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<概要>
 東京電力(株)福島第二原子力発電所3号炉における原子炉再循環ポンプの損傷については、主務官庁である通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁が原因の究明、対策及び健全性の評価について取りまとめた。原子力安全委員会は資源エネルギー庁からの報告をうけて、さらに調査審議を行った。調査審議の結果、資源エネルギー庁の報告を了承し、委員会の見解を付して委員会決定とした。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、原子力安全委員会は資源エネルギー庁原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.原子力安全委員会、通商産業省(現経済産業省)等の対応
  昭和64年1月に発生した東京電力(株)福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象について、監督主務官庁である通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁が指揮を執り、調査の結果について逐次原子力安全委員会へ報告された。暦日で、各機関が採った対応を以下に示す。(注:原子力安全委員会は資源エネルギー庁原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
(1)平成元年8月21日
  通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁は、東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機(沸騰水型、定格出力110 万キロワット)における原子炉再循環ポンプの損傷については、関係各課の職員で構成する作業グループを設置し、原子力発電技術顧問会の中に設置された福島第二原子力発電所3号機調査特別委員会の調査審議を踏まえながら原因の究明、対策の検討を進めているところであるが、報告日現在までの調査状況を取りまとめた。「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機の原子炉再循環ポンプの損傷について(調査状況)」
(2)平成2年2月22日
  通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁は、原子炉再循環ポンプの損傷原因事象発生時の対応状況等に関する調査結果及び再発防止対策を取りまとめた。「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機の原子炉再循環ポンプの損傷について(原因と対策に関する調査結果)」
(3)平成2年4月19日
  事故防止対策及び金属粉等の回収について東京電力から通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁への報告(4月17日)に基づき、同省は第19回原子力安全委員会において報告した。「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機の原子炉再循環ポンプの損傷事象に関する再発防止対策及び金属粉の回収結果の報告について」
(4)平成2年7月5日
  通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁は、原子炉再循環ポンプの損傷事象の発生に伴う機器・燃料等の健全性及び今後のプラントの運転における機器・燃料等の健全性に関する調査結果を取りまとめた。「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機の原子炉再循環ポンプの損傷について(健全性評価結果)」
(5)平成2年7月5日
  原子力安全委員会は、「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機の原子炉再循環ポンプの損傷について」の件を調査審議すべく原子炉安全専門委員会に指示した。さらに、同専門部会は、発電用炉部会に調査審議を付託した。
(6)平成2年10月3日
  発電用炉部会は、調査審議を行った結果、通商産業省(現経済産業省)が行った健全性評価は妥当なものであり、本プラントの機器等の健全性は、改良された軸受も含め、安全確保上支障がないものと認める、として原子炉安全専門審査会へ報告した。「東京電力株式会社福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象について」
(7)同日
  同報告を原子炉安全専門審査会は原子力安全委員会へ報告した。
(8)平成2年10月4日
  原子力安全委員会は、原子炉安全専門審査会からの報告を検討した結果、通商産業省(現経済産業省)からあった報告の内容は妥当であると認めた。同時に、同委員会は、当該原子炉の運転に慎重を期し、運転監視強化を希望する、とした上で本事故から得られた教訓に関する見解を示した。「東京電力(株)福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象について(決定)」
2.原子力安全委員会の本事故に対する見解(要旨)
 2.1 通商産業省(現経済産業省)の数次の報告について検討した結果、その内容は妥当なものと判断した。なお、本原子炉の運転に慎重を期し、運転監視を強化することを望む。
 2.2 本事故から得られた教訓に関し見解を示す。関係者は、これらを厳粛に受け止め、今後の原子力の安全確保に遺漏のないことを期待する。
  (1)原子力施設では、細心・着実な運転を遂行し、高い信頼性を確保することが安全確保の前提である。
    また、本事故により、原子力の安全確保に対する社会の信頼を損なうに至ったことは遺憾である。
  (2)原子力施設の安全確保においては、予防保全に徹することが肝要である。
  (3)当該ポンプの如き大型高速回転体は、振動などの異常の早期発見とそれに対する適切な対応が重要である。
  (4)原子力施設の運転・管理に当たっては、常に安全確保を優先させる慎重な態度が必要である。
 2.3 当委員会は、本事故から、以上のような教訓と示唆を得たが、それらを踏まえ、今後とも原子力の確保の一層の向上に尽力していく所存である。
<関連タイトル>
福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象について (02-07-02-08)
福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象の原因に関する調査結果 (02-07-02-06)
福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象の健全性評価結果 (02-07-02-05)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):「平成2年 原子力安全白書」 (1990)
(2)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第131 号」 (1990)
(3)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第137 号」 (1990)
(4)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第139 号」 (1990)
(5)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第142 号」 (1991)
(6)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第145 号」 (1991)
(7)科学技術庁:「FBR広報素材資料集(2版)下巻」 (1991)
(8)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全課(編):「原子力発電所運転管理年報平成2年版」火力原子力発電技術協会、平成2年8月
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