伝熱管の減肉)および揮発性薬性薬品処理におけるアルカリの濃縮による伝熱管損傷伝熱管の粒界腐食)、
  2) 伝熱管の製作あるいは組立時に生じた大きな残留応力に起因する応力腐食割れ(例えば、米国の一部の蒸気発生器に認められた小曲げ逆U字ベンド部での損傷)、
などの伝熱管損傷を経験した。蒸気発生器が長期にわたって、その機能と性能を果たすためには、伝熱管の信頼性を高めることが重要であり、国内外のプラント運転経験を反映しつつ、次のような改良を図っている。
  1) 二次系水質管理技術の向上を図る。また二次系に不純物が入ったとしても、この不純を極力抑制するよう、不純物が濃縮しやすい流体構造的に改良するとともに、流体の流動状態を改善する。
  2) 伝熱管材料、管支持板材料は耐食性の優れたものを選択する。
  3) 伝熱管に生ずる残留応力はできるだけ小さくなるような製作法をとる。
これらの改良項目の採用に際しては、慎重に各種実証試験や解析を行い確証を得て採用している。
<図/表>
表1 蒸気発生器型式の変遷とその特徴
表1  蒸気発生器型式の変遷とその特徴
図1 蒸気発生器の構造および二次冷却水流れ概略図
図1  蒸気発生器の構造および二次冷却水流れ概略図

<関連タイトル>
原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02)
原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02)
PWRの水質管理 (02-02-03-05)

<参考文献>
(1)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし、平成4年10月
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